今宵、君と、月を

槇村焔

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4章

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夏目くんとの飲み会はいつも楽しい。
それに、酔った日は、いつも幸せな夢を見る。
そう、夏目くんに甘えてキスをしてもらう夢。
いつ寝たのかわからないけれど、いつも飲み会のあとに出てくる夏目くんは僕をデロデロに甘やかしてくれる。
夢か、妄想かわからなくなるくらい、その夢の中に出てくる夏目くんは僕に優しくしてくれて…ーー


「宮沢さん…、舌、出して…?」
「ん…こう…?んん…」
「そうです…いい子ですね…」

絡まる夏目くんの舌に、僕も必死に真似て絡ませる。
ついつい、キスに力が入り夏目くんのシャツを握る手が強くなった。
ぎゅっとシャツを握りながら、キスを繰り返していると…

「いつまでも、慣れないんですね?」

僕の様子に、夏目くんはくすりと意地悪く笑った。

「慣れないと、いやです?」
もつれもつれの僕の言葉を聞いて、夏目くんは子供にするように頭を撫でる。

「いえ。可愛いですよ。それに…慣れようとして、俺意外とキスなんて絶対に許しませんからね…。キスするのは俺だけでいてください」
「わかりました…。ぜったい、しません…。夏目くんだけです…」
「いい子ですね…」

いい子だなんて。
夢でも嬉しい。

「えへへ…」
笑いながら、すり…と夏目くんの胸元に擦り寄ると、夏目くんはゴクリと息を呑み、僕のシャツのボタンを外していく。

「夏目くん…?」
「宮沢さん…、あの…もっと、いけないこと、してもいいですか?」

いけないこと…?
キョトンとしていると、夏目くんは僕の耳朶を甘噛して、

「宮沢さんに、もっと俺を、刻みつけたいんです」と囁いた。


「もっと、俺に溺れて欲しくて…。
俺だけのものにしたいんです」
「俺だけの…?もうなっているのに?これ以上スキにさせてどうするんですか?」
「もっと…もっとです。もっと俺だけを想っていて…。
俺を感じてほしいんです…。
俺が不安に思わないほど」

夏目くんは僕のシャツを取り去り、ズボンも下ろしていく。
僕のペニスは、恥ずかしいことに期待にパンツを押し上げていた。
マジマジと、夏目くんの視線が、僕の下肢に注がれ体温があがっていく。


「は…恥ずかしいです…」
「恥ずかしい?
宮沢さん、もしかして、セックス、したことないんですか…」
「ないことも…ないですけど…」
「ですよね…。何回ぐらい、しました?」
「…何回?」

何回、だろう。数は覚えていない。
でも、初めてではないことは確かだ。


「やっぱり、言わないでください。嫉妬で、宮沢さんをどうにかしてしまいそうになりますから…。今日は優しくしたいから…」
「初めてじゃないといや?」
「いえ、ただ、俺が最後の男でありたいです。貴方の…」


夏目くんはそういうと、僕のパンツを脱がせて、太腿の際どい場所にキスをする。
夏目くんのキスした場所には、くっきりとした赤い痕が残された。


「優しく、してくれますか…?」

夢でも。夢だからこそ、いい夢で終わらせたい。
夢だからこそ、聞けた問いに。

「はい…。優しく、します…」

夢の中の夏目くんは蕩けそうな甘い顔で、そう答えてくれた。




  夏目くんと飲み会をして、いい夢を見た次の日の朝。
夢だとわかっているのに、目をさましたら、夏目くんの姿を探してしまう。
いつも部屋には僕1人だけなのに、毎度凝りもせず探してしまう僕は、どれだけ夢見がちな男なんだろう。

いつも空いたビール缶だけが虚しく床に転がっていて、虚無感だけが僕にまとわりついていた。
見た夢が夢だから、顔を合わせないですむことにほっとする反面、1人部屋にいるのは寂しい気持ちもあって。
だからといって、夏目くんに泊まって欲しいなんて可愛くおねだりする勇気もない僕は、その日にみた夢を振り返って妄想するのがいつものパターンだった。


 けれど編集長との飲み会があった日は、いつもと違って焼けつくような熱さと呼吸がままならない息苦しさを感じ、眠りから覚めた。

まさか。
人生には、ある日突然、まさかが起こる。
だけど、まさか、こんなことが自分の身に降りかかるなんて思いもしなかった。
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