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切ないってこういうこと
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利弥から貰ったパズルを小牧がバラバラにしてから数ヶ月。
小牧に壊されたパズルは、毎日少しずつ組み立ててきたことで完成に近づいていた。
あと数日、集中してやれば、完成するだろう。
同じような色と形のピースが多い難しいパズルだったので、完成までに数ヶ月を要したが、ようやくあるべき形に戻るのだ。
見えなかったビジョンがここにきて、ようやく形になる気がした。
(20歳になったら、春になったら…、きっと今よりいい関係でいられるよね)
〝話があるから〟
その日、珍しく小牧の方から連絡を受けた菜月は、バイトを切り上げ、待ち合わせのカフェへ向かっていた。
小牧からの連絡なんて、めったにないことだった。
いつも菜月がメールで誘い、それに小牧がのってくるというのがほとんどで、あとは事前に連絡することなどなく、無理矢理押しかけたりが多かった。
菜月が喫茶店にいくと、いつもは遅い小牧が先に席に座って待っていた。
長い足を組み肘をつきながら、難しそうな顔で書類に目を通している。
真剣なその表情に、仕事の書類でも見ているんだろうか…と危惧しながら小牧に近づくと、菜月の気配に気づいて顔をあげた。
「すいません、遅れました…」
「んーん、時間前だよ。今日は俺が早くきただけだから」
座ってと、小牧に着席を促され、菜月は小牧の正面に腰を下ろす。
小牧の表情は、いつもの陽気な雰囲気はなく、気落ちしている。
今にもため息をついてしまいそうな雰囲気に、なにかあったのかと疑問に思うものの、なんと聞いていいのかわからなくて。
結局
「元気ないですね」
菜月の口から出たのは、そんなありふれた言葉だった。
「なにかありましたか?」
菜月が尋ねると小牧は弱々しく口端をあげて、「菜月くんこそ」と返す。
「あいつに、ひどいことされているだろう」
小牧が菜月の手を取り袖を捲ると、手首には縛られた痕が残っていた。
ここだけではなく、服で見えない部分にも沢山痕を残されている。
日に日に酷くなる行為に、増え続ける痕。
最初は薄かった傷痕も、今ではくっきりと見えるようになっていた。
「傷になってる」
「えっと、俺傷が残る体質なので、そこまでひどくないんですよ」
なんて利弥を擁護してみても、小牧の攻めるような視線は変わらず、いたたまれなくなった菜月は「ごめんなさい」とつい謝罪を口にする。
「なにがごめんなの。君があやまることじゃないよ。
あやまるのはあいつ。
ほんとに、オトナのくせに」
「オトナのくせに、ですか」
「君も我慢強いね。あんな傍若無人な男に、色々されて。
辛くない?」
「いいえ。俺ってけっこう打たれ強いのかな。
そりゃ、つらくないっていえばうそになりますけど。慣れちゃったのかな。
今はもう流されるがまま、やられるがままですね」
菜月だって、なにもただ黙ってやられていたわけではない。
ベッドに押し倒した利弥と説得しようと、抵抗や反発も試みた。
それらはいまに至るまで無駄に終わってきちんとした話し合いもできないまま、抱かれてしまっている。
「だんだんこうやって感覚が麻痺していくんですかね…。今は自分が悲しいと思うよりも、こうすることでしか自分を保つことができない利弥さんのほうが可哀想だなって。
利弥さんもそろそろ、わかっているんじゃないかな。こんな行為復讐になんかならないって。意味のない行為だって。最近の利弥さんを見ているとそう思うんです。利弥さん自身も、この復讐を苦しんでいるんじゃないかって。終わりどころを見つけられなくて、困っているんじゃないかなって。
なんて、楽天的かもしれないけれど」
「楽天的…か。
それにしても出会った時と違って、菜月君、いい顔するようになったじゃない。
出会ったときは、俺を前に威嚇しかできなかったわんちゃんなのに。
今は利弥に虐められてもそんなこと言えちゃうんだから」
「はは…。俺も成長したんですかね…」
小牧の言葉に、菜月ははにかんだ笑みを浮かべた。
利弥に変えられたのは、身体だけじゃない。
この"復讐"で菜月の心も変化したようだ。
「バイト先の店長も言ってました。変わったね…って。
” 君は春に憧れて、憧れを描いて、春という存在を前に、すべてから逃げ出しているようだった。
春が好きだといって。他から目を背けている様だった。
夢を描いて、理想を追い続け現実を見ないというのかな。
君は、春という思い出を胸にすべてを諦めている様だった。
ずっと春という綺麗な思い出から抜け出すことなく、時間を止めているようだったよ。
全てから逃げ出して…ね”
そんな風に言われました。
今にして思うと、俺はたしかに逃げていたと思います。
かっちゃんの幻想に、逃げていたんです。
楽しい思い出だけに、逃げて現実を見ようとしなかった。
温かな、春という思い出に逃げていたんです。
俺は冷たい寒さから目を背けてた。
困難からすべて逃げ出して、それでいい。自分はこれでいい、って今の自分の現状に我慢して満足したふりをしていたんです」
「春か…」
「かっちゃんとの楽しい思い出だけに浸って、心のシャッターを閉じて、時間を止まらせていたんだと思います。
ただ過ぎていくだけの日々を過ごしていたんです。
なにも感じず、なにを思うことない、なにもない毎日を過ごしていたんです。
漠然と、将来に不安を抱きながら。
自分はなにもできない、ダメ人間だ、なんて思いながら一歩も動こうとしなかった。
そんな俺に、また春という存在を教えてくれたのは、利弥さんでした。
利弥さんがいたから、春を前に心待ちにするみたいに利弥さんの帰りを待てた。
利弥さんがいたから、春の桜が散るあのさみしさを、切ない気持ちを知ることができたと思うんです。
なにも自慢できることのない俺が、この人のために自分は頑張れるって、そう思わせてくれた。壊れたパズルを1から組み立てようって思えた。
利弥さんがいたから、春だけじゃなく冬も好きになれたんです。
寒い日は二人で寄り添えばあったかいって。春だけじゃない、冬も、夏も、秋だって、どの季節だって素敵だって。
利弥さんは、俺の心に冷たく残ってしまった雪をとかしてくれた、春だったんです。
利弥さんがいなければ、俺はただ幸せを夢見るだけで行動も目的もなく過ごしてたと思います。
だから俺は、結果はどうあれ利弥さんを好きでいる自分が嫌いじゃないんです」
「君を変えたのが君を恨んでいる利弥だとはね…」
小牧は皮肉まじりにいうと珈琲カップに手を伸ばした。
「今日はね俺も知らなかった衝撃事実。
聞かない方が良かったって思うかも知れないけど、それでも知りたい?」
「聞かないほうが良かったって…」
「内容がなかなかヘヴィーだから」
菜月はしばらく悩んだのち、それでも知りたいです、と答えた。
今更、秘密にされているほうがモヤモヤしてしまうし、ここまで関わり合いになったのなら、全て知りたいと思う。
すべて真相を知ったうえで、きちんと利弥と向き合うことができれば、利弥も自分を子供扱いせず、対等な大人として向き合って本音を吐露できるような気がするのだ。
今の自分はまだまだなにも知らない子供だから。
子供な自分に、利弥は身をゆだねることなんて、できないのだ。
いつまでも、甘えるだけの子供では利弥はきちんと向き合ってくれない。
いつまでも、何も言えぬわんこのままでは、彼の言葉に返事を返すこともできないのだ。
菜月が小牧の言葉を待っていると、小牧は静かに切り出した。
「そうだな、なにから話そう。色々とわかったことがあってね。
前回、利弥と香月が兄弟って話、したよね」
「は、はい。18の時のって」
「そう。利弥が18の時。
あいつが一人暮らしをし始めたとき、香月がやってきたんだ。
自分は、“腹違いの貴方の唯一の弟です”って、なんのまえぶれもなく利弥の元に押しかけ同居を迫ったらしい」
「…腹違いの?」
「そう。
だけど、7年もの間最愛の人が行方不明になり、心を痛めていた利弥の父親が、よそで子供を作るはずない。
そんな器用な人じゃないし、父親は最後まで母に一途だったはずだ。
最初は突然現れた香月を、利弥は不審に思って反発したし、嫌っていたようだったよ。
俺や総一郎にも、いきなり部屋に居ついた香月に、よく愚痴っていたよ。
あの居候いつまでいる気だ…、ってね。
利弥は香月の『弟』って言葉を嘘と決めつけていたし、無理矢理家に押しかけたり香月を、家から追い出そうとしてた。
だけどさ、香月は魅力的だから。
反発しつつも利弥は香月に惹かれ…やがて、香月を恋人のように愛していったんだよ。
兄弟と言われていたのに、弟を愛してしまったんだ。ま、見事玉砕したらしいけどね。クリスマスの日に」
「クリスマスの日に…?」
「利弥がクリスマスが嫌いなわけ、知ってる?
利弥がクリスマスの日に、香月に告白して振られたからだよ」
「クリスマスの日に…?あれ…」
クリスマスの日。
香月に、かっちゃん。
クリスマスが嫌いな利弥。
クリスマス、香月とクリスマスパーティをした菜月。
けして埋まることのなかったパズルのかけらが合致し、菜月の頭の中で展開していく。
今まで埋まることのなかった空白のピースが見つかって、次々と他のピースが組み上がっていくようだ。
ひとつ埋まれば次々に世界が広がっていく。
(クリスマス一緒に過ごしたいって俺がごねたら、かっちゃんは『クリスマスは大事な人との約束があるから一緒に過ごせない、ごめんな』って言っていていたんだ。
そしてクリスマスが終わって、翌日やってきたかっちゃんに、抱き着こうとしたら、かっちゃんは泣いていたんだ。
どうして、クリスマスに一緒に過ごしたなんて思っていたんだろう?
クリスマスの日に、俺はかっちゃんとクリスマスパーティーはやっていない。
クリスマスの日、かっちゃんは大事な人の用があって会えなかったのだから。
俺が会えたのは、本当はクリスマスの次の日、26日だった。
なんで、かっちゃんは泣いていた?
かっちゃんは…かっちゃんは?)
小牧に壊されたパズルは、毎日少しずつ組み立ててきたことで完成に近づいていた。
あと数日、集中してやれば、完成するだろう。
同じような色と形のピースが多い難しいパズルだったので、完成までに数ヶ月を要したが、ようやくあるべき形に戻るのだ。
見えなかったビジョンがここにきて、ようやく形になる気がした。
(20歳になったら、春になったら…、きっと今よりいい関係でいられるよね)
〝話があるから〟
その日、珍しく小牧の方から連絡を受けた菜月は、バイトを切り上げ、待ち合わせのカフェへ向かっていた。
小牧からの連絡なんて、めったにないことだった。
いつも菜月がメールで誘い、それに小牧がのってくるというのがほとんどで、あとは事前に連絡することなどなく、無理矢理押しかけたりが多かった。
菜月が喫茶店にいくと、いつもは遅い小牧が先に席に座って待っていた。
長い足を組み肘をつきながら、難しそうな顔で書類に目を通している。
真剣なその表情に、仕事の書類でも見ているんだろうか…と危惧しながら小牧に近づくと、菜月の気配に気づいて顔をあげた。
「すいません、遅れました…」
「んーん、時間前だよ。今日は俺が早くきただけだから」
座ってと、小牧に着席を促され、菜月は小牧の正面に腰を下ろす。
小牧の表情は、いつもの陽気な雰囲気はなく、気落ちしている。
今にもため息をついてしまいそうな雰囲気に、なにかあったのかと疑問に思うものの、なんと聞いていいのかわからなくて。
結局
「元気ないですね」
菜月の口から出たのは、そんなありふれた言葉だった。
「なにかありましたか?」
菜月が尋ねると小牧は弱々しく口端をあげて、「菜月くんこそ」と返す。
「あいつに、ひどいことされているだろう」
小牧が菜月の手を取り袖を捲ると、手首には縛られた痕が残っていた。
ここだけではなく、服で見えない部分にも沢山痕を残されている。
日に日に酷くなる行為に、増え続ける痕。
最初は薄かった傷痕も、今ではくっきりと見えるようになっていた。
「傷になってる」
「えっと、俺傷が残る体質なので、そこまでひどくないんですよ」
なんて利弥を擁護してみても、小牧の攻めるような視線は変わらず、いたたまれなくなった菜月は「ごめんなさい」とつい謝罪を口にする。
「なにがごめんなの。君があやまることじゃないよ。
あやまるのはあいつ。
ほんとに、オトナのくせに」
「オトナのくせに、ですか」
「君も我慢強いね。あんな傍若無人な男に、色々されて。
辛くない?」
「いいえ。俺ってけっこう打たれ強いのかな。
そりゃ、つらくないっていえばうそになりますけど。慣れちゃったのかな。
今はもう流されるがまま、やられるがままですね」
菜月だって、なにもただ黙ってやられていたわけではない。
ベッドに押し倒した利弥と説得しようと、抵抗や反発も試みた。
それらはいまに至るまで無駄に終わってきちんとした話し合いもできないまま、抱かれてしまっている。
「だんだんこうやって感覚が麻痺していくんですかね…。今は自分が悲しいと思うよりも、こうすることでしか自分を保つことができない利弥さんのほうが可哀想だなって。
利弥さんもそろそろ、わかっているんじゃないかな。こんな行為復讐になんかならないって。意味のない行為だって。最近の利弥さんを見ているとそう思うんです。利弥さん自身も、この復讐を苦しんでいるんじゃないかって。終わりどころを見つけられなくて、困っているんじゃないかなって。
なんて、楽天的かもしれないけれど」
「楽天的…か。
それにしても出会った時と違って、菜月君、いい顔するようになったじゃない。
出会ったときは、俺を前に威嚇しかできなかったわんちゃんなのに。
今は利弥に虐められてもそんなこと言えちゃうんだから」
「はは…。俺も成長したんですかね…」
小牧の言葉に、菜月ははにかんだ笑みを浮かべた。
利弥に変えられたのは、身体だけじゃない。
この"復讐"で菜月の心も変化したようだ。
「バイト先の店長も言ってました。変わったね…って。
” 君は春に憧れて、憧れを描いて、春という存在を前に、すべてから逃げ出しているようだった。
春が好きだといって。他から目を背けている様だった。
夢を描いて、理想を追い続け現実を見ないというのかな。
君は、春という思い出を胸にすべてを諦めている様だった。
ずっと春という綺麗な思い出から抜け出すことなく、時間を止めているようだったよ。
全てから逃げ出して…ね”
そんな風に言われました。
今にして思うと、俺はたしかに逃げていたと思います。
かっちゃんの幻想に、逃げていたんです。
楽しい思い出だけに、逃げて現実を見ようとしなかった。
温かな、春という思い出に逃げていたんです。
俺は冷たい寒さから目を背けてた。
困難からすべて逃げ出して、それでいい。自分はこれでいい、って今の自分の現状に我慢して満足したふりをしていたんです」
「春か…」
「かっちゃんとの楽しい思い出だけに浸って、心のシャッターを閉じて、時間を止まらせていたんだと思います。
ただ過ぎていくだけの日々を過ごしていたんです。
なにも感じず、なにを思うことない、なにもない毎日を過ごしていたんです。
漠然と、将来に不安を抱きながら。
自分はなにもできない、ダメ人間だ、なんて思いながら一歩も動こうとしなかった。
そんな俺に、また春という存在を教えてくれたのは、利弥さんでした。
利弥さんがいたから、春を前に心待ちにするみたいに利弥さんの帰りを待てた。
利弥さんがいたから、春の桜が散るあのさみしさを、切ない気持ちを知ることができたと思うんです。
なにも自慢できることのない俺が、この人のために自分は頑張れるって、そう思わせてくれた。壊れたパズルを1から組み立てようって思えた。
利弥さんがいたから、春だけじゃなく冬も好きになれたんです。
寒い日は二人で寄り添えばあったかいって。春だけじゃない、冬も、夏も、秋だって、どの季節だって素敵だって。
利弥さんは、俺の心に冷たく残ってしまった雪をとかしてくれた、春だったんです。
利弥さんがいなければ、俺はただ幸せを夢見るだけで行動も目的もなく過ごしてたと思います。
だから俺は、結果はどうあれ利弥さんを好きでいる自分が嫌いじゃないんです」
「君を変えたのが君を恨んでいる利弥だとはね…」
小牧は皮肉まじりにいうと珈琲カップに手を伸ばした。
「今日はね俺も知らなかった衝撃事実。
聞かない方が良かったって思うかも知れないけど、それでも知りたい?」
「聞かないほうが良かったって…」
「内容がなかなかヘヴィーだから」
菜月はしばらく悩んだのち、それでも知りたいです、と答えた。
今更、秘密にされているほうがモヤモヤしてしまうし、ここまで関わり合いになったのなら、全て知りたいと思う。
すべて真相を知ったうえで、きちんと利弥と向き合うことができれば、利弥も自分を子供扱いせず、対等な大人として向き合って本音を吐露できるような気がするのだ。
今の自分はまだまだなにも知らない子供だから。
子供な自分に、利弥は身をゆだねることなんて、できないのだ。
いつまでも、甘えるだけの子供では利弥はきちんと向き合ってくれない。
いつまでも、何も言えぬわんこのままでは、彼の言葉に返事を返すこともできないのだ。
菜月が小牧の言葉を待っていると、小牧は静かに切り出した。
「そうだな、なにから話そう。色々とわかったことがあってね。
前回、利弥と香月が兄弟って話、したよね」
「は、はい。18の時のって」
「そう。利弥が18の時。
あいつが一人暮らしをし始めたとき、香月がやってきたんだ。
自分は、“腹違いの貴方の唯一の弟です”って、なんのまえぶれもなく利弥の元に押しかけ同居を迫ったらしい」
「…腹違いの?」
「そう。
だけど、7年もの間最愛の人が行方不明になり、心を痛めていた利弥の父親が、よそで子供を作るはずない。
そんな器用な人じゃないし、父親は最後まで母に一途だったはずだ。
最初は突然現れた香月を、利弥は不審に思って反発したし、嫌っていたようだったよ。
俺や総一郎にも、いきなり部屋に居ついた香月に、よく愚痴っていたよ。
あの居候いつまでいる気だ…、ってね。
利弥は香月の『弟』って言葉を嘘と決めつけていたし、無理矢理家に押しかけたり香月を、家から追い出そうとしてた。
だけどさ、香月は魅力的だから。
反発しつつも利弥は香月に惹かれ…やがて、香月を恋人のように愛していったんだよ。
兄弟と言われていたのに、弟を愛してしまったんだ。ま、見事玉砕したらしいけどね。クリスマスの日に」
「クリスマスの日に…?」
「利弥がクリスマスが嫌いなわけ、知ってる?
利弥がクリスマスの日に、香月に告白して振られたからだよ」
「クリスマスの日に…?あれ…」
クリスマスの日。
香月に、かっちゃん。
クリスマスが嫌いな利弥。
クリスマス、香月とクリスマスパーティをした菜月。
けして埋まることのなかったパズルのかけらが合致し、菜月の頭の中で展開していく。
今まで埋まることのなかった空白のピースが見つかって、次々と他のピースが組み上がっていくようだ。
ひとつ埋まれば次々に世界が広がっていく。
(クリスマス一緒に過ごしたいって俺がごねたら、かっちゃんは『クリスマスは大事な人との約束があるから一緒に過ごせない、ごめんな』って言っていていたんだ。
そしてクリスマスが終わって、翌日やってきたかっちゃんに、抱き着こうとしたら、かっちゃんは泣いていたんだ。
どうして、クリスマスに一緒に過ごしたなんて思っていたんだろう?
クリスマスの日に、俺はかっちゃんとクリスマスパーティーはやっていない。
クリスマスの日、かっちゃんは大事な人の用があって会えなかったのだから。
俺が会えたのは、本当はクリスマスの次の日、26日だった。
なんで、かっちゃんは泣いていた?
かっちゃんは…かっちゃんは?)
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