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永遠編
132.臣籍降下
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──それから三ヶ月後。書類も受理され、陛下への謁見をもってレオは王族から離脱した。新たにリュシェールの姓を授けられ、同時に叙爵しリュシェール公爵となった。明日、断絶してからも保管されていた公爵家への引越しだ。この引越し先は王都にあって、そことガルダの邸を行き来することになる。
この城ともお別れか、と思うと、色々と込み上げるものがある。そういえば、アルマと初めて会ったのもここだっけ。彼女には、結婚が決まった時に手紙を書いたし、その後も何度かやりとりしたけど元気だろうか。俺も同じ土俵に立ったことだし、またお茶会とかやりたいね。
レオの家族も本当に良くしてくれて、俺は困ったことがほとんど無かったよ。俺は本当に運が良かったんだなぁとつくづく思う。目が覚めた場所も、そこからの歩みも……そりゃまぁ辛いこともあったけど、全体的に見たら運が良かったんじゃないかと思う。
謁見の後にレオが部屋に送ってくれて、そのまま俺の部屋で明日のことを話す。……といっても、もう準備はしてあるし雑談だけれど。
「……この正装も見納めかぁ……。」
「カイはこれ、好きだったよね。」
勲章やらなにやらがバチバチについていて、マントまでついている最も派手で最も王子様なこの正装。最高にかっこよくて好きだったんだ。
「そーなんだよ。……まあ、レオは何着ても似合うから、かっこいいレオはこれからもたくさん見れるだろうけど。」
「……夜着でも?」
「え、うん。色気マシマシでしょ。」
それを聞いたレオは目を丸くしたあと、吹き出して笑った。
「色気って……。っふ、ははっ! そんな目で見てたんだ!」
「悪いかよ。ていうかレオも似たようなもんだろ? 毎度押し倒してくるのは誰だっけ?」
「ん、俺! ……でもカイだって満更でもないでしょ。いつも押し倒されて笑ってるし。」
うっ、恥ずかしいところを指摘するんじゃない! しょうがないだろ、求められたら……嬉しくなるじゃんか。
「うっさい! もう、早く着替えに行ってこいっ」
「はいはい、じゃあまたあとで──」
「あ、待って」
レオが行こうとするところを呼び止めて、キスをした。
「さよなら王子様。これからよろしく、公爵様」
そう言って手を振った。
その正装を脱いだら、もう二度と袖を通すことはない。今までの王子としてのレオへの俺なりの労い? の言葉のつもりだ。
レオが出ていったあとでハッと思い立って、ベルを鳴らしてジュリオとエレナを呼んだ。彼らは相変わらず無駄のない動きで俺の前に現れる。
「ね、せっかくだし三人でお茶をしよう?」
「し、しかしわたくしどもは仕事中ですし、そもそも御一緒になど……」
「じゃ、俺とお茶するのが仕事! ね!」
半ばゴリ推して承諾を得ると、お茶の準備を始める。いつもは準備してもらってるから、最初で最後の今日くらいは、と思って。……でも結局手伝ってもらっちゃって、三人で準備したんだけど。それはそれで良し。
俺好みの甘いスイーツを囲んで、即席のお茶会が始まった。ずっとこうしたかったんだけど、頑なに断られてね……やっと実現して感無量だよ。
「ジュリオとエレナには、本当にお世話になりました。」
「いえそんな! 頭を下げるなどおやめください!」
「そうですわ、お上げになってくださいっ」
渋々頭をあげると、ちょっと怒った顔のジュリオと困惑顔のエレナがいた。え、ジュリオ怒ってる……
「使用人に簡単に頭を下げてはなりませんと、最初の頃に申したはずですが……?」
「ひぇ、最後ぐらいいいじゃんか~! 民族的に染み付いちゃってるんだよぉ……」
「それでも、です。それに、最後ではありませんよ? お聞きになっていないので?」
「…………え?」
最後ではない……最後ではない? ……は?
「わたくしとジュリオ様は、明日からリュシェール公爵家でお世話になることになっています。」
エレナがにこにこと教えてくれたことは、俺にとっては寝耳に水だった。いやいやいや、ひとっことも聞いてねー! いやしかし嬉しいことに変わりはない。完全にお別れだと思っていたから、物凄く嬉しい。
「本当に!? え、嬉しい! エレナの入れてくれた紅茶が飲めるし、ジュリオの授業も続けてもらえるのか!」
「慣れるまでは、授業の方はおやすみ致しましょう。環境に慣れるのが先です。ちなみに、ヴェネリオとパオロもおりますよ。」
「え、そうなんだ!? わかった! ……へへ、えー、嬉しいな。向こうでもよろしくな?」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
「はい! よろしくお願い致します、カイト様!」
最後にみんなでお茶が飲みたいな、なんて思っていたのに、まさかの事実に驚いたやら嬉しいやら。ていうかレオはサプライズが好きなの? 俺に言わないこと多すぎない? プラス面でのことだからいいけど、……逆とかないよな?
………………。
……いや、やめよう。疑うのはよくないな。気になるなら、ちゃんと聞けばいいんだ。
内心そんなことを考えながらお茶を啜った。一度気になりだしたらめちゃくちゃ気になるけど、今はお茶を楽しむことにしよう。
この城ともお別れか、と思うと、色々と込み上げるものがある。そういえば、アルマと初めて会ったのもここだっけ。彼女には、結婚が決まった時に手紙を書いたし、その後も何度かやりとりしたけど元気だろうか。俺も同じ土俵に立ったことだし、またお茶会とかやりたいね。
レオの家族も本当に良くしてくれて、俺は困ったことがほとんど無かったよ。俺は本当に運が良かったんだなぁとつくづく思う。目が覚めた場所も、そこからの歩みも……そりゃまぁ辛いこともあったけど、全体的に見たら運が良かったんじゃないかと思う。
謁見の後にレオが部屋に送ってくれて、そのまま俺の部屋で明日のことを話す。……といっても、もう準備はしてあるし雑談だけれど。
「……この正装も見納めかぁ……。」
「カイはこれ、好きだったよね。」
勲章やらなにやらがバチバチについていて、マントまでついている最も派手で最も王子様なこの正装。最高にかっこよくて好きだったんだ。
「そーなんだよ。……まあ、レオは何着ても似合うから、かっこいいレオはこれからもたくさん見れるだろうけど。」
「……夜着でも?」
「え、うん。色気マシマシでしょ。」
それを聞いたレオは目を丸くしたあと、吹き出して笑った。
「色気って……。っふ、ははっ! そんな目で見てたんだ!」
「悪いかよ。ていうかレオも似たようなもんだろ? 毎度押し倒してくるのは誰だっけ?」
「ん、俺! ……でもカイだって満更でもないでしょ。いつも押し倒されて笑ってるし。」
うっ、恥ずかしいところを指摘するんじゃない! しょうがないだろ、求められたら……嬉しくなるじゃんか。
「うっさい! もう、早く着替えに行ってこいっ」
「はいはい、じゃあまたあとで──」
「あ、待って」
レオが行こうとするところを呼び止めて、キスをした。
「さよなら王子様。これからよろしく、公爵様」
そう言って手を振った。
その正装を脱いだら、もう二度と袖を通すことはない。今までの王子としてのレオへの俺なりの労い? の言葉のつもりだ。
レオが出ていったあとでハッと思い立って、ベルを鳴らしてジュリオとエレナを呼んだ。彼らは相変わらず無駄のない動きで俺の前に現れる。
「ね、せっかくだし三人でお茶をしよう?」
「し、しかしわたくしどもは仕事中ですし、そもそも御一緒になど……」
「じゃ、俺とお茶するのが仕事! ね!」
半ばゴリ推して承諾を得ると、お茶の準備を始める。いつもは準備してもらってるから、最初で最後の今日くらいは、と思って。……でも結局手伝ってもらっちゃって、三人で準備したんだけど。それはそれで良し。
俺好みの甘いスイーツを囲んで、即席のお茶会が始まった。ずっとこうしたかったんだけど、頑なに断られてね……やっと実現して感無量だよ。
「ジュリオとエレナには、本当にお世話になりました。」
「いえそんな! 頭を下げるなどおやめください!」
「そうですわ、お上げになってくださいっ」
渋々頭をあげると、ちょっと怒った顔のジュリオと困惑顔のエレナがいた。え、ジュリオ怒ってる……
「使用人に簡単に頭を下げてはなりませんと、最初の頃に申したはずですが……?」
「ひぇ、最後ぐらいいいじゃんか~! 民族的に染み付いちゃってるんだよぉ……」
「それでも、です。それに、最後ではありませんよ? お聞きになっていないので?」
「…………え?」
最後ではない……最後ではない? ……は?
「わたくしとジュリオ様は、明日からリュシェール公爵家でお世話になることになっています。」
エレナがにこにこと教えてくれたことは、俺にとっては寝耳に水だった。いやいやいや、ひとっことも聞いてねー! いやしかし嬉しいことに変わりはない。完全にお別れだと思っていたから、物凄く嬉しい。
「本当に!? え、嬉しい! エレナの入れてくれた紅茶が飲めるし、ジュリオの授業も続けてもらえるのか!」
「慣れるまでは、授業の方はおやすみ致しましょう。環境に慣れるのが先です。ちなみに、ヴェネリオとパオロもおりますよ。」
「え、そうなんだ!? わかった! ……へへ、えー、嬉しいな。向こうでもよろしくな?」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
「はい! よろしくお願い致します、カイト様!」
最後にみんなでお茶が飲みたいな、なんて思っていたのに、まさかの事実に驚いたやら嬉しいやら。ていうかレオはサプライズが好きなの? 俺に言わないこと多すぎない? プラス面でのことだからいいけど、……逆とかないよな?
………………。
……いや、やめよう。疑うのはよくないな。気になるなら、ちゃんと聞けばいいんだ。
内心そんなことを考えながらお茶を啜った。一度気になりだしたらめちゃくちゃ気になるけど、今はお茶を楽しむことにしよう。
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