106 / 146
騒乱編
104.隣国の使節団
しおりを挟む
身支度を終え、あとは待つだけ。今日は件の使節団が来る日だ。
今日の俺の衣装には、やはりと言っていいのかレオの色が差し込まれている。今回はベストとジャケットの裏地。レオはといえば、王子様モードなので俺よりももっと装飾品が色々付いていて非常に豪華でかっこいい。そのかっこいい中に、俺の“黒色” が入っている。
「カイト様、そろそろ謁見の間にお願いします。」
「わかった。」
ジュリオから移動を告げられる。もうすぐ隣国、ブランシャールからの使節団が到着するようだ。
長い廊下を少し緊張気味に歩いていると、ジュリオが声をかけてきた。
「カイト様、少し緊張なさってますね? 緊張感も大事ですが、それに囚われすぎないように。周りをよく見ることを忘れないでください。」
「……そう、だね。うん、頑張ってみるよ。ありがとう。」
確かにそうだ、ガチガチになって視野を狭めてしまうのはよくない。気づけるものにも、気づけなくなってしまう。
ふう、と息を吐くと、頬を両手でパンッと叩く。結構いい音がしたからかジュリオを驚かせてしまった。
「よし!」
謁見の間に着くと既に多数の貴族達が集まっていて、中央に敷かれた赤い絨毯の花道を挟んで皆おしゃべりに花を咲かせている。事前に聞いていたレオの場所を探すと、壇上には陛下と王妃が、その少し下段の左右にレオとその兄妹たちが勢ぞろいしていた。いつもはみんな座っているけど、今日は陛下と王妃以外は立ちっぱなしだ。歓迎の意を表しているのだろうか。
壇上の玉座と王妃の席に座っていた国王夫妻に挨拶を済ませ、レオの側へと寄る。
「レオ」
「カイ、来たね。」
「いや俺、ホントにこの位置でいいの?」
婚約者だからレオの隣らしいけど、いくら端っこでも皆の正面にいるのは正直落ち着かない。ここまで来てそんなこと言ってビビってんじゃねえ! ってかんじだけど、すごい晒されてる気分……。
「もちろん。ほら、兄上の婚約者や王子妃、王太子妃もいるでしょ。」
ふと目線を向けると、確かに皆さんお揃いだ。ラヴィの婚約者は他国だからいないけれど。
「わ、わかった……。」
大人しくレオの隣に収まると、広い謁見室に声がかかった。
「静粛に! ブランシャールの皆さんのご到着です!」
重厚な扉が開け放たれると、隣国ブランシャールの使節団が入ってきた。先頭は、第二王子のロラン王子だ。今回は外遊も兼ねているとか。その後ろに使節団の団長と、たくさんの献上品を運び込む使用人たちや護衛が続々と続いた。
全員が入り切ると、ロラン王子より後ろの者たちは全員膝をつき、ロラン王子は胸に手を当て腰を折ってお辞儀をした。
「初めまして。ブランシャール国 第二王子ロランと申します。この度はお目にかかれて光栄です。」
そう言って顔を上げると、にこりと微笑む。レオもよくやる王子スマイルだ。
「ロラン王子、ようこそおいで下さった。其方の訪問を歓迎する。外遊も兼ねていると伺っておるゆえ、ゆるりと過ごされよ。」
「歓迎いただき感謝致します。こちら、僅かではありますが我が国の特産品などをお持ちしました。お納めください。」
ロラン王子の少し後ろにいた使節団長が、近くにいた役人にすっと巻いた書簡を差し出した。
「こちら目録になります。ご確認ください。」
役人はしゅるりと書簡を開くと、最初の数行を確認してまた元の形に戻す。
「目録、確かに受け取りました。後ほど照合し検品させていただきます。」
役人がすっと礼をして下がると、陛下が立ち上がる。
「夕刻より歓迎の宴を行う。それまで各自適宜過ごしてくれ。」
陛下の言葉が終わると同時に、ロラン王子の元へエドアルド様が近寄り、挨拶をし握手を交わしている。恐らく、ロラン王子の接待役を任されているのだろう。
周りで見ていた貴族たちも各々動き始めたところで、俺はようやく詰めていた息を吐いた。
「ふぃー……。」
「なんとかなったろ?」
「まあ立ってるだけだったしね。」
特に何もせず突っ立ってるだけだったからまだ何とかなったようなものだ。それでも、ちらちら目線が泳ぐだとか震えるだとか、そんな事があると注目の的になってしまう。立ってるだけというのも緊張するものなんだと初めて知った。……初めての夜会の時、よく俺挨拶なんて出来たよな……。勢いがあったからか?
エドアルド様とロラン王子の話が終わったようで、エドアルド様の案内で退出しようとする姿を見送っていると、ロラン王子にすっと近づいた騎士の顔がちらりと見えた。
「──────え。」
目を凝らしてもう一度見てみる。
「嘘だろ……」
間違いない。俺、視力だけはめちゃめちゃいいから。
髪の色も、恐らく瞳の色も違うけれど、見間違えるはずがないあの顔は。
「……桐、矢…………。」
元いた世界での親友、東雲桐矢だった。
今日の俺の衣装には、やはりと言っていいのかレオの色が差し込まれている。今回はベストとジャケットの裏地。レオはといえば、王子様モードなので俺よりももっと装飾品が色々付いていて非常に豪華でかっこいい。そのかっこいい中に、俺の“黒色” が入っている。
「カイト様、そろそろ謁見の間にお願いします。」
「わかった。」
ジュリオから移動を告げられる。もうすぐ隣国、ブランシャールからの使節団が到着するようだ。
長い廊下を少し緊張気味に歩いていると、ジュリオが声をかけてきた。
「カイト様、少し緊張なさってますね? 緊張感も大事ですが、それに囚われすぎないように。周りをよく見ることを忘れないでください。」
「……そう、だね。うん、頑張ってみるよ。ありがとう。」
確かにそうだ、ガチガチになって視野を狭めてしまうのはよくない。気づけるものにも、気づけなくなってしまう。
ふう、と息を吐くと、頬を両手でパンッと叩く。結構いい音がしたからかジュリオを驚かせてしまった。
「よし!」
謁見の間に着くと既に多数の貴族達が集まっていて、中央に敷かれた赤い絨毯の花道を挟んで皆おしゃべりに花を咲かせている。事前に聞いていたレオの場所を探すと、壇上には陛下と王妃が、その少し下段の左右にレオとその兄妹たちが勢ぞろいしていた。いつもはみんな座っているけど、今日は陛下と王妃以外は立ちっぱなしだ。歓迎の意を表しているのだろうか。
壇上の玉座と王妃の席に座っていた国王夫妻に挨拶を済ませ、レオの側へと寄る。
「レオ」
「カイ、来たね。」
「いや俺、ホントにこの位置でいいの?」
婚約者だからレオの隣らしいけど、いくら端っこでも皆の正面にいるのは正直落ち着かない。ここまで来てそんなこと言ってビビってんじゃねえ! ってかんじだけど、すごい晒されてる気分……。
「もちろん。ほら、兄上の婚約者や王子妃、王太子妃もいるでしょ。」
ふと目線を向けると、確かに皆さんお揃いだ。ラヴィの婚約者は他国だからいないけれど。
「わ、わかった……。」
大人しくレオの隣に収まると、広い謁見室に声がかかった。
「静粛に! ブランシャールの皆さんのご到着です!」
重厚な扉が開け放たれると、隣国ブランシャールの使節団が入ってきた。先頭は、第二王子のロラン王子だ。今回は外遊も兼ねているとか。その後ろに使節団の団長と、たくさんの献上品を運び込む使用人たちや護衛が続々と続いた。
全員が入り切ると、ロラン王子より後ろの者たちは全員膝をつき、ロラン王子は胸に手を当て腰を折ってお辞儀をした。
「初めまして。ブランシャール国 第二王子ロランと申します。この度はお目にかかれて光栄です。」
そう言って顔を上げると、にこりと微笑む。レオもよくやる王子スマイルだ。
「ロラン王子、ようこそおいで下さった。其方の訪問を歓迎する。外遊も兼ねていると伺っておるゆえ、ゆるりと過ごされよ。」
「歓迎いただき感謝致します。こちら、僅かではありますが我が国の特産品などをお持ちしました。お納めください。」
ロラン王子の少し後ろにいた使節団長が、近くにいた役人にすっと巻いた書簡を差し出した。
「こちら目録になります。ご確認ください。」
役人はしゅるりと書簡を開くと、最初の数行を確認してまた元の形に戻す。
「目録、確かに受け取りました。後ほど照合し検品させていただきます。」
役人がすっと礼をして下がると、陛下が立ち上がる。
「夕刻より歓迎の宴を行う。それまで各自適宜過ごしてくれ。」
陛下の言葉が終わると同時に、ロラン王子の元へエドアルド様が近寄り、挨拶をし握手を交わしている。恐らく、ロラン王子の接待役を任されているのだろう。
周りで見ていた貴族たちも各々動き始めたところで、俺はようやく詰めていた息を吐いた。
「ふぃー……。」
「なんとかなったろ?」
「まあ立ってるだけだったしね。」
特に何もせず突っ立ってるだけだったからまだ何とかなったようなものだ。それでも、ちらちら目線が泳ぐだとか震えるだとか、そんな事があると注目の的になってしまう。立ってるだけというのも緊張するものなんだと初めて知った。……初めての夜会の時、よく俺挨拶なんて出来たよな……。勢いがあったからか?
エドアルド様とロラン王子の話が終わったようで、エドアルド様の案内で退出しようとする姿を見送っていると、ロラン王子にすっと近づいた騎士の顔がちらりと見えた。
「──────え。」
目を凝らしてもう一度見てみる。
「嘘だろ……」
間違いない。俺、視力だけはめちゃめちゃいいから。
髪の色も、恐らく瞳の色も違うけれど、見間違えるはずがないあの顔は。
「……桐、矢…………。」
元いた世界での親友、東雲桐矢だった。
0
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話
ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。
悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。
本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ!
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
【doll】僕らの記念日に本命と浮気なんてしないでよ
月夜の晩に
BL
平凡な主人公には、不釣り合いなカッコいい彼氏がいた。
しかしある時、彼氏が過去に付き合えなかった地元の本命の身代わりとして、自分は選ばれただけだったと知る。
それでも良いと言い聞かせていたのに、本命の子が浪人を経て上京・彼氏を頼る様になって…
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。
無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。
そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。
でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。
___________________
異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分)
わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか
現在体調不良により休止中 2021/9月20日
最新話更新 2022/12月27日
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
【R18】【Bl】魔力のない俺は今日もイケメン絶倫幼馴染から魔力をもらいます
ペーパーナイフ
BL
俺は猛勉強の末やっと魔法高校特待生コースに入学することができた。
安心したのもつかの間、魔力検査をしたところ魔力適性なし?!
このままでは学費無料の特待生を降ろされてしまう…。貧乏な俺にこの学校の学費はとても払えない。
そんなときイケメン幼馴染が魔力をくれると言ってきて…
魔力ってこんな方法でしか得られないんですか!!
注意
無理やり フェラ 射精管理 何でもありな人向けです
リバなし 主人公受け 妊娠要素なし
後半ほとんどエロ
ハッピーエンドになるよう努めます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる