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第9章
しおりを挟む要が怒鳴る。その怒鳴り声に私は思わず耳を塞ぎたくなる。
やめて、喧嘩しないで…
「ふざけてるのはどちらですかねぇ、言いがかりは辞めて下さい。」
未だ私を抱えたままの薫さんが、聞いたこともない冷たい声でそう要に告げる
二人は睨み合ったまま、お互いに引こうとしない。
どうしよう、私…猫だから何にもできない。
何にも、力になれない…。
勝手なお願いとわかっている。
だけど、要も薫さんも私は良い人だって知ってる。
要は自分には無頓着で駄目なところも多いけれど、私の事をとても大切にしてくれた。
私のお世話を毎日欠かさずしてくれた。
薫さんだって、とても優しいこと私は知ってる。
最初出会ったときも、怖がらせないようにと気を使ってくれた
毎日お外行きたいとアピールをしていた私のためにリードを買ってきてくれてちゃんと私のお願い事を叶えてくれる。
そんな二人が喧嘩するとこ、私は見たくない。
「みゃぁ…」不安と悲しい気持ちで胸がいっぱいで、思わず出た声
いつもなら二人とも、どうしたの?って心配してくれる声が聞こえない
お互いに睨み合ったまま、ピリピリとした空気が張り詰めている
本当に、どうしたら…、そう思ったとき遠くから誰かが走ってくる音が聞こえた。
「あ、要くん居たぁ。もう、最近ずっと家にも帰らず外ばかり出歩いて…って、みぃちゃん…?あれ、見つかった…の?」
ミツだ。
まさかこんな時に…タイミングが悪すぎてもう私の心は限界だった
「あのー、貴男…なんでみぃちゃんを抱えてるんですか?リードまで着けて…誘拐ですか?その子猫、私の幼馴染の子なんですよ。早く此方へ連れてきてくれますか?その子居ないと、私の幼馴染本当に大変なんですよ」
そう言ってミツは此方に視線を向けた。その視線は今までの殺意や嫉妬の視線ではない。
ごめんなさい、そう謝罪が伝わるような罪悪感の様な視線。
私が居ない間に一体何が…
「何度も言ってますが、この子は僕の「いえ。私の幼馴染の子です」
薫さんの言葉に被せて、ミツがきっぱりと言い放った。
「えっと…君たちの言うみぃちゃんとやらに似た子という可能性は「それは無いです。要君も私も、みぃちゃんと別の子を見間違えるわけが無いですから。」
薫さんの疑問にミツは即答した。
薫さんは眉を顰め、私に何か身体的特徴が無いかと視線を寄越した
此方を見詰める薫さんの視線が少し怖くて、私は身体を強張らせる
然し、私には個性的な身体的特徴は特に無い。
その間、ミツは要にこそっと耳打ちをした
それまでいきなり此処へやってきたミツに要は呆然と立ち尽くしていただけだったが、その耳打ちを聞くと頷き、要は問いかけた。
そう、いつものように。私へ
「みぃちゃん、みぃちゃんは呼ばれたらきちんとお返事出来る良い子だもんな。ほら、お返事は?」
何週間か離れていたにも関わらず、私はいつものように自然と「みゃう」返事を返していた。
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