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しおりを挟む僕は思わず座り込む。
あの子が、黒死病…なんで…?
そこへ死神が帰ってきた。
「おや、外を覗いていたのか。珍しいこともあるもんだ。明日は槍が降るんじゃないかねぇ」
いつもの調子で死神はカタカタと笑う。
「っ、なんで、なんであの子…!!黒死病に!「カイ、物覚えは良いほうだったろう?外は黒死病が蔓延している。誰がその病に侵されようが、関係ない。私はただ、誘うだけだからな」
「でも、…でも…!!!!」
「諦め、忘れなさい、それがお前の為だ」
僕はがっくりと膝をついた。然し1年経ったんだ。
木の板も老朽化している、僕だって、力は前よりはあるはずだ。
「壊れっろぉおお!!!」
バキバキッ、カラン…
壊れた。そう、壊れたのだ。
あの忌々しい、木の板が。
これで外に行ける。あの子を救うことだって!
「カイ、外へは出るな。今は本当に危険だ。あの少女は諦めろ。」
「うるせぇ!何もできないなんて、もう嫌なんだ!!!!」
そう言って、僕は小屋から飛び出した。
向かうはあの子のところ。
一目散に走っていく、周りに黒く変色した人間だったものが沢山転がっている。
途中何度も、何度も吐きそうになるのを堪え、やっとの思いでたどり着いた。
振り返る少女
涙を流して泣いている。場に合わないようだが、可愛い。そう思う
然し、肩には黒死病の症状が出ている。
「あ、あの…なんで…泣いているのか。聞いても……良い、かな」
「見て分からないの!?私、病気になっちゃったのよ!私も…私も此処の者達と同じ様に真っ黒くなって、醜くなって死んじゃうのよっ。これを悲しいと言わず、なんていうの!?」
気弱そうな見た目からは想像つかないくらいに、強い言葉で返され、僕は言葉に詰まってしまう。
僕は医者じゃない。それに僕だって、元々幼少病で…黒死病なんてかかったら僕は…僕は…
でも…
「ねぇ、聞いて?僕ね、幼少病なんだ。大人になれないまま死んでいく病気。知ってる?かな。はは、僕はどうせ大人になれない。いつ死んじゃってもおかしくないんだ。だから、さ…僕が死ぬまで毎日お話し相手になってあげる。僕、死ぬのなんて……怖くないよ」
僕は勇気を出して、その子の手を握る。
振りほどこうとするその子の掌を、両手で握りしめる
「僕はカイ。君は?
暫くは振りほどこうとしていたが、諦めた様だ。
「…クローラ……」
ぽつり、鈴が鳴るような小さな綺麗な声で、名前を教えてくれた
未だ驚いているクローラに、僕は「よろしくね!」と笑顔で言った。
「カイ…貴方って、ほんとにおばかさんね。…でも、ありがとう。これからお話し相手、頼んだわ!」
呆れたように言うも、顔は正直なようだ。
笑みが抑えきれないって表情をしている、そんなクローラに僕も嬉しくなり微笑んだ。
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