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僕が神になった理由
書記の少年
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神官たちの襲撃からしばらくして、イスメトは再び長老の家にいた。
長老一家はもちろん、アッサイや数人の村人も一緒だ。
「お前には本当に助けられた。改めて礼を言わせてくれ」
「そ、そんな……僕は、何も……」
アッサイに深々と頭を下げられ、イスメトは慌てる。
戦ったのはほとんどセトだ。セトがいなければ、イスメトは奴らに連行されるか、無駄死にするかのどちらかだっただろう。
「しっかし、まだ信じらんねぇよ。マジで神のご加護だったってのか?」
「うむぅ、しかし……セト。セトか。聞いたことがないのう」
ケゼムと長老は、イスメトの説明にまだ納得していないようだった。
いや、この場にいる誰もが半信半疑といったところだろう。セトの声はイスメト以外には聞こえないのだから。
【ハッ! どいつもこいつも素質がねェなァ。そうだ、いっそお前の口を通して神の言葉を聞かせてやろうか】
それだけはやめてくれ。
イスメトはセトに届くよう、強く強く心に念じた。
「神の存在の真偽はともかく……今やイスメトが、この村の重要な戦士になったことは紛れもない事実だ。今朝の騒動で、神官にも目をつけられただろうしな」
アッサイはざわつく一同をまとめるように、冷静に状況を俯瞰する。
「遅かれ早かれ神兵が村に来ることは分かっていた。が……思ったよりも行動が早い。長老。女子供は早急に避難させ、戦いの準備を整えるべきではないでしょうか」
「うむ……そうじゃな。北の村の長には話を通してある。いつでも迎え入れてくれるじゃろう」
イスメトの知らないところで、この計画はすでに以前から動いていたらしかった。
食糧の配給は死活問題だ。どのみち後には退けない。向こうが折れるまで、徹底的に戦うしかない。
それがこの村の総意である。
「その必要はありませんよ」
突如、張り詰めた空気を緩めるように、場違いな子供の声が響いた。
「あっ、コラ! 入っちゃダメだって!」
戸口にいた村人が注意する。
が、声の主は制止を無視して会議の場にトコトコと足を踏み入れた。
「えっ、君は……」
イスメトはその少年を知っていた。
今朝、家を訪ねてきた旅人の一人――確か、エストと名乗っていたか。後ろにはあの女性の姿もある。
「やあイスメト! チーズ、おいしかったよ!」
「え? あ、ああ……」
空のように澄んだ青い瞳で、エストは笑った。
命のやり取りを経験したイスメトにしてみれば、彼らになけなしのチーズを分けたことなどもはや遠い記憶だった。
「知り合いか?」
「う、うん……旅の人だよ。ほら、ケゼムが呼びに来た時にいただろ?」
ケゼムは「あ~」と合点がいったように二人を眺め回す。
「ボクはエスト。王都からやってきた書記です。あなたたちの事情が切迫していることを知り、何か助けになれないかと参りました」
「しょ、書記ぃっ!? 坊主がか……!?」
一同は顔を見合わせた。
書記とは、神殿に関わる職業の一つ。難解な神聖文字を読み書きし、あらゆる学問の研究を行ったり、書物を編んだりする知恵者たちの就く仕事だ。
神事を行う神官より地位は低いが、れっきとしたエリート階級である。
「見聞を広めるために旅をしていたけど、この辺りの農村で食糧不足が起こっていると知って少し調査をしていました。そしたら偶然……」
「今朝の騒動に出くわしたってわけか……」
村人の言葉に、エストはこくりと頷いた。
「皆さんの状況は理解しているつもりです。その訴えの正当性も。でも、このまま暴力に訴え続けるのは得策ではありません。神殿には王家の後ろ盾があります。彼らが要請すれば、兵士はいくらでも補充される。優秀な戦士や神術師を呼ばれでもしたら、どれだけイスメトくんが強くてもこちらに勝算はありません」
幼い顔からは想像もできないほどにハキハキと自分の見解を述べていくエスト。イスメトはもちろん、大人たちも息を詰めて聞いていた。
「だからね、神前裁判を受けてください」
「神前……」
「裁判?」
聞き慣れない単語に村人たちはこぞって首をひねった。
「神殿にて行う裁判のことです」
エストの脇で連れの女性が補足する。
「正しく申請を行えば、身分を問わず、誰でも神前裁判を受けられます。あなたがたは、食料の分配について詳細を開示しない神官たちを相手に、訴訟を起こすのです」
それを聞いて、すかさずアッサイが口を開く。
「だが、神殿での裁判ということは、審判は神官が行うのだろう? 仲間の肩を持つのではないか?」
「あっ、そこは大丈夫。神前裁判の裁判官は神様だから」
エストの回答に、またもや眉根を寄せる村人たち。
また神様が出てくるのか、とイスメトは思った。
「神前裁判には〈マアトの天秤〉っていうものが使われるんだ。これは真実の女神マアトの神器で、嘘を見抜く力がある」
「神器……?」
【神の力の一部を現世に顕現させた、特殊な道具や武具のことだ】
イスメトの疑問に答えたのはセトだった。
【お前も、ついさっき俺様の神器に触れただろう】
「あ……もしかして、あの杖?」
必要になると手の中から現れ、戦いが終わると同時に消えてしまった戦杖。イスメトの窮地を何度も救ってくれた。
【然り。〈マアトの天秤〉はその名の通り、真実を司る女神・マアトの神器だ。物事の真実を証明し、虚偽を告発する。この世で最も公正な判断を下すであろう代物だよ】
「そうそう。さすがは神様。よくご存じで」
セトの解説にエストは満足げに頷いた。
あまりに自然な流れだったので、イスメトは危うくその反応の異常さを見逃すところだった。
「えっ!? エスト、今なんて!?」
「うん? だから、その神様の言うように、裁判に使う天秤はマアトの神器で――」
「そ、そうじゃなくて! セトの声が聞こえるの!? き、聞こえてるんだな!?」
「あわわわわわ、お、おお落ち着いて!」
ガクガクと体を揺すられ、エストは目を回す。
「あっ、ご、ごめん……」
イスメトは慌てて彼の肩から手を離した。
【ほォん……大した〈神応力〉じゃねェか。ただの書記にしとくのは勿体ねェな】
「えへへ、光栄です。ボク、生まれつき神様の声が聞こえる体質みたいなんだ」
エストは当たり前のようにセトと言葉を交わす。
「だから、初めてイスメトと話した時も、何か不思議な気配をずっと感じてたよ。〈依代〉だって気付いたのは、さっきの戦いを見てからだけどね」
セトがイスメトに取り憑いているということも、この少年はとっくに理解していた。理解してくれていた。
「き、聞こえてる……本当に、聞こえてるんだ……!」
イスメトは急に肩の力が抜けたように感じた。
頭を押さえ、深々と息を吐き出す。
「よかった……本当によかった。僕の頭がおかしくなったんじゃなかった……!」
【コイツ……】
自分の置かれた特殊な状況に理解を示してくれる人がいる。たったそれだけで、こうも気持ちが落ち着くものなのか。
セトの呆れ声も気にならないほどに、イスメトはひとり安心感を覚えていた。
「コホン。あー、取り込み中、悪いのだが……」
アッサイの咳払いで、イスメトはハッと我に返る。
セトの声が聞こえない一同からすれば、理解不能な言語でのやり取りが延々と続くような時間だっただろう。
「す、すみません……エストさん、続きをお願いします」
自然と敬語になった。
「あ、うん」
エストは改めて村人たちに向き直り、セトが今したような解説を彼らにも言って聞かせる。
「〈マアトの天秤〉は嘘を見抜く。そして、天秤の判決は絶対だ。神官たちも従わざるを得ない。自分たちの要求が正当なものだと思うのなら、武器を置いて、すぐにでも裁判を受けに行ってください。真実の女神は、絶対にあなたたちに味方してくれるハズだよ」
説明を聞き終わった村人たちの反応は、実に様々だった。
裁判に希望を見いだした者。疑わしく思う者。判断に迷う者。
「信じていいのか……? この坊主だって、言ってみりゃ神殿側の人間だろ?」
「でも、嘘をついてるようには見えねぇぞ?」
「イスメトの様子を見る限りじゃ、セト神とやらの声も聞こえてるみたいだしな……」
「うーん……」
最終的に、判断は長老とアッサイに委ねられた。
アッサイは長老に目配せし、しばしの沈黙の後に決断を下す。
「……わかった。君の助言に従おう」
「よかった!」
エストはにっこりと微笑んだ。
「その神前裁判とやらは、どうすれば受けられる?」
「そのあたりはボクに任せて。手続きは一通り覚えているから」
こうして話はまとまった。
「おお……! 坊主、ちっちゃいのにスゲぇなぁ!」
「こら、書記様に失礼だぞ!」
「お前さっきまで信用ならねぇとか言ってたじゃねーか……」
思わぬ協力者のお陰で、村の存続に希望が見えてきた。自然と人々からは笑顔がこぼれ始める。
イスメトもほっと胸をなで下ろした。少なくとも、村の戦士として一触即発の臨戦態勢に身を投じる必要はひとまずなくなったのだ。
「ありがとうエスト。君のお陰でなんとか戦わずにすみそうだ……」
「ううん。お役に立てて嬉しいよ」
「でも、どうして見ず知らずの僕らなんかのために、そんなに親身になってくれるんだ……?」
イスメトの疑問に、エストは目を丸くした。なぜそんなことを聞くのかと言わんばかりだった。
「だって、おかしいじゃない。今年は不作じゃなかったのに、一生懸命に畑を耕した皆がこんなに飢えてるなんて。ボクは将来、立派な書記になるんだ。こんな不正、絶対に見過ごせるわけないよ」
少年のからっとした笑顔が、今のイスメトには太陽のようにさえ思われた。
長老一家はもちろん、アッサイや数人の村人も一緒だ。
「お前には本当に助けられた。改めて礼を言わせてくれ」
「そ、そんな……僕は、何も……」
アッサイに深々と頭を下げられ、イスメトは慌てる。
戦ったのはほとんどセトだ。セトがいなければ、イスメトは奴らに連行されるか、無駄死にするかのどちらかだっただろう。
「しっかし、まだ信じらんねぇよ。マジで神のご加護だったってのか?」
「うむぅ、しかし……セト。セトか。聞いたことがないのう」
ケゼムと長老は、イスメトの説明にまだ納得していないようだった。
いや、この場にいる誰もが半信半疑といったところだろう。セトの声はイスメト以外には聞こえないのだから。
【ハッ! どいつもこいつも素質がねェなァ。そうだ、いっそお前の口を通して神の言葉を聞かせてやろうか】
それだけはやめてくれ。
イスメトはセトに届くよう、強く強く心に念じた。
「神の存在の真偽はともかく……今やイスメトが、この村の重要な戦士になったことは紛れもない事実だ。今朝の騒動で、神官にも目をつけられただろうしな」
アッサイはざわつく一同をまとめるように、冷静に状況を俯瞰する。
「遅かれ早かれ神兵が村に来ることは分かっていた。が……思ったよりも行動が早い。長老。女子供は早急に避難させ、戦いの準備を整えるべきではないでしょうか」
「うむ……そうじゃな。北の村の長には話を通してある。いつでも迎え入れてくれるじゃろう」
イスメトの知らないところで、この計画はすでに以前から動いていたらしかった。
食糧の配給は死活問題だ。どのみち後には退けない。向こうが折れるまで、徹底的に戦うしかない。
それがこの村の総意である。
「その必要はありませんよ」
突如、張り詰めた空気を緩めるように、場違いな子供の声が響いた。
「あっ、コラ! 入っちゃダメだって!」
戸口にいた村人が注意する。
が、声の主は制止を無視して会議の場にトコトコと足を踏み入れた。
「えっ、君は……」
イスメトはその少年を知っていた。
今朝、家を訪ねてきた旅人の一人――確か、エストと名乗っていたか。後ろにはあの女性の姿もある。
「やあイスメト! チーズ、おいしかったよ!」
「え? あ、ああ……」
空のように澄んだ青い瞳で、エストは笑った。
命のやり取りを経験したイスメトにしてみれば、彼らになけなしのチーズを分けたことなどもはや遠い記憶だった。
「知り合いか?」
「う、うん……旅の人だよ。ほら、ケゼムが呼びに来た時にいただろ?」
ケゼムは「あ~」と合点がいったように二人を眺め回す。
「ボクはエスト。王都からやってきた書記です。あなたたちの事情が切迫していることを知り、何か助けになれないかと参りました」
「しょ、書記ぃっ!? 坊主がか……!?」
一同は顔を見合わせた。
書記とは、神殿に関わる職業の一つ。難解な神聖文字を読み書きし、あらゆる学問の研究を行ったり、書物を編んだりする知恵者たちの就く仕事だ。
神事を行う神官より地位は低いが、れっきとしたエリート階級である。
「見聞を広めるために旅をしていたけど、この辺りの農村で食糧不足が起こっていると知って少し調査をしていました。そしたら偶然……」
「今朝の騒動に出くわしたってわけか……」
村人の言葉に、エストはこくりと頷いた。
「皆さんの状況は理解しているつもりです。その訴えの正当性も。でも、このまま暴力に訴え続けるのは得策ではありません。神殿には王家の後ろ盾があります。彼らが要請すれば、兵士はいくらでも補充される。優秀な戦士や神術師を呼ばれでもしたら、どれだけイスメトくんが強くてもこちらに勝算はありません」
幼い顔からは想像もできないほどにハキハキと自分の見解を述べていくエスト。イスメトはもちろん、大人たちも息を詰めて聞いていた。
「だからね、神前裁判を受けてください」
「神前……」
「裁判?」
聞き慣れない単語に村人たちはこぞって首をひねった。
「神殿にて行う裁判のことです」
エストの脇で連れの女性が補足する。
「正しく申請を行えば、身分を問わず、誰でも神前裁判を受けられます。あなたがたは、食料の分配について詳細を開示しない神官たちを相手に、訴訟を起こすのです」
それを聞いて、すかさずアッサイが口を開く。
「だが、神殿での裁判ということは、審判は神官が行うのだろう? 仲間の肩を持つのではないか?」
「あっ、そこは大丈夫。神前裁判の裁判官は神様だから」
エストの回答に、またもや眉根を寄せる村人たち。
また神様が出てくるのか、とイスメトは思った。
「神前裁判には〈マアトの天秤〉っていうものが使われるんだ。これは真実の女神マアトの神器で、嘘を見抜く力がある」
「神器……?」
【神の力の一部を現世に顕現させた、特殊な道具や武具のことだ】
イスメトの疑問に答えたのはセトだった。
【お前も、ついさっき俺様の神器に触れただろう】
「あ……もしかして、あの杖?」
必要になると手の中から現れ、戦いが終わると同時に消えてしまった戦杖。イスメトの窮地を何度も救ってくれた。
【然り。〈マアトの天秤〉はその名の通り、真実を司る女神・マアトの神器だ。物事の真実を証明し、虚偽を告発する。この世で最も公正な判断を下すであろう代物だよ】
「そうそう。さすがは神様。よくご存じで」
セトの解説にエストは満足げに頷いた。
あまりに自然な流れだったので、イスメトは危うくその反応の異常さを見逃すところだった。
「えっ!? エスト、今なんて!?」
「うん? だから、その神様の言うように、裁判に使う天秤はマアトの神器で――」
「そ、そうじゃなくて! セトの声が聞こえるの!? き、聞こえてるんだな!?」
「あわわわわわ、お、おお落ち着いて!」
ガクガクと体を揺すられ、エストは目を回す。
「あっ、ご、ごめん……」
イスメトは慌てて彼の肩から手を離した。
【ほォん……大した〈神応力〉じゃねェか。ただの書記にしとくのは勿体ねェな】
「えへへ、光栄です。ボク、生まれつき神様の声が聞こえる体質みたいなんだ」
エストは当たり前のようにセトと言葉を交わす。
「だから、初めてイスメトと話した時も、何か不思議な気配をずっと感じてたよ。〈依代〉だって気付いたのは、さっきの戦いを見てからだけどね」
セトがイスメトに取り憑いているということも、この少年はとっくに理解していた。理解してくれていた。
「き、聞こえてる……本当に、聞こえてるんだ……!」
イスメトは急に肩の力が抜けたように感じた。
頭を押さえ、深々と息を吐き出す。
「よかった……本当によかった。僕の頭がおかしくなったんじゃなかった……!」
【コイツ……】
自分の置かれた特殊な状況に理解を示してくれる人がいる。たったそれだけで、こうも気持ちが落ち着くものなのか。
セトの呆れ声も気にならないほどに、イスメトはひとり安心感を覚えていた。
「コホン。あー、取り込み中、悪いのだが……」
アッサイの咳払いで、イスメトはハッと我に返る。
セトの声が聞こえない一同からすれば、理解不能な言語でのやり取りが延々と続くような時間だっただろう。
「す、すみません……エストさん、続きをお願いします」
自然と敬語になった。
「あ、うん」
エストは改めて村人たちに向き直り、セトが今したような解説を彼らにも言って聞かせる。
「〈マアトの天秤〉は嘘を見抜く。そして、天秤の判決は絶対だ。神官たちも従わざるを得ない。自分たちの要求が正当なものだと思うのなら、武器を置いて、すぐにでも裁判を受けに行ってください。真実の女神は、絶対にあなたたちに味方してくれるハズだよ」
説明を聞き終わった村人たちの反応は、実に様々だった。
裁判に希望を見いだした者。疑わしく思う者。判断に迷う者。
「信じていいのか……? この坊主だって、言ってみりゃ神殿側の人間だろ?」
「でも、嘘をついてるようには見えねぇぞ?」
「イスメトの様子を見る限りじゃ、セト神とやらの声も聞こえてるみたいだしな……」
「うーん……」
最終的に、判断は長老とアッサイに委ねられた。
アッサイは長老に目配せし、しばしの沈黙の後に決断を下す。
「……わかった。君の助言に従おう」
「よかった!」
エストはにっこりと微笑んだ。
「その神前裁判とやらは、どうすれば受けられる?」
「そのあたりはボクに任せて。手続きは一通り覚えているから」
こうして話はまとまった。
「おお……! 坊主、ちっちゃいのにスゲぇなぁ!」
「こら、書記様に失礼だぞ!」
「お前さっきまで信用ならねぇとか言ってたじゃねーか……」
思わぬ協力者のお陰で、村の存続に希望が見えてきた。自然と人々からは笑顔がこぼれ始める。
イスメトもほっと胸をなで下ろした。少なくとも、村の戦士として一触即発の臨戦態勢に身を投じる必要はひとまずなくなったのだ。
「ありがとうエスト。君のお陰でなんとか戦わずにすみそうだ……」
「ううん。お役に立てて嬉しいよ」
「でも、どうして見ず知らずの僕らなんかのために、そんなに親身になってくれるんだ……?」
イスメトの疑問に、エストは目を丸くした。なぜそんなことを聞くのかと言わんばかりだった。
「だって、おかしいじゃない。今年は不作じゃなかったのに、一生懸命に畑を耕した皆がこんなに飢えてるなんて。ボクは将来、立派な書記になるんだ。こんな不正、絶対に見過ごせるわけないよ」
少年のからっとした笑顔が、今のイスメトには太陽のようにさえ思われた。
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