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8. 混乱
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「テレスフィオ!」
「オリランダ様……っ、ご無事で……」
オーリーは目を見開いて叫び声を上げていた。
「いやあ!!」
「オリランダ様!?」
腕をめちゃくちゃに振り回して近寄ってくるテレスフィオを突き飛ばす。けれど元々鍛えているテレスフィオはよろめきもせず暴れるオーリーの両腕を捕らえて腕の中に閉じ込めた。
「止めて! 離して!」
「……何が……っ、何かされたのですか!?」
「……っ」
何かされた?
それならテレスフィオにだ。
テレスフィオは自分を欺いた。
一緒に国外に付いてきたのはメイルティンの為だった。宿屋の仕事の覚えが悪くて泣いてる時に励ましてくれてたのもメイルティンの為だった。
嬉しい事があって密かに喜びを噛み締めている時に気付いて話を聞いてくれたのも、具合が悪い時に一番に気付いて世話を焼いてくれたのも、全部全部メイルティンの為だったのだから……
「嘘吐き! 大嫌い!」
どんどんと胸板を叩いてもテレスフィオはびくともしない。
「離して!」
「オリランダ様……」
困った子を宥める様に頭を撫でるテレスフィオの手が温かいのが悔しくて、頭を振ってそれを拒む。
「どうか落ち付いて下さい……」
困惑するロレンフィオンにメイルティンが懇願するような声を出す。
「ああ、テレスフィオ。聞いて頂戴、ロレンフィオンはこの子の代わりにアタシにこの男の情婦になれと言うのよ!?」
「じ、情婦!?」
自分を指差し驚いているのは神官だ。
その様を見てオーリーは違和感を覚える。
暴れるのを止めたオーリーを抱え直し、テレスフィオは口を開いた。
「……どういう事です、ロレンフィオン陛下?」
「どうもこうも無い! 好色者の神官に高位貴族の娘を差し出せば聖女の件は上手く収まるという話だったろう?! だから我が国で最高位の女────王妃を差し出す事に決めたんだ! お前もメイルティンを説得しろ! テレスフィオ!」
「ちょっと冗談じゃ無いわよ! こんなおじさん! テレスフィオ、勿論止めてくれるわよね? あなたはアタシの味方でしょう?」
話が拗れているようだが、テレスフィオがここにいる事にロレンフィオン達が驚いていない。……やはりテレスフィオはロレンフィオンたちと繋がっていたのだ。オーリーの瞳に涙が浮かぶ。
だがこの場の雰囲気にそぐわない空気を持つ者が一人……
「好色者……」
低く呟きふるふると身体を震わせているのは神官だ。道中の二人の会話を思い出しオーリーは首を傾げる。
「聖女の件は……隣国の聖女様にキエル国にご訪問頂き、祈祷を授けて頂く事で折り合いがついたのでは? メイルティン王妃を再び聖女として認定されるのは不可能ですが、それならせめて国民の為に祈りを捧げて欲しいという話でしたが……」
「馬鹿を言うな! 聖女に対する神殿からの収入が無ければ、キエル国はもう立ち行かないんだぞ!」
「そ、そうよお! 聖女は必要よ! だからってアタシこんなおじさんに囲われるの嫌よ! ねえ助けてテレスフィオ!」
涙ながらに駆け寄ってくるメイルティンに嫌悪感が込み上げる。ここから退きたいのに……テレスフィオがガッシリとオーリーを掴んでいるものだから身動きがとれない。
「恐れながら……貴方方の選び取った結末は、王族として受け入れるべきかと……」
その言葉にオーリーはテレスフィオを振り仰いだ。
「オリランダ様……っ、ご無事で……」
オーリーは目を見開いて叫び声を上げていた。
「いやあ!!」
「オリランダ様!?」
腕をめちゃくちゃに振り回して近寄ってくるテレスフィオを突き飛ばす。けれど元々鍛えているテレスフィオはよろめきもせず暴れるオーリーの両腕を捕らえて腕の中に閉じ込めた。
「止めて! 離して!」
「……何が……っ、何かされたのですか!?」
「……っ」
何かされた?
それならテレスフィオにだ。
テレスフィオは自分を欺いた。
一緒に国外に付いてきたのはメイルティンの為だった。宿屋の仕事の覚えが悪くて泣いてる時に励ましてくれてたのもメイルティンの為だった。
嬉しい事があって密かに喜びを噛み締めている時に気付いて話を聞いてくれたのも、具合が悪い時に一番に気付いて世話を焼いてくれたのも、全部全部メイルティンの為だったのだから……
「嘘吐き! 大嫌い!」
どんどんと胸板を叩いてもテレスフィオはびくともしない。
「離して!」
「オリランダ様……」
困った子を宥める様に頭を撫でるテレスフィオの手が温かいのが悔しくて、頭を振ってそれを拒む。
「どうか落ち付いて下さい……」
困惑するロレンフィオンにメイルティンが懇願するような声を出す。
「ああ、テレスフィオ。聞いて頂戴、ロレンフィオンはこの子の代わりにアタシにこの男の情婦になれと言うのよ!?」
「じ、情婦!?」
自分を指差し驚いているのは神官だ。
その様を見てオーリーは違和感を覚える。
暴れるのを止めたオーリーを抱え直し、テレスフィオは口を開いた。
「……どういう事です、ロレンフィオン陛下?」
「どうもこうも無い! 好色者の神官に高位貴族の娘を差し出せば聖女の件は上手く収まるという話だったろう?! だから我が国で最高位の女────王妃を差し出す事に決めたんだ! お前もメイルティンを説得しろ! テレスフィオ!」
「ちょっと冗談じゃ無いわよ! こんなおじさん! テレスフィオ、勿論止めてくれるわよね? あなたはアタシの味方でしょう?」
話が拗れているようだが、テレスフィオがここにいる事にロレンフィオン達が驚いていない。……やはりテレスフィオはロレンフィオンたちと繋がっていたのだ。オーリーの瞳に涙が浮かぶ。
だがこの場の雰囲気にそぐわない空気を持つ者が一人……
「好色者……」
低く呟きふるふると身体を震わせているのは神官だ。道中の二人の会話を思い出しオーリーは首を傾げる。
「聖女の件は……隣国の聖女様にキエル国にご訪問頂き、祈祷を授けて頂く事で折り合いがついたのでは? メイルティン王妃を再び聖女として認定されるのは不可能ですが、それならせめて国民の為に祈りを捧げて欲しいという話でしたが……」
「馬鹿を言うな! 聖女に対する神殿からの収入が無ければ、キエル国はもう立ち行かないんだぞ!」
「そ、そうよお! 聖女は必要よ! だからってアタシこんなおじさんに囲われるの嫌よ! ねえ助けてテレスフィオ!」
涙ながらに駆け寄ってくるメイルティンに嫌悪感が込み上げる。ここから退きたいのに……テレスフィオがガッシリとオーリーを掴んでいるものだから身動きがとれない。
「恐れながら……貴方方の選び取った結末は、王族として受け入れるべきかと……」
その言葉にオーリーはテレスフィオを振り仰いだ。
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