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4. 予期せぬ再会
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聖花祭────貴族だった頃は街でのお祭りなんて遠目で見ていただけだった。平民になってからも、そんな時間を取る暇は無いのだと自分に言い聞かせて来ていたから……
(初めてなのだわ……)
こんな風にゆっくりと、自由に時間を使えるのは。
爽やかな春風に吹かれながら、戦ぐ聖花────ホリアを眺める。色取り取りの花畑から色分けしているものまで、見渡す限りのホリアの花に夢中になって步いた。
人混みに逸れないように自然と繋がる手に驚きながらも、平民の距離感はこれくらいが普通なのだからと、オーリーは必死に自分に言い聞かせ、ギクシャクとお祭りを楽しんだ。
だから急にその手が離された時は驚いた。
「悪いな、お嬢ちゃん」
「えっ?」
意味も分からないまま強く突き飛ばされて、オーリーは林の入り口で背中を木に強かに打ち付けてゴホゴホと咽せてしまった。
「なあ、これでいいんだろ? 頼むからバレないように連れてってくれよ?」
「分かってる、早く行け」
「へへっ、毎度あり。じゃあな、お嬢ちゃん。世間知らずも程々にしろよ!」
オーリーが顔を上げてレオルの方を見れば、彼は走って街の方へと駆けて行くところだった。
何が何だか分からない。
そういえば花に夢中で、随分と遠くまで来てしまったようだ。でも何で急に? 何があったのかと首を巡らせれば記憶に眠る顔立ちの青年が目に留まり、オーリーははっと息を飲んだ。
「オリランダ、久しぶりだな」
その聞き馴染んだ声にオーリーの身体が強張る。
「ロレンフィオン……様? いえ! 失礼しました、ロレンフィオン陛下!」
オーリーは慌ててその場に額付き平伏した。
自分は今平民なのだ。国王陛下の名前を親しげに呼ぶなど、斬り捨てられても仕方がない。
「……ふう、平民に成り果てたとは言え、貴族の礼儀は覚えていたようで安心した。お前の噂話など聞く必要も無いと思っていたが、思いがけないところで役に立ってくれて良かった。さあ、今こそお前の贖罪の時だ。私の役に立て、オリランダ」
額付いているオーリーにはロレンフィオンの表情は見えない。ただ言葉の端々に悪意が見えるのだけは分かる。けれど贖罪? 自分は追放された事で既に罪を償っているのでは無いのか?
「ロレン、この子きっと混乱しているわ。取り敢えず来て貰えばいいのだから、事情は道すがらしてあげればいいんじゃない?」
この声はメイルティンだ。
「それもそうだな、時間も惜しい。いくぞオリランダ」
ぐいと引っ張られ無理矢理立たされる。
見渡せばロレンフィオンとメイルティンの他に数人の護衛が、逃がさないとばかりにオーリーを囲み、林の奥には馬と馬車が置かれている。
(何なの?)
訳もわからない状況に、オーリーは恐怖に身を震わせた。
(初めてなのだわ……)
こんな風にゆっくりと、自由に時間を使えるのは。
爽やかな春風に吹かれながら、戦ぐ聖花────ホリアを眺める。色取り取りの花畑から色分けしているものまで、見渡す限りのホリアの花に夢中になって步いた。
人混みに逸れないように自然と繋がる手に驚きながらも、平民の距離感はこれくらいが普通なのだからと、オーリーは必死に自分に言い聞かせ、ギクシャクとお祭りを楽しんだ。
だから急にその手が離された時は驚いた。
「悪いな、お嬢ちゃん」
「えっ?」
意味も分からないまま強く突き飛ばされて、オーリーは林の入り口で背中を木に強かに打ち付けてゴホゴホと咽せてしまった。
「なあ、これでいいんだろ? 頼むからバレないように連れてってくれよ?」
「分かってる、早く行け」
「へへっ、毎度あり。じゃあな、お嬢ちゃん。世間知らずも程々にしろよ!」
オーリーが顔を上げてレオルの方を見れば、彼は走って街の方へと駆けて行くところだった。
何が何だか分からない。
そういえば花に夢中で、随分と遠くまで来てしまったようだ。でも何で急に? 何があったのかと首を巡らせれば記憶に眠る顔立ちの青年が目に留まり、オーリーははっと息を飲んだ。
「オリランダ、久しぶりだな」
その聞き馴染んだ声にオーリーの身体が強張る。
「ロレンフィオン……様? いえ! 失礼しました、ロレンフィオン陛下!」
オーリーは慌ててその場に額付き平伏した。
自分は今平民なのだ。国王陛下の名前を親しげに呼ぶなど、斬り捨てられても仕方がない。
「……ふう、平民に成り果てたとは言え、貴族の礼儀は覚えていたようで安心した。お前の噂話など聞く必要も無いと思っていたが、思いがけないところで役に立ってくれて良かった。さあ、今こそお前の贖罪の時だ。私の役に立て、オリランダ」
額付いているオーリーにはロレンフィオンの表情は見えない。ただ言葉の端々に悪意が見えるのだけは分かる。けれど贖罪? 自分は追放された事で既に罪を償っているのでは無いのか?
「ロレン、この子きっと混乱しているわ。取り敢えず来て貰えばいいのだから、事情は道すがらしてあげればいいんじゃない?」
この声はメイルティンだ。
「それもそうだな、時間も惜しい。いくぞオリランダ」
ぐいと引っ張られ無理矢理立たされる。
見渡せばロレンフィオンとメイルティンの他に数人の護衛が、逃がさないとばかりにオーリーを囲み、林の奥には馬と馬車が置かれている。
(何なの?)
訳もわからない状況に、オーリーは恐怖に身を震わせた。
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