12 / 45
12. っはああああ!?
しおりを挟む「良かったじゃん、すぐにふっきれそうで」
その言葉に私はむすりと口元を引き結ぶ。
「……良くないよ、男性不信になった」
「それは、確かに良くはないけど……見る目が無かっんだからしょうがないんじゃない?」
「っはああああ!?」
駅に向かう道すがら、私が張り上げた声に振り返る人もチラホラ。河村君も目を丸くしている。が──
え? いや言う? 普通そんな事??
目を丸くしている河村君の方がおかしいよ!
「え、いや……見る目、無かったよね?」
「駄目押し?! ねえ、こう言う時は『そんな事無いよ、もっと良い出会いが~』っていう言葉を掛けてくれるものなんじゃないの!?」
「……三上さん盲目だから自分の感性で突っ走るの止めた方がいいと思う」
「えええー!?」
失恋した上に感性ダメ出しされるとは思わなかったんだけど……こういう時は労って貰えるもんだ、というのは私の認識が甘いからなのだろうか……?? いやいや、
「か、河村君は意地悪だと思うよ!」
びしりと指を突き付けて性格を非難させて頂きます。
「……まあ自覚はあるけど」
あるんかい!
てかなんで私はそんな人にダメ出しされてるんだろう!?
「まあでも、これからは俺が近くで教えてあげるから。何も心配いらないよ」
ん?
ぴたりと動きを止めて、いつものにこにこ顔に戻った河村君に発言の意図を問う。
「……教えるって何を?」
「変な男に引っかからないように、世話してあげるから心配しなくていいよ。乗りかかった船ってやつ」
「そ、そんな事は別に……」
頼んでない、けど……
目を泳がせつつも、思うところがあり、内心唸る。
とはいえ、だ。
もしかしたら有り難い話なのかも……しれない。
言いかけた言葉を飲み込む。
河村君はモテてるし、恋愛話の実体験や相談件数は他の追随を許さない程多いのでは?
ふむむ。
確かに暫く誰かと付き合うなんて怖くて出来ない。けど、これを理由に私が一生卑屈になる必要なんて無いのだ。だから……
「……ありがと」
先を見越して、お願いしておこう。
うん私、現金だなあ……なんて思いつつ。
まあいいか。
好きな人が出来るなんて、きっと当分無い。その頃には河村君とこんな距離感で話す事も無いでしょう。
どうしても悩んだり迷ったりしたら、その時だけ相談させてもらおう。
今はそんな存在が出来たってだけで心強い。
チラリと河村君を見ると、意外な事に少し顔を赤らめたりしているので、もしかして勢いで言った科白に後悔してるのかなー? なんて首を傾げる。
心配しなくてもこれを機に依存、なんてしませんよ?
「どういたしまして……じゃあ……」
けれどそその言葉と共にするりとお互いの掌が合わさり、今度は私の方が目を丸くする。
「いい男ってのがどういう奴か教えてあげる」
「……っ」
口を開けたまま固まってしまったのは許して欲しい。
だって声も出なかった。
だってだって河村君が言うと何と言うか……様になってしまって突っ込みどころも無かったのだ。
ぱくぱくと口を開閉してなんとか呼吸を整えていると、手はそのままに、河村君と私はそのまま駅まで歩き出したのでした。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説




忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる