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16. ※ 結芽
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私の気持ちをポイと放り、自分の恋愛成就を熱心に語る男への恋心なんて、泡沫と化した。一瞬で。
けれど、その代わり私の恋愛にも協力すると告げられて。しかもそれが以前他の女に掻っ攫われた相手と言われては。
私が前のめりになったのは言うまでもない。
満を辞して恋心を告げた舌の根も乾かぬ内に、私は別の未来の相手に思いを馳せていた。
まあ多少、現金かなとは思うけれど。
そうして私、観月 結芽はやっと、彼──廉堂 翔悟という人を客観的に見れるようになったのだ。
そして知った。
(めちゃくちゃ仁科さん見てる)
──いや確かに研修担当だけどね。
それにしたって見過ぎでしょう。
そんな廉堂君の眼差しをどう勘違いしたのか、仁科さんは熱血指導者と化し、留まるところを知らない。変にスペックの高い廉堂君もついていけちゃうものだから、ある意味二人の世界。
そこに割って入っていった私、凄かったなあ。
……あの頃は盲目で良かった。正直どんな目で見られていたかなんて、今更知りたくない。
それにしても仁科さんは廉堂君の熱っぽい眼差しに全然気付いていない。鈍感さんか。
(あれ、でも……?)
時折切なそうな目で廉堂君を追いかけている。
(あれあれあれ?)
前からこうじゃなかったと思うけど、いつの間にやら仁科さんも廉堂君に陥落していたみたい。やった!
これで私の恋愛成就も目前だ。
そんな私の心情を裏切るが如く、仁科さんはぐっと唇を噛み締めて廉堂君から顔を背けてしまった。
(え、何で……?)
両思いなのに。
言わないの?
気持ち閉じ込めちゃうの?
(ちょっと待ってよ)
自分の気持ちを告げるのは大事な事でしょう?
何気にしてるの、年齢? いらないから、その気遣い。鈍感すぎる仁科さんに焦れて、廉堂君なんて既に執着めいた眼差しになってるから。
それに言わなかったら何も伝わらないからね。知らないままに別の相手と幸せになって、自分だけ辛いのは悲しくない?
……仁科さん前そうだったじゃん。新庄に振られた時、無理して笑ってたじゃん。
そんな仁科さんの顔がまともに見れなくて、暫くして「普通」に戻ってたけど。絶対あいつに恨み言の一つも言わなかったでしょう。
新庄のヤロウもその相手も、幸せそうに二人の世界でのぼせ上がってたから忌々しくて仕方なかったのに。
そもそも新庄がいなくなって、仁科さんにアプローチしたかった男性は少なくない。ただちょっと近寄り難い、高嶺の花だから声を掛けられる強者がいなかっただけだ。……ある意味新庄は勇者だったのだ。
そんな風に思うくらい、私は仁科さんを慕っていたんだけど。仁科さんが言ってくれなきゃ、援護射撃もできないじゃん。
(仁科さんに好きって言わせないと!)
……でもどうやって?
私はハタと我に返った。
『あの強かヤロウは仁科さんの事が好きですから、遠慮せず飛び込んで下さい』
……うん、違うね。他人の気持ちを代弁するのは違う。
あれ、協力って何だ。
どうすればいいんだ?
ここにきて私は難問にぶち当たっている事に気が付いた。他人の恋愛の応援なんてした事がない。ましてや仁科さんから相談をされた訳でもないのだ。完全な自己都合の打算でしかない。どう切り出すものか。
うむむ。
それでも私は出来る限りの事をした。頑張って仁科さんのライバルを気取り、足掻いてみた訳だけど……どうだろう、様になってたかな?
結果として二人は公然の婚約者になった訳だし、満点だったよね。これで私の恋愛運も上向いたに違いない。私の結婚も、もう目前かな。
けれど、その代わり私の恋愛にも協力すると告げられて。しかもそれが以前他の女に掻っ攫われた相手と言われては。
私が前のめりになったのは言うまでもない。
満を辞して恋心を告げた舌の根も乾かぬ内に、私は別の未来の相手に思いを馳せていた。
まあ多少、現金かなとは思うけれど。
そうして私、観月 結芽はやっと、彼──廉堂 翔悟という人を客観的に見れるようになったのだ。
そして知った。
(めちゃくちゃ仁科さん見てる)
──いや確かに研修担当だけどね。
それにしたって見過ぎでしょう。
そんな廉堂君の眼差しをどう勘違いしたのか、仁科さんは熱血指導者と化し、留まるところを知らない。変にスペックの高い廉堂君もついていけちゃうものだから、ある意味二人の世界。
そこに割って入っていった私、凄かったなあ。
……あの頃は盲目で良かった。正直どんな目で見られていたかなんて、今更知りたくない。
それにしても仁科さんは廉堂君の熱っぽい眼差しに全然気付いていない。鈍感さんか。
(あれ、でも……?)
時折切なそうな目で廉堂君を追いかけている。
(あれあれあれ?)
前からこうじゃなかったと思うけど、いつの間にやら仁科さんも廉堂君に陥落していたみたい。やった!
これで私の恋愛成就も目前だ。
そんな私の心情を裏切るが如く、仁科さんはぐっと唇を噛み締めて廉堂君から顔を背けてしまった。
(え、何で……?)
両思いなのに。
言わないの?
気持ち閉じ込めちゃうの?
(ちょっと待ってよ)
自分の気持ちを告げるのは大事な事でしょう?
何気にしてるの、年齢? いらないから、その気遣い。鈍感すぎる仁科さんに焦れて、廉堂君なんて既に執着めいた眼差しになってるから。
それに言わなかったら何も伝わらないからね。知らないままに別の相手と幸せになって、自分だけ辛いのは悲しくない?
……仁科さん前そうだったじゃん。新庄に振られた時、無理して笑ってたじゃん。
そんな仁科さんの顔がまともに見れなくて、暫くして「普通」に戻ってたけど。絶対あいつに恨み言の一つも言わなかったでしょう。
新庄のヤロウもその相手も、幸せそうに二人の世界でのぼせ上がってたから忌々しくて仕方なかったのに。
そもそも新庄がいなくなって、仁科さんにアプローチしたかった男性は少なくない。ただちょっと近寄り難い、高嶺の花だから声を掛けられる強者がいなかっただけだ。……ある意味新庄は勇者だったのだ。
そんな風に思うくらい、私は仁科さんを慕っていたんだけど。仁科さんが言ってくれなきゃ、援護射撃もできないじゃん。
(仁科さんに好きって言わせないと!)
……でもどうやって?
私はハタと我に返った。
『あの強かヤロウは仁科さんの事が好きですから、遠慮せず飛び込んで下さい』
……うん、違うね。他人の気持ちを代弁するのは違う。
あれ、協力って何だ。
どうすればいいんだ?
ここにきて私は難問にぶち当たっている事に気が付いた。他人の恋愛の応援なんてした事がない。ましてや仁科さんから相談をされた訳でもないのだ。完全な自己都合の打算でしかない。どう切り出すものか。
うむむ。
それでも私は出来る限りの事をした。頑張って仁科さんのライバルを気取り、足掻いてみた訳だけど……どうだろう、様になってたかな?
結果として二人は公然の婚約者になった訳だし、満点だったよね。これで私の恋愛運も上向いたに違いない。私の結婚も、もう目前かな。
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