【完結】年下彼氏の結婚指導

藍生蕗

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06. ※ 翔悟①

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 華子は必死に翔悟を遠ざけようと、駅まで送ると言う申し出すら躱そうとしたていが、「……駅の場所分かるの?」という一言に撃沈していた。
 翔悟は何だかんだと理由をつけて、彼女の最寄駅までついていく。

 その間の華子の挙動はまあまあ面白かった。
 知り合いに見咎められたらどうしようかと、彼女の視線は不審者のごとく忙しない。
 そんな華子の様子が楽しくて、翔悟はつい微笑ましい気持ちになる。それを見て華子が悔しそうな顔をするのがまた堪らない。
 家までついていくと口にすれば必死に止めて、お礼を言いそそくさと立ち去る華子の背中に手を振って、翔悟は小さく溜息を吐いた。
(──良かった)

 無理矢理一歩を踏み出して、彼女の心に自身を捻じ込んだ。
 研修はあと一週間。けれど翔悟は最終日では遅いと思っていた。
 もしその日に同じように事を運んだところで、翌日からは接点が無くなる。そのまま避けられ続け、無かった事にでもされたら、折角結んだ関係も終いになる。
(冗談じゃない)
 やっと会えたのに。
 千載一遇のチャンスを得られたのに。

 雑踏に紛れた華子の背中をじっと見据えてから、翔悟は踵を返した。
 そういえば自分も家に呼び出されていたんだったと思い返す。
 弟の愚痴だろうか。仕事の話だろうか。
(まさか見合いなんて言わないだろうな)
 まあそんな話があれば、紹介したい人がいると言えばいいだけだが。
 その時の親の反応を思い浮かべ、翔悟は口元をにやけさせた。

(ねむ……)
 彼女がいつ逃げ出すか分からなくて怖くてずっと抱いてたし、眠れなかった。隣で爆睡している華子の寝顔に安堵と小憎らしさが込み上げてたなんて、きっと彼女は知らないだろう。
(……本当の最初の出会いなんて、どうせ覚えてないだろうけどさ……)
 だから、これくらいインパクトがあるくらいで丁度いい。

 ぐーっと背を伸ばす。
 まだ朝早い。
 実家に行くのは一眠りしてからでいいだろう。
 翔悟は再び改札を潜り、ホームで戻りの電車を待った。
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