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番外編 クライド
09.
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そういえば。
アリサは一人呟きながら回廊を進む。
先程のフィリアとのやりとりを反芻し、意味の分からない部分に焦点を充て解読を進める。勤勉なのはアリサの長所である。
(兄王子たちも納得していたけれど、それ以上に喜んでいた気がするのよね、あの誓約書を見せたら何故か感謝もされたし……? あれって──)
幼少期に身につけた自衛で、アリサは自分へ向けられる感情に疎い。それは悪意をまとめて弾き返す、鉄壁の防御ではあるのだが……
その為にアリサは好意どころか厚意にも疎くなってしまった。そんな彼女を義姉たちは不憫に思い、お茶の席でまともな感覚を取り戻させようと画策している。
あとはクライドが彼女の壁を壊してくれればいいのだけれど、というのが彼女たちの目下の願いなのだ。
……本人の預かり知らぬところではあるが。
お茶会のあったサロンを後にして、アリサは一人物思いに耽りながら歩いていた。だから向かいから来る人物に気付かないまま。後ほど迂闊な自分を叱責する事になる。
はたと気付けばすぐ目の前に、先程話題に出た姉ナナミが夫に従い歩いていた。
(うっわ、最悪)
アリサと姉は不仲である。
幼い頃は虐めてくる姉と虐げられる妹。であったが、今は頭が弱くて嫌い──という理由による。姉のマウントはいまいちでイラッとするのだ。
「やあアリサ嬢、こんにちは」
そう微笑むアドルフ・リビーヨ侯爵に、アリサは慌てて淑女の礼を取る。
「お久しぶりです侯爵閣下、夫人」
そう口にすると何故か姉の眦がキリリと上がった。
気付かない振りをしてアリサは侯爵に向き直る。
「今日は夫婦で登城ですか?」
「ん? ああ、陛下に謁見の用があってね。ナナミが君と約束しているから一緒に行くと聞いたんだが……」
そう視線を妻に向けると、ナナミは勢いよく頷いた。
「勿論そうよ! ね、アリサ。あなた王族の婚約者なのだから部屋が与えられているのよね? 私そこが見てみたいわ、是非案内して頂戴!」
そう言って自分の腕にしがみつく姉にアリサは困惑する。……勿論そんな約束はしていないが、いつもの姉の勝手だろう。情報源は母だろうか……
(本当にもう、余計な事を……)
姉一人であるなら腕を振り解いて、なんなら足げにしてやるところだが、侯爵も一緒となると流石のアリサも無理である。
(家名に傷がつくのは良くないわ)
ミレイ家なんてどうでも良いが、領民に、まだ未成年の弟を思えば躊躇いがある。それに今自分はクライドの婚約者なのだ。些細だろうとクライドの瑕疵に繋がる可能性がある。部下歴の長いアリサにはその失態は見過ごせない。
アリサは小さく溜息を吐いた。
面倒ではあるが、丁寧に断ったところでこの人は納得しない。
アリサは諦めて、与えられた部屋へと向かった。
◇
「……ふうん、流石に王族の婚約者となると、結構いい部屋を用意されるのね」
確かにアリサも思った事だ。
他の王族の婚約者たちと同等、というのが申し訳ない。
(どうしてかしらね、騙してるみたいに思うのは)
しかもその罪悪感は日に日に強まるのだから困ってしまう。だからアリサに出来るのはクライドに忠実にいる事なのだけれど……それもクライドの未来の恋人を考えると、虚しく感じるようになってしまった。美人局もやる気がなくなっている。そもそもアリサが用意せずとも、彼の周りにはいくらでも綺麗な令嬢たちが寄ってくるのだから。
そんなアリサの心情を他所に。
ナナミは勝手知ったる風に部屋に入り、ソファにどかりと腰を落とした。驚く部屋付きのメイドに謝罪をし、お茶を淹れるよう言って下がらせた。
(はあ、全く。早く飽きて帰ってくれないかしら)
アリサは再び溜息を吐いた。
「お姉様、王族の婚約者ですから退城の際はクライド殿下に挨拶に行かなければなりません。それに殿下の予定は分刻みに管理されているのです。……長居は困りますわ」
(ほんっと、あとはクライド殿下に挨拶をして帰るだけだったのに。タイミングが悪すぎる)
婚約者の動向まで把握している彼は、予定に細かい。予定していた時間を過ぎ挨拶に行けば、何やらチクチクと勘繰られるので面倒なのだ。遅すぎれば出向かれる事だってあった。ちょっとフィリアたちとの話が長くなっただけなのに……
「……へえ」
今の話の何に興味を引かれたのか、ナナミが眉を上げた。
「……ねえ。思ったんだけど、やっぱりあんたにこの部屋は合わないわ。分不相応って感じ。ね、私がクライド殿下と結婚する。だってあんたには勿体無いもの」
「……は?」
ソファに肘を付いて満足気に笑う姉の言葉が理解出来ないのだが……誰か翻訳してくれないだろうか。
「クライド殿下って初心なのね。あんたなんかでいいなんて。だから私がちょっと誘惑すれば簡単に靡くと思わない?」
思わない。
ぱちんとウインクを飛ばす姉に吐き気を催しているのは自分だけだろうか。
「あー。でも、まずは恋人からよねえ。そういう意味じゃ、あんたは良くやったわ。私と殿下の橋渡し役を、ね。彼、案外私の好みだし? 嬉しいわ」
ふふふ、と勝手にここをお花畑にする姉に待ったをかけたい。ちょっと待った片付けろ。いやいや本気で何を言い出しているのかこの馬鹿女は……? アリサは目眩を覚える自分を叱咤し腹に力を込めた。
「お姉様……お姉様はリビーヨ侯爵夫人でしょう? この国で重婚は認められておりませんよ」
硬い口調で言葉を紡ぐ自分に、ナナミは呆れたように首を横に振った。
「何を言ってるのよ、それくらい知ってるわ。あの人とはちゃんと別れる。あのね、私はちゃんと分かってのよ? あんたがアドルフに惹かれていた事くらい。だからあの人はあんたにあげるわ。ね? これで誰も寂しくない、いい組み合わせでしょう?」
「……──」
誰かこの馬鹿を何とかしてくれ。
アリサは天を仰ぎそうになる衝動を必死に堪えた。
「……お姉様、クライド殿下の周りにはお姉様より美しい令嬢が沢山おります。それこそ未婚で年若い方々が」
「何ですって?」
言葉にすると僅かに胸が軋む。頭を過ぎる綺麗な花たちを頭から振り払い、アリサは姉に向き直った。
「何が──と言われましても、そのままですが? 侯爵夫人であるお姉様と殿下が婚姻を望む理由は何です? 美しいから? 馬鹿も休み休み言わないで下さい。萎れてますけど? 先程もいいましたが、殿下の婚約者になりたいと列をなす令嬢を一から並べて美しさで序列をつけたらお姉様は最下位です。普通は恥ずかしくて列に並ぶ勇気もありませんよ。寝言は寝て言って下さいますか? そもそも殿下は馬鹿がお嫌いです。お姉様に惹かれる筈がありません」
一息に言い切ってやっと人心地つく。
ついでに自分の鬱憤も吐き出してしまったが、まあいいだろう。姉だし。
まあ馬鹿に対して、お前は馬鹿かと言ったところで理解しないだろうけど。
しかしアリサとて流石に何も言わずにはいられなかった。
(どれだけ自分に都合のいい想像だけ思い描いて生きているのかしら?)
なまじっか実家で彼女の希望はほぼ叶えられてきたばかりに、こんなところで途方もない馬鹿な発言をしだしているのだ。恐らく侯爵も惚れた弱みとでも言うか、姉に頭が上がらないのだろう。
アリサは本気で実家と縁を切りたくなった。
しかし怒り出すかと思っていたナナミは癇癪を起こす事もなく、スルリとアリサに近寄った。
そして身構えるアリサに、躊躇なく右手を振り上げる。
流石に姉のこんな行動にも慣れているアリサは右手を躱すが、ナナミの指先がアリサの眼鏡に引っ掛かった。
カシャン
ぼやけた視界にアリサが戸惑っていると、左手に握り込んでいたハンカチが口元に押し当てられた。
「むぐ!」
ナナミの香水と、何かの薬品の臭いが混じった匂いに顔を顰めれば、やがて身体から力が抜けてきた。
(……しまった!)
「全く、避けるなんて生意気な。子供の頃に殴り過ぎたかしらね。でもまあいいわ。さっきのあんたの様子じゃ、挨拶に行かないとクライド殿下がこちらに来るんじゃないの? 私がしっかりとおもてなしをしておいてあげる。ふふ、大丈夫。ちゃんと責任を取ってもらえるようにお薬を用意してあるから……」
得意げに小瓶を揺らすナナミに言い返す声も思考も追いつかないまに。アリサは目を閉じ暗闇に沈んだ。
そして目覚めた時には全てが終わっていた。
アリサは一人呟きながら回廊を進む。
先程のフィリアとのやりとりを反芻し、意味の分からない部分に焦点を充て解読を進める。勤勉なのはアリサの長所である。
(兄王子たちも納得していたけれど、それ以上に喜んでいた気がするのよね、あの誓約書を見せたら何故か感謝もされたし……? あれって──)
幼少期に身につけた自衛で、アリサは自分へ向けられる感情に疎い。それは悪意をまとめて弾き返す、鉄壁の防御ではあるのだが……
その為にアリサは好意どころか厚意にも疎くなってしまった。そんな彼女を義姉たちは不憫に思い、お茶の席でまともな感覚を取り戻させようと画策している。
あとはクライドが彼女の壁を壊してくれればいいのだけれど、というのが彼女たちの目下の願いなのだ。
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お茶会のあったサロンを後にして、アリサは一人物思いに耽りながら歩いていた。だから向かいから来る人物に気付かないまま。後ほど迂闊な自分を叱責する事になる。
はたと気付けばすぐ目の前に、先程話題に出た姉ナナミが夫に従い歩いていた。
(うっわ、最悪)
アリサと姉は不仲である。
幼い頃は虐めてくる姉と虐げられる妹。であったが、今は頭が弱くて嫌い──という理由による。姉のマウントはいまいちでイラッとするのだ。
「やあアリサ嬢、こんにちは」
そう微笑むアドルフ・リビーヨ侯爵に、アリサは慌てて淑女の礼を取る。
「お久しぶりです侯爵閣下、夫人」
そう口にすると何故か姉の眦がキリリと上がった。
気付かない振りをしてアリサは侯爵に向き直る。
「今日は夫婦で登城ですか?」
「ん? ああ、陛下に謁見の用があってね。ナナミが君と約束しているから一緒に行くと聞いたんだが……」
そう視線を妻に向けると、ナナミは勢いよく頷いた。
「勿論そうよ! ね、アリサ。あなた王族の婚約者なのだから部屋が与えられているのよね? 私そこが見てみたいわ、是非案内して頂戴!」
そう言って自分の腕にしがみつく姉にアリサは困惑する。……勿論そんな約束はしていないが、いつもの姉の勝手だろう。情報源は母だろうか……
(本当にもう、余計な事を……)
姉一人であるなら腕を振り解いて、なんなら足げにしてやるところだが、侯爵も一緒となると流石のアリサも無理である。
(家名に傷がつくのは良くないわ)
ミレイ家なんてどうでも良いが、領民に、まだ未成年の弟を思えば躊躇いがある。それに今自分はクライドの婚約者なのだ。些細だろうとクライドの瑕疵に繋がる可能性がある。部下歴の長いアリサにはその失態は見過ごせない。
アリサは小さく溜息を吐いた。
面倒ではあるが、丁寧に断ったところでこの人は納得しない。
アリサは諦めて、与えられた部屋へと向かった。
◇
「……ふうん、流石に王族の婚約者となると、結構いい部屋を用意されるのね」
確かにアリサも思った事だ。
他の王族の婚約者たちと同等、というのが申し訳ない。
(どうしてかしらね、騙してるみたいに思うのは)
しかもその罪悪感は日に日に強まるのだから困ってしまう。だからアリサに出来るのはクライドに忠実にいる事なのだけれど……それもクライドの未来の恋人を考えると、虚しく感じるようになってしまった。美人局もやる気がなくなっている。そもそもアリサが用意せずとも、彼の周りにはいくらでも綺麗な令嬢たちが寄ってくるのだから。
そんなアリサの心情を他所に。
ナナミは勝手知ったる風に部屋に入り、ソファにどかりと腰を落とした。驚く部屋付きのメイドに謝罪をし、お茶を淹れるよう言って下がらせた。
(はあ、全く。早く飽きて帰ってくれないかしら)
アリサは再び溜息を吐いた。
「お姉様、王族の婚約者ですから退城の際はクライド殿下に挨拶に行かなければなりません。それに殿下の予定は分刻みに管理されているのです。……長居は困りますわ」
(ほんっと、あとはクライド殿下に挨拶をして帰るだけだったのに。タイミングが悪すぎる)
婚約者の動向まで把握している彼は、予定に細かい。予定していた時間を過ぎ挨拶に行けば、何やらチクチクと勘繰られるので面倒なのだ。遅すぎれば出向かれる事だってあった。ちょっとフィリアたちとの話が長くなっただけなのに……
「……へえ」
今の話の何に興味を引かれたのか、ナナミが眉を上げた。
「……ねえ。思ったんだけど、やっぱりあんたにこの部屋は合わないわ。分不相応って感じ。ね、私がクライド殿下と結婚する。だってあんたには勿体無いもの」
「……は?」
ソファに肘を付いて満足気に笑う姉の言葉が理解出来ないのだが……誰か翻訳してくれないだろうか。
「クライド殿下って初心なのね。あんたなんかでいいなんて。だから私がちょっと誘惑すれば簡単に靡くと思わない?」
思わない。
ぱちんとウインクを飛ばす姉に吐き気を催しているのは自分だけだろうか。
「あー。でも、まずは恋人からよねえ。そういう意味じゃ、あんたは良くやったわ。私と殿下の橋渡し役を、ね。彼、案外私の好みだし? 嬉しいわ」
ふふふ、と勝手にここをお花畑にする姉に待ったをかけたい。ちょっと待った片付けろ。いやいや本気で何を言い出しているのかこの馬鹿女は……? アリサは目眩を覚える自分を叱咤し腹に力を込めた。
「お姉様……お姉様はリビーヨ侯爵夫人でしょう? この国で重婚は認められておりませんよ」
硬い口調で言葉を紡ぐ自分に、ナナミは呆れたように首を横に振った。
「何を言ってるのよ、それくらい知ってるわ。あの人とはちゃんと別れる。あのね、私はちゃんと分かってのよ? あんたがアドルフに惹かれていた事くらい。だからあの人はあんたにあげるわ。ね? これで誰も寂しくない、いい組み合わせでしょう?」
「……──」
誰かこの馬鹿を何とかしてくれ。
アリサは天を仰ぎそうになる衝動を必死に堪えた。
「……お姉様、クライド殿下の周りにはお姉様より美しい令嬢が沢山おります。それこそ未婚で年若い方々が」
「何ですって?」
言葉にすると僅かに胸が軋む。頭を過ぎる綺麗な花たちを頭から振り払い、アリサは姉に向き直った。
「何が──と言われましても、そのままですが? 侯爵夫人であるお姉様と殿下が婚姻を望む理由は何です? 美しいから? 馬鹿も休み休み言わないで下さい。萎れてますけど? 先程もいいましたが、殿下の婚約者になりたいと列をなす令嬢を一から並べて美しさで序列をつけたらお姉様は最下位です。普通は恥ずかしくて列に並ぶ勇気もありませんよ。寝言は寝て言って下さいますか? そもそも殿下は馬鹿がお嫌いです。お姉様に惹かれる筈がありません」
一息に言い切ってやっと人心地つく。
ついでに自分の鬱憤も吐き出してしまったが、まあいいだろう。姉だし。
まあ馬鹿に対して、お前は馬鹿かと言ったところで理解しないだろうけど。
しかしアリサとて流石に何も言わずにはいられなかった。
(どれだけ自分に都合のいい想像だけ思い描いて生きているのかしら?)
なまじっか実家で彼女の希望はほぼ叶えられてきたばかりに、こんなところで途方もない馬鹿な発言をしだしているのだ。恐らく侯爵も惚れた弱みとでも言うか、姉に頭が上がらないのだろう。
アリサは本気で実家と縁を切りたくなった。
しかし怒り出すかと思っていたナナミは癇癪を起こす事もなく、スルリとアリサに近寄った。
そして身構えるアリサに、躊躇なく右手を振り上げる。
流石に姉のこんな行動にも慣れているアリサは右手を躱すが、ナナミの指先がアリサの眼鏡に引っ掛かった。
カシャン
ぼやけた視界にアリサが戸惑っていると、左手に握り込んでいたハンカチが口元に押し当てられた。
「むぐ!」
ナナミの香水と、何かの薬品の臭いが混じった匂いに顔を顰めれば、やがて身体から力が抜けてきた。
(……しまった!)
「全く、避けるなんて生意気な。子供の頃に殴り過ぎたかしらね。でもまあいいわ。さっきのあんたの様子じゃ、挨拶に行かないとクライド殿下がこちらに来るんじゃないの? 私がしっかりとおもてなしをしておいてあげる。ふふ、大丈夫。ちゃんと責任を取ってもらえるようにお薬を用意してあるから……」
得意げに小瓶を揺らすナナミに言い返す声も思考も追いつかないまに。アリサは目を閉じ暗闇に沈んだ。
そして目覚めた時には全てが終わっていた。
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