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◆◇第十二章 エクス・ヴィトとアーシュラの会話◇◆

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「ねぇ、ちょっと」
「ああ、ラーケンのところのお嬢さんじゃないですか」
「ねぇ、ちょっと、話があるんだけど」
「かわいいお嬢さんのお頼みなら断れないですがね、今はちょっと、手が放せないんですけど」
「もうっ、クレアのことよ。もしかして、すっごく大切なことなんだから」
「姫さまの?」
「そう、それと、殿下の」
「ちょっと、痛いってば」
「こちらにいらっしゃい。大きな声ではできない話でしょう?」
「うん、あのさ」
「はい?」
「殿下って、王家の血を引いてないって。……本当?」
「……何を、馬鹿なことを」
「本当のこと言ってよ。嘘はいやだからね」
「どこからそんなことを思いついたんですか? ……ああ、あの暴動の時の噂ですね」
「それもあるけどさ、どうも、クレアがそう思い込んでるみたい」
「どういうことですか」
「ラグラールに行く前くらいから、ちょっとおかしいって思ってたのよ。そう、あの子、ものすごくブラコンじゃない?」
「……まぁね」
「殿下は殿下でシスコンだしさ。あたし、あんなに仲のいい兄妹ってピンと来なくてさ、まぁ、仲善きことは美しき哉、くらいにしか思ってなかったけどさ」
「言っておきますけどね、お嬢さん。我が主君セラフィス・ナディア・シュザレーン殿下は、紛れもなく現国王陛下と、亡き妃殿下のお子あられます。いかな噂が飛び交おうと、その真実は揺るぎません。このエクス・ヴィトが、命を懸けてでもそれを証明します」
「……信じて、いいのね?」
「当たり前です。この期に及んで、嘘なんか言うはずがありません」
「で、もちろん、クレアも今の王様と死んだお妃様の子供よね?」
「ええ、姫さまがまだ小さいときにお亡くなりになりましたけれどね」
「つまり、殿下とクレアは、お父さんもお母さんも一緒の、兄妹よね?」
「そうです」
「……あのさ」
「……、……」
「クレア、殿下が好きなのよ」
「……ええ」
「知ってんの?」
「知りたくありませんでしたけれどね」
「もちろん、兄として尊敬してるとか、それ以上によ?」
「わかってますよ」
「あのさ、これって、この国では許されんの?」
「何がですか」
「つまり、兄妹で恋愛するようなこと」
「そんなわけないでしょう」
「クレア、まずいんじゃないの?」
「……姫さまだけの問題で、済めばいいんですけどね」
「どういう意味よ」
「深く突っ込まないでください」
「あのさ、まさかと思うけど」
「しっ」
「わわわ、何すんのよっ」
「皆まで言う必要はありません。ご本人に直接聞いたわけじゃありませんし、実際、そうでなければいいと、私自身が願っているのですから」
「……あたし、どうしたらいいんだろう」
「部外者がどうこうできることではありません。最悪の事態にならないように、祈るだけです」
「最悪の事態って……?」
「……、……」
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