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第四章
しおりを挟む 多数の飲食店が入ったイクイアビル五十六階のゴミ集積所から、向かいのビルを覗き込む。
ぼくたちを追撃したのとは異なる形のドローンが巡回し、消防車と警察車両が何台も停まっている。
昨日までぼくたちのキャンプがあったビルの中腹は爆発で窓がすべて吹き飛び、火災の跡が壁を焦がしていた。雨はあがったけれど、濃い霧が立ち込める。
『リオ、視界共有して』
サチの声がバイザーから響いて、共有要求。許可する。アキラやネムとも共有。キャンプの惨状を伝える。ぼくは単独で斥候になる。ドローンはぼくに気づかない。
「何があったんでしょうか……」とぼくがつぶやく。
『またニュースやってる、ANP通信、映像出てるよ』
バイザーでブロードキャストチャンネルからANPを選ぶ。視界の隅にニュース映像が流れる。
少し前の時間、黒煙をあげるビルに、複数台の軍用装甲車から十字砲火が浴びせられる。
「ゲリラどうしの紛争と報道されています」
『死者十八人、重軽傷十四人、残りはどこ?』
「近所の人に聞いてみますか?」
『余計なことしないで、監視を続けて』
* * *
明け方近くまで女医に奉仕したあと、ユリアとエレナをハルトの側に置いて、ウェンディの診療所を出た。キャンプに戻る途中で、サチが報道に気づいた。
リバーサイドステートビルというのが、ぼくたちのキャンプがあった高層ビルで、最初の報道では事故かテロで五十階付近が爆発炎上したと流れていた。
ぼくたちはキャンプへ戻らず、向かいのイクイアビルにゴミ集積所があったことを思い出して、ぼくが単独で偵察に来た。いざとなったら姿を消せばいいと思っていたけれど、イクイアビルの五十階付近は飲食店だらけで、すんなりゴミ集積所まで侵入できた。
集積所は収集車両が停まるために壁が解放されていて、うず高く積まれた不燃ごみの隙間から向かいのビルを観察する。バイザーでズームすると、制服を来た警官たちと消防士が、かつてロビーがあった空間で検証を行っているのが、濃霧の隙間にみえる。
キャンプには六十人ちかい自由民がヒッピーみたいな暮らしをしていたけれど、報道の死傷者は三十人前後だから、もう半分が行方不明だ。
「動くな」
背中に銃口を突きつけられる。ぼくは両手をあげる。なぜ見つかった?
「ゆっくりこっちを向け」と言われて、両手をあげたまま振り返る。巨漢のベツが大型拳銃を構える。拳銃をくるりと回して、グリップをぼくに差し出す。人差し指を唇に当てる。
「丸腰でこんなところウロウロするんじゃねーよ、これ持ってついて来い」
ぼくたちを追撃したのとは異なる形のドローンが巡回し、消防車と警察車両が何台も停まっている。
昨日までぼくたちのキャンプがあったビルの中腹は爆発で窓がすべて吹き飛び、火災の跡が壁を焦がしていた。雨はあがったけれど、濃い霧が立ち込める。
『リオ、視界共有して』
サチの声がバイザーから響いて、共有要求。許可する。アキラやネムとも共有。キャンプの惨状を伝える。ぼくは単独で斥候になる。ドローンはぼくに気づかない。
「何があったんでしょうか……」とぼくがつぶやく。
『またニュースやってる、ANP通信、映像出てるよ』
バイザーでブロードキャストチャンネルからANPを選ぶ。視界の隅にニュース映像が流れる。
少し前の時間、黒煙をあげるビルに、複数台の軍用装甲車から十字砲火が浴びせられる。
「ゲリラどうしの紛争と報道されています」
『死者十八人、重軽傷十四人、残りはどこ?』
「近所の人に聞いてみますか?」
『余計なことしないで、監視を続けて』
* * *
明け方近くまで女医に奉仕したあと、ユリアとエレナをハルトの側に置いて、ウェンディの診療所を出た。キャンプに戻る途中で、サチが報道に気づいた。
リバーサイドステートビルというのが、ぼくたちのキャンプがあった高層ビルで、最初の報道では事故かテロで五十階付近が爆発炎上したと流れていた。
ぼくたちはキャンプへ戻らず、向かいのイクイアビルにゴミ集積所があったことを思い出して、ぼくが単独で偵察に来た。いざとなったら姿を消せばいいと思っていたけれど、イクイアビルの五十階付近は飲食店だらけで、すんなりゴミ集積所まで侵入できた。
集積所は収集車両が停まるために壁が解放されていて、うず高く積まれた不燃ごみの隙間から向かいのビルを観察する。バイザーでズームすると、制服を来た警官たちと消防士が、かつてロビーがあった空間で検証を行っているのが、濃霧の隙間にみえる。
キャンプには六十人ちかい自由民がヒッピーみたいな暮らしをしていたけれど、報道の死傷者は三十人前後だから、もう半分が行方不明だ。
「動くな」
背中に銃口を突きつけられる。ぼくは両手をあげる。なぜ見つかった?
「ゆっくりこっちを向け」と言われて、両手をあげたまま振り返る。巨漢のベツが大型拳銃を構える。拳銃をくるりと回して、グリップをぼくに差し出す。人差し指を唇に当てる。
「丸腰でこんなところウロウロするんじゃねーよ、これ持ってついて来い」
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