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第二十一章
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ああ、あ、と小鳩は叫んだ。
裸の小鳩は、やはり裸の昂志の腰に座り込んでいる。濡れた小鳩の秘所はぱくりを口を開け、漲った昂志の欲望をくわえ込んでいる。小鳩は腰を上下させ、するとずちゅ、ぐちゅと音があがって、淫らな気分をますます昂揚させた。
「あぁ、……んあ、あ……っ……!」
「ん、っ……」
ふたりは、深く混じりあっている。小鳩の体は昂志の男の徴を深くまで呑み込んで、それが体の奥の欲望の源を刺激する快楽を、味わっている。
「ああ、お兄ちゃん、お兄ちゃん……」
「小鳩……」
ふたりは互いの名を呼び、それに煽られるように昂志が大きく腰を突き上げた。小鳩は激しく背中をしならせ、同時に体内に放たれた熱い飛沫を感じ取る。
「はぁ、は……、あ……っ……」
ふたりの呼気は熱く混じりあい、それは再びのセックスをいざなった。昂志は腹筋を使って起きあがると、繋がったまま小鳩の体を押し倒す。そして放ったものをそのままに、ずくずくと腰を使って突き上げる。
「や、ぁ……、も、お兄ち、……ゃん……っ……」
「おまえだって、まだ足りないくせに」
ふたりの繋がったところからは、艶めいた精液の匂いがする。同時に混じるのは、もう慣れてしまったものの腐るにおいだ。それらが混じって鼻を衝くのが、ふたりにとってのセックスの淫らな匂いだった。
昂志は小鳩を押し倒した体勢でもう一度達し、そしてずるりと自身を引き抜いた。はぁ、はぁ、と激しく息をする小鳩に噛みつくようなキスをし、舌を吸ってしゃぶり、噛みついて歯の痕をつける。
「やぁ、……いは、い……」
痛い、と言おうとしたのに、舌を噛まれてまともな言葉にならなかった。昂志は笑い、小鳩の舌をまたしゃぶった。歯の痕を癒すように。
身を起こしながら、昂志は言った。
「腹、減ったな……」
「……わたしも」
最後にいつ食事をしたのかは、覚えていない。美咲を殺した日からふたりは、一歩も外に出ていない。福田らしき訪問者は毎晩のように訪れて、インターフォンを鳴らしドアを蹴って、去っていく。この家の電灯が点けられることはなく、テレビもただの置物と化している。
ふたりは、ただセックスに溺れた。浴室からにおってくる腐臭をまとわりつかせてセックスをして、眠くなれば裸のまま眠り、腹が減れば冷蔵庫のストックを貪る。
「パスタ、あったよ。あれ、湯がいて……」
小鳩は言って、立ちあがった。すると、両脚の間からどろりと白い液体が流れ出た。昂志は、くすりと小さい笑い声をあげる。
「……お兄ちゃんの、ばか」
「ごめんごめん」
そう言って、昂志は脇に放り投げてあったシャツを取りあげ拭ってくれた。股の敏感になっている肌を擦られる感覚に、小鳩は身悶える。
裸のまま、小鳩は台所に立った。蛇口をひねり、するとざぁ、と水が出て、しばらくすると、止まってしまった。
「……え?」
何度も蛇口を捻る。いったん閉めて、また開いて。しかしもう水は出ず、ぽたぽたとしずくが垂れるだけだ。
「水、出ない」
「こっちもだ」
昂志が覗きこんでいるのは、冷蔵庫だ。彼はラップに包んである半分だけのハムを手にしていたが、眉をしかめて不愉快そうな顔をしている。
「冷蔵庫、動いてない。電気、止まってるんだ」
開いたままの冷蔵庫のドアからは、部屋を満たす腐臭とは違う、別のいやなにおいが漂っている。
「このにおい……美咲さんだと思ってたけど、食べ物が、腐ってるんだ」
「もう、これしかないのにな……、ほかに中に入ってるのは、わさびとかドレッシングぐらいだぞ」
「いいじゃない」
小鳩は、ひと握り残っているパスタを握って、昂志の隣に座り込む。
「ハムと、パスタ。ごちそうじゃない」
ラップをめくると、確かに腐ったにおいがする。パスタは乾燥して固いままだ。
「そうだな」
昂志はそう答え、腐ったハムを口にする。そのまま小鳩に口移しに半分をわけてくれる。粘ついた、苦い味。しかし昂志が与えてくれるものだと思うと、どんな豪華な料理よりも美味に感じられた。
「お兄ちゃん、ポッキーゲームって知ってる?」
「知らないわけ、ないだろう。こうするんだ」
乾燥したパスタの両端を、ふたりはくわえる。ぽりぽりと一本をわけあって、最後にちゅっとキスをした。
「一本一本こうやって食べたら、結構持つね」
「おまえ、ポッキーゲームなんて。誰かとやったんじゃないだろうな?」
もう一本を手にしながら、小鳩はきょとんと昂志を見た。
「するわけない。お兄ちゃんとだけだよ、こういうこと、するの」
「本当か?」
確かめるように、再びのキスが降ってくる。そのまま小鳩は押し倒され、キスをされ淡い乳房を揉まれ、再びのセックスに溺れていく。
裸の小鳩は、やはり裸の昂志の腰に座り込んでいる。濡れた小鳩の秘所はぱくりを口を開け、漲った昂志の欲望をくわえ込んでいる。小鳩は腰を上下させ、するとずちゅ、ぐちゅと音があがって、淫らな気分をますます昂揚させた。
「あぁ、……んあ、あ……っ……!」
「ん、っ……」
ふたりは、深く混じりあっている。小鳩の体は昂志の男の徴を深くまで呑み込んで、それが体の奥の欲望の源を刺激する快楽を、味わっている。
「ああ、お兄ちゃん、お兄ちゃん……」
「小鳩……」
ふたりは互いの名を呼び、それに煽られるように昂志が大きく腰を突き上げた。小鳩は激しく背中をしならせ、同時に体内に放たれた熱い飛沫を感じ取る。
「はぁ、は……、あ……っ……」
ふたりの呼気は熱く混じりあい、それは再びのセックスをいざなった。昂志は腹筋を使って起きあがると、繋がったまま小鳩の体を押し倒す。そして放ったものをそのままに、ずくずくと腰を使って突き上げる。
「や、ぁ……、も、お兄ち、……ゃん……っ……」
「おまえだって、まだ足りないくせに」
ふたりの繋がったところからは、艶めいた精液の匂いがする。同時に混じるのは、もう慣れてしまったものの腐るにおいだ。それらが混じって鼻を衝くのが、ふたりにとってのセックスの淫らな匂いだった。
昂志は小鳩を押し倒した体勢でもう一度達し、そしてずるりと自身を引き抜いた。はぁ、はぁ、と激しく息をする小鳩に噛みつくようなキスをし、舌を吸ってしゃぶり、噛みついて歯の痕をつける。
「やぁ、……いは、い……」
痛い、と言おうとしたのに、舌を噛まれてまともな言葉にならなかった。昂志は笑い、小鳩の舌をまたしゃぶった。歯の痕を癒すように。
身を起こしながら、昂志は言った。
「腹、減ったな……」
「……わたしも」
最後にいつ食事をしたのかは、覚えていない。美咲を殺した日からふたりは、一歩も外に出ていない。福田らしき訪問者は毎晩のように訪れて、インターフォンを鳴らしドアを蹴って、去っていく。この家の電灯が点けられることはなく、テレビもただの置物と化している。
ふたりは、ただセックスに溺れた。浴室からにおってくる腐臭をまとわりつかせてセックスをして、眠くなれば裸のまま眠り、腹が減れば冷蔵庫のストックを貪る。
「パスタ、あったよ。あれ、湯がいて……」
小鳩は言って、立ちあがった。すると、両脚の間からどろりと白い液体が流れ出た。昂志は、くすりと小さい笑い声をあげる。
「……お兄ちゃんの、ばか」
「ごめんごめん」
そう言って、昂志は脇に放り投げてあったシャツを取りあげ拭ってくれた。股の敏感になっている肌を擦られる感覚に、小鳩は身悶える。
裸のまま、小鳩は台所に立った。蛇口をひねり、するとざぁ、と水が出て、しばらくすると、止まってしまった。
「……え?」
何度も蛇口を捻る。いったん閉めて、また開いて。しかしもう水は出ず、ぽたぽたとしずくが垂れるだけだ。
「水、出ない」
「こっちもだ」
昂志が覗きこんでいるのは、冷蔵庫だ。彼はラップに包んである半分だけのハムを手にしていたが、眉をしかめて不愉快そうな顔をしている。
「冷蔵庫、動いてない。電気、止まってるんだ」
開いたままの冷蔵庫のドアからは、部屋を満たす腐臭とは違う、別のいやなにおいが漂っている。
「このにおい……美咲さんだと思ってたけど、食べ物が、腐ってるんだ」
「もう、これしかないのにな……、ほかに中に入ってるのは、わさびとかドレッシングぐらいだぞ」
「いいじゃない」
小鳩は、ひと握り残っているパスタを握って、昂志の隣に座り込む。
「ハムと、パスタ。ごちそうじゃない」
ラップをめくると、確かに腐ったにおいがする。パスタは乾燥して固いままだ。
「そうだな」
昂志はそう答え、腐ったハムを口にする。そのまま小鳩に口移しに半分をわけてくれる。粘ついた、苦い味。しかし昂志が与えてくれるものだと思うと、どんな豪華な料理よりも美味に感じられた。
「お兄ちゃん、ポッキーゲームって知ってる?」
「知らないわけ、ないだろう。こうするんだ」
乾燥したパスタの両端を、ふたりはくわえる。ぽりぽりと一本をわけあって、最後にちゅっとキスをした。
「一本一本こうやって食べたら、結構持つね」
「おまえ、ポッキーゲームなんて。誰かとやったんじゃないだろうな?」
もう一本を手にしながら、小鳩はきょとんと昂志を見た。
「するわけない。お兄ちゃんとだけだよ、こういうこと、するの」
「本当か?」
確かめるように、再びのキスが降ってくる。そのまま小鳩は押し倒され、キスをされ淡い乳房を揉まれ、再びのセックスに溺れていく。
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