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第十六話
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インターフォンが鳴って、小鳩は立ちあがった。
魚眼レンズ、というものはこの家のドアにはない。だからドアを開けて出るしかなく、するとそこにいたのは、小太りの中年女性だった。
「こんにちは、小鳩ちゃん」
「こんにちは……」
この長屋の、大家だ。小鳩は思わず萎縮した。いつも愛想のいい彼女で、今も笑顔ではあるのだけれど、目の奥にかすかに怒りが宿っていることに気がついたからだ。
「お母さん、まだ帰ってこないの?」
「……はい」
胸の奥を引き絞られるような思いで、小鳩はうなずいた。そう、と大家が言った声は、どこか冷ややかに感じられた。
小鳩は、小さく体をわななかせる。大家の訪問には、いやな予感しかしない。案の定、彼女は言った。
「今月分、もう一週間も過ぎてるけどもらってないのよ」
何を、と問うまでもない。家賃だ。母の給料は、無断欠勤が続いていることで渡すことはできないと言われたし、昂志のバイト代はまだ入ってこない。今遠峰家にある全財産は、小鳩が預かっている財布に入っている二千円だけだ。
「すみません……」
「すみませんで済めば、警察はいらないってね」
ふぅ、と大家はため息をついた。
「いつになったら払ってくれるの? うちも、ボランティアじゃないんだから。もらうもはもらわないと、うちも困るのよ」
「はい、……すみません」
小鳩には、そう言って頭を下げることしかできない。
「おにい……兄のバイト代が入ったら、すぐに払います」
「いつなの、給料日は」
「十五日って聞いてます」
そう、と小鳩の言葉が本当か、疑うように大家は言った。
「まぁ、今払えないからってすぐに追い出したりしないけど、できるだけ早くね。来月は期日通りにちゃんと、よろしくよ」
「わかりました……」
お願いよ、と念を押して、大家は去っていく。その後ろ姿に頭を下げながら、小鳩は口から心臓が出そうなくらいに胸が鳴り、体が強ばっていた。
こういうことが起こるのだ。金がないということは、恐ろしいことなのだ。昂志のバイト代が入るということで大家は引き下がってくれたけれど、バイト代だって家賃を払えばいくらも残らない。食費に光熱費に、学校に必要なもの。それらすべてを払っていけるのだろうか――今月はどうにかなっても、来月は? 再来月は?
ドアを閉じながら、小鳩はがたがたと震え始めた。自分たちはどうなるのだろうか。この先、どうなってしまうのだろうか――小鳩は玄関口にしゃがみ込み、なおも震える自分の体を抱きしめた。
ぎゅっと力を込めても震えは治まらず、同時に頭の中をぐるぐるとまわる恐怖にさいなまれ、冷たい床に、小鳩はいつまでも座り込んでいた。
◆
訪問者がどのような人物であっても、インターフォンは陽気に鳴る。
その日も、小鳩はひとりだった。掃除を済ませ洗濯ものをたたみ、夕食の支度にかかろうかと思っていたところに、ぴんぽん、と楽しげな音がした。
兄が帰ってきたのだろうか。ときおり、シフトが変更になったと早く帰ってくることがあるのだ。それとも、母が――どこかに行ってしまった母が、戻ってきたのだろうか。
小鳩の脳裏には、いずれかの人物に違いないという妙な確信があって、急いで玄関に飛び出した。
「はぁい!」
昂志には、訪問者を確認する魚眼レンズもないのだからちゃんとチェーンを掛けてから開け、相手を確認しろと言われている。母がいなくなってからは、特にだ。しかしこの日の小鳩は勢いよくドアを開けてしまい、そこにいた人物に戸惑って、凍りついた。
「やぁ、小鳩ちゃん、だね?」
男だった。父ほどの年齢の男。もうだいぶ涼しくなってきたとはいえ、きっちりとスーツを着ているのは見ているだけで暑苦しい。ぽこんと出た腹が妙に目を惹く男は眼鏡をかけていて、額もだいぶん後退している。
目に映すことが楽しい男だとは、とても言えなかった。おまけになぜか自分の名を知っているその口調は、べったりと粘ついて小鳩の耳に貼りついた。
「ひとりかな? お兄さんは、まだ帰ってない?」
「は、い……」
小鳩は、一歩後ずさりをした。すると男は中に入ってこようとして、小鳩は慌ててドアを閉めようとした。その隙間に、男が入り込む。
「おっと、危ない」
その体格にしては、機敏な動きだ。不愉快な、戯けた声で男は言った。
「いきなり閉めちゃ、だめじゃないか。おじさんが怪我しちゃう」
わざとらしく腰を撫で、男は言った。小鳩の頭から足の先までじろじろと眺め、男は続ける。
「お兄さんもいないし、お母さんもいないんだよね。じゃあ小鳩ちゃんに言うしかないんだけどね」
ぞくり、と悪寒が走る。男が中に入ってこようとするのなら、小鳩が家から飛び出して逃げてしまいたい。しかしそうするわけにもいかず、男を前に震えながら小鳩は玄関口に立っていた。
「私は、福田といいます。人にお金を貸すのが仕事なんだけどね」
福田と名乗った男は、スーツの胸ポケットから小さな紙を取り出した。名刺だ。大人の、本物の名刺など初めて見た。
「君のお父さんに、たくさんお金を貸してるんだ」
そう言ったとき、今までどろりと不愉快に甘かった彼の声が、少し尖る。
「今まで、君のお母さんが払ってくれてたんだけどね。お母さんがいなくなって、返済が滞ってる。しかも、まだまだたくさん残ってるんだ」
小鳩は、震えるしかない。渡された名刺を手に、がくがくと足がわななく。
「私たちも、貸したぶんは返してもらわなくちゃいけないんでね。でもお母さんがいなくなってから一銭も入ってこなくてね。だから、こうやってわざわざ来たんだ」
小鳩に何が言えただろう。福田の言葉は優しげだったけれど、粘ついて不愉快で、耳にするだけで怖気が走った。
「君のお兄さんは、働いてるんだろう? どうして、君も働かないの? 君のお父さんの作った借金だよ。家族が返すのはあたりまえだろう?」
「ちゅ、中学生は、働いちゃいけないって……」
昂志がバイトに出ることになったとき、小鳩は自分も働くと言ったのだ。しかし中学生の就労は認められていないと、母は微笑んだ。
福田も、笑った。しかしそれは、あのときの母の笑みとはまったく違い、声同様にべたべたとしていて鬱陶しかった。
「なに言ってるんだ。中学生を喜ぶ客も、たくさんいるんだよ」
くくく、と福田は笑う。何がおかしいのかはわからないけれど、それが小鳩にとってよくないことであることだけは、はっきりとわかった。
「君が頑張れば、お兄さんよりもずっと稼げるよ? お父さんの借金もすぐに帳消しだ」
福田がそのようなことを言えば言うほど、彼の言うとおりにはならないような気がした。自分が働けば――中学生を喜ぶという意味はわからなくても、小鳩にとっての禍害であることに違いない。
「帰って、ください」
震える声で、小鳩は言った。
「帰って。もう、来ないで!」
そう言って、思いきりドアを閉めようとする。福田は、おっとっとと妙な声をあげて、ドアを避ける。小鳩の勢いで今度こそ本当に挟まれるのを恐れたのかドアから逃げて、無事に鍵をかけることができた。
「小鳩ちゃん」
しかし、ドア越しに声がする。ドアを閉められたくらいでは諦めない証拠だ。
「また、来るよ。君が働くか、どうにかしてお金を作るか……ちょっとやそっとじゃ作れないとは思うけどね。そうじゃないと、こっちも困るんだから」
しばらくして、かつかつと音がした。福田の靴の音だろう。ぎしぎしと錆びついた金属の階段を降りる音がし、それが遠ざかり、聞こえなくなって、やっとほっとして小鳩は大きく息をつく。
借金の取り立て。声音だけは優しかったけれど、べたべたするもの言いのあの男は父に大金を貸し、母を追いかけていた男なのだ。それがとうとう、子供にまで来たということだろう。
母は、あの男から逃げたのかもしれない。子供にまで弊害が及ぶとは思わなかったのかもしれないし、そのようなことを考える余裕もなかったのかもしれない。今もどこかで、震えているかもしれない――。
――かわいそう、母さん。
小鳩は、前髪で隠れている額の傷を押さえた。手が、小刻みに震えている。
――父さんが、悪いんだ。父さんがいっつもお酒飲んで酔っぱらって、ギャンブルいっぱいして。好きなことばっかりやって、家族に迷惑ばっかりかけて。
小鳩の中で、父を憎む気持ちが大きくなった。それは、先ほど訪ねてきた福田という男への恐怖と憎悪へとつながる。
――みんな、あいつらが悪いんだ。だから母さんもいなくなって、お兄ちゃんはバイトばっかりしなくちゃいけなくて、わたしは美咲さんに同情されて。
まだ、体は震えている。福田は、また来ると言った。彼はその約束を守るだろう。そして来るたびに父の借金を返せといい、そのために小鳩に働けと言うのだ。
――中学生のできる仕事って、なに? 中学生を喜ぶ人がいるって、何のこと?
福田の与えた恐怖は、小鳩にそのようなことを考えさせた。昂志が、少しは楽ができることなのだろうか。母が帰ってくることなのだろうか。それならば――福田がその話をしたとき、体中に走った怖気のことを忘れて、小鳩は真剣に考えた。
昂志が帰宅したのは、日付が変わる直前だった。小鳩はテレビの前に座って、その日一日のニュースを見ていた。
「おかえり」
疲れた声で、昂志はただいまと言った。小鳩は昂志を振り返り、じっと彼を見つめる。
「どうした?」
あちぃ、と言いながら昂志はTシャツを脱いだ。現われた、サッカーをやっていたころの名残の逞しい体にどきりとしながら、小鳩はそれを振り払うように言った。
「今日、変な人、来た」
「……なに?」
昂志が、あからさまに眉根を寄せる。
「変なやつって、何だよ。ちゃんと鍵かけて、人が来たらチェーンかけたまま確かめろって言っただろうが」
「うん……、ごめん」
その表情に後悔した。しかし報告しないわけにはいかないし、どう言おうかと言い淀んだものの、結局小鳩は今日あったことを口にした。
「なんか……父さんに、お金貸してた人なんだって」
小鳩の言葉に、昂志は顔色を変えた。小鳩のもとに大股で歩いてきて、がしりと肩を掴んだ。
「やだ、お兄ちゃん……痛い」
「なんか、変なことされなかっただろうな!? 変なこと言われたり……」
「お兄ちゃん」
目の下に隈を作っている昂志を前に、小鳩は、すぅと息を呑んだ。福田に聞かされてから、気になって仕方のなかったことを昂志に尋ねようと思ったのだ。
「中学生にできる仕事って、なに?」
昂志の、眉間の皺が深くなった。
「中学生を喜ぶ人もいるって、どういうこと? 中学生って、バイトしちゃだめなんじゃなかったの?」
「小鳩!」
あたりを裂くような昂志の声に、びくりとした。昂志は小鳩の肩にかけた手に力を込め、肉に食い込む痛みに小鳩は悲鳴をあげる。
「痛い、痛いって、お兄ちゃん!」
「絶対、二度と、そいつと話すな」
昂志は、小鳩が身震いするような声音で言った。
「俺も、できるだけおまえと一緒にいる。そういうやつに、つけ込ませるなよ」
「う、うん……」
兄の勢いの理由がわからないままに小鳩はうなずき、怒りに燃えた彼の目を見た。
「でも、教えて。どういうことなの? 中学生のできるバイトって……」
「風俗だよ」
吐き捨てるように、昂志は言った。
「しかも、中学生なんて。違法のアングラ商売だ。汚らしい、下劣で下種で、人間のやるようなことじゃない」
その話を持ち出した小鳩さえもおぞましいというように、昂志はこちらを見た。問うたことを後悔する。それでいて、訊いておいてよかったとも思う。それほどに厭わしいものであると知らなかったら、そのうちいつか福田の口車に乗って、汚らしい、下劣で、下種。そういうところに放り込まれていたかもしれないのだ。
そんな小鳩を見抜いているかのように、厳しい目で昂志は小鳩を見た。
「おまえ、冗談でもそういうのに関わろうとか思うな? その音この話も、聞くなよ。おまえの想像できるようなところじゃないんだからな」
「想像、って……」
「説明しろとかって、言うなよ」
そのときの昂志の表情は、昔を思い出させた。彼の手を自分の股間に這わせ、快感を味わったとき。あのとき、彼はそれをただの性欲だと言い、『性欲』が何かと聞かれれば困る、といった表情を見せた。
風俗、というのが実のところわからなかった小鳩だったけれど、それが何か尋ねるのはためらわれた。それほどに昂志の勢いは激しくて、あの昔の比ではなかった。それは小鳩に、本当にこれ以上訊いてはいけないことなのだということを思い知らせる。
「ごめんなさい」
小さくなって、小鳩は謝った。
「もう、あの人家に入れないし。チェーンかけずにドア開けないし、返事もしない」
「来たのが美咲だったりしたら困るからな。ドアは開けずに声はかけろ。相手を確かめてから、出るんだ。基本だろ」
美咲。今まで福田に脅された恐怖にびくついていた小鳩だけれど、彼女の名前にすべてが色褪せる。
美咲には、最近会っていない。昂志はバイトが忙しくて、家にさえろくに戻ってこられない状態なのだ。恋人と会うどころではないだろう。美咲も、以前小鳩にひどい言葉を投げかけられたのだ。あえて訪ねたいとは思わないだろう。
それでも小鳩の目の届かないところで会っているのではないか、キスをして、服を脱がせて――そういうことをしているのではないか、と考え始めてしまうと、福田のことなど頭の中から飛び去ってしまった。
「お兄ちゃん」
台所から去ろうとしていた昂志は、上半身裸のまま振り返る。その姿からできるだけ目を逸らせながら、小鳩は言った。
「美咲さん、元気?」
「ああ」
間髪入れずに、昂志は言った。
「元気だぞ。なんか、予備校に通い始めたらしくて忙しくしてるけどな。外大目指してるんだとよ」
「予備校……」
小鳩は、ほんの少しがっかりした。美咲が来ないのは、勉強のせいか。小鳩にひどいことを言われたせいではないのか。それに少しほっとしたような、それでいて悔しく感じる思いもあった。
美咲が来ないのは、小鳩を恐れているからだったらよかったのに。彼女を傷つける小鳩を恐がっているのであればよかったのに。中学生でも、高校生の大人の女性を脅えさせることができるのだ。そうだったら、よかったのに。
そんなことを考える自分をいやだと思い、それでも美咲の顔を見ないで済むことはありがたかった。今度会ったら、もっとひどいことを言ってしまうかもしれないから。以前、彼女にひどいことを言ったとき自分もしきりに後悔したことを思い出す。人を傷つけるということは、自分も傷つくことなのだ――。
――それでも。
美咲の顔は、見たくなかった。来てほしくなかった。昂志と会ってほしくなかった――美咲だけではない、誰でも。小鳩より大人で、美しい目と唇を持っていて、すらりとした体をしていて、涼やかな声で話す女性には、誰にも昂志に近づいてほしくなかった。
「風呂、行ってくる」
そう言って昂志は、家の奥に姿を消した。しばらくして、水音が聞こえてくる。ズボンも脱いで、一糸まとわぬ昂志を想像した。
幼いころは一緒に風呂にも入ったけれど、今の昂志は違う。あれほど逞しい体を持っていて、それは衣服に隠れた部分も同じだろう。
「……あ」
じわり、と両脚の間が濡れてくるのを感じた。兄の陰部は、どのようだろう。グラビア雑誌からの小鳩の知識によると、それは固く、筋を浮き上がらせて勃ちあがり、先端が濡れて女の体に入ってきて貫くのだ。
勃ちあがるというのはどういうことなのか、入ってきて貫くとはどういういったいどこをどうするのか、小鳩に具体的な知識はなかったけれど、ただそれが、愛しあう恋人同士が――兄妹が、することだということは知っていた。痛いとも書いてあったけれど、兄が相手なら、多少の痛みくらい我慢できる。
「おにい、ちゃん……」
小鳩は、湿り気を帯びたショーツの股部分に指をやり、擦り始めた。家の奥から聞こえる風呂の音が、小鳩の興奮をいや増す。小鳩の指の動きはだんだん激しくなって、やがて微かな声をあげて、彼女は達した。
魚眼レンズ、というものはこの家のドアにはない。だからドアを開けて出るしかなく、するとそこにいたのは、小太りの中年女性だった。
「こんにちは、小鳩ちゃん」
「こんにちは……」
この長屋の、大家だ。小鳩は思わず萎縮した。いつも愛想のいい彼女で、今も笑顔ではあるのだけれど、目の奥にかすかに怒りが宿っていることに気がついたからだ。
「お母さん、まだ帰ってこないの?」
「……はい」
胸の奥を引き絞られるような思いで、小鳩はうなずいた。そう、と大家が言った声は、どこか冷ややかに感じられた。
小鳩は、小さく体をわななかせる。大家の訪問には、いやな予感しかしない。案の定、彼女は言った。
「今月分、もう一週間も過ぎてるけどもらってないのよ」
何を、と問うまでもない。家賃だ。母の給料は、無断欠勤が続いていることで渡すことはできないと言われたし、昂志のバイト代はまだ入ってこない。今遠峰家にある全財産は、小鳩が預かっている財布に入っている二千円だけだ。
「すみません……」
「すみませんで済めば、警察はいらないってね」
ふぅ、と大家はため息をついた。
「いつになったら払ってくれるの? うちも、ボランティアじゃないんだから。もらうもはもらわないと、うちも困るのよ」
「はい、……すみません」
小鳩には、そう言って頭を下げることしかできない。
「おにい……兄のバイト代が入ったら、すぐに払います」
「いつなの、給料日は」
「十五日って聞いてます」
そう、と小鳩の言葉が本当か、疑うように大家は言った。
「まぁ、今払えないからってすぐに追い出したりしないけど、できるだけ早くね。来月は期日通りにちゃんと、よろしくよ」
「わかりました……」
お願いよ、と念を押して、大家は去っていく。その後ろ姿に頭を下げながら、小鳩は口から心臓が出そうなくらいに胸が鳴り、体が強ばっていた。
こういうことが起こるのだ。金がないということは、恐ろしいことなのだ。昂志のバイト代が入るということで大家は引き下がってくれたけれど、バイト代だって家賃を払えばいくらも残らない。食費に光熱費に、学校に必要なもの。それらすべてを払っていけるのだろうか――今月はどうにかなっても、来月は? 再来月は?
ドアを閉じながら、小鳩はがたがたと震え始めた。自分たちはどうなるのだろうか。この先、どうなってしまうのだろうか――小鳩は玄関口にしゃがみ込み、なおも震える自分の体を抱きしめた。
ぎゅっと力を込めても震えは治まらず、同時に頭の中をぐるぐるとまわる恐怖にさいなまれ、冷たい床に、小鳩はいつまでも座り込んでいた。
◆
訪問者がどのような人物であっても、インターフォンは陽気に鳴る。
その日も、小鳩はひとりだった。掃除を済ませ洗濯ものをたたみ、夕食の支度にかかろうかと思っていたところに、ぴんぽん、と楽しげな音がした。
兄が帰ってきたのだろうか。ときおり、シフトが変更になったと早く帰ってくることがあるのだ。それとも、母が――どこかに行ってしまった母が、戻ってきたのだろうか。
小鳩の脳裏には、いずれかの人物に違いないという妙な確信があって、急いで玄関に飛び出した。
「はぁい!」
昂志には、訪問者を確認する魚眼レンズもないのだからちゃんとチェーンを掛けてから開け、相手を確認しろと言われている。母がいなくなってからは、特にだ。しかしこの日の小鳩は勢いよくドアを開けてしまい、そこにいた人物に戸惑って、凍りついた。
「やぁ、小鳩ちゃん、だね?」
男だった。父ほどの年齢の男。もうだいぶ涼しくなってきたとはいえ、きっちりとスーツを着ているのは見ているだけで暑苦しい。ぽこんと出た腹が妙に目を惹く男は眼鏡をかけていて、額もだいぶん後退している。
目に映すことが楽しい男だとは、とても言えなかった。おまけになぜか自分の名を知っているその口調は、べったりと粘ついて小鳩の耳に貼りついた。
「ひとりかな? お兄さんは、まだ帰ってない?」
「は、い……」
小鳩は、一歩後ずさりをした。すると男は中に入ってこようとして、小鳩は慌ててドアを閉めようとした。その隙間に、男が入り込む。
「おっと、危ない」
その体格にしては、機敏な動きだ。不愉快な、戯けた声で男は言った。
「いきなり閉めちゃ、だめじゃないか。おじさんが怪我しちゃう」
わざとらしく腰を撫で、男は言った。小鳩の頭から足の先までじろじろと眺め、男は続ける。
「お兄さんもいないし、お母さんもいないんだよね。じゃあ小鳩ちゃんに言うしかないんだけどね」
ぞくり、と悪寒が走る。男が中に入ってこようとするのなら、小鳩が家から飛び出して逃げてしまいたい。しかしそうするわけにもいかず、男を前に震えながら小鳩は玄関口に立っていた。
「私は、福田といいます。人にお金を貸すのが仕事なんだけどね」
福田と名乗った男は、スーツの胸ポケットから小さな紙を取り出した。名刺だ。大人の、本物の名刺など初めて見た。
「君のお父さんに、たくさんお金を貸してるんだ」
そう言ったとき、今までどろりと不愉快に甘かった彼の声が、少し尖る。
「今まで、君のお母さんが払ってくれてたんだけどね。お母さんがいなくなって、返済が滞ってる。しかも、まだまだたくさん残ってるんだ」
小鳩は、震えるしかない。渡された名刺を手に、がくがくと足がわななく。
「私たちも、貸したぶんは返してもらわなくちゃいけないんでね。でもお母さんがいなくなってから一銭も入ってこなくてね。だから、こうやってわざわざ来たんだ」
小鳩に何が言えただろう。福田の言葉は優しげだったけれど、粘ついて不愉快で、耳にするだけで怖気が走った。
「君のお兄さんは、働いてるんだろう? どうして、君も働かないの? 君のお父さんの作った借金だよ。家族が返すのはあたりまえだろう?」
「ちゅ、中学生は、働いちゃいけないって……」
昂志がバイトに出ることになったとき、小鳩は自分も働くと言ったのだ。しかし中学生の就労は認められていないと、母は微笑んだ。
福田も、笑った。しかしそれは、あのときの母の笑みとはまったく違い、声同様にべたべたとしていて鬱陶しかった。
「なに言ってるんだ。中学生を喜ぶ客も、たくさんいるんだよ」
くくく、と福田は笑う。何がおかしいのかはわからないけれど、それが小鳩にとってよくないことであることだけは、はっきりとわかった。
「君が頑張れば、お兄さんよりもずっと稼げるよ? お父さんの借金もすぐに帳消しだ」
福田がそのようなことを言えば言うほど、彼の言うとおりにはならないような気がした。自分が働けば――中学生を喜ぶという意味はわからなくても、小鳩にとっての禍害であることに違いない。
「帰って、ください」
震える声で、小鳩は言った。
「帰って。もう、来ないで!」
そう言って、思いきりドアを閉めようとする。福田は、おっとっとと妙な声をあげて、ドアを避ける。小鳩の勢いで今度こそ本当に挟まれるのを恐れたのかドアから逃げて、無事に鍵をかけることができた。
「小鳩ちゃん」
しかし、ドア越しに声がする。ドアを閉められたくらいでは諦めない証拠だ。
「また、来るよ。君が働くか、どうにかしてお金を作るか……ちょっとやそっとじゃ作れないとは思うけどね。そうじゃないと、こっちも困るんだから」
しばらくして、かつかつと音がした。福田の靴の音だろう。ぎしぎしと錆びついた金属の階段を降りる音がし、それが遠ざかり、聞こえなくなって、やっとほっとして小鳩は大きく息をつく。
借金の取り立て。声音だけは優しかったけれど、べたべたするもの言いのあの男は父に大金を貸し、母を追いかけていた男なのだ。それがとうとう、子供にまで来たということだろう。
母は、あの男から逃げたのかもしれない。子供にまで弊害が及ぶとは思わなかったのかもしれないし、そのようなことを考える余裕もなかったのかもしれない。今もどこかで、震えているかもしれない――。
――かわいそう、母さん。
小鳩は、前髪で隠れている額の傷を押さえた。手が、小刻みに震えている。
――父さんが、悪いんだ。父さんがいっつもお酒飲んで酔っぱらって、ギャンブルいっぱいして。好きなことばっかりやって、家族に迷惑ばっかりかけて。
小鳩の中で、父を憎む気持ちが大きくなった。それは、先ほど訪ねてきた福田という男への恐怖と憎悪へとつながる。
――みんな、あいつらが悪いんだ。だから母さんもいなくなって、お兄ちゃんはバイトばっかりしなくちゃいけなくて、わたしは美咲さんに同情されて。
まだ、体は震えている。福田は、また来ると言った。彼はその約束を守るだろう。そして来るたびに父の借金を返せといい、そのために小鳩に働けと言うのだ。
――中学生のできる仕事って、なに? 中学生を喜ぶ人がいるって、何のこと?
福田の与えた恐怖は、小鳩にそのようなことを考えさせた。昂志が、少しは楽ができることなのだろうか。母が帰ってくることなのだろうか。それならば――福田がその話をしたとき、体中に走った怖気のことを忘れて、小鳩は真剣に考えた。
昂志が帰宅したのは、日付が変わる直前だった。小鳩はテレビの前に座って、その日一日のニュースを見ていた。
「おかえり」
疲れた声で、昂志はただいまと言った。小鳩は昂志を振り返り、じっと彼を見つめる。
「どうした?」
あちぃ、と言いながら昂志はTシャツを脱いだ。現われた、サッカーをやっていたころの名残の逞しい体にどきりとしながら、小鳩はそれを振り払うように言った。
「今日、変な人、来た」
「……なに?」
昂志が、あからさまに眉根を寄せる。
「変なやつって、何だよ。ちゃんと鍵かけて、人が来たらチェーンかけたまま確かめろって言っただろうが」
「うん……、ごめん」
その表情に後悔した。しかし報告しないわけにはいかないし、どう言おうかと言い淀んだものの、結局小鳩は今日あったことを口にした。
「なんか……父さんに、お金貸してた人なんだって」
小鳩の言葉に、昂志は顔色を変えた。小鳩のもとに大股で歩いてきて、がしりと肩を掴んだ。
「やだ、お兄ちゃん……痛い」
「なんか、変なことされなかっただろうな!? 変なこと言われたり……」
「お兄ちゃん」
目の下に隈を作っている昂志を前に、小鳩は、すぅと息を呑んだ。福田に聞かされてから、気になって仕方のなかったことを昂志に尋ねようと思ったのだ。
「中学生にできる仕事って、なに?」
昂志の、眉間の皺が深くなった。
「中学生を喜ぶ人もいるって、どういうこと? 中学生って、バイトしちゃだめなんじゃなかったの?」
「小鳩!」
あたりを裂くような昂志の声に、びくりとした。昂志は小鳩の肩にかけた手に力を込め、肉に食い込む痛みに小鳩は悲鳴をあげる。
「痛い、痛いって、お兄ちゃん!」
「絶対、二度と、そいつと話すな」
昂志は、小鳩が身震いするような声音で言った。
「俺も、できるだけおまえと一緒にいる。そういうやつに、つけ込ませるなよ」
「う、うん……」
兄の勢いの理由がわからないままに小鳩はうなずき、怒りに燃えた彼の目を見た。
「でも、教えて。どういうことなの? 中学生のできるバイトって……」
「風俗だよ」
吐き捨てるように、昂志は言った。
「しかも、中学生なんて。違法のアングラ商売だ。汚らしい、下劣で下種で、人間のやるようなことじゃない」
その話を持ち出した小鳩さえもおぞましいというように、昂志はこちらを見た。問うたことを後悔する。それでいて、訊いておいてよかったとも思う。それほどに厭わしいものであると知らなかったら、そのうちいつか福田の口車に乗って、汚らしい、下劣で、下種。そういうところに放り込まれていたかもしれないのだ。
そんな小鳩を見抜いているかのように、厳しい目で昂志は小鳩を見た。
「おまえ、冗談でもそういうのに関わろうとか思うな? その音この話も、聞くなよ。おまえの想像できるようなところじゃないんだからな」
「想像、って……」
「説明しろとかって、言うなよ」
そのときの昂志の表情は、昔を思い出させた。彼の手を自分の股間に這わせ、快感を味わったとき。あのとき、彼はそれをただの性欲だと言い、『性欲』が何かと聞かれれば困る、といった表情を見せた。
風俗、というのが実のところわからなかった小鳩だったけれど、それが何か尋ねるのはためらわれた。それほどに昂志の勢いは激しくて、あの昔の比ではなかった。それは小鳩に、本当にこれ以上訊いてはいけないことなのだということを思い知らせる。
「ごめんなさい」
小さくなって、小鳩は謝った。
「もう、あの人家に入れないし。チェーンかけずにドア開けないし、返事もしない」
「来たのが美咲だったりしたら困るからな。ドアは開けずに声はかけろ。相手を確かめてから、出るんだ。基本だろ」
美咲。今まで福田に脅された恐怖にびくついていた小鳩だけれど、彼女の名前にすべてが色褪せる。
美咲には、最近会っていない。昂志はバイトが忙しくて、家にさえろくに戻ってこられない状態なのだ。恋人と会うどころではないだろう。美咲も、以前小鳩にひどい言葉を投げかけられたのだ。あえて訪ねたいとは思わないだろう。
それでも小鳩の目の届かないところで会っているのではないか、キスをして、服を脱がせて――そういうことをしているのではないか、と考え始めてしまうと、福田のことなど頭の中から飛び去ってしまった。
「お兄ちゃん」
台所から去ろうとしていた昂志は、上半身裸のまま振り返る。その姿からできるだけ目を逸らせながら、小鳩は言った。
「美咲さん、元気?」
「ああ」
間髪入れずに、昂志は言った。
「元気だぞ。なんか、予備校に通い始めたらしくて忙しくしてるけどな。外大目指してるんだとよ」
「予備校……」
小鳩は、ほんの少しがっかりした。美咲が来ないのは、勉強のせいか。小鳩にひどいことを言われたせいではないのか。それに少しほっとしたような、それでいて悔しく感じる思いもあった。
美咲が来ないのは、小鳩を恐れているからだったらよかったのに。彼女を傷つける小鳩を恐がっているのであればよかったのに。中学生でも、高校生の大人の女性を脅えさせることができるのだ。そうだったら、よかったのに。
そんなことを考える自分をいやだと思い、それでも美咲の顔を見ないで済むことはありがたかった。今度会ったら、もっとひどいことを言ってしまうかもしれないから。以前、彼女にひどいことを言ったとき自分もしきりに後悔したことを思い出す。人を傷つけるということは、自分も傷つくことなのだ――。
――それでも。
美咲の顔は、見たくなかった。来てほしくなかった。昂志と会ってほしくなかった――美咲だけではない、誰でも。小鳩より大人で、美しい目と唇を持っていて、すらりとした体をしていて、涼やかな声で話す女性には、誰にも昂志に近づいてほしくなかった。
「風呂、行ってくる」
そう言って昂志は、家の奥に姿を消した。しばらくして、水音が聞こえてくる。ズボンも脱いで、一糸まとわぬ昂志を想像した。
幼いころは一緒に風呂にも入ったけれど、今の昂志は違う。あれほど逞しい体を持っていて、それは衣服に隠れた部分も同じだろう。
「……あ」
じわり、と両脚の間が濡れてくるのを感じた。兄の陰部は、どのようだろう。グラビア雑誌からの小鳩の知識によると、それは固く、筋を浮き上がらせて勃ちあがり、先端が濡れて女の体に入ってきて貫くのだ。
勃ちあがるというのはどういうことなのか、入ってきて貫くとはどういういったいどこをどうするのか、小鳩に具体的な知識はなかったけれど、ただそれが、愛しあう恋人同士が――兄妹が、することだということは知っていた。痛いとも書いてあったけれど、兄が相手なら、多少の痛みくらい我慢できる。
「おにい、ちゃん……」
小鳩は、湿り気を帯びたショーツの股部分に指をやり、擦り始めた。家の奥から聞こえる風呂の音が、小鳩の興奮をいや増す。小鳩の指の動きはだんだん激しくなって、やがて微かな声をあげて、彼女は達した。
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