2 / 4
第2話 俺、能力を失った
しおりを挟む
痛覚が身体を巡り、慌てて目を覚ます。
全身が筋肉痛のように痛いが、何とか生きているらしい。
痛む身体を無理やり起こし、ここが何処なのかを把握するため、辺りをを見渡す。
「暗いな」
何も見えないほど真っ暗闇に手を伸ばし、壁らしき何かに触れる。
そのまま新太は、手で触れているのが壁だと信じてなんとか立ち上がった。
(洞窟か?)
右も左もわからないが、取り敢えず壁伝いに進んでみる事にした。
明かりも見えずただ暗い場所を進んでいると何か嫌な臭いがして、その場で一旦止まる。
(なんだこの臭い……?)
鼻を摘まんでも臭ってくる異臭に吐き気を覚えながらも、転けない程度に急いで進んだ。
そして、ようやく薄い明かりが新太の姿を映す。
「明かりがあるのに、壁が邪魔だな」
出口に近付いたというのに、目の前にある壁が遮って外へ出る事が出来ない。
どうにかしてこの壁を破壊しなければならないが、新太にはまだ魔法がある。
「破壊」
壁に手を当てて魔法を唱えるが、何も起こらない。
それもそのはず、能力は全て新しい勇者を呼び出すために失った事を思い出し、大きく嘆息を吐き出す。
「そうだった…俺は、何もかも失ったんだ」
能力も魔法も失い、ただの高校生に戻ったのだ。
落ち込んで座り込んだ新太に突然ある思考が舞い降りる。
逆に考えれば、ようやくただの高校生に戻れたのだ。
それならば、元の世界に戻ってこれた可能性が高い。
「なら、こんな壁なんざとっとと壊してやる!!」
壁の隙間に手を入れて思いっきり引っ張る。
「ぐにににににっ!」
何とも間抜けな声を出しながらも、目一杯力を込めているが、指が滑ってその場に尻餅を着いて転んでしまう。
(くそっ! やっぱり無理か)
人の手では限界がある事を思い知らされた。
だがしかし、尻餅を着いた側に奇跡的にバールのような何かがあったのだ。
「ラッキーぃ!」
嬉しさで思わず声が高くなってしまったが、恥ずかしさを気にする事よりも先にバールのようなものをさっきまで必死に手を入れて引っ張っていた場所に突き刺し、テコの原理を使ってこじ開ける。
「ぬぉぉぉぉ!」
ミシミシと壁にヒビが走り、ようやく壁を崩す事が出来た。
明かりは、月の光が射し込んでおり、久しぶりに外の空気を息を吸い込んで身体に取り入れる。
そして、周りの風景を視界に入れ、どうして異臭がしたのか理解した。
「墓地……だと?」
この場所は、無くなった人々が埋葬される墓場だった。
すぐに先ほどまで居た場所を振り返る。
「死神の区域……なら、ここは!?」
「そう。ここは、死神の区域。死すらも関係のない場所」
新太が理解したのと同時に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
全身が筋肉痛のように痛いが、何とか生きているらしい。
痛む身体を無理やり起こし、ここが何処なのかを把握するため、辺りをを見渡す。
「暗いな」
何も見えないほど真っ暗闇に手を伸ばし、壁らしき何かに触れる。
そのまま新太は、手で触れているのが壁だと信じてなんとか立ち上がった。
(洞窟か?)
右も左もわからないが、取り敢えず壁伝いに進んでみる事にした。
明かりも見えずただ暗い場所を進んでいると何か嫌な臭いがして、その場で一旦止まる。
(なんだこの臭い……?)
鼻を摘まんでも臭ってくる異臭に吐き気を覚えながらも、転けない程度に急いで進んだ。
そして、ようやく薄い明かりが新太の姿を映す。
「明かりがあるのに、壁が邪魔だな」
出口に近付いたというのに、目の前にある壁が遮って外へ出る事が出来ない。
どうにかしてこの壁を破壊しなければならないが、新太にはまだ魔法がある。
「破壊」
壁に手を当てて魔法を唱えるが、何も起こらない。
それもそのはず、能力は全て新しい勇者を呼び出すために失った事を思い出し、大きく嘆息を吐き出す。
「そうだった…俺は、何もかも失ったんだ」
能力も魔法も失い、ただの高校生に戻ったのだ。
落ち込んで座り込んだ新太に突然ある思考が舞い降りる。
逆に考えれば、ようやくただの高校生に戻れたのだ。
それならば、元の世界に戻ってこれた可能性が高い。
「なら、こんな壁なんざとっとと壊してやる!!」
壁の隙間に手を入れて思いっきり引っ張る。
「ぐにににににっ!」
何とも間抜けな声を出しながらも、目一杯力を込めているが、指が滑ってその場に尻餅を着いて転んでしまう。
(くそっ! やっぱり無理か)
人の手では限界がある事を思い知らされた。
だがしかし、尻餅を着いた側に奇跡的にバールのような何かがあったのだ。
「ラッキーぃ!」
嬉しさで思わず声が高くなってしまったが、恥ずかしさを気にする事よりも先にバールのようなものをさっきまで必死に手を入れて引っ張っていた場所に突き刺し、テコの原理を使ってこじ開ける。
「ぬぉぉぉぉ!」
ミシミシと壁にヒビが走り、ようやく壁を崩す事が出来た。
明かりは、月の光が射し込んでおり、久しぶりに外の空気を息を吸い込んで身体に取り入れる。
そして、周りの風景を視界に入れ、どうして異臭がしたのか理解した。
「墓地……だと?」
この場所は、無くなった人々が埋葬される墓場だった。
すぐに先ほどまで居た場所を振り返る。
「死神の区域……なら、ここは!?」
「そう。ここは、死神の区域。死すらも関係のない場所」
新太が理解したのと同時に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧
きゅーびー
ファンタジー
「あぁ、異世界転生したいなぁ、異世界召喚とかトリップでもいいけど…」
いつからだろう、こんな夢物語を本気で願うようになったのは。
いつからだろう、現実と向き合うのをやめたのは。
いつからだろう、現実を味気なく感じたのは。
いつからだろう、リアルで生きていくことに飽きたのは。
働きたくない男が、働かなくてもいい環境に置かれていくお話。
※他サイトでも投稿しています。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
社畜勇者は異世界で旅館を開きました
yui
ファンタジー
「もうやだ!勇者なんてまっぴらだ!」異世界から転移して10年ーーー休みなしの社畜勇者はとうとう我慢の限界になり、勇者業から足をあらい、田舎で旅館を開くことにした。
もともと、戦い向きではなかったチートを使い、自分の理想の旅館を建てたわけだが・・・訪れる客は何故か知り合いばかり。
そんな元勇者の旅館業ライフが幕をあけるーーー。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる