3 / 14
鈴木という者
しおりを挟む
それから数日たった頃。
明子は毎日のように図書館に通っていた。好きなミステリー小説が沢山並び思う存分読める魅力に虜になっていた。
その日も、二冊目の本を読みふけっている時だった。
「こんにちは」
そう言いながら、挨拶してきた人物は笑顔で明子の前の椅子に座る。
「あら!こんにちは」
意外な人物との出会いに、明子は少し驚きながら挨拶を返す。
明子の前に座ったのは香織の同級生のお母さん鈴木だった。
この鈴木さん。保護者の間でも変わり者として評判だった。何でもかなりのオカルト好きらしい。何を話してもすぐに心霊やら霊障やら都市伝説の類に結びつけるので、まともな話が出来ないだとか・・・
現に今鈴木が手にしている本も、「世界の不可思議」という明子なら絶対に手に取らないであろうジャンルの本を持っている。
鈴木の子供、京子と香織は仲がいいのでなるべく波風を立てないよう当たり障りなく接しているが、明子としては余り関わりたくない人物である。
「行平さんもここを利用してるの?」
「ええ。最近リニューアルしたと聞いたから来てみたんだけど、綺麗だし本の種類も多いから最近は毎日来てるの」
「そう・・」
鈴木は少しだけ表情を曇らせた。
「どうかした?」
「え・・・うん・・ここってね。余り毎日通わない方がいいわよ」
周りを気にしながら言いずらそうに言う。
「え?どうして?」
「ここね。昔処刑場だったんだって」
「処刑場・・」
「そう。そう言う場所って、人が住む家が建つんじゃなくて公園とか学校とかそういう公共施設を立てるみたいなの」
「そうなの」
「でね。そこに毎日通うって言う行為はね降霊術になっちゃうんだって。ほら、行ったり来たりって言う行動が・・ね」
「・・・・」
明子は呆れて言葉が出なかった。
そんな事言うなら、毎日決まった会社に行ってる人はどうなるんだ。その場所だって昔何だったのか分からないではないか。
(こんな風だからみんなに嫌がられるんだわ)
明子は、笑顔を取り繕いながらも心の中でため息を付いた。
「あ、ごめんね。変なこと言って。でもここって確かに本の種類は多いわよね。何でも県内で一番になったらしいわよ」
「そうなんだ」
「じゃ、私借りるのが決まったから行ってこよう。またね」
「ええ」
鈴木は満足したかのように席を立つと貸し出しの受付の方へと歩いて行った。
「はぁ~。何が降霊術よ。せっかく読んでたのに気分台無しだわ」
明子は読み途中の本を閉じると席を立ち棚に仕舞いに行った。
「帰ろ」
鈴木の余計な話のお陰で、読む気を失った明子は家に帰る事にした。
時計を見ると14時15分。
バスに乗り家に着くまで約30分位。買い物をして帰っても十分夕食の用意には間に合う。
明子は、先程の煩わしい気分を払拭するように大きく深呼吸すると大股で図書館を出た。
明子は毎日のように図書館に通っていた。好きなミステリー小説が沢山並び思う存分読める魅力に虜になっていた。
その日も、二冊目の本を読みふけっている時だった。
「こんにちは」
そう言いながら、挨拶してきた人物は笑顔で明子の前の椅子に座る。
「あら!こんにちは」
意外な人物との出会いに、明子は少し驚きながら挨拶を返す。
明子の前に座ったのは香織の同級生のお母さん鈴木だった。
この鈴木さん。保護者の間でも変わり者として評判だった。何でもかなりのオカルト好きらしい。何を話してもすぐに心霊やら霊障やら都市伝説の類に結びつけるので、まともな話が出来ないだとか・・・
現に今鈴木が手にしている本も、「世界の不可思議」という明子なら絶対に手に取らないであろうジャンルの本を持っている。
鈴木の子供、京子と香織は仲がいいのでなるべく波風を立てないよう当たり障りなく接しているが、明子としては余り関わりたくない人物である。
「行平さんもここを利用してるの?」
「ええ。最近リニューアルしたと聞いたから来てみたんだけど、綺麗だし本の種類も多いから最近は毎日来てるの」
「そう・・」
鈴木は少しだけ表情を曇らせた。
「どうかした?」
「え・・・うん・・ここってね。余り毎日通わない方がいいわよ」
周りを気にしながら言いずらそうに言う。
「え?どうして?」
「ここね。昔処刑場だったんだって」
「処刑場・・」
「そう。そう言う場所って、人が住む家が建つんじゃなくて公園とか学校とかそういう公共施設を立てるみたいなの」
「そうなの」
「でね。そこに毎日通うって言う行為はね降霊術になっちゃうんだって。ほら、行ったり来たりって言う行動が・・ね」
「・・・・」
明子は呆れて言葉が出なかった。
そんな事言うなら、毎日決まった会社に行ってる人はどうなるんだ。その場所だって昔何だったのか分からないではないか。
(こんな風だからみんなに嫌がられるんだわ)
明子は、笑顔を取り繕いながらも心の中でため息を付いた。
「あ、ごめんね。変なこと言って。でもここって確かに本の種類は多いわよね。何でも県内で一番になったらしいわよ」
「そうなんだ」
「じゃ、私借りるのが決まったから行ってこよう。またね」
「ええ」
鈴木は満足したかのように席を立つと貸し出しの受付の方へと歩いて行った。
「はぁ~。何が降霊術よ。せっかく読んでたのに気分台無しだわ」
明子は読み途中の本を閉じると席を立ち棚に仕舞いに行った。
「帰ろ」
鈴木の余計な話のお陰で、読む気を失った明子は家に帰る事にした。
時計を見ると14時15分。
バスに乗り家に着くまで約30分位。買い物をして帰っても十分夕食の用意には間に合う。
明子は、先程の煩わしい気分を払拭するように大きく深呼吸すると大股で図書館を出た。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
虫喰いの愛
ちづ
ホラー
邪気を食べる祟り神と、式神の器にされた娘の話。
ダーク和風ファンタジー異類婚姻譚です。
三万字程度の短編伝奇ホラーなのでよろしければお付き合いください。
蛆虫などの虫の表現、若干の残酷描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
『まぼろしの恋』終章で登場する蝕神さまの話です。『まぼろしの恋』を読まなくても全然問題ないです。
また、pixivスキイチ企画『神々の伴侶』https://dic.pixiv.net/a/%E7%A5%9E%E3%80%85%E3%81%AE%E4%BC%B4%E4%BE%B6(募集終了済み)の十月の神様の設定を使わせて頂いております。
表紙はかんたん表紙メーカーさんより使わせて頂いております。
かなざくらの古屋敷
中岡いち
ホラー
『 99.9%幽霊なんか信じていない。だからこそ見える真実がある。 』
幼い頃から霊感体質だった萌江は、その力に人生を翻弄されて生きてきた。その結果として辿り着いた考えは、同じ霊感体質でパートナーの咲恵を驚かせる。
総てを心霊現象で片付けるのを嫌う萌江は、山の中の古い家に一人で暮らしながら、咲恵と共に裏の仕事として「心霊相談」を解決していく。
やがて心霊現象や呪いと思われていた現象の裏に潜む歴史の流れが、萌江の持つ水晶〝火の玉〟に導かれるように二人の過去に絡みつき、真実を紐解いていく。それは二人にしか出来ない解決の仕方だった。
しかしその歴史に触れることが正しい事なのか間違っている事なのかも分からないまま、しだいに二人も苦しんでいく。
やがて辿り着くのは、萌江の血筋に関係する歴史だった。
ファムファタールの函庭
石田空
ホラー
都市伝説「ファムファタールの函庭」。最近ネットでなにかと噂になっている館の噂だ。
男性七人に女性がひとり。全員に指令書が配られ、書かれた指令をクリアしないと出られないという。
そして重要なのは、女性の心を勝ち取らないと、どの指令もクリアできないということ。
そんな都市伝説を右から左に受け流していた今時女子高生の美羽は、彼氏の翔太と一緒に噂のファムファタールの函庭に閉じ込められた挙げ句、見せしめに翔太を殺されてしまう。
残された六人の見知らぬ男性と一緒に閉じ込められた美羽に課せられた指令は──ゲームの主催者からの刺客を探し出すこと。
誰が味方か。誰が敵か。
逃げ出すことは不可能、七日間以内に指令をクリアしなくては死亡。
美羽はファムファタールとなってゲームをコントロールできるのか、はたまた誰かに利用されてしまうのか。
ゲームスタート。
*サイトより転載になります。
*各種残酷描写、反社会描写があります。それらを増長推奨する意図は一切ございませんので、自己責任でお願いします。
隣人の秘密
国光
ホラー
新しく引っ越してきた主人公。穏やかな日常が続く中、隣人が突然姿を消し、周囲には異様な気配が漂い始める。普段は無関心だった隣人の生活に関心を持ち始める主人公が、隣室に残された謎の手紙と不自然な物音をきっかけに、恐怖の真実へと導かれていく。秘密を暴くことで彼女の運命はどんどん絡み合い、不可解な事件に巻き込まれていく。果たして隣人に隠された秘密とは?
とあるアプリで出題されたテーマから紡がれるストーリー
砂坂よつば
ホラー
「書く習慣」というアプリから出題されるお題に沿って、セリフや行動、感情などが入りストーリーが進む為予測不可能な物語。第1弾はホラー×脱出ゲーム風でお届け!
主人公のシュウ(19歳)は目が覚めるとそこは自分の部屋ではなかった。シュウは見事脱出するのことができるのだろうか!?彼の運命は出題されるお題が握るストーリーの幕開けです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる