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シャワー
しおりを挟む停電が起こった。
一瞬にして部屋が暗くなると、唖然とした後、少し楽しくなる。
光というものに、日頃どれだけ無意識に頼っていたのかが明確になる。
携帯のフラッシュライトをつけ、部屋を出てみると、お隣さんたちも同じことを考えていたようで皆が次々とドアから顔を出す。勘違いかもしれないが、一体感を感じた。困った時、人がそこにいるだけで安心するのだな、と思ったりした。
しかし、安心というよりかは、興奮した。
わりと楽しい。
精神病院のように見えるここの廊下に、フラッシュライトとブロークン・イングリッシュのざわめきが反響する。
因みに、ドアが内側に開くのも精神病院のようだと思う原因の一つだ。そこまで廊下が狭いとは思えないし、むしろ狭い玄関をもっと狭くする理由とは一体……
付け加えると、廊下の匂いも病院っぽいし、替えのシーツとカバーの山が置いてあるのもその原因の一つだろう。
そこに私と、もう一人クラスの変わった男子が住んでいると言うのも、決してプラスではないと思う。雰囲気が出すぎているのだ。
ともかく、私は停電でざわついている隣人たちの姿を楽しんだ後、再び光が蘇るのを待った。
そこで、暗闇の中、一人何もない宙を見ていた。
人は真っ暗闇の中に長い時間いると、幻覚をみるらしい。つまり気が狂ってしまうそうだ。
数分間だけしか暗闇の中にいなかった私にでさえ、なんとなくその気持ちが分かるような気がした。
完全な闇ではなかったにしろ、この程度の暗闇でも少し物思わしい気持ちになるようだった。同じところに住んでいる知り合い(友達になれたのかまだ分からないので、一応知り合いと書いた人たち)からラインが届いた。
皆、わりと心細くなるのだろう。
私はこの状態でも日課に従い、シャワーを浴びようかどうか真剣な瞳で悩んでいた。
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