貴族令嬢の私を捨てればそれが出来ると思ったから

みぽつかゆみぃーるฅ(ↀᴥↀ)ฅ

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「婚約者として、これからは名前で呼んでもいいかな?」

「え?」

「嫌だった?」

「あ、違います。そうではなくて……」

 婚約者同士ってお名前で呼び合うものだったのですね。
 あの婚約者さま、いえ、もう元婚約者さま……ややこしいので侯爵令息さまと呼んでしまいましょう。
 彼の名前を久しく呼んでいなかったことに気付きます。

 むしろ名前で呼び合っていた頃なんてあったかしら?

 彼の方も、「君」と呼んでいただけるときもありましたが、「おい」ですとか、「お前」ですとか、「こんな女」ですとか、「貴様」だったりと……。
 わたくしの名前を憶えていらっしゃるかも怪しい限り。

 まぁ、この際は思い出せないままにしていただいて構わないのですが。
 わたくしが彼の名を呼ぶ日も二度と来ないでしょう。

「嫌ではない?では、いいかな?」

「はい、もちろんどうぞ。お好きなようにお呼びくださいませ」

「では、アメリア……嬢」

「呼び捨てでも構いませんよ?」

「そうか。うん……アメリア」

 いつも学園でお会いしている方ですけれど。
 こんな風に歯を見せて笑っているお顔は、はじめて拝見したように思います。

 学園は、わたくしたちにとっては貴族となるための練習の場。
 ですから学園生がまだ貴族として認められる前の子どもだったとしても、学園内ではある程度の節度ある態度が求められるのです。
 もちろん、一歩学園の外に出て集まれば、友人と声をあげて笑い合うこともございますよ?

 けれどもいくら友人であっても外で婚約者以外の殿方とご一緒するということは、まずございませんからね。
 公爵令息さまについては、学園内でのお姿しか知らないわけです。

 そう考えますと。
 自由にお過ごしになられていたあの侯爵令息さまとご友人の令嬢方は、大変に勇気があるとも言えますか。
 
「私のことも名前で呼んでくれるかな?」

「分かりました。ではルカ様と」

「私にも敬称は要らないよ?」

「はい、ではルカ……さま……」

 我慢がならず、小さな声で敬称を付け足してしまいました。
 公爵家のご令息をそのままの名で呼ぶというのは、いささかわたくしには難易度が高いようです。

 こういうところも察しが悪いと言われる所以でしょうか?

「ふふっ。無理はしなくていいけれど、慣れてくれると嬉しい」

「はい。頑張ります。ルカ……」

 なんとか敬称を付けずに堪えることが出来ました。
 けれどもとても落ち着かず。

 お話中に良くないと思いつつ、目を逸らし俯いてしまいます。

「では、私たちの婚約について説明するね。アメリア──」

 急いで庭から摘んで来てくれたのでしょう。
 花瓶に活けられた新鮮な花々の濃厚な香しさに、くらくらと眩暈を起こしそうに感じました。
 こんなことは初めてのこと。
 昨夜は領地のことを長く考えていたせいで、寝不足だったのかもしれませんね。


*************

<蛇足>
主人公の名前が初登場~~( ・∀・ノノ゙☆パチパチ

寂しくも、この物語も残りあと少し。

アメリアと、そしてルカを。
最後まで見守っていただけると嬉しいです(´・∀・`)ノ

ロクデナシな男たちの末路も見てね~( `・∀・)ノシ))hahahahaha
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