1 / 26
①
しおりを挟むはじめまして。
楽しんでいただけましたら嬉しいです( *゚д゚)) 。_。))( *゚д゚)) 。_。))ペコペコリ
では、はじまりはじまり~♪( ´▽` )ノ
*************
婚約者さまが深いため息を吐いてから言いました。
「相変わらず察しの悪い。どうして私の婚約者はこんなに気の利かない女なんだろうな」
いつものことだからわたくしが傷付くことはありません。
いいえ、多少は傷付いていた頃もあったのかもしれませんが。
同じことを繰り返されていれば、それは日常となって、心を動かされるものではなくなるのでしょうね。
ですからわたくしも、いつも通り少し眉をさげて「申し訳ありません」と。一言伝えればそれで終わりのはずだったのです。
けれども今日のわたくしは、いつもと同じようには出来ないよう。
もう今朝の出来事で、わたくしは覚悟が決まっていたのです。
まずは婚約者さまと同じように深い深いため息を吐き出しました。
この時点で婚約者さまは驚くようにしてこちらを凝視しておりましたが。
気にせずにわたくしは問い掛けたのです。
「察しを良くするとは、つまり愚鈍なあなたさまに合わせ、知性のない会話をせよと。そういうことでよろしいのでしょうか?それとも──」
「は?」
これだけ目を見開いてこちらを見る婚約者さまのお姿を拝見するのは、初めてのことだと気付きます。
何せ記憶を辿っても辿っても、思い出すのは眠たそうに目を細め、嫌そうに私を一瞥したのち、すぐに目を逸らして別のところに視線を向ける婚約者さまの横顔ばかり。
意外とぱっちりしたお目目をされていらしたのね、なんて。
場違いなことも思いつつ。
わたくしは言葉を続けます。
「あなたさまのご成績の悪さを察して、それ以下の成績となるように試験ではおおいに手を抜き、学園でも愚かなる振舞いをして過ごせ、そういうことでございましょうか。あぁ、それとも──」
「なっ、何を言って……」
「あなたさまがこの婚約にご不満を持つことを察して、早期に婚約を解消するよう立ち回ることをお望みでしたでしょうか?」
意外と大きかった両の目が、ますます大きくなりました。
口までだらしなくぽかんと空けたままの婚約者さまを見ていたら。
わたくしのこの決定は正しいように感じられたのです。
そのように自信を抱いたせいで、わたくしも少しばかり饒舌になり過ぎた、とは思いますのよ。
「なにぶん察しが悪いものですから。はっきりと分かりやすいお言葉で伝えてくださると大変有難く。気の利かないわたくしに付き合わせてしまうことは大変申し訳なく思っておりますのよ?ですが──、お答え願えます?」
このときのわたくしの心は、澄み渡る空のように晴れ晴れとしたものでした。
それは、もっと早くこうしていたら、と思うほどに心地の好い感覚で。
そんな上気分に後押しされて自信を得た決意もまた、揺らぎようのないものに形を変えて──。
ですからね。
ありがとうございます、婚約者さま。
あなたさまが婚約者でなかったら、わたくしもこのように強く決意することは難しく、知っていて何もしない貴族令嬢やがては貴族夫人という、わたくしがわたくしを決して許さない、そんな曲がった生き方を続けてしまうところでしたもの。
だから今日の最後には感謝の言葉をお伝えしようと思いますわ、婚約者さま。
わたくし、本当に感謝しておりますのよ?
7
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
幼馴染の忠告を無視した令息の、その後
柚木ゆず
恋愛
ストーリーに関係するとある演出のためいったん完結表示になりますが、明日以降も投稿をさせていただきます。
レリスタル子爵令嬢アリアーヌの幼馴染であり婚約者でもある、ラヴァロック子爵令息コンスタン。思いやりがあり優しかったコンスタンは、偶然大金を手にしてしまったことで変わってしまいます。
金遣いが荒くなり、自分よりお金を持っていない人間を見下すようになる。
そのせいで他貴族から反感を買ったりしてしまっていると知ったアリアーヌは、言動を改めるよう説得します。
ですがコンスタンは話を聞かないどころか、逆上してアリアーヌに怪我を負わせてしまいます。
その結果アリアーヌとコンスタンは婚約を解消することとなり、アリアーヌの優しさを踏みにじったコンスタンはやがて――
身勝手な婚約破棄をされたのですが、第一王子殿下がキレて下さいました
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢であるエリーゼは、第ニ王子殿下であるジスタードに婚約破棄を言い渡された。
理由はジスタードが所帯をを持ちたくなく、まだまだ遊んでいたいからというものだ。
あまりに身勝手な婚約破棄だったが、エリーゼは身分の差から逆らうことは出来なかった。
逆らえないのはエリーゼの家系である、ラクドアリン伯爵家も同じであった。
しかし、エリーゼの交友関係の中で唯一の頼れる存在が居た。
それは兄のように慕っていた第一王子のアリューゼだ。
アリューゼの逆鱗に触れたジスタードは、それはもう大変な目に遭うのだった……。
【完結】ああ……婚約破棄なんて計画するんじゃなかった
岡崎 剛柔
恋愛
【あらすじ】
「シンシア・バートン。今日この場を借りてお前に告げる。お前との婚約は破棄だ。もちろん異論は認めない。お前はそれほどの重罪を犯したのだから」
シンシア・バートンは、父親が勝手に決めた伯爵令息のアール・ホリックに公衆の面前で婚約破棄される。
そしてシンシアが平然としていると、そこにシンシアの実妹であるソフィアが現れた。
アールはシンシアと婚約破棄した理由として、シンシアが婚約していながら別の男と逢瀬をしていたのが理由だと大広間に集まっていた貴族たちに説明した。
それだけではない。
アールはシンシアが不貞を働いていたことを証明する証人を呼んだり、そんなシンシアに嫌気が差してソフィアと新たに婚約することを宣言するなど好き勝手なことを始めた。
だが、一方の婚約破棄をされたシンシアは動じなかった。
そう、シンシアは驚きも悲しみもせずにまったく平然としていた。
なぜなら、この婚約破棄の騒動の裏には……。
私の味方は王子殿下とそのご家族だけでした。
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のコーデリア・アレイオンはミストマ・ストライド公爵から婚約破棄をされた。
婚約破棄はコーデリアの家族を失望させ、彼女は責められることになる。
「私はアレイオン家には必要のない存在……将来は修道院でしょうか」
「それならば、私の元へ来ないか?」
コーデリアは幼馴染の王子殿下シムルグ・フォスターに救われることになる。
彼女の味方は王家のみとなったが、その後ろ盾は半端ないほどに大きかった。
お久しぶりですね、元婚約者様。わたしを捨てて幸せになれましたか?
柚木ゆず
恋愛
こんなことがあるなんて、予想外でした。
わたしが伯爵令嬢ミント・ロヴィックという名前と立場を失う原因となった、8年前の婚約破棄。当時わたしを裏切った人と、偶然出会いました。
元婚約者のレオナルド様。貴方様は『お前がいると不幸になる』と言い出し、理不尽な形でわたしとの関係を絶ちましたよね?
あのあと。貴方様はわたしを捨てて、幸せになれましたか?
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。
銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」
私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。
「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」
とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。
なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。
え?どのくらいあるかって?
──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。
とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。
しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。
将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。
どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。
私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?
あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
需要が有れば続きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる