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21.アブソルティア学園入学
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晴れて俺はアブソルティア学園に入学を決めた。
1浪を経ての悲願の入学である。
1年前の俺は、まさかここに入学できるなんて夢にも思わないだろう。
なにせ、1年前の俺は自分の特殊能力に気付いてすらいなかったのだから。
さて、今は入学式の真っ最中である。
学園長の話が始まると、全員が静まり返り、いかにも厳かに壇上に立つ学園長が口を開いた。
「新たな生徒たちよ、今日はこの特別な日に、未来を切り開く決意を胸に、学園生活をスタートすることを祝福します。
我が魔術学園での学びは、ただの知識を超え、君たち自身の成長を促すものです。・・・」
話は続くが、内容は学園の伝統や期待についての長々しいもので、要点がぼんやりとしたままだ。
生徒たちは、学園長が言い尽くしたいであろう多くの言葉を、耳を傾けながらも、既にその大半を頭の片隅に追いやっていた。
「つまり、要するに、努力と挑戦が全てです。」
学園長がようやく締めくくると、お決まりの、定型的な拍手が巻き起こり、入学式は次のセクションへと移行した。
その後は各学科の教師の紹介やら、新入生の誓いの言葉やらだ。
と、新入生の誓いの言葉といえば、クリスタルが担当することとなっているらしい。
「続きまして、新入生、誓いの言葉。
新入生代表、勇者クリスタル・クリムゾンハート。」
「はい!」
クリスタルが司会の紹介を受け、鋭く返事をする。
その瞬間、辺りは静寂となった。
勇者がどんなやつなのか、みな食い入るようにその瞬間を見届ける。
「みにゃ、コホン。皆さん、そして尊敬する学園長、教職員の皆様、本日は私たちの入学を祝福していただき、心より感謝申し上げます。
私たちは、魔術学園という新たな世界に足を踏み入れるにあたり・・・。」
あちゃー、初っ端から盛大に嚙みやがったぞあいつ。
まあその抜けてるところが可愛いというか、愛おしいというか。
「・・・どうぞ、私たちを温かく見守っていただけますよう、よろしくお願い申し上げます。」
やっと終わった。
学長の話といい、新入生の話といい、ほとんど定型文のくせに無駄に長い。
どうにかならんのか、この風潮は。
などと頭の中で文句を垂れていると、入学式は終わりを迎えた。
しばらく暇だったので、俺はクリスタルのところへ顔を出した。
「よお、クリスタル。
誓いの言葉、お疲れさん。
盛大に嚙んでたな、はっはっはっ!」
「か、噛んでなどおらんわ!
なんだジェラルド、こんなところに油を売りにきおって。」
「そうだぞ、ジェラルド。
貴様に用などないわ、散れ散れ!」
憎たらしい声が外野から聞こえると思ったら、ガルガリオンではないか。
「よおガル、お前、勝負に負けたのに試験は受かったのか。
珍しいことも起きるもんだな。」
俺は少し意地悪に言ってやった。
「まあな、貴様の破廉恥な作戦さえなければ、俺の勝ちは確実だったのだ!
お前と違って、試験官は見る目があるよ、ふんっ!」
「破廉恥破廉恥言ってるが、お前、実は感謝しているだろ?
クリスタルのラッキースケベを拝めて。」
「ま、まあな。コホン、い、いや、そんなわけなかろう。」
クリスタルの鋭い刺すような視線を感じる。
「それとだ、ジェラルド!
俺はな、剣聖の家系の跡取りとして、勇者様の護衛係を任されているのだ。
お前のようなゴキブリ男が勇者の周りをうろつかないよう、俺が見張っているというわけだ。
わかったか!!!」
「その件だがな、ガルよ。
私のことは放っておいてくれと言っておろう。
あまり周りを付きまとわれては気が散って仕方ないのだ。」
「し、しかし、これは父上や国からの命令で・・・。」
「しつこいぞガル! 融通の利かない男は好かん!」
「はい! 承知しました!
融通の利かない男はタイプじゃない、メモメモっと。(ぼそっ)」
こいつは、絶対尻に敷かれるタイプだな・・・。
「でも、命令は命令。少し離れて監視はさせてもらうからな。」
「そうだ、ジェラルド。
この後は学園の説明会があるらしい。
行こうではないか。」
「ああ、そうだな。」
俺とクリスタル、ついでにガルガリオンは学園の説明化を受けることとなった。
学園の説明会では、今後のカリキュラムの日程や、講義に必要な道具の説明、食堂などの各施設の説明が行われた。
また、クラス分けについては、スキル班、体技班、知能班に分かれる。
各得意分野に特化した班分けがなされる。
班分けは、すべて試験官の独断である。
俺とクリスタルはスキル班、ガルガリオンは体技班となった。
「クリちゃんと離れちまったよーーー!!!」
ガルガリオンは相当嘆いていた。
クリスタルを監視できなくなったからなのか、クリスタルのことが好きだからなのか、あるいはその両方か。
クリスタルは体技班でも良さそうなのだが、スキル班らしい。
デーモンスレイヤーで刈り取ることができる悪の心の対象範囲を広げるのが目的なのだろうか。
さて、そんな感じの説明会が終わり、入学式初日は終了となった。
あとは自由行動である。
俺は早速、図書館を調べることにした。
1浪を経ての悲願の入学である。
1年前の俺は、まさかここに入学できるなんて夢にも思わないだろう。
なにせ、1年前の俺は自分の特殊能力に気付いてすらいなかったのだから。
さて、今は入学式の真っ最中である。
学園長の話が始まると、全員が静まり返り、いかにも厳かに壇上に立つ学園長が口を開いた。
「新たな生徒たちよ、今日はこの特別な日に、未来を切り開く決意を胸に、学園生活をスタートすることを祝福します。
我が魔術学園での学びは、ただの知識を超え、君たち自身の成長を促すものです。・・・」
話は続くが、内容は学園の伝統や期待についての長々しいもので、要点がぼんやりとしたままだ。
生徒たちは、学園長が言い尽くしたいであろう多くの言葉を、耳を傾けながらも、既にその大半を頭の片隅に追いやっていた。
「つまり、要するに、努力と挑戦が全てです。」
学園長がようやく締めくくると、お決まりの、定型的な拍手が巻き起こり、入学式は次のセクションへと移行した。
その後は各学科の教師の紹介やら、新入生の誓いの言葉やらだ。
と、新入生の誓いの言葉といえば、クリスタルが担当することとなっているらしい。
「続きまして、新入生、誓いの言葉。
新入生代表、勇者クリスタル・クリムゾンハート。」
「はい!」
クリスタルが司会の紹介を受け、鋭く返事をする。
その瞬間、辺りは静寂となった。
勇者がどんなやつなのか、みな食い入るようにその瞬間を見届ける。
「みにゃ、コホン。皆さん、そして尊敬する学園長、教職員の皆様、本日は私たちの入学を祝福していただき、心より感謝申し上げます。
私たちは、魔術学園という新たな世界に足を踏み入れるにあたり・・・。」
あちゃー、初っ端から盛大に嚙みやがったぞあいつ。
まあその抜けてるところが可愛いというか、愛おしいというか。
「・・・どうぞ、私たちを温かく見守っていただけますよう、よろしくお願い申し上げます。」
やっと終わった。
学長の話といい、新入生の話といい、ほとんど定型文のくせに無駄に長い。
どうにかならんのか、この風潮は。
などと頭の中で文句を垂れていると、入学式は終わりを迎えた。
しばらく暇だったので、俺はクリスタルのところへ顔を出した。
「よお、クリスタル。
誓いの言葉、お疲れさん。
盛大に嚙んでたな、はっはっはっ!」
「か、噛んでなどおらんわ!
なんだジェラルド、こんなところに油を売りにきおって。」
「そうだぞ、ジェラルド。
貴様に用などないわ、散れ散れ!」
憎たらしい声が外野から聞こえると思ったら、ガルガリオンではないか。
「よおガル、お前、勝負に負けたのに試験は受かったのか。
珍しいことも起きるもんだな。」
俺は少し意地悪に言ってやった。
「まあな、貴様の破廉恥な作戦さえなければ、俺の勝ちは確実だったのだ!
お前と違って、試験官は見る目があるよ、ふんっ!」
「破廉恥破廉恥言ってるが、お前、実は感謝しているだろ?
クリスタルのラッキースケベを拝めて。」
「ま、まあな。コホン、い、いや、そんなわけなかろう。」
クリスタルの鋭い刺すような視線を感じる。
「それとだ、ジェラルド!
俺はな、剣聖の家系の跡取りとして、勇者様の護衛係を任されているのだ。
お前のようなゴキブリ男が勇者の周りをうろつかないよう、俺が見張っているというわけだ。
わかったか!!!」
「その件だがな、ガルよ。
私のことは放っておいてくれと言っておろう。
あまり周りを付きまとわれては気が散って仕方ないのだ。」
「し、しかし、これは父上や国からの命令で・・・。」
「しつこいぞガル! 融通の利かない男は好かん!」
「はい! 承知しました!
融通の利かない男はタイプじゃない、メモメモっと。(ぼそっ)」
こいつは、絶対尻に敷かれるタイプだな・・・。
「でも、命令は命令。少し離れて監視はさせてもらうからな。」
「そうだ、ジェラルド。
この後は学園の説明会があるらしい。
行こうではないか。」
「ああ、そうだな。」
俺とクリスタル、ついでにガルガリオンは学園の説明化を受けることとなった。
学園の説明会では、今後のカリキュラムの日程や、講義に必要な道具の説明、食堂などの各施設の説明が行われた。
また、クラス分けについては、スキル班、体技班、知能班に分かれる。
各得意分野に特化した班分けがなされる。
班分けは、すべて試験官の独断である。
俺とクリスタルはスキル班、ガルガリオンは体技班となった。
「クリちゃんと離れちまったよーーー!!!」
ガルガリオンは相当嘆いていた。
クリスタルを監視できなくなったからなのか、クリスタルのことが好きだからなのか、あるいはその両方か。
クリスタルは体技班でも良さそうなのだが、スキル班らしい。
デーモンスレイヤーで刈り取ることができる悪の心の対象範囲を広げるのが目的なのだろうか。
さて、そんな感じの説明会が終わり、入学式初日は終了となった。
あとは自由行動である。
俺は早速、図書館を調べることにした。
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