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9.人間の反応
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貴族の町がスライムに襲撃されたという事件は瞬く間に人間たちに広まった。
なにせ、スライムは人間に蹂躙される側の存在だったから、人間たちにとっては驚くべき出来事であった。
魔王が討伐されて以来、この世界の魔物はスライムだけとなった。
平和だった人間界に激震が走ったのだ。
しかし、この事件を喜ぶ者もいた。
アブソルティア帝国の猛将オーレンである。
「王様、こりゃあ驚きだな。
スライムが人間様に歯向かうとはなあ。
アブソルティアとしては何か手を打つのかい?
それなら、このオーレン、ぜひ討伐に向かいたいねえ。」
「そうだな、この事態、見過ごすわけがなかろうて。
お主が行ってくれるのなら、そんなに心強いことは無かろう。
行ってくれるな?」
「さすが王様!
わかってるねえ。
じゃあ、ちょいと行ってくらあ!」
この男、オーレン。
実力はアブソルティア随一、好物は酒と女と金。
まさに豪傑といった人物である。
生まれは戦争孤児であり、あまりの素行の悪さに、一時期は裏社会で有名であったそうだ。
しかし、そのたぐいまれなる武の才から兵士として瞬く間に活躍、昇進を繰り返し今に至る。
一部では、いまだに裏社会から足を洗っていないと噂され、国内でも嫌う人間は多くいる。
他方、その豪快な立ち居振る舞いから人気があることもまた事実である。
さて、この男、王の命令によりたった一人でスライム討伐へと向かう。
あまりの強さに、他の兵士がいてはかえって足手まといなのである。
「女はいねえのか、女は!」
さっそく旅の道中をともに行く女を奴隷商やら風俗街をまわって10人は買い集める。
この男にとって、女性に対する愛などは微塵もない。
欲を吐き捨てる対象としか見ていないのだ。
「はっはっは!
俺とともに旅をできること、光栄に思え!
俺の子種は一級品ぞ、孕め孕めえー!!!」
何とも下品極まりないが、オーレンの言うことはもっともであり、彼の子種が欲しいと思う女性も少なくないのだ。
「オーレン様とご一緒できること、光栄でございます!」
「そうであろう、そうであろう。
がっはっはっはっ!」
彼にとっての遠征は、タダで女性を侍らせることができる遠足のようなものなのである。
「今回の旅はスライム退治だ。
お前たちには我が子種を育てる義務がある。
いざ目的地が近づいたら、安全な場所にいるのだぞ。よいな?」
「はい、オーレン様!」
「がっはっはっはっーーー!!!」
---
一方そのころ、ジェラルドは。
俺は人間界の反応を確かめに人間の町へ戻っていた。
やはり町ではスライムの大反乱として一大事となっていた。
国の発言によると、どうやら討伐隊を派遣するらしい。
それもそうだろう。
国の中で発言力のある貴族の町が潰されたのだ。
国も手を出さざるを得ないだろう。
適当な酒場で情報を集めるとしよう。
ギィー
酒場に入るやいなや、なんとも酒臭い大柄な男が占拠しているではないか。
しかも女を何人も侍らせている。
くーっ、うらやましくなんかないもんね、俺にはプリムとかいるし!
「がーはっはっはっ!
酒だ、酒を持ってこい、もっとだーーー!!!」
「んんー?
俺と飲もうってか? 兄ちゃん」
面倒な奴に絡まれてしまった。
こういうタイプは俺が最も嫌いなタイプだ。
「いやー、なんというか、たまたま立ち寄ったというか・・・。」
「なんだー? はっきりしねえ奴だな、まあ座れや。ぐびっぐびっ」
酒くせえ、話し長そう、もう帰りたい。
「俺はなあ、オーレンってんだぜ!」
「はあ・・・・。」
自慢気に名乗られた、有名人なのか?
「ちょいと野暮用で来てんだ、いいだろ?」
後ろの女性たちを自慢したいようだ。
「あー、はいはい。
近ごろは魔物が物騒ですから、お気をつけてー。」
しかし、物騒な格好をしている。高そうな鎧だ。
これはタダ者ではないだろう。
「なーんだ、もう帰っちまうのかい?
あーあ、スライム討伐たー、なんか面倒になっちまったぜ。」
なに? 今こいつ、スライム討伐といったか?
話を聞く必要が出たかもしれん。
「おっさん、スライム討伐するのか?
どおりで物騒な見た目だもんなあ。」
「おっと聞こえちまったかい。
まあ国の依頼でな。兄ちゃんも来るかい?
おっと、こいつらには手え出すなよ?
こいつらには俺の子種をぶち込むんだからよお!」
「きゃーっ、オーレン様のえっち///」
「行くわけねえだろ!」
うらやましい・・・、という本音は置いておこう。
「何人で討伐に行くんだ?」
「・・・詳しいことは言えねえな。」
なるほど、部外者にはなにも教えてくれそうにないか。
「おっさん強そうなのに、スライム討伐とは、割に合わないんじゃないか?」
適当な会話から何か掴めないだろうか。
「そうでもねえさ、ただのスライムなら割に合わねえがな。
巨大スライムが出たんだぜ。
俺様のレベルアップも期待できる、町の話題もかっさらう、一石二鳥よ!」
「ただのスライムじゃレベルアップにもならないとは・・・。」
魔王討伐から1000年がたつだろうか、そんな平和な時代にレベルアップを目指す人間などごくわずか。
そんな世の中においてスライムをしこしこ倒してレベルアップを目指す人間など皆無。
そのはずだが、こいつはスライムごときではレベルアップできないほど熟練しているらしい。
相当の猛者のはずだ、心してかからなければならないだろう。
「おうよ、腕が鳴るぜー!」
「おっさん、俺、未成年なんだわ。
酒は付き合えねえ、じゃあな。」
「なに? そうだったか。
男たるもの、飲んで食って女抱いて寝る!
そうでなくちゃあならんぜ、兄ちゃん!」
---
俺はすぐにプリムたちの元へ戻り、事態を知らせた。
「なるほど、国を挙げての討伐、受けて立ってやりましょう!」
スライチロウは頼もしく答えた。
「伝令!」
知らせのスライムが唐突に来た。
「貴族の別荘地周辺のスライム、全滅でございます!」
俺はあっけにとられた。
あまりに早すぎる。
国が襲撃を知ってまだ日が浅い。
昼間に会った連中、オーレンとかいったか、あいつらでもないはず。
一体、だれが??
=========== 作者あとがき ===========
評価をポチっとしていただけると大変ありがたいです m (_ _) m
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なにせ、スライムは人間に蹂躙される側の存在だったから、人間たちにとっては驚くべき出来事であった。
魔王が討伐されて以来、この世界の魔物はスライムだけとなった。
平和だった人間界に激震が走ったのだ。
しかし、この事件を喜ぶ者もいた。
アブソルティア帝国の猛将オーレンである。
「王様、こりゃあ驚きだな。
スライムが人間様に歯向かうとはなあ。
アブソルティアとしては何か手を打つのかい?
それなら、このオーレン、ぜひ討伐に向かいたいねえ。」
「そうだな、この事態、見過ごすわけがなかろうて。
お主が行ってくれるのなら、そんなに心強いことは無かろう。
行ってくれるな?」
「さすが王様!
わかってるねえ。
じゃあ、ちょいと行ってくらあ!」
この男、オーレン。
実力はアブソルティア随一、好物は酒と女と金。
まさに豪傑といった人物である。
生まれは戦争孤児であり、あまりの素行の悪さに、一時期は裏社会で有名であったそうだ。
しかし、そのたぐいまれなる武の才から兵士として瞬く間に活躍、昇進を繰り返し今に至る。
一部では、いまだに裏社会から足を洗っていないと噂され、国内でも嫌う人間は多くいる。
他方、その豪快な立ち居振る舞いから人気があることもまた事実である。
さて、この男、王の命令によりたった一人でスライム討伐へと向かう。
あまりの強さに、他の兵士がいてはかえって足手まといなのである。
「女はいねえのか、女は!」
さっそく旅の道中をともに行く女を奴隷商やら風俗街をまわって10人は買い集める。
この男にとって、女性に対する愛などは微塵もない。
欲を吐き捨てる対象としか見ていないのだ。
「はっはっは!
俺とともに旅をできること、光栄に思え!
俺の子種は一級品ぞ、孕め孕めえー!!!」
何とも下品極まりないが、オーレンの言うことはもっともであり、彼の子種が欲しいと思う女性も少なくないのだ。
「オーレン様とご一緒できること、光栄でございます!」
「そうであろう、そうであろう。
がっはっはっはっ!」
彼にとっての遠征は、タダで女性を侍らせることができる遠足のようなものなのである。
「今回の旅はスライム退治だ。
お前たちには我が子種を育てる義務がある。
いざ目的地が近づいたら、安全な場所にいるのだぞ。よいな?」
「はい、オーレン様!」
「がっはっはっはっーーー!!!」
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一方そのころ、ジェラルドは。
俺は人間界の反応を確かめに人間の町へ戻っていた。
やはり町ではスライムの大反乱として一大事となっていた。
国の発言によると、どうやら討伐隊を派遣するらしい。
それもそうだろう。
国の中で発言力のある貴族の町が潰されたのだ。
国も手を出さざるを得ないだろう。
適当な酒場で情報を集めるとしよう。
ギィー
酒場に入るやいなや、なんとも酒臭い大柄な男が占拠しているではないか。
しかも女を何人も侍らせている。
くーっ、うらやましくなんかないもんね、俺にはプリムとかいるし!
「がーはっはっはっ!
酒だ、酒を持ってこい、もっとだーーー!!!」
「んんー?
俺と飲もうってか? 兄ちゃん」
面倒な奴に絡まれてしまった。
こういうタイプは俺が最も嫌いなタイプだ。
「いやー、なんというか、たまたま立ち寄ったというか・・・。」
「なんだー? はっきりしねえ奴だな、まあ座れや。ぐびっぐびっ」
酒くせえ、話し長そう、もう帰りたい。
「俺はなあ、オーレンってんだぜ!」
「はあ・・・・。」
自慢気に名乗られた、有名人なのか?
「ちょいと野暮用で来てんだ、いいだろ?」
後ろの女性たちを自慢したいようだ。
「あー、はいはい。
近ごろは魔物が物騒ですから、お気をつけてー。」
しかし、物騒な格好をしている。高そうな鎧だ。
これはタダ者ではないだろう。
「なーんだ、もう帰っちまうのかい?
あーあ、スライム討伐たー、なんか面倒になっちまったぜ。」
なに? 今こいつ、スライム討伐といったか?
話を聞く必要が出たかもしれん。
「おっさん、スライム討伐するのか?
どおりで物騒な見た目だもんなあ。」
「おっと聞こえちまったかい。
まあ国の依頼でな。兄ちゃんも来るかい?
おっと、こいつらには手え出すなよ?
こいつらには俺の子種をぶち込むんだからよお!」
「きゃーっ、オーレン様のえっち///」
「行くわけねえだろ!」
うらやましい・・・、という本音は置いておこう。
「何人で討伐に行くんだ?」
「・・・詳しいことは言えねえな。」
なるほど、部外者にはなにも教えてくれそうにないか。
「おっさん強そうなのに、スライム討伐とは、割に合わないんじゃないか?」
適当な会話から何か掴めないだろうか。
「そうでもねえさ、ただのスライムなら割に合わねえがな。
巨大スライムが出たんだぜ。
俺様のレベルアップも期待できる、町の話題もかっさらう、一石二鳥よ!」
「ただのスライムじゃレベルアップにもならないとは・・・。」
魔王討伐から1000年がたつだろうか、そんな平和な時代にレベルアップを目指す人間などごくわずか。
そんな世の中においてスライムをしこしこ倒してレベルアップを目指す人間など皆無。
そのはずだが、こいつはスライムごときではレベルアップできないほど熟練しているらしい。
相当の猛者のはずだ、心してかからなければならないだろう。
「おうよ、腕が鳴るぜー!」
「おっさん、俺、未成年なんだわ。
酒は付き合えねえ、じゃあな。」
「なに? そうだったか。
男たるもの、飲んで食って女抱いて寝る!
そうでなくちゃあならんぜ、兄ちゃん!」
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俺はすぐにプリムたちの元へ戻り、事態を知らせた。
「なるほど、国を挙げての討伐、受けて立ってやりましょう!」
スライチロウは頼もしく答えた。
「伝令!」
知らせのスライムが唐突に来た。
「貴族の別荘地周辺のスライム、全滅でございます!」
俺はあっけにとられた。
あまりに早すぎる。
国が襲撃を知ってまだ日が浅い。
昼間に会った連中、オーレンとかいったか、あいつらでもないはず。
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