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パー、ヨン、グー

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これは、私が15歳だった頃の話です。
母と映画を見に行った帰り、夕飯の材料を買いにスーパーに寄ることになりました。
私は面倒だったので、車の中でスマホゲームをし、母を待つことにしました。

「じゃあなるべく早く帰ってくるから。ちょっと待っててね」

「うん。早くね~」

母が出て行ってから、15分くらいでしょうか。スマホゲームに夢中でした。
ところが、一日中スマホを手にしていたからか、充電が切れてしまったのです。
こんなことなら母についていけばよかった…なんてことを思いながら、暇つぶしに車の中から周囲を見ていました。
すると、隣に車が止まりました。
中からは運転手のおじさんが出てきて、急いでスーパーに向かって行きます。半額セールが近かったからだろう、と当時は思っていました。
そこで、その車の中に小学生くらいの女の子がいるのが目に入りました。

女の子は寝ていたような、そんな気がしました。
私と同じ様に遠くまで行ってきたのでしょうか。
しきりに目を擦っています。
少し、見つめすぎていたのかもしれません。女の子がこちらに気づき、嬉しそうな顔をしました。

目がぱっちりと大きくて、とても可愛い女の子です。
手を振ると、ひらひらと振りかえしてきました。
女の子は、ハっと思い出したように手を掲げます。
女の子はパー、グー、パー、グーと手を開いたり閉じたり。
何かの暗号のようです。すぐにこちらも応戦しました。
パー、グー、パー、グー。

女の子をよく見ると、パーの中にヨンも混じっています。
しっかり、女の子は親指を閉じているのです。
パー、ヨン、グー、パー、ヨン、グー…

じゃんけんでしょうか。
私も小さい頃はチョキの形を作るのが難しく、ジャンケンではパーかグーしか出せなかったことを思い出しました。

必死に手で形を作る女の子が可愛くて、こちらもチョキをしたりパーを出したり。

すると、車を運転していたおじさんが戻ってきて、すぐに車を走らせて行ってしまいました。
女の子は悲しそうな顔をして、パー、ヨン、グーを続けます。私は微笑ましい気持ちになり、手を振りました。

そうこうしていると、母が帰ってきました。
私は先ほどの女の子との出来事を話しました。
幸せのお裾分け。母も子どもが大好きなので、喜んで聞いてくれることでしょう。そう思いました。

「女の子がね、手でチョキが作れなくて、ヨンにするの。可愛いよね。もう行っちゃったけど」

パー、ヨン、グー、パー、ヨン、グー…

女の子の必死な様子を思い出し、笑みが溢れます。

「あんた、それ…」















そう言って、母はその場で警察に通報しました。
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