小説家と少女

ぐり

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少女と日常

少女と将来の夢

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「それではみなさん!各々将来の夢をテーマに作文を書いてきてください!一週間後に発表会をします!」
「「「はーい」」」

 というわけで将来の夢について考えなければいけなくなった。

 将来の夢か。考えたこともないな。その日生きるので精一杯だったからなぁ。なんて書こう。

 一時間後。そこにはまだ真っ白な作文用紙があった。

 ダメだ。なにも思い浮かばない。自分一人で考えるのには限外があるな。仕方ない。人に聞くか。

 まずは昇君とみーちゃん。

「将来の夢?私はね!舞台役者よ!」
「舞台役者?」
「そう!綺麗なステージの上で華麗なパフォーマンスを披露するの!素敵でしょ?」
「そうだね」

 あ、動画投稿者とかじゃないんだ。今どきの子のなりたい職業に入ってたのをテレビで見たからてっきり周りはみんなそうかと思ってた。

「昇君は?」
「俺は漫画家」
「漫画家か。いいね」
「あぁ。憧れてる作家さんがいてな。某執事とお嬢様のコメディ描いてる人なんだけど。その人の漫画にどハマりしてな。それ以来、絵の練習とか色々してる」
「そうなんだ」

 だから絵うまかったんだ。
 二人ともすごいな。ちゃんと自分の考えがあって。

「うーちゃんは?」
「わ、私?私は、まだ考え中」
「そっか。頑張ってね」
「うん。二人ともありがとう!」

 さて、次は誰に聞こう。
 と考えながら歩いていると、お向かいさんの背の高い青年と出会った。

「お、ウサギちゃんじゃないっすか!」
「どうも。こんにちは」

 ・・・ちなみにここで名前を出さないのは次の話に備えてのことだよ。

 そんなことは置いといて。

「実はかくかくしかじかで」

 青年に事情を説明した。

「なるほど。将来の夢っすか」
「考えても私まだよくわかんなくてなりたいものとかありますか?」
「自分っすか?自分は人間文化学の研究者になりたいっす」
「人間文化学?」
「噛み砕いていうと人間が積み重ねてきた文化について研究する分野っす。その中で自分がやりたいのは怪異や妖怪についてっす」
「な、なるほど」

 難しそうだ。しかし大学生ともなるとしっかりと考えがまとまってるな。

「一週間も余裕があるんだからゆっくり考えるといいっすよ」
「そうですね。わかりました」
「それじゃ、自分こっちなんで」

 青年と別れて家の中に入る。
 居間には五穀がテレビを見てくつろいでいる。

 ・・・聞いてみるか。

「五穀」
「なんじゃ?」
「五穀は将来の夢とかあった?」
「ないの!」

 ですよねー。

「そもそもわしの時代。生きるので精一杯じゃったし。なりたいものも特にのう。周りは貴族に嫁ぎたいとかあったがわしは農業が好きじゃったからそれもなかったし」
「そうだよね」
「しかしなんでそんなことを?」
「実はこれこれうまうまで」
「なるほど。がっこうの課題か。何かやりたいこととかないのかの?憧れとかなんでも良いのじゃろ?昔の記憶に何かないのか?」
「やりたいこと」

 なんだろう。ほんとうにないのだ。今の生活が続くならそれが一番いい。やりたい仕事も、あれ?そういえば昔あったような。

「思い出した。私シンガーソングライターになりたかったんだ」
「しんがーそんぐらいたー?」
「道で歌を歌う人ね」

 昔、駅前とかで歌ってる人を見てすごくかっこいいと思ったことがある。こう自分の思いとか社会へのメッセージを歌にして響かせるのがとてもかっこいいなって。

「ありがと。五穀」
「わしは別になにもしとらんが、決まったならよかった」

 早速書き始める。
 私の夢はシンガーソングライターになること。なって私の人生まだまだこんなもんじゃないって世の中に伝えること!
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