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閑話.ゆめまくら。
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「タクミくんに現状を伝えた方がいいのかな」
見えるもの全て真っ白い室内でイスリールは一人ごちる。
「セイタロウさんのお孫さんだけあって、かなり立ち直ってるんだよね」
宙に浮かぶ映像。その中にはタクミの姿が映し出されていた。
「うん。若者が影のある笑みなんてしてちゃダメだ。セイタロウさんの今を見せよう」
そうなればやることはひとつ。
ただタクミの前に姿を見せる訳にもいかない。ならばとタクミの夢とセイタロウさんを繋ぐことにした。
「セイタロウさんは……リザードマンのところにいるのか。元気にやってるところが見れたら、安心するよね」
「じいちゃん?」
少し若くなってゲームみたいな恰好をしたじいちゃんがいた。
「じいちゃん!」
声は届かない。
あ、これ夢だ。
そう思うのに時間はかからなかった。
だってじいちゃんが小さい女の子とリザードマンに囲まれて呑んでるんだもの。
でもじいちゃんの笑顔久しぶりに見たなぁ。
ふいにじいちゃんと目が合った。
『皆と一緒で楽しい宴じゃ』
あれ? 見えてるの?
ただなんかむかむかしてきた。
悲しんでた自分が馬鹿みたいな気がしてきたよ。
だってじいちゃん楽しんでるじゃん。
全力で楽しんでるじゃん。
でも笑えてくる。
じいちゃんは何処行ったってじいちゃんだ。
自分で言ってたとおり楽しんでるんだもん。
「じいちゃんに負けてらんないな」
目が合ったのはほんの少しだった。
でも笑顔のじいちゃんが幼女とリザードマンと楽しんでる。
翌朝目覚めると気分は晴れやかだった。
家族に話すと皆で同じ夢を見たようで驚いたけど笑えた。
「じいちゃんばっか楽しんでるんじゃダメだよね。家族皆が楽しまなくちゃ」
ただひとつだけ気になったことがあった。
「じいちゃんいつから幼女趣味になったの? 孫を愛でてる感じじゃなかったけど……」
「あれは娘を可愛がるのも含まれてる感じよ。だって私に対してあんなだったもの」
「お義父さんの昔は知らないけど、タクミを見る目と同じだったよ。娘であり、孫なのかもしれないね。あの子は」
「でも妙に可愛がってたから、なんか腹立つ」
じい様はあの世で楽しんでる。
じい様ならあり得ない話じゃない。
おかしな夢を見たのに、家族は皆その認識で一致していた。
朝尾家の食卓は久しぶりにじい様の話題で持ちきりだった。
見えるもの全て真っ白い室内でイスリールは一人ごちる。
「セイタロウさんのお孫さんだけあって、かなり立ち直ってるんだよね」
宙に浮かぶ映像。その中にはタクミの姿が映し出されていた。
「うん。若者が影のある笑みなんてしてちゃダメだ。セイタロウさんの今を見せよう」
そうなればやることはひとつ。
ただタクミの前に姿を見せる訳にもいかない。ならばとタクミの夢とセイタロウさんを繋ぐことにした。
「セイタロウさんは……リザードマンのところにいるのか。元気にやってるところが見れたら、安心するよね」
「じいちゃん?」
少し若くなってゲームみたいな恰好をしたじいちゃんがいた。
「じいちゃん!」
声は届かない。
あ、これ夢だ。
そう思うのに時間はかからなかった。
だってじいちゃんが小さい女の子とリザードマンに囲まれて呑んでるんだもの。
でもじいちゃんの笑顔久しぶりに見たなぁ。
ふいにじいちゃんと目が合った。
『皆と一緒で楽しい宴じゃ』
あれ? 見えてるの?
ただなんかむかむかしてきた。
悲しんでた自分が馬鹿みたいな気がしてきたよ。
だってじいちゃん楽しんでるじゃん。
全力で楽しんでるじゃん。
でも笑えてくる。
じいちゃんは何処行ったってじいちゃんだ。
自分で言ってたとおり楽しんでるんだもん。
「じいちゃんに負けてらんないな」
目が合ったのはほんの少しだった。
でも笑顔のじいちゃんが幼女とリザードマンと楽しんでる。
翌朝目覚めると気分は晴れやかだった。
家族に話すと皆で同じ夢を見たようで驚いたけど笑えた。
「じいちゃんばっか楽しんでるんじゃダメだよね。家族皆が楽しまなくちゃ」
ただひとつだけ気になったことがあった。
「じいちゃんいつから幼女趣味になったの? 孫を愛でてる感じじゃなかったけど……」
「あれは娘を可愛がるのも含まれてる感じよ。だって私に対してあんなだったもの」
「お義父さんの昔は知らないけど、タクミを見る目と同じだったよ。娘であり、孫なのかもしれないね。あの子は」
「でも妙に可愛がってたから、なんか腹立つ」
じい様はあの世で楽しんでる。
じい様ならあり得ない話じゃない。
おかしな夢を見たのに、家族は皆その認識で一致していた。
朝尾家の食卓は久しぶりにじい様の話題で持ちきりだった。
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