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9巻
9-3
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「あ、来た!」
砦の前に立つルーチェが、儂らの出迎えらしい。一緒にいるのはオークの女性じゃ。思わぬ速度で近付く儂らに、若干の警戒心を滲ませとったがの。
「ロッツァー、心配かけてごめんなさい。今日はここでごはんになりました」
「話は聞いている。無事ならば何も問題はない。さぁ、早くごはんにしよう」
ぺこりと頭を下げたルーチェに、ロッツァは笑顔で答える。
「お世話になります」
カブラがオークさんの前でお辞儀した。クリムもカブラに倣って深々と頭を下げる。ちゃんと礼節を示せた子供らに驚いているのか、オークさんは目を見開いておった。その数瞬の後、身体を小刻みに揺らし出す。
「なんて可愛いんだ!」
大きく両腕を広げたオークさんは、クリムとカブラをがばっと抱きしめる。二人は想定外の事態だったんじゃろな。微動だにせず、されるがままじゃよ。
そんな状況で、呆気にとられたのはロッツァじゃ。これぞ『きょとん』って感じの顔になっとるぞ。それが可笑しかったようでルーチェが笑っとるわい。
「可愛くて賢いなんて、最強じゃないか!」
オークさんの叫びにも似た言葉が響く。それが砦の中にまで届いたんじゃろ。巨体の橙鬼が、門の陰からひょっこりと顔を出すのじゃった。顔だけなのに、存在感も自己主張も十分でな。クリムとカブラを愛でるオークさんを羨ましそうに見とるよ。
その視線が徐々に動き、儂らで止まる。いや、正確にはロッツァでじゃな。
「……大きい亀は初めて……」
のっそり一歩を踏み出した橙鬼は、そんなことを言いながら歩いてくる。ロッツァの前まで進むとにんまり笑い、
「……可愛い」
そう言ってロッツァの目を見るのじゃった。普段通り全長2メートルほどのロッツァが、小さく見える。それだけ橙鬼が大きいんじゃが……これ、本来の姿に戻ったロッツァと比べても、五割増しくらいに大きいじゃろうな。
巨体の二人に挟まれたルーチェが、にぱっと笑い背伸びをしていたよ。
楽しそうにしているところ悪いが、砦の入り口にずっといるわけにもいかん。橙鬼とオークさんを促して一緒に大広間まで戻ると、色とりどりの料理に圧倒された。
料理の置かれた卓は、ざっと数えても三十は超えておる。儂の出掛けに調理していた小鬼や、食卓を準備していたオーク。他にもこの砦で生活している者が、ここにほとんどいるんじゃろ。数え切れんくらいの頭数になっとるわい。
そんな中でもルージュとナスティは、いつもと変わらん雰囲気だったよ。周りが何かしているのに自分だけ手持無沙汰になるのが嫌だったんじゃろ。小鬼たちに交じって、ナスティは鉄板焼きをしていたわい。
その手伝いをルージュが担い、なんと肉をひっくり返していたぞ。どこで買ったのか分からんが、鉤爪のようなものを器用に使っておった。握るでなく、手首に縛り付ける感じかのぅ。手首を上手に返して、肉を焦がさないようにしていたよ。
焼き上がった肉は、多種多様でな。蛇に鹿、熊にラビ、ヌイソンバとウルフも出しておった。儂の【無限収納】よりかは少ないと言っても、ナスティの持つ鞄には食材が豊富に仕舞ってあるからな。これでまだ一割も消費しとらんじゃろ。
焼き手をルージュに任せているナスティは、味付けと盛り付けを受け持っているな。ただ、塩胡椒のみの最低限の味付けなのはどうしてじゃ?
……あぁ、なるほどそういうことか。ナスティは小さなフライパンでバターを溶かし、ニンニク醤油を焦がし始めた。辺りに広がる香ばしさ……誘惑に抗えなかった小鬼やオークが手を止めて、鼻と腹を鳴らしながら鉄板焼きへ視線を向けとる。
ナスティは小鍋も温めておってな。そちらでは、いつも儂が作っているステーキソースを煮詰めているんじゃろ。ニンニク醤油には音と匂いで勝てんが、十分すぎる主張をしとるからな。現に料理を運ぶ手伝いをしてくれとる小さなオークたちは、喉をずっと上下させとるわい。口内で絶えず湧き出る唾液を飲み込むのに忙しそうじゃ。
「儂も何か……今から作ったんじゃ遅くなるな。作り置きを出すことにしよう」
ルージュとナスティの料理に皆の期待も高まっとるしな。今回はやめじゃ。主食となるごはんやパンが見当たらんから、それらを出そう。あとは味噌汁や豚汁あたりか。
空いている卓に儂がいろいろ並べ終えたのと同じくらいで、他の者たちの準備も終わったようじゃった。
「……食べる」
「好きなだけ飲みな!」
橙鬼とオークさんの言葉を合図に、それぞれが料理を食べ始める。小鬼やオークも行儀良く、割り込みや抜け駆けなどもしとらん。食べるものがたくさんあるから、余計な争いも起きんのじゃろ。
鬼たちから振る舞われた料理は基本的に塩味ばかりでな。あとは肉や魚の臭み消しに、大量のハーブが使われとる。さすがに味に飽きるかと思っていたが、そんなことはなかったぞ。素材の持つ旨味を引き出す火加減に塩加減。これらは見習いたいくらいじゃったよ。
肉自体の味や香りも良くてのぅ。何か秘密があるのかと思って質問してみたら、凍えるくらい寒い食料庫に仕舞っとるだけと言われたわい。聞く限りでは食料庫に細工がしてある風でもないし、作りも単なる倉庫っぽかった。なので調理前の肉を試しに見せてもらったんじゃ。そうしたら判明したよ。これ、熟成肉になっとる。気温と湿度が絶妙で、置いてある期間も丁度良かったんじゃな。あと二日も経ったら、腐ってしまって腹を壊したじゃろ。それくらいギリギリな肉じゃった。
儂の問いに答えてくれた小鬼たちには礼をしたいところじゃが……何がいいかのぅ? 悩んでいたら、味噌汁のおかわりを頼まれてな。一味や柚子、あとはバターなんかも用意してみた。
味噌汁自体が珍しい上に、自分好みに味付けまでできるとあって、より楽しかったらしい。大層喜んでいたよ。
味噌汁と豚汁を振る舞う最中にも、先ほど教えてもらったことを考えていた儂は、
「ものが腐ることのない【無限収納】は、熟成ができんのが弱点か……漬物同様、肉を少しばかり時間が進むほうの鞄に入れて試してみるかのぅ」
そんな風に独り言をこぼしていた。バター載せ豚汁に笑顔を見せる小鬼が、首を捻って反応してくれた。
「ワァァァァァァァ」
突然上がった歓声に顔を向ければ、ロッツァが盥を傾けていた。その向かいでは、橙鬼が樽をジョッキのように片手で持ち、ロッツァを見下ろしている。隣にいるオークさんは、普通サイズのジョッキを呷っておる。
「くあーッ! 酒が沁みる!」
盥を下ろしたロッツァが、首を振りながら言っていた。その顔は薄ら赤くなっとる。クリムやルージュが湯浴みをする盥で酒を飲めば、そりゃ酔っぱらうじゃろな。
ロッツァが盥を空にしたのを確認した橙鬼が、樽酒をかっくらう。淀みなくすーっと右手が上がっていき、樽の尻が顎を超えると即座に下ろされた。こちらはロッツァと違い、顔色に変化は見られん。
橙鬼は樽を置くと、別の樽に手を伸ばす。新たに持った樽から盥へ酒を注ぎ、今度はロッツァと一緒に酒を飲み進めた。そして二人同時に器を置く。
「鬼の仕込み酒は美味いものだ」
上機嫌なロッツァが、真っ赤になった顔で笑っていた。
豚汁を楽しむ小鬼に頼んでみたら、儂も酒をもらえた。ひと口飲んでみたが、こりゃいかん。主神イスリールの加護があるから酩酊する心配なんてないが、儂には強すぎる。味を楽しむのでなく、喉や腹が灼ける感覚を楽しむ酒なんじゃろ。
そんな酒だからか、小鬼の中でも痛みに強い者だけが好むそうじゃ。比較的酒好きなナスティも一杯だけでやめとるし、子供たちは見向きもしとらんわい。
「我でも酔えるのだな!」
橙鬼の肩に乗るロッツァが、焦点の定まらない目で酒を浴びるように飲むのじゃった。
《 6 宿酔 》
「うぅぅぅぅ……頭が痛い……」
土気色の顔をしたロッツァが、絞り出すように声を漏らす。
「あんなに飲むからですよ~」
湿らせた布を固く絞り、ロッツァの額に押し当てるナスティが苦笑いじゃ。その隣に立つルーチェは、自身の鼻を摘まんでおる。普段はあれほど懐いているクリムとルージュですら、ロッツァに近付かん。まぁそれもそうじゃな。ロッツァからは、高い濃度のアルコール臭がしとるわい。
砦の中の儂ら以外の者は、そのほとんどが地面に寝転がっておってな。橙鬼の右腕の上には、オークさんが乗っとる。他にも小鬼やオークが折り重なる姿は、まさに死屍累々って感じじゃよ。大半がいびきをかいて、ごく少数がうめき声を上げとる。
朝日が眩しい時間帯になっとるが、こんな状況じゃからな。寝ずの番以外で起きられたのは儂らぐらいじゃろ。
「ロッツァはんにも、いいクスリになったやろ?」
にやにや笑うカブラは、茶色や深緑、はたまた赤や青と、複雑な色の混ざり合った汁が半分ほど入った両手鍋を持つ。池の周りや砦の近くに生えている草木が原料らしく、寝起きにちょっと出掛けて集めてきたんじゃよ。
バルバルとカブラが、採ってきたそれらを先ほどまで儂のそばで煮込んでいたんじゃが、その匂い……いや、臭いは思わず顔を背けたくなるほど刺激的でな。家族や砦に住む者に配慮して、煮詰めているカブラが儂に《結界》をお願いするほどじゃて。
ただ、臭いが強いからと言っても火を扱うからのぅ。完全に密閉したんじゃ危険かと思い、天に向けてかなり高いものにした上で、天辺に穴を開けて、地面すれすれからは吸気できるようにしてやったんじゃ。煙突なんて上等なものにはならんかったが、まずまずの出来じゃろ。
カブラとバルバルが仲良くしてるのは可愛いもんじゃが、鼻に栓をしている姿は笑いを誘うぞ? 鼻に該当する器官がなくて、臭気を感じんはずのバルバルも、カブラを真似ておるから、より一層面白い絵面じゃった。
カブラが言うには、頭痛や吐き気、気怠さを緩和する……そんな薬効を見込めるらしい。
ロッツァの宿酔を少しでも軽くしてやろうという、カブラたちなりの考えから起こした行動みたいでな。草木に聞き回って、それらの効果が見込める素材を集めまくり、これでもかと放り込んで煮込んでいた。《鑑定》で見たが、奇跡的な配合で抜群の効果が見込めると出ておった。
普段使いの木製汁椀だと臭いと味が移るかもしれん。そう思って陶器の碗にしてやったが、ロッツァの顔は曇っておる。
鼻を刺す臭いに顔を背けると、そちらにいるのはクリム。つぶらな瞳にじっと見つめられて、ロッツァはバツの悪そうな表情を見せる。すっと視線を外した先にはルージュとルーチェがおってな。二人からは『飲むよね?』と笑顔で圧力をかけられたようじゃ。
多少の悪戯心はあるかもしれんが、ロッツァの為とカブラが手作りした薬じゃからのぅ……その辺りを汲んだロッツァは、大きく頭を振ってから頷いた。
意を決し、恐る恐る碗の中へ口を付ける。
「……苦い……」
涙目のロッツァが、絞り出すような声でそう漏らしよる。
「そりゃそうや。『良薬口に苦し』っておとんが教えてくれたんやで」
にっこり笑うカブラは、『早く飲んでね』と言わんばかりにずずいっと一歩前へ。瞼を下ろし、目を瞑ったロッツァが碗を呷る。
臭いも味も強烈なそれを我慢して飲み干すロッツァの顔は、非常に渋いものになっとった。そして全身から力を抜いて項垂れる。その際、碗も転げ落ちたが何とか割れんかった。
「苦くて身体にいいもの、いっぱい入れたった」
口の端から汁を垂らすロッツァの姿に満足したのか、両手を上げてくるりと一回転半したカブラは満面の笑みじゃ。ロッツァの足元に転がる碗には、まだ多少の煮汁が残っておってな。それにバルバルが近付いていた。
興味本位か好奇心かは知らんが、碗に残った汁をひと舐めしたバルバルの身体は、汁と同じ複雑な色に変化していき、さざなみを立てていたよ。
「バルバルはんには濃いはずや……本当なら何倍にも薄めて飲むもんなんやから。な? おとん?」
震えるバルバルを、カブラが爽やかな笑顔で担ぎ上げる。その勢いのまま儂へ投げてきよった。上手いこと放ってくれたから、腹の辺りで受け取れたわい。
目を薄く開けたロッツァに見られたが、生気を感じられん。
「……アサオ殿、本当なのか?」
「そうじゃよ。ただし、摂取する原液の量は変わらんからのぅ。凄まじい濃さの汁を少量ひと口でごくりといくか、大量の苦い汁を飲むかの違いじゃ。まぁ、お前さんに選ばせる手もあったんじゃがな。儂はカブラの意向を汲み取っただけじゃて」
「あ、おとんヒドない? それじゃ、うちが悪者やんか。原液に近いほうが効果が出るんやから、しゃあないやん。ロッツァはんの為を思って作ったのに……悲しいわぁ」
弁解するカブラじゃが、その顔はとてもにやけとる。非常に悪い顔じゃ。カタシオラで別れた隠居貴族のクーハクートのそれと変わらんぞ? あぁ、何度か二人きりで話しとることもあったか……あの時に似た者同士、惹かれ合うところがあったのかもしれん。
「……我には、少量のほうがまだマシだな……」
顔色が戻りつつあるロッツァは、苦虫を噛み潰したような顔をしとる。究極の選択というやつに入るかもしれんな。まぁ、何より宿酔するほど飲まないのが一番じゃが、初めて『酔い』を経験したらしいロッツァには、加減が分からなかったんじゃろう。
儂が作る朝ごはんの匂いで起きたのか、はたまたカブラの薬の臭いで起こされたのか……詳細は分からんが、小鬼たちも起き出した。ロッツァと楽しい酒を飲んでいた橙鬼は、宿酔も起こさず、けろりとしたもんじゃったよ。逆に、少量しか飲んでいなかったオークさんのほうが辛そうじゃ。
頭が痛くなるほどの症状を見せる者にはカブラ印の宿酔薬を、そこまで酷い状態でない者には、儂が作ったシジミ汁を配った。
小鬼たちはシジミを気に入ったようで、あぁでもないこうでもないと討論していた。どうやら近くの池で似たような貝を見たそうじゃ。貝毒や食中りに注意が必要じゃが、それらは慣れたもんなんじゃろ。何事も経験から学ぶと言っていたよ。儂もいくらか欲しいからと、一緒に獲ることを提案すれば、受け入れられたわい。
宿酔が落ち着いたとはいえ、本調子でないロッツァを走らせるのもなんじゃな……
そう思ったのは儂だけでなくてのぅ。ルーチェやナスティも同じ考えじゃったよ。
「すまない」
頭を下げつつ、ロッツァは儂らにそう述べる。
「何事も経験じゃよ。宿酔も、そこから来る不調も初めての体験なんじゃろ? 同じことを繰り返さんなら、この失敗だって役に立つってもんじゃ」
「そうですよ~。自分が飲める限界量を知るのも大事です~」
酔い潰れた姿を儂らに見せたことのないナスティが、笑顔を見せた。その右手には、握りたてのおにぎりを持っておる。昨日、振る舞ったおにぎりがかなり好評だったようで、『また食べたい』と砦の者らにせがまれたんじゃと。
白米の備蓄は、魔族チュンズメの宿にあるダンジョン『飢え知らズ』で増やしておいたからのぅ。
ただ、いくら小鬼たちが気に入ったと言っても、この辺りではそうそう採れんはずじゃ。となると街などへ仕入れに行くか、代わりの食材を探すかになる。
小麦を使ったパンやパスタがまだまだ主流じゃから、街での仕入れは望めんか……いや、それ以前に、この砦に住まう者らは、魔物の見た目のままじゃから買い物自体が難しいな。
「このコメってのは、種を剥いたみたいに見えるけど、どんな風に実るんだい?」
家族である小鬼たちが欲しがるので、オークさんも何とかしてやりたいんじゃろ。炊く前の白米を手に取り、儂へ聞いてきた。
口で教えるにも、田んぼや稲からの説明でな。理解させるだけの解説は、儂にはできんかった。それでもオークさんは諦め切れんかったらしく、根ほり葉ほり質問攻めにされたよ。分かる範囲で教えていたら、地面に絵まで描くことになったわい。
ただし、それが功を奏したみたいでな。稲穂に似た植物を見たことがある者がおったんじゃ。岩肌にびっしり生えていたそれが風に靡いて、岩山が揺れているように見えたらしい。その時に狩った獲物の名前を出していたから、場所も忘れていないようじゃ。
「今からでも行ってみるか?」
儂の提案に、オークさんを含めた全員が首を横に振って答える。前回行ったのは半年前で、片道で一週間かかるみたいでな。それも、ここから山を二つ越えた先の森を抜けて、右に左にと何度も折れ曲がって進むような場所なんじゃと。儂らの向かう王都とは逆方向らしい。
記憶に残るものと白米が一致するかどうかは、儂らに頼らず自分たちだけの力で確かめたいという思いもあるんじゃろ。善意といえども、無理に押し付けたら迷惑か。そう思ってこれ以上は言わんよ。
儂が地面に描いた稲穂の絵は、小鬼たちの手によって砦の壁に描き写された。幾人かとても絵が上手な子がおってな。儂が描いたものと寸分違わぬものに仕上げていたわい。面白い特技を持ってるもんじゃ。
儂の絵に触発されたのか、ルージュとルーチェもいろんな食材を描いていたよ。それらも新たな食材の資料として、砦の壁に取り込まれていた。
儂らがそんなことをしておる間に、暇を持て余したカブラとバルバルが薬を量産していたぞ。門番の赤鬼や、狩りを生業としている者らに作り方を習ったらしい。傷薬をはじめ、打ち身用に切り傷用、火傷治しや麻痺治し、気付け薬に目薬なんてものまで作っておったよ。カブラが言うには、
「よぅ分からんけど、全部苦いんや」
とのことじゃった。鑑定結果にも同じことが書かれていたから、確かなんじゃろ。一応、苦さの強弱があるようで、『少しだけ苦い』から『泣きたくなるほど苦い』まで種類が豊富じゃった。しかし、塗り薬に苦みが必要なんじゃろか……?
鑑定したおかげで、思わぬ発見もあったわい。
気付け薬の原料が醤油の実でな。強い塩気と味を利用して、普段から気付け薬として使っているそうじゃ。カタシオラまでの旅でもそんなことを聞いたのぅ。あれは、赤族の村でだったか……
塩気があるのを知っているのに、醤油の実を料理に使う発想はなかったそうじゃ。どうにも強い臭気から敬遠していたらしくてな。塩は山へ行けばたくさん採れるから、嫌々醤油の実を使う必要なんてなかったんじゃと。
森や山で貴重なはずの塩がたくさんとは……岩塩の層でもあるんじゃろか? 小鬼たちの指さす山は、遠目で見る限り、木が生い茂る普通の山なんじゃがな。
人や他の魔族なども来ない場所じゃから、塩の利権で争うこともないはずじゃ。このまま今まで通り、野山で生活する者たちの共通財産にしておけばええ。そこに醤油の実が加われば、塩が尽きる心配もないはずじゃて。
儂の料理によく用いていると教えたら、小鬼たちは驚いていた。昨夜の料理にも使っていたんじゃがのぅ。ナスティが作ったステーキソースにも混ぜられておるし、なんなら主力になれる調味料じゃ。そんなことを伝えたので、早速使い出すかもしれん。
なんだかんだと砦で寛がせてもらっていたら、時間は昼を過ぎとった。
休憩させてもらった礼にと、砦の料理番と一緒に昼ごはんを作り、皆で食べ終えてから儂らは旅を再開するのじゃった。
池のほとりの砦をあとにした儂らは、のんびり進んでおる。歩く速さはロッツァに一任でな。本調子に戻りつつあるから、時間が経つごとに速度が増しとるよ。
目的地として王都を設定しているが、そこまでは自由なもんじゃて。門番の赤鬼さんに教えてもらった魔物たちの村落を巡るのも良いかもしれん。好戦的でなく平和的な部族も多いそうでな。砦に住まう者たち同様、大きな家族のように生活しとるそうじゃよ。
「じいじ、全部に寄るの?」
「いや、通り道にあるのだけでいいじゃろ」
「道すがらにあるんですか~?」
ルーチェに答えた儂に、ナスティが更に問うてきた。ナスティはロッツァの甲羅に乗っておって、その背中で隠れたルーチェは儂からは見えん。出発した時のままなら、ロッツァの首に跨っているはずじゃ。
二人は周囲を目視する為に馬車から出ておるんじゃ。マップを見られるのが儂しかおらんので、必然的に案内役に決まってのぅ。周辺の警戒などは、家族で代わりばんこにこなしとるわけじゃよ。
そうは言っても、相変わらずマップに全てを任せる皆ではないからの。日本にあったナビみたいなことはしとらん。一から十まで道順を知ったら、楽しみが減ってつまらないんじゃと。
「一ヶ所……いや、二ヶ所は立ち寄れるんじゃないかのぅ」
「そうですか~。友好的だったらいいですね~」
広域マップで確認した限りでの答えになるが、ナスティにはそれで十分だったみたいじゃよ。
「しかし、これって儂だけ楽しとらんか?」
「休める時に休まんと疲れるで。おとんがウチらにそう言ってたんやろ?」
馬車の中でだらけ切ったカブラが、儂の独り言に反応してくれた。
馬車が通れるくらいの広さがあるからと、儂はずっと車内でな。特にする作業もない儂の左右には、クリムとルージュがもたれかかって寝ておる。
何がしたいのか分からんバルバルは、馬車の天井に逆さまになって貼り付いとるよ。時折、身体を伸ばしたり、細めたりしとる……そうかと思えば、広くない馬車の中を跳ね回ったりもしとってな。家族に当たらんように跳んどるから、移動や攻撃の練習なのかもしれん。
「じいじー、この先から川の音がするよー。今日はそこで休む?」
ルーチェが儂に聞くが、馬車を曳くロッツァの中では既に決まっとるんじゃろな。身体に感じる風が弱まり、足音も小さく静かになっていっとるわい。
ロッツァが歩みを止めて、河原を今日の宿としたのは夕刻じゃった。風呂の支度を家族に任せて、儂は晩ごはん作りを始める。テリヤキラビとキノコのバター醤油炒め、それにけんちん汁が今日の献立じゃ。
風呂を終え、晩ごはんも済ませた儂らはそろそろ寝る時間じゃよ。《結界》をかけて、横になろうとしたそんな時に、ルーチェとナスティが夜空へ向かって魔法を放った。
「てりゃ!」
「覗き見は感心しませんよ~」
二人の狙う先は同じだったようで、ルーチェの《石弾》とナスティの《水砲》が空中でぶつかりよった。魔法の威力に差があるからのぅ。ぶつかったというより、石が水に弾かれたと言ったほうが正しいかもしれん。
しかし、ルーチェは動じず、二の矢を放つのを忘れておらんかった。魔法は牽制役で、本命は石礫の投擲だったらしい。
『ガンッ! ゴンッ! ……カサカサ、トサッ』
と三連続で音が響いた。最後だけは多少間が開いたが、確実にルーチェとナスティの行動による結果じゃろ。
落下音にいち早く反応して駆け出したのはルージュじゃ。それを追ってバルバルが向かっとる。
「《堅牢》」
相手の姿が見えなくなる前になんとかかけられた魔法は、これだけじゃったよ。
「特に何もして来んから放置してたんじゃが、気付いていたのか……」
「視線は感じてました~」
警戒を解かずに、ナスティが答える。
「鬼さんたちの家を出てから、ずっと見てたよね?」
ルーチェはロッツァの右に立ち、落下音のしたほうを見ていた。クリムはロッツァの背に乗り、まだ上空を眺めとる。
突然の出来事に対応できんかったのは、カブラだけじゃ。手足を伸ばしてしがみついてきて、儂を雁字搦めにしておるよ。それでも、
「ルーチェはん、ちゃうで。カタシオラを出てからずっとや」
真面目な顔でそう言っておった。
「ってことは、テウの後ろにいる人がやったのかな?」
「そうかもしれん」
カブラに拘束されて身動きできん儂は、ルーチェに答える。テウと言うのはキメラの子でな。儂らに幾度もちょっかいをかけてきとる妙な連中の手先にされとったんじゃ。今はカタシオラで暮らしとる。
十数メートル先の藪ががさごそ音を立てたので、皆の視線がそちらへ向く。出て来たのはバルバルを頭に乗せたルージュ。その表情には元気がなかった。どうやら目当ての物はなかったようじゃ。
ただし、空振りってわけでもなくて、菱形の何かを持っていたよ。大きさや形から言って凧に違いないと思うんじゃが、尻尾も糸も見当たらん。切れて紛失したのではなく、最初から付いていないようでな。
「ウカミですね~」
「また珍しい物が出てきたものだ」
ルージュの持つ凧を見たナスティとロッツァが、とても驚いた顔をしておった。
「ウカミ?」
ルーチェが首を傾げて儂に聞いてくるが、儂も知らん単語じゃからな。首を振ることしかできん。
「従魔のような……道具の一種だな。見聞きできる距離、操れる範囲は使い手の力量次第で際限なく広がるぞ」
「でも~、アサオさんくらい潤沢な魔力がなければ~、扱えませんよ~?」
ロッツァの解説にナスティが首を捻った。
「っちゅーことは、おとん並みの相手がいるんやな」
儂に絡みついたままのカブラが、そう言いながら頷く。そして、儂が動けんのを確認したルージュとバルバルは、カブラの上からしがみついてくるのじゃった。
カブラたちから解放された儂は、ウカミと呼ばれる凧を受け取る。鑑定しても、『非常に噛み応えのある素材ですが、美味しくありません』と出るだけで、持ち主やその効果などの情報が出てくれん。
食べられるかどうかや、下処理の仕方などが分かるように育った鑑定さんの弊害かのぅ……とりあえず証拠の品として、【無限収納】に仕舞っておこう。
砦の前に立つルーチェが、儂らの出迎えらしい。一緒にいるのはオークの女性じゃ。思わぬ速度で近付く儂らに、若干の警戒心を滲ませとったがの。
「ロッツァー、心配かけてごめんなさい。今日はここでごはんになりました」
「話は聞いている。無事ならば何も問題はない。さぁ、早くごはんにしよう」
ぺこりと頭を下げたルーチェに、ロッツァは笑顔で答える。
「お世話になります」
カブラがオークさんの前でお辞儀した。クリムもカブラに倣って深々と頭を下げる。ちゃんと礼節を示せた子供らに驚いているのか、オークさんは目を見開いておった。その数瞬の後、身体を小刻みに揺らし出す。
「なんて可愛いんだ!」
大きく両腕を広げたオークさんは、クリムとカブラをがばっと抱きしめる。二人は想定外の事態だったんじゃろな。微動だにせず、されるがままじゃよ。
そんな状況で、呆気にとられたのはロッツァじゃ。これぞ『きょとん』って感じの顔になっとるぞ。それが可笑しかったようでルーチェが笑っとるわい。
「可愛くて賢いなんて、最強じゃないか!」
オークさんの叫びにも似た言葉が響く。それが砦の中にまで届いたんじゃろ。巨体の橙鬼が、門の陰からひょっこりと顔を出すのじゃった。顔だけなのに、存在感も自己主張も十分でな。クリムとカブラを愛でるオークさんを羨ましそうに見とるよ。
その視線が徐々に動き、儂らで止まる。いや、正確にはロッツァでじゃな。
「……大きい亀は初めて……」
のっそり一歩を踏み出した橙鬼は、そんなことを言いながら歩いてくる。ロッツァの前まで進むとにんまり笑い、
「……可愛い」
そう言ってロッツァの目を見るのじゃった。普段通り全長2メートルほどのロッツァが、小さく見える。それだけ橙鬼が大きいんじゃが……これ、本来の姿に戻ったロッツァと比べても、五割増しくらいに大きいじゃろうな。
巨体の二人に挟まれたルーチェが、にぱっと笑い背伸びをしていたよ。
楽しそうにしているところ悪いが、砦の入り口にずっといるわけにもいかん。橙鬼とオークさんを促して一緒に大広間まで戻ると、色とりどりの料理に圧倒された。
料理の置かれた卓は、ざっと数えても三十は超えておる。儂の出掛けに調理していた小鬼や、食卓を準備していたオーク。他にもこの砦で生活している者が、ここにほとんどいるんじゃろ。数え切れんくらいの頭数になっとるわい。
そんな中でもルージュとナスティは、いつもと変わらん雰囲気だったよ。周りが何かしているのに自分だけ手持無沙汰になるのが嫌だったんじゃろ。小鬼たちに交じって、ナスティは鉄板焼きをしていたわい。
その手伝いをルージュが担い、なんと肉をひっくり返していたぞ。どこで買ったのか分からんが、鉤爪のようなものを器用に使っておった。握るでなく、手首に縛り付ける感じかのぅ。手首を上手に返して、肉を焦がさないようにしていたよ。
焼き上がった肉は、多種多様でな。蛇に鹿、熊にラビ、ヌイソンバとウルフも出しておった。儂の【無限収納】よりかは少ないと言っても、ナスティの持つ鞄には食材が豊富に仕舞ってあるからな。これでまだ一割も消費しとらんじゃろ。
焼き手をルージュに任せているナスティは、味付けと盛り付けを受け持っているな。ただ、塩胡椒のみの最低限の味付けなのはどうしてじゃ?
……あぁ、なるほどそういうことか。ナスティは小さなフライパンでバターを溶かし、ニンニク醤油を焦がし始めた。辺りに広がる香ばしさ……誘惑に抗えなかった小鬼やオークが手を止めて、鼻と腹を鳴らしながら鉄板焼きへ視線を向けとる。
ナスティは小鍋も温めておってな。そちらでは、いつも儂が作っているステーキソースを煮詰めているんじゃろ。ニンニク醤油には音と匂いで勝てんが、十分すぎる主張をしとるからな。現に料理を運ぶ手伝いをしてくれとる小さなオークたちは、喉をずっと上下させとるわい。口内で絶えず湧き出る唾液を飲み込むのに忙しそうじゃ。
「儂も何か……今から作ったんじゃ遅くなるな。作り置きを出すことにしよう」
ルージュとナスティの料理に皆の期待も高まっとるしな。今回はやめじゃ。主食となるごはんやパンが見当たらんから、それらを出そう。あとは味噌汁や豚汁あたりか。
空いている卓に儂がいろいろ並べ終えたのと同じくらいで、他の者たちの準備も終わったようじゃった。
「……食べる」
「好きなだけ飲みな!」
橙鬼とオークさんの言葉を合図に、それぞれが料理を食べ始める。小鬼やオークも行儀良く、割り込みや抜け駆けなどもしとらん。食べるものがたくさんあるから、余計な争いも起きんのじゃろ。
鬼たちから振る舞われた料理は基本的に塩味ばかりでな。あとは肉や魚の臭み消しに、大量のハーブが使われとる。さすがに味に飽きるかと思っていたが、そんなことはなかったぞ。素材の持つ旨味を引き出す火加減に塩加減。これらは見習いたいくらいじゃったよ。
肉自体の味や香りも良くてのぅ。何か秘密があるのかと思って質問してみたら、凍えるくらい寒い食料庫に仕舞っとるだけと言われたわい。聞く限りでは食料庫に細工がしてある風でもないし、作りも単なる倉庫っぽかった。なので調理前の肉を試しに見せてもらったんじゃ。そうしたら判明したよ。これ、熟成肉になっとる。気温と湿度が絶妙で、置いてある期間も丁度良かったんじゃな。あと二日も経ったら、腐ってしまって腹を壊したじゃろ。それくらいギリギリな肉じゃった。
儂の問いに答えてくれた小鬼たちには礼をしたいところじゃが……何がいいかのぅ? 悩んでいたら、味噌汁のおかわりを頼まれてな。一味や柚子、あとはバターなんかも用意してみた。
味噌汁自体が珍しい上に、自分好みに味付けまでできるとあって、より楽しかったらしい。大層喜んでいたよ。
味噌汁と豚汁を振る舞う最中にも、先ほど教えてもらったことを考えていた儂は、
「ものが腐ることのない【無限収納】は、熟成ができんのが弱点か……漬物同様、肉を少しばかり時間が進むほうの鞄に入れて試してみるかのぅ」
そんな風に独り言をこぼしていた。バター載せ豚汁に笑顔を見せる小鬼が、首を捻って反応してくれた。
「ワァァァァァァァ」
突然上がった歓声に顔を向ければ、ロッツァが盥を傾けていた。その向かいでは、橙鬼が樽をジョッキのように片手で持ち、ロッツァを見下ろしている。隣にいるオークさんは、普通サイズのジョッキを呷っておる。
「くあーッ! 酒が沁みる!」
盥を下ろしたロッツァが、首を振りながら言っていた。その顔は薄ら赤くなっとる。クリムやルージュが湯浴みをする盥で酒を飲めば、そりゃ酔っぱらうじゃろな。
ロッツァが盥を空にしたのを確認した橙鬼が、樽酒をかっくらう。淀みなくすーっと右手が上がっていき、樽の尻が顎を超えると即座に下ろされた。こちらはロッツァと違い、顔色に変化は見られん。
橙鬼は樽を置くと、別の樽に手を伸ばす。新たに持った樽から盥へ酒を注ぎ、今度はロッツァと一緒に酒を飲み進めた。そして二人同時に器を置く。
「鬼の仕込み酒は美味いものだ」
上機嫌なロッツァが、真っ赤になった顔で笑っていた。
豚汁を楽しむ小鬼に頼んでみたら、儂も酒をもらえた。ひと口飲んでみたが、こりゃいかん。主神イスリールの加護があるから酩酊する心配なんてないが、儂には強すぎる。味を楽しむのでなく、喉や腹が灼ける感覚を楽しむ酒なんじゃろ。
そんな酒だからか、小鬼の中でも痛みに強い者だけが好むそうじゃ。比較的酒好きなナスティも一杯だけでやめとるし、子供たちは見向きもしとらんわい。
「我でも酔えるのだな!」
橙鬼の肩に乗るロッツァが、焦点の定まらない目で酒を浴びるように飲むのじゃった。
《 6 宿酔 》
「うぅぅぅぅ……頭が痛い……」
土気色の顔をしたロッツァが、絞り出すように声を漏らす。
「あんなに飲むからですよ~」
湿らせた布を固く絞り、ロッツァの額に押し当てるナスティが苦笑いじゃ。その隣に立つルーチェは、自身の鼻を摘まんでおる。普段はあれほど懐いているクリムとルージュですら、ロッツァに近付かん。まぁそれもそうじゃな。ロッツァからは、高い濃度のアルコール臭がしとるわい。
砦の中の儂ら以外の者は、そのほとんどが地面に寝転がっておってな。橙鬼の右腕の上には、オークさんが乗っとる。他にも小鬼やオークが折り重なる姿は、まさに死屍累々って感じじゃよ。大半がいびきをかいて、ごく少数がうめき声を上げとる。
朝日が眩しい時間帯になっとるが、こんな状況じゃからな。寝ずの番以外で起きられたのは儂らぐらいじゃろ。
「ロッツァはんにも、いいクスリになったやろ?」
にやにや笑うカブラは、茶色や深緑、はたまた赤や青と、複雑な色の混ざり合った汁が半分ほど入った両手鍋を持つ。池の周りや砦の近くに生えている草木が原料らしく、寝起きにちょっと出掛けて集めてきたんじゃよ。
バルバルとカブラが、採ってきたそれらを先ほどまで儂のそばで煮込んでいたんじゃが、その匂い……いや、臭いは思わず顔を背けたくなるほど刺激的でな。家族や砦に住む者に配慮して、煮詰めているカブラが儂に《結界》をお願いするほどじゃて。
ただ、臭いが強いからと言っても火を扱うからのぅ。完全に密閉したんじゃ危険かと思い、天に向けてかなり高いものにした上で、天辺に穴を開けて、地面すれすれからは吸気できるようにしてやったんじゃ。煙突なんて上等なものにはならんかったが、まずまずの出来じゃろ。
カブラとバルバルが仲良くしてるのは可愛いもんじゃが、鼻に栓をしている姿は笑いを誘うぞ? 鼻に該当する器官がなくて、臭気を感じんはずのバルバルも、カブラを真似ておるから、より一層面白い絵面じゃった。
カブラが言うには、頭痛や吐き気、気怠さを緩和する……そんな薬効を見込めるらしい。
ロッツァの宿酔を少しでも軽くしてやろうという、カブラたちなりの考えから起こした行動みたいでな。草木に聞き回って、それらの効果が見込める素材を集めまくり、これでもかと放り込んで煮込んでいた。《鑑定》で見たが、奇跡的な配合で抜群の効果が見込めると出ておった。
普段使いの木製汁椀だと臭いと味が移るかもしれん。そう思って陶器の碗にしてやったが、ロッツァの顔は曇っておる。
鼻を刺す臭いに顔を背けると、そちらにいるのはクリム。つぶらな瞳にじっと見つめられて、ロッツァはバツの悪そうな表情を見せる。すっと視線を外した先にはルージュとルーチェがおってな。二人からは『飲むよね?』と笑顔で圧力をかけられたようじゃ。
多少の悪戯心はあるかもしれんが、ロッツァの為とカブラが手作りした薬じゃからのぅ……その辺りを汲んだロッツァは、大きく頭を振ってから頷いた。
意を決し、恐る恐る碗の中へ口を付ける。
「……苦い……」
涙目のロッツァが、絞り出すような声でそう漏らしよる。
「そりゃそうや。『良薬口に苦し』っておとんが教えてくれたんやで」
にっこり笑うカブラは、『早く飲んでね』と言わんばかりにずずいっと一歩前へ。瞼を下ろし、目を瞑ったロッツァが碗を呷る。
臭いも味も強烈なそれを我慢して飲み干すロッツァの顔は、非常に渋いものになっとった。そして全身から力を抜いて項垂れる。その際、碗も転げ落ちたが何とか割れんかった。
「苦くて身体にいいもの、いっぱい入れたった」
口の端から汁を垂らすロッツァの姿に満足したのか、両手を上げてくるりと一回転半したカブラは満面の笑みじゃ。ロッツァの足元に転がる碗には、まだ多少の煮汁が残っておってな。それにバルバルが近付いていた。
興味本位か好奇心かは知らんが、碗に残った汁をひと舐めしたバルバルの身体は、汁と同じ複雑な色に変化していき、さざなみを立てていたよ。
「バルバルはんには濃いはずや……本当なら何倍にも薄めて飲むもんなんやから。な? おとん?」
震えるバルバルを、カブラが爽やかな笑顔で担ぎ上げる。その勢いのまま儂へ投げてきよった。上手いこと放ってくれたから、腹の辺りで受け取れたわい。
目を薄く開けたロッツァに見られたが、生気を感じられん。
「……アサオ殿、本当なのか?」
「そうじゃよ。ただし、摂取する原液の量は変わらんからのぅ。凄まじい濃さの汁を少量ひと口でごくりといくか、大量の苦い汁を飲むかの違いじゃ。まぁ、お前さんに選ばせる手もあったんじゃがな。儂はカブラの意向を汲み取っただけじゃて」
「あ、おとんヒドない? それじゃ、うちが悪者やんか。原液に近いほうが効果が出るんやから、しゃあないやん。ロッツァはんの為を思って作ったのに……悲しいわぁ」
弁解するカブラじゃが、その顔はとてもにやけとる。非常に悪い顔じゃ。カタシオラで別れた隠居貴族のクーハクートのそれと変わらんぞ? あぁ、何度か二人きりで話しとることもあったか……あの時に似た者同士、惹かれ合うところがあったのかもしれん。
「……我には、少量のほうがまだマシだな……」
顔色が戻りつつあるロッツァは、苦虫を噛み潰したような顔をしとる。究極の選択というやつに入るかもしれんな。まぁ、何より宿酔するほど飲まないのが一番じゃが、初めて『酔い』を経験したらしいロッツァには、加減が分からなかったんじゃろう。
儂が作る朝ごはんの匂いで起きたのか、はたまたカブラの薬の臭いで起こされたのか……詳細は分からんが、小鬼たちも起き出した。ロッツァと楽しい酒を飲んでいた橙鬼は、宿酔も起こさず、けろりとしたもんじゃったよ。逆に、少量しか飲んでいなかったオークさんのほうが辛そうじゃ。
頭が痛くなるほどの症状を見せる者にはカブラ印の宿酔薬を、そこまで酷い状態でない者には、儂が作ったシジミ汁を配った。
小鬼たちはシジミを気に入ったようで、あぁでもないこうでもないと討論していた。どうやら近くの池で似たような貝を見たそうじゃ。貝毒や食中りに注意が必要じゃが、それらは慣れたもんなんじゃろ。何事も経験から学ぶと言っていたよ。儂もいくらか欲しいからと、一緒に獲ることを提案すれば、受け入れられたわい。
宿酔が落ち着いたとはいえ、本調子でないロッツァを走らせるのもなんじゃな……
そう思ったのは儂だけでなくてのぅ。ルーチェやナスティも同じ考えじゃったよ。
「すまない」
頭を下げつつ、ロッツァは儂らにそう述べる。
「何事も経験じゃよ。宿酔も、そこから来る不調も初めての体験なんじゃろ? 同じことを繰り返さんなら、この失敗だって役に立つってもんじゃ」
「そうですよ~。自分が飲める限界量を知るのも大事です~」
酔い潰れた姿を儂らに見せたことのないナスティが、笑顔を見せた。その右手には、握りたてのおにぎりを持っておる。昨日、振る舞ったおにぎりがかなり好評だったようで、『また食べたい』と砦の者らにせがまれたんじゃと。
白米の備蓄は、魔族チュンズメの宿にあるダンジョン『飢え知らズ』で増やしておいたからのぅ。
ただ、いくら小鬼たちが気に入ったと言っても、この辺りではそうそう採れんはずじゃ。となると街などへ仕入れに行くか、代わりの食材を探すかになる。
小麦を使ったパンやパスタがまだまだ主流じゃから、街での仕入れは望めんか……いや、それ以前に、この砦に住まう者らは、魔物の見た目のままじゃから買い物自体が難しいな。
「このコメってのは、種を剥いたみたいに見えるけど、どんな風に実るんだい?」
家族である小鬼たちが欲しがるので、オークさんも何とかしてやりたいんじゃろ。炊く前の白米を手に取り、儂へ聞いてきた。
口で教えるにも、田んぼや稲からの説明でな。理解させるだけの解説は、儂にはできんかった。それでもオークさんは諦め切れんかったらしく、根ほり葉ほり質問攻めにされたよ。分かる範囲で教えていたら、地面に絵まで描くことになったわい。
ただし、それが功を奏したみたいでな。稲穂に似た植物を見たことがある者がおったんじゃ。岩肌にびっしり生えていたそれが風に靡いて、岩山が揺れているように見えたらしい。その時に狩った獲物の名前を出していたから、場所も忘れていないようじゃ。
「今からでも行ってみるか?」
儂の提案に、オークさんを含めた全員が首を横に振って答える。前回行ったのは半年前で、片道で一週間かかるみたいでな。それも、ここから山を二つ越えた先の森を抜けて、右に左にと何度も折れ曲がって進むような場所なんじゃと。儂らの向かう王都とは逆方向らしい。
記憶に残るものと白米が一致するかどうかは、儂らに頼らず自分たちだけの力で確かめたいという思いもあるんじゃろ。善意といえども、無理に押し付けたら迷惑か。そう思ってこれ以上は言わんよ。
儂が地面に描いた稲穂の絵は、小鬼たちの手によって砦の壁に描き写された。幾人かとても絵が上手な子がおってな。儂が描いたものと寸分違わぬものに仕上げていたわい。面白い特技を持ってるもんじゃ。
儂の絵に触発されたのか、ルージュとルーチェもいろんな食材を描いていたよ。それらも新たな食材の資料として、砦の壁に取り込まれていた。
儂らがそんなことをしておる間に、暇を持て余したカブラとバルバルが薬を量産していたぞ。門番の赤鬼や、狩りを生業としている者らに作り方を習ったらしい。傷薬をはじめ、打ち身用に切り傷用、火傷治しや麻痺治し、気付け薬に目薬なんてものまで作っておったよ。カブラが言うには、
「よぅ分からんけど、全部苦いんや」
とのことじゃった。鑑定結果にも同じことが書かれていたから、確かなんじゃろ。一応、苦さの強弱があるようで、『少しだけ苦い』から『泣きたくなるほど苦い』まで種類が豊富じゃった。しかし、塗り薬に苦みが必要なんじゃろか……?
鑑定したおかげで、思わぬ発見もあったわい。
気付け薬の原料が醤油の実でな。強い塩気と味を利用して、普段から気付け薬として使っているそうじゃ。カタシオラまでの旅でもそんなことを聞いたのぅ。あれは、赤族の村でだったか……
塩気があるのを知っているのに、醤油の実を料理に使う発想はなかったそうじゃ。どうにも強い臭気から敬遠していたらしくてな。塩は山へ行けばたくさん採れるから、嫌々醤油の実を使う必要なんてなかったんじゃと。
森や山で貴重なはずの塩がたくさんとは……岩塩の層でもあるんじゃろか? 小鬼たちの指さす山は、遠目で見る限り、木が生い茂る普通の山なんじゃがな。
人や他の魔族なども来ない場所じゃから、塩の利権で争うこともないはずじゃ。このまま今まで通り、野山で生活する者たちの共通財産にしておけばええ。そこに醤油の実が加われば、塩が尽きる心配もないはずじゃて。
儂の料理によく用いていると教えたら、小鬼たちは驚いていた。昨夜の料理にも使っていたんじゃがのぅ。ナスティが作ったステーキソースにも混ぜられておるし、なんなら主力になれる調味料じゃ。そんなことを伝えたので、早速使い出すかもしれん。
なんだかんだと砦で寛がせてもらっていたら、時間は昼を過ぎとった。
休憩させてもらった礼にと、砦の料理番と一緒に昼ごはんを作り、皆で食べ終えてから儂らは旅を再開するのじゃった。
池のほとりの砦をあとにした儂らは、のんびり進んでおる。歩く速さはロッツァに一任でな。本調子に戻りつつあるから、時間が経つごとに速度が増しとるよ。
目的地として王都を設定しているが、そこまでは自由なもんじゃて。門番の赤鬼さんに教えてもらった魔物たちの村落を巡るのも良いかもしれん。好戦的でなく平和的な部族も多いそうでな。砦に住まう者たち同様、大きな家族のように生活しとるそうじゃよ。
「じいじ、全部に寄るの?」
「いや、通り道にあるのだけでいいじゃろ」
「道すがらにあるんですか~?」
ルーチェに答えた儂に、ナスティが更に問うてきた。ナスティはロッツァの甲羅に乗っておって、その背中で隠れたルーチェは儂からは見えん。出発した時のままなら、ロッツァの首に跨っているはずじゃ。
二人は周囲を目視する為に馬車から出ておるんじゃ。マップを見られるのが儂しかおらんので、必然的に案内役に決まってのぅ。周辺の警戒などは、家族で代わりばんこにこなしとるわけじゃよ。
そうは言っても、相変わらずマップに全てを任せる皆ではないからの。日本にあったナビみたいなことはしとらん。一から十まで道順を知ったら、楽しみが減ってつまらないんじゃと。
「一ヶ所……いや、二ヶ所は立ち寄れるんじゃないかのぅ」
「そうですか~。友好的だったらいいですね~」
広域マップで確認した限りでの答えになるが、ナスティにはそれで十分だったみたいじゃよ。
「しかし、これって儂だけ楽しとらんか?」
「休める時に休まんと疲れるで。おとんがウチらにそう言ってたんやろ?」
馬車の中でだらけ切ったカブラが、儂の独り言に反応してくれた。
馬車が通れるくらいの広さがあるからと、儂はずっと車内でな。特にする作業もない儂の左右には、クリムとルージュがもたれかかって寝ておる。
何がしたいのか分からんバルバルは、馬車の天井に逆さまになって貼り付いとるよ。時折、身体を伸ばしたり、細めたりしとる……そうかと思えば、広くない馬車の中を跳ね回ったりもしとってな。家族に当たらんように跳んどるから、移動や攻撃の練習なのかもしれん。
「じいじー、この先から川の音がするよー。今日はそこで休む?」
ルーチェが儂に聞くが、馬車を曳くロッツァの中では既に決まっとるんじゃろな。身体に感じる風が弱まり、足音も小さく静かになっていっとるわい。
ロッツァが歩みを止めて、河原を今日の宿としたのは夕刻じゃった。風呂の支度を家族に任せて、儂は晩ごはん作りを始める。テリヤキラビとキノコのバター醤油炒め、それにけんちん汁が今日の献立じゃ。
風呂を終え、晩ごはんも済ませた儂らはそろそろ寝る時間じゃよ。《結界》をかけて、横になろうとしたそんな時に、ルーチェとナスティが夜空へ向かって魔法を放った。
「てりゃ!」
「覗き見は感心しませんよ~」
二人の狙う先は同じだったようで、ルーチェの《石弾》とナスティの《水砲》が空中でぶつかりよった。魔法の威力に差があるからのぅ。ぶつかったというより、石が水に弾かれたと言ったほうが正しいかもしれん。
しかし、ルーチェは動じず、二の矢を放つのを忘れておらんかった。魔法は牽制役で、本命は石礫の投擲だったらしい。
『ガンッ! ゴンッ! ……カサカサ、トサッ』
と三連続で音が響いた。最後だけは多少間が開いたが、確実にルーチェとナスティの行動による結果じゃろ。
落下音にいち早く反応して駆け出したのはルージュじゃ。それを追ってバルバルが向かっとる。
「《堅牢》」
相手の姿が見えなくなる前になんとかかけられた魔法は、これだけじゃったよ。
「特に何もして来んから放置してたんじゃが、気付いていたのか……」
「視線は感じてました~」
警戒を解かずに、ナスティが答える。
「鬼さんたちの家を出てから、ずっと見てたよね?」
ルーチェはロッツァの右に立ち、落下音のしたほうを見ていた。クリムはロッツァの背に乗り、まだ上空を眺めとる。
突然の出来事に対応できんかったのは、カブラだけじゃ。手足を伸ばしてしがみついてきて、儂を雁字搦めにしておるよ。それでも、
「ルーチェはん、ちゃうで。カタシオラを出てからずっとや」
真面目な顔でそう言っておった。
「ってことは、テウの後ろにいる人がやったのかな?」
「そうかもしれん」
カブラに拘束されて身動きできん儂は、ルーチェに答える。テウと言うのはキメラの子でな。儂らに幾度もちょっかいをかけてきとる妙な連中の手先にされとったんじゃ。今はカタシオラで暮らしとる。
十数メートル先の藪ががさごそ音を立てたので、皆の視線がそちらへ向く。出て来たのはバルバルを頭に乗せたルージュ。その表情には元気がなかった。どうやら目当ての物はなかったようじゃ。
ただし、空振りってわけでもなくて、菱形の何かを持っていたよ。大きさや形から言って凧に違いないと思うんじゃが、尻尾も糸も見当たらん。切れて紛失したのではなく、最初から付いていないようでな。
「ウカミですね~」
「また珍しい物が出てきたものだ」
ルージュの持つ凧を見たナスティとロッツァが、とても驚いた顔をしておった。
「ウカミ?」
ルーチェが首を傾げて儂に聞いてくるが、儂も知らん単語じゃからな。首を振ることしかできん。
「従魔のような……道具の一種だな。見聞きできる距離、操れる範囲は使い手の力量次第で際限なく広がるぞ」
「でも~、アサオさんくらい潤沢な魔力がなければ~、扱えませんよ~?」
ロッツァの解説にナスティが首を捻った。
「っちゅーことは、おとん並みの相手がいるんやな」
儂に絡みついたままのカブラが、そう言いながら頷く。そして、儂が動けんのを確認したルージュとバルバルは、カブラの上からしがみついてくるのじゃった。
カブラたちから解放された儂は、ウカミと呼ばれる凧を受け取る。鑑定しても、『非常に噛み応えのある素材ですが、美味しくありません』と出るだけで、持ち主やその効果などの情報が出てくれん。
食べられるかどうかや、下処理の仕方などが分かるように育った鑑定さんの弊害かのぅ……とりあえず証拠の品として、【無限収納】に仕舞っておこう。
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