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第三章 ~学院と盟友~

第五十二話 ~ハルメシア学院~

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 神発暦3515年 秋


「なぁ、お前も今日入学するのか?」

「うん、そうだよ。それとレオンって呼んでよ」


 僕は貴族の少年から助けたウリエと言う少年と共に帝都の通りを歩いていた。


「じゃあ、レオン。どうして俺を助けたんだ?」

「あまり見ていて気分のいいものじゃないし、それにあのままだと、君があの子を殺しちゃいそうだったから」

「また、それか。何を持って俺がワザとやられていたと思ってるんだ?」

「それは内緒かな」

「変なやつ」

「ところでさ、ウリエって一般入学?」

「だったら何だ?」

「あと十分で一般の集合時間だけど大丈夫?」


 僕は噴水のある広場の中心にある大きな時計を指差して訪ねた。


「ヤバッ」


 ウリエはそう言うと、さよならの挨拶もなしに急いで走っていった。


「意外と抜けてるのかな?」


 僕はそんな独り言を言いながらゆっくりと歩いていった。








 帝都ハルメシア学院。そこは帝都周辺の3つの都市や村の13歳になった男女が将来冒険者や騎士、魔道士を目指すための第一歩を踏みしめる場所であった。
 その歴史は古く、かつて初代皇帝と共に旅をした4人の英雄の一人ハルメシアが創設した学院であり、今年で創設230年を迎える。





 僕が学院の貴族の入り口のところまで歩いていると、一人の貴族の女性が門の前でメイドと共に立っていた。僕はそれを見て小走りで駆け寄る。


「母上。お久しぶりです」

「おお、レオン。こんなに大きくなって」


 レオンの母、アンナは強くレオンを抱きしめる。


「母上。そこまで大きくなってませんよ。まだ13歳ですし」

「この三年は本当に長く感じましたよ。レオン」

「父上とはお会いになられましたか?」

「ええ、ドナーにはもう会いましたよ。しっかりお灸を添えました」

「どうしてですか?」

「旅出るのは許しましたが、まさか3年間もかわいい息子の一人に会うことすらできないだなんて、それにレオンが帰るのが入学の日と同じと聞いたときには倒れそうになってしまいました」

「申し訳ありません。母上。それは僕が父上にお願いしたことなんです」

「どうしてそのようなことを?。母が嫌いですか?」

「いえ、母上は大好きです。ですが僕は少しでも強くなりたいと思って、最後の一月は一人だけで生き抜く訓練をしてました」

「そう、もう立派な戦士なのね」

「はい。ところで母上、テレサは来ていないのですか?」

「おかしいわね。あれほど会うのを楽しみにしてたのに」

「そうですか」

「まぁ、今日の晩餐会には姿を見せるはずだから」

「そうですか。それでは、また後で母上」

「いろんなお話を聞かせて頂戴ね」

「はい」



 僕は母との短い再会を終えて学院の中に入った。学院の中は僕は前世で一度も入ったことはないが、おそらく大学のような作りになっているように思えた。広大な土地にいくつもの巨大な建造物が目に付く。

 そして入学式典が開催されるのは巨大な建造物の中でも一際目を引く、非常に豪華な外装に彩られた建物の中であった。

 僕がその建物の中に入ると、外と同様に内装も豪華であり、床にはふかふかの絨毯が敷かれていた。そんな豪華な内装を見ながら受付の場所に付く。


「お名前と招待状を」

「どうぞ」

「確認します。......ご入学おめでとうございます。レオン・マルク様」


 受付の人がそう言うと、後ろの大きめのドアが開く。

 ドアの先ではたくさんの生徒達による喧騒が広がっていた。とは言っても騒いでいるのは一般の人が殆どで服装からして貴族の人達は静かに待っていた。僕は適当に空いている席に座ると入学式典が始まるのを待っていた。すると、会場の灯りが消え会場が闇に包まれた。

 そして、壇上だけが明るく光っていた。そして、壇上に花ビラが舞うと段々と集束していき一気に弾けた。すると、そこには一人の女性が立っていた。パット見年齢は30歳くらいのように見える。


「ようこそ、ハルメシア学院へ。私が学院長のラワー・ハルメシアだ」


 学院長の魔法による登場から何ら滞りなく学院長の挨拶が行われていった。そして、学院長の挨拶が終わったかに思ったとき僕は思いも寄らない言葉を耳にした。


「それでは、これより入学検査において優秀な成績を収め入学した者に勲章を授与しよう」

(えっ!?。なにそれ)

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