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第二章 ~遥かなる高みへ~
第三十四話 ~マルク領防衛戦・混乱~
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神発暦3512年 秋
「報告です」
「もうせ」
ミラは右翼にて、ホルンの率いる左翼からの爆発音についての報告を受けていた。
「現在、ホルン第四騎士様率いる左翼が奇襲を受け前線が壊滅的な状態となっております」
「やはりか、どこからの奇襲だ?」
「恐らく、左翼の前方に流れている川で身を隠していたと思われます」
「!? ホルンの偵察隊は何をしていたのだ?」
「確かなことはわかりませんが、昼過ぎに襲撃予定だったことで偵察兵に巡視の命令を出していなかったと思われます」
「あの七光りめ! 学院で何を学んでいたんだ」
ホルン・キオッジャは学院で騎士学科の六人選抜に選ばれるほど個の強さは優秀であったが、噂では士官としての成績はあまり良くなかった。しかし、伯爵の跡取りということもあって、今回一師団を任されていた。
今回の伯爵軍最大の穴を敵につかれた結果となってしまい。ミラは頭を悩ませる。
「くそ、第三と第四旅団は左翼の援護に向かわせろ、空いた穴は我ら第一旅団と第五旅団で埋める」
「はっ!」
≪頼むから間違っても、防衛戦で早々に指揮官が前線に突っ込でくれるなよ≫
ホルンの指揮する左翼は、ミラの軍勢と比べ、経験不足なため指揮官による指揮がなければ左翼前線が完全に崩壊する危険性があった。
*
「くそ、くそ、何が昼過ぎに交戦予定だ。索敵に行った偵察兵め、後で覚えとけ!」
「どうしましょう、既に前線は崩壊しかけてます。このままだと突破されます!」
「そんなことわかっている!」
現在ホルンと副官のコールは奇襲によって崩壊した第六旅団と第七旅団の援護のために、前線にて敵の進行を防いでいた。
「それに団長のリジットとロメオはどこに行った?」
奇襲を受けた第六旅団と第七旅団を率いていた二人の団長の姿が見えないことに苦言を吐いた。
「わ、わかりません」
「くそ、あの役立たずどもめ、帰ったら降格させてやる!」
「そりゃぁ、無理だ」
「! 誰だ!?」
「危ない」
ホルンはコールに押し飛ばされた。
〔ドォォオン〕
そして、先ほどまでホルンが立っていた場所で轟音と共に砂煙が舞う。
「コ、コール?」
「がはっ!」
「おっ! なかなか頑丈な奴だなお前」
砂煙が風に流され、視界がハッキリすると巨大な渦巻き状の角を生やした青い肌のオーガに踏みつぶされたコールの姿が現れた。
「逃、げ、てくだ、さい」
コールは必死にホルンに呼びかける。
「あんたがここの大将か? さっきの二人よりは強そうだなぁ」
青いオーガは笑いながらホルンに語り掛ける。
「コールから離れろ、ミアー・オーガ!」
ホルンはオーガの肌が青かったことから、第4等級の水魔法を使うミアー・オーガだと判断した。
≪くそ、第4等級の魔物はヴォルカンだけじゃなかったか≫
ホルンがそう思っていると、オーガの顔が見るからに不機嫌になった。
「あぁ? 俺をあんな下っ端と勘違いしてんじゃねえぞぉぉおおお!」
〔ビリビリ〕
オーガからとてつもない殺気が放たれる。
「放出魔法・岩弾」
〔ダンッ〕
オーガはホルンの後方から飛んできた岩の塊を避ける。
そして、突如現れた兵士が踏みつぶされていたコールを担ぎ後退する
「はぁ、はぁ」
オーガに潰されていたコールはかろうじて意識はあるようであった。
「ご無事ですか?ホルン様」
「お前たちは?」
「我らはミラ師団長の命により救援に参りました。第三旅団の者です。ここは我らに任せてお下がりください」
「なっ!なめるな、まだ私はやれるぞ!」
「指揮官がいなくなって左翼が混乱しています。どうかここは!」
「!?」
ホルンはその言葉を聞いて、自身が左翼の指揮官として冷静さを失っていたことにはっと気づく。
「くっ、任せたぞ」
「はっ!」
そういうと、ホルンは第三旅団の者に担がれたコールと共に後退していく。
「お話は終わったか?人間」
「あぁ、ここは私達がお相手いたそう。オラクル・オーガ!」
「さっきの馬鹿とは違うようだなぁ! 名前くらいは聞いておいてやるよ」
「我は、第三旅団長モリス・グッチ」
「第三旅団副長カーナ」
「同じく副長ロック」
「さっきの雑魚二人よりは楽しめそうだ。我が名は【シュテン】復讐者だ!」
*
第三旅団によってコールが救助されている頃ドナーは後方で戦いが始まったことを感じていた。
「戦いが始まったか」
「えぇ、左翼が奇襲を受けているは、でも何とか持ちこたえてはいる」
「そうか、オラクル個体はまだ出てきてないか?」
「まだ、そこまでの力の波動は、、、!?きた」
「どこだ?」
「右翼にかなりの強い魔力を感じる!」
「オラクルなのか?マーシャ」
「おそらくは、ここまで凶悪な魔力はまず間違いない」
「それじゃぁ、討伐と行きますかな?ドナー殿」
「あぁ、いくぞ!」
*
ミラの率いる右翼も左翼同様、予定よりも早い襲撃を受けていた。およそ二千のゴブリン種と八百のオーク種、そして二百のオーガ種の群れで、平均等級はおよそ7等級の群れで、それに対応している人数はおよそ第一旅団と第二旅団合わせて千三百と数は圧倒的不利であったが、各旅団の平均等級は6等級であった。
「第五旅団は敵を両側から囲んで! 第一旅団は正面から押し返せ!」
ミラは予定より早い敵の襲撃にも臆せず、戦地にて的確に方々に指示を飛ばしていた。
「報告です」
「どうした?」
「第二旅団とヴォルカン・オーガが率いるおよそ三千の敵が交戦を開始」
今回の防衛戦では、緊急招集だったため十分な人手が集まらず、一旅団の人数はおよそ五百から六百と小規模となっていた。
そして、旅団の副長以上であれば第5等級以上の敵とは戦えることができるが、偵察隊による事前の索敵によれば、ヴォルカン・オーガが率いる群れには少なくとも第5等級の魔物が五体は確認されていた。
「まずいな。第五旅団だけでは戦力が足りない」
「隊長! ここの指揮は俺に任せて、第五旅団の援護を」
ミラに声をかけたのは、先遣隊としてマルク領に来た時にも共に連れ添った、副官のカールであった。
「すまない! 任せる」
「こちらを片づけたら、すぐに援護に向かいます」
「報告です」
「もうせ」
ミラは右翼にて、ホルンの率いる左翼からの爆発音についての報告を受けていた。
「現在、ホルン第四騎士様率いる左翼が奇襲を受け前線が壊滅的な状態となっております」
「やはりか、どこからの奇襲だ?」
「恐らく、左翼の前方に流れている川で身を隠していたと思われます」
「!? ホルンの偵察隊は何をしていたのだ?」
「確かなことはわかりませんが、昼過ぎに襲撃予定だったことで偵察兵に巡視の命令を出していなかったと思われます」
「あの七光りめ! 学院で何を学んでいたんだ」
ホルン・キオッジャは学院で騎士学科の六人選抜に選ばれるほど個の強さは優秀であったが、噂では士官としての成績はあまり良くなかった。しかし、伯爵の跡取りということもあって、今回一師団を任されていた。
今回の伯爵軍最大の穴を敵につかれた結果となってしまい。ミラは頭を悩ませる。
「くそ、第三と第四旅団は左翼の援護に向かわせろ、空いた穴は我ら第一旅団と第五旅団で埋める」
「はっ!」
≪頼むから間違っても、防衛戦で早々に指揮官が前線に突っ込でくれるなよ≫
ホルンの指揮する左翼は、ミラの軍勢と比べ、経験不足なため指揮官による指揮がなければ左翼前線が完全に崩壊する危険性があった。
*
「くそ、くそ、何が昼過ぎに交戦予定だ。索敵に行った偵察兵め、後で覚えとけ!」
「どうしましょう、既に前線は崩壊しかけてます。このままだと突破されます!」
「そんなことわかっている!」
現在ホルンと副官のコールは奇襲によって崩壊した第六旅団と第七旅団の援護のために、前線にて敵の進行を防いでいた。
「それに団長のリジットとロメオはどこに行った?」
奇襲を受けた第六旅団と第七旅団を率いていた二人の団長の姿が見えないことに苦言を吐いた。
「わ、わかりません」
「くそ、あの役立たずどもめ、帰ったら降格させてやる!」
「そりゃぁ、無理だ」
「! 誰だ!?」
「危ない」
ホルンはコールに押し飛ばされた。
〔ドォォオン〕
そして、先ほどまでホルンが立っていた場所で轟音と共に砂煙が舞う。
「コ、コール?」
「がはっ!」
「おっ! なかなか頑丈な奴だなお前」
砂煙が風に流され、視界がハッキリすると巨大な渦巻き状の角を生やした青い肌のオーガに踏みつぶされたコールの姿が現れた。
「逃、げ、てくだ、さい」
コールは必死にホルンに呼びかける。
「あんたがここの大将か? さっきの二人よりは強そうだなぁ」
青いオーガは笑いながらホルンに語り掛ける。
「コールから離れろ、ミアー・オーガ!」
ホルンはオーガの肌が青かったことから、第4等級の水魔法を使うミアー・オーガだと判断した。
≪くそ、第4等級の魔物はヴォルカンだけじゃなかったか≫
ホルンがそう思っていると、オーガの顔が見るからに不機嫌になった。
「あぁ? 俺をあんな下っ端と勘違いしてんじゃねえぞぉぉおおお!」
〔ビリビリ〕
オーガからとてつもない殺気が放たれる。
「放出魔法・岩弾」
〔ダンッ〕
オーガはホルンの後方から飛んできた岩の塊を避ける。
そして、突如現れた兵士が踏みつぶされていたコールを担ぎ後退する
「はぁ、はぁ」
オーガに潰されていたコールはかろうじて意識はあるようであった。
「ご無事ですか?ホルン様」
「お前たちは?」
「我らはミラ師団長の命により救援に参りました。第三旅団の者です。ここは我らに任せてお下がりください」
「なっ!なめるな、まだ私はやれるぞ!」
「指揮官がいなくなって左翼が混乱しています。どうかここは!」
「!?」
ホルンはその言葉を聞いて、自身が左翼の指揮官として冷静さを失っていたことにはっと気づく。
「くっ、任せたぞ」
「はっ!」
そういうと、ホルンは第三旅団の者に担がれたコールと共に後退していく。
「お話は終わったか?人間」
「あぁ、ここは私達がお相手いたそう。オラクル・オーガ!」
「さっきの馬鹿とは違うようだなぁ! 名前くらいは聞いておいてやるよ」
「我は、第三旅団長モリス・グッチ」
「第三旅団副長カーナ」
「同じく副長ロック」
「さっきの雑魚二人よりは楽しめそうだ。我が名は【シュテン】復讐者だ!」
*
第三旅団によってコールが救助されている頃ドナーは後方で戦いが始まったことを感じていた。
「戦いが始まったか」
「えぇ、左翼が奇襲を受けているは、でも何とか持ちこたえてはいる」
「そうか、オラクル個体はまだ出てきてないか?」
「まだ、そこまでの力の波動は、、、!?きた」
「どこだ?」
「右翼にかなりの強い魔力を感じる!」
「オラクルなのか?マーシャ」
「おそらくは、ここまで凶悪な魔力はまず間違いない」
「それじゃぁ、討伐と行きますかな?ドナー殿」
「あぁ、いくぞ!」
*
ミラの率いる右翼も左翼同様、予定よりも早い襲撃を受けていた。およそ二千のゴブリン種と八百のオーク種、そして二百のオーガ種の群れで、平均等級はおよそ7等級の群れで、それに対応している人数はおよそ第一旅団と第二旅団合わせて千三百と数は圧倒的不利であったが、各旅団の平均等級は6等級であった。
「第五旅団は敵を両側から囲んで! 第一旅団は正面から押し返せ!」
ミラは予定より早い敵の襲撃にも臆せず、戦地にて的確に方々に指示を飛ばしていた。
「報告です」
「どうした?」
「第二旅団とヴォルカン・オーガが率いるおよそ三千の敵が交戦を開始」
今回の防衛戦では、緊急招集だったため十分な人手が集まらず、一旅団の人数はおよそ五百から六百と小規模となっていた。
そして、旅団の副長以上であれば第5等級以上の敵とは戦えることができるが、偵察隊による事前の索敵によれば、ヴォルカン・オーガが率いる群れには少なくとも第5等級の魔物が五体は確認されていた。
「まずいな。第五旅団だけでは戦力が足りない」
「隊長! ここの指揮は俺に任せて、第五旅団の援護を」
ミラに声をかけたのは、先遣隊としてマルク領に来た時にも共に連れ添った、副官のカールであった。
「すまない! 任せる」
「こちらを片づけたら、すぐに援護に向かいます」
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