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第二章 ~遥かなる高みへ~

第二十五話 ~強くなるために~

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 神発暦3512年 夏


「うーん、神の子は高位の加護を受けた者のことを言うはずだし、それに、どうして霊魂神の加護があることをいわなかったのだろう?」


 なぜ神父様がぼくを【神の子】といわなかったのか、霊魂神の加護が備わっていることをいわなかったのか、その理由を考察していた。


「ぼくが【神の子】なら、〈霊魂神の加護・高位〉が備わっているはずだし、それを言わない理由が思いつかない」


 いつまでたっても答えの出ない疑問に、レオンは飽き飽きした。


「まぁ、いつまでも考えても仕方がないか、神父様の手紙の通り、これを聖堂の司教様に渡せば、なにかわかるだろう」


 ぼくはそう言って、神父様から渡された手紙を見た。そして、日本語で書かれた、ぼくを転生させた神様の手紙を読み返した。


「とりあえず、ぼくが【神の子】かどうかは置いておいて、最後の一文が謎だ。どうして分解魔法を使うと、借りを作ったことになるのだろうか?」


 よくわからない、神同士の関係性を知りたくなった。


「とりあえず、明日にでもパレス先生の書庫で何かないか見に行こう」


 マルク領にはパレス先生が、自身の持っている大量の本を町の人々が好きな時に読んでいいように、書庫を開放していた。確かに屋敷の中にも本部屋はあるが、専門的な本はほとんど置いていない。








 昼過ぎになり、ウル爺が久しぶりに、ぼくとしては2,3日ぶりに剣の稽古をつけに来た。


「本当に良かった、坊ちゃんが目を覚まさないと聞いた時には、このウル爺どれほ自分を責めたことか。もっと私が強ければこのようなことにはならなかったものを」

「ウル爺の所為じゃないよ、ぼくが勝手に森に行ったのが悪いんだ。それに、ウル爺はとっても強いよ。だって、あの時だって、クロウ・ベアーやウィンド・ウルフを一瞬で狩っていたじゃないか」

「そう言っていただけると、このウル爺。心が軽くなります。それと、坊ちゃんもきっと学院に行くお歳になるころには、あれくらいのことはできるようになっておりますとも」

「ほんと!?」

「えぇ、本当ですとも。このウル爺が約束いたします。ただし、きちんと自身で訓練を欠かさずにすることが大事ですぞ、坊ちゃん」

「うん、ぼくウル爺みたいにきっと強くなってみせるよ」

「ハハハ、その意気ですぞ。して、聞いたとこによると、教会で加護を確認したとか?」

「してきたよ」

「結果はどうでしたか?」

「聞いて驚くといいウル爺。なんとぼくは、3柱もの神様から加護を頂いたのだ」

「なんと!、それはすごい」

「戦神、滅神、運神の加護を貰ってね、戦神の加護に関しては中位の加護だって」

「ほう、それはよぉございましたな」

「だから、今日からさらに強くなるために新しい技を、ウル爺の使っていた魔装を使えるようになりたいんだ」

「なるほど、分かりました。ですが、その年から、魔装を使いこなせるようになるための修行はなかなか難しい。まずは、現在の坊ちゃんがどこまで、付与魔法を使えるか見せていただけますか?」

「わかったいくよ。〈付与魔法エンチャント・雷足〉、〈付与魔法エンチャント・雷剣〉」


 ぼくはウル爺に言われ、自身で制御できる自身のある付与魔法を見せた。


「なるほど、さすがに〈戦神の加護・中位〉を授かるだけはありますな。しかし、まだまだその程度では魔装を教えることはできません」

「どうして?」

「坊ちゃんが今使えるようになりたいと願う魔法は、付与魔法の最高位、極めれば国家級の力すら有するといわれる魔法でございます。
 そのため、扱うためには、普通の肉体付与を全身に駆けても魔力が枯渇しないよう制御する技術。さらに、質の高い魔力を膨大に持っていなければ発動すらしないでしょう」

「そうなんだ」

「えぇ、ですから今、坊ちゃんが魔装を教わるためには、最低でもその付与魔法を全身にかけても、大丈夫なくらいの魔力操作ができるようになる必要がございますな。質の高い魔力に関しては、毎日魔力を練っていれば自然とついてきます」

「わかったよ。今はこの付与魔法を全身で使えるように頑張る」

「それでは、坊ちゃんがその付与魔法を使いこなせるようになるために、ウル爺も力を貸しましょう。さぁ、坊ちゃん付与魔法を使って、打ち合いをしましょうか」


 ウル爺がそう言うと、ウル爺も付与魔法を使ったのだろう。ぼくの雷とは違い、ウル爺は風を少し纏っている。


「さぁ、坊ちゃんいつでも」

「いくよ、ウル爺」


 そう言ってぼくは、跳躍した。













「そうか、ウルフリック殿ともう付与魔法付きで稽古を始めたのか」

「はい、でもウル爺に掠りすらしませんでした」

「ハハハ、それはそうだろう。ウルフリック殿は現役を引退したとはいえ、元3等級冒険者だ。子供であるお前では焦らせることもできないだろう」


 父の言った通り、あの後の訓練が終わった後、足元を見たときに気付いたが、一歩もウル爺はあの場所から動いていなかった。


「はい、先はまだまだ遠いようです」


 ぼくと父がそんな話を食事中していると、


「ねぇ、パパとお兄ちゃん。今日はめでたい日でこんなに豪華な夕食なんだよ。そんな泥臭いお話はもう終了!」

「ごめんよ、テレサ」

「許します。それでね、お兄ちゃん、今日ね私ね、、、」


 こうして、ぼくはテレサのお話をにこやかに聞きながら思った。


≪今日は、ぼくが主役だと思うんだが≫
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