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第一章 ~誕生せし神の子~
第十七話 ~チームワーク~
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神発暦3512年 夏
今ぼく達の目の前には、ホブゴブリンによって、統率の取れた魔物の集団がいる。
ホブゴブリンを中心にゴブリン10匹が壁のように前に立ちはだかり、ホブゴブリンの後ろにいつでも援護できるように、魔法系ゴブリンが2匹構えている。
≪完全にぼく達を殺すために体制を変えたか≫
先ほどまで、一人だったぼくに対するゴブリンたちの思考は完全に狩る側として獲物を逃がさないためのものだったが、今はぼく達を完全に敵として認識している。
≪もしかしたら、このまま後ろに駆けだせば逃げれるかもしれない、でも≫
今のぼくはもう逃げるという考えには至らなかった。ぼくは今一人じゃない。仲間がいる。
「〈回復魔法・疲労忘却、治癒の風〉」
エミリーの〈回復魔法・疲労忘却〉によってぼくは、疲労の完全回復はしないが疲労を感じなくなり、〈回復魔法・治癒の風〉によって、ぼく達は傷を癒す神秘の風を纏った。これで、軽い切り傷や打撲を気にせず敵と戦える。
「〈防御魔法・不穏な気配〉、〈強度上昇〉。〈付与魔法・不可視の鎧〉」
ぼく達の先頭で大盾と鉄製の小杖を持ったマルコがぼく達に防御魔法をかけた。マルコは前衛として、敵の注意を一身に受けさらに、ぼく達の守りも強化してくれている。
〈防御魔法・不穏な気配〉は、自分の持っている武器にかける魔法で、前方の生き物の注目を集めることができる。防御職には必須の魔法だ。
〈強度上昇〉は、武器の強度を上げる魔法。
〈付与魔法・不可視の鎧〉は、相手の意識をそらす効果がある。
ちなみに、声に出して魔法を唱えたのは、チーム戦闘において互いに何をするのか確認する意図がある。魔獣や魔物は、基本的に言葉を理解できないので何をするかバレる問題ないが、隠れているときなどは声で当然存在がバレる。
≪〈守護職〉がマルコ、〈戦士職〉がぼく、〈魔放職〉がショー、そして〈回復職|〉がエミリー。4人パーティとしては偶然にしてはバランスが良い組み合わせだ≫
ぼくがそう思っていると、ゴブリン達が一斉に襲い掛かってきた。
「いくぞ、レオ。敵はお前に任せた」
「任せてくれ」
ぼくとマルコはそういうと、ゴブリンたちの方に向かって踏み出した。
〔ブンッ〕「ぎゃぁ」
ゴブリンがマルコに向かって棍棒を振った。
「〈防御魔法・反射〉」
ゴブリンの棍棒がマルコの大盾に当たると、突如ものすごい勢いで棍棒が跳ね返った。さらに、盾から衝撃波が発生して、すぐ前まで来ていたゴブリン3体が後ろに飛ばされ、その後ろから走っていたゴブリンに衝突し合計6匹がこけたり、前にいるゴブリンを抑えたりして、動きが止まった。
「〈付与魔法・雷足、雷剣〉」
〔ズバッ、ズババッ〕
ぼくはゴブリンが止まった隙を見逃さず、透かさずマルコの前に出て、6匹のゴブリンの急所である首を切り裂いた。
≪あと4匹≫
残りの4匹のゴブリンは二手に別れ両サイドからマルコの大盾の前に出てきたぼくに迫っていた。
「マルコ、右は任せた」
後ろからの指示に従いマルコは右のゴブリン達の攻撃を防いだ。
「〈放出魔法・火弾〉」
そして、左にいるゴブリンに対し、後衛のショーが4つの火球を生み出し放った。
「ぎゃっ!」「ぐぎゃぁ!」
ぼくはすぐ後ろから聞こえた2匹のゴブリンの悲鳴を聞いて、ショーの攻撃が命中したことを悟った。そして、
〔ズバッ〕〔ズバッ〕
ぼくは先ほど同じくマルコの〈防御魔法・反射〉にはじかれ、動きが鈍ったゴブリンの首を切り裂いた。
「レオ、俺たちの練習の成果が出たな」
「あぁ、このままいくぞ、みんな」
「任せておけ!」
「援護は任せろ」
「みんなは私が治すから心配しないで」
後は、今までゴブリンに命令を出していたホブゴブリンと魔法系ゴブリン2匹だが、ゴブリン10体より危険だ。相手は8等級の魔物で、特にホブゴブリンは先ほどのゴブリンよりも強い〈付与魔法〉をかけられているはずだ。
「マルコ。ぼくで何とか先に後ろのゴブリンからやる」
魔法系ゴブリンは8等級に位置付けられているが、それは魔法を使えるからで、近接戦闘は普通のゴブリンと変わらない。
「おぉ、なら俺がホブゴブリンを引き付けるから、任せとけ」
「すまない、すぐに援護に入る」
「1日中引き付け続けてやるさ!」
マルコはそういったが正直8等級のしかも〈付与魔法〉で強化されているホブゴブリンの攻撃を防ぎ続けるのはさすがにまだ辛いはずだ。
なんとか早めにゴブリン・グラントだけでもやらないといけない。
「ショー、マルコの援護をしてやってくれ」
「任せろ!」
ぼくはそう言うと、ホブゴブリンの横を突っ切った。当然ホブゴブリンがぼくに対して棍棒を振るう。
「こっちだ。〈防御魔法・不穏な気配〉」
マルコがすぐさまホブゴブリンに向かって魔法をかけた。すると、ホブゴブリンは体の向きをマルコに変え、棍棒を振るった。
「ガァァ!」〔ブン〕
「〈防御魔法・領域拡大〉」
〈領域拡大〉は、透明で強力な魔力の壁をつくる魔法で、さっきぼくが助かったのはマルコがこの魔法でぎりぎりぼくの前に壁を作ってくれたからだ。
しかし、とても魔力消費が激しく長くは続かない。
時間との戦いが始まった。
*
「なかなか、強力だなその魔法は、速いし、俺の刀が届かねえ」
〈付与魔法・風魔の鎧〉はその身に強力な風を纏うことにより、相手が武器を振ったり、魔法を放っても風の勢いに負けて、肉体に攻撃を届かせることができない、強固な鎧にもなる。
「どうした、諦めるのか?」
シュテンとウル爺の戦いは熾烈を極めていた。それは、半径百メートル以内にいれば、戦闘の余波で、下位の魔獣や魔物は細切れになってしまうほどであった。
「いいや、まだだ、そろそろ本気で行くぜ。〈変身魔法・怒鬼〉」
シュテンがそう言うと、体が一回り大きくなり、頭に生えていた角はより太くより長く変質した。
「これでなら、貴様にも刀が届く。これでおあいこだ」
「〈怒鬼化〉程度しかできないなら、拍子抜けだな。それなら私一人でも十分持つ」
「あぁ?、まさか、さっきの餓鬼が助けを呼びにいったから時間稼ぎしてるってか」
「今さら、知ったところでもう遅い、怒鬼止まりではすぐに儂を殺れはしない」
オラクル・オーガには、本気を出すときに〈変身魔法〉を自らに駆ける。そしてその姿を人から鬼に近づけるのだが、〈怒鬼化〉はその最低編で、〈鬼王化〉、〈鬼神化〉とその強さを増していく。
〈怒鬼化〉程度だとその強さは3等級の域を出ることはなく、引退した元3等級冒険者のウル爺であれば、時間を稼ぐことはたやすいことだった。
「くくくっ、あはははっ!」
「!? なにがおかしい」
「本当に、ここにきているのが俺だけだと思っているのか?」
「なんだと」
「残念でした。主からこっちの森の偵察を任されたのは俺だけじゃないんだよ。今頃、俺の兄鬼があの餓鬼殺しちまってるかもな。あははははっ!」
「きさま!」
〔キンッ〕〔ドーン〕
ウル爺とシュテンの刀と剣が重なり周囲には爆風が発生した。
≪どうか、どうかご無事で坊ちゃん≫
今ぼく達の目の前には、ホブゴブリンによって、統率の取れた魔物の集団がいる。
ホブゴブリンを中心にゴブリン10匹が壁のように前に立ちはだかり、ホブゴブリンの後ろにいつでも援護できるように、魔法系ゴブリンが2匹構えている。
≪完全にぼく達を殺すために体制を変えたか≫
先ほどまで、一人だったぼくに対するゴブリンたちの思考は完全に狩る側として獲物を逃がさないためのものだったが、今はぼく達を完全に敵として認識している。
≪もしかしたら、このまま後ろに駆けだせば逃げれるかもしれない、でも≫
今のぼくはもう逃げるという考えには至らなかった。ぼくは今一人じゃない。仲間がいる。
「〈回復魔法・疲労忘却、治癒の風〉」
エミリーの〈回復魔法・疲労忘却〉によってぼくは、疲労の完全回復はしないが疲労を感じなくなり、〈回復魔法・治癒の風〉によって、ぼく達は傷を癒す神秘の風を纏った。これで、軽い切り傷や打撲を気にせず敵と戦える。
「〈防御魔法・不穏な気配〉、〈強度上昇〉。〈付与魔法・不可視の鎧〉」
ぼく達の先頭で大盾と鉄製の小杖を持ったマルコがぼく達に防御魔法をかけた。マルコは前衛として、敵の注意を一身に受けさらに、ぼく達の守りも強化してくれている。
〈防御魔法・不穏な気配〉は、自分の持っている武器にかける魔法で、前方の生き物の注目を集めることができる。防御職には必須の魔法だ。
〈強度上昇〉は、武器の強度を上げる魔法。
〈付与魔法・不可視の鎧〉は、相手の意識をそらす効果がある。
ちなみに、声に出して魔法を唱えたのは、チーム戦闘において互いに何をするのか確認する意図がある。魔獣や魔物は、基本的に言葉を理解できないので何をするかバレる問題ないが、隠れているときなどは声で当然存在がバレる。
≪〈守護職〉がマルコ、〈戦士職〉がぼく、〈魔放職〉がショー、そして〈回復職|〉がエミリー。4人パーティとしては偶然にしてはバランスが良い組み合わせだ≫
ぼくがそう思っていると、ゴブリン達が一斉に襲い掛かってきた。
「いくぞ、レオ。敵はお前に任せた」
「任せてくれ」
ぼくとマルコはそういうと、ゴブリンたちの方に向かって踏み出した。
〔ブンッ〕「ぎゃぁ」
ゴブリンがマルコに向かって棍棒を振った。
「〈防御魔法・反射〉」
ゴブリンの棍棒がマルコの大盾に当たると、突如ものすごい勢いで棍棒が跳ね返った。さらに、盾から衝撃波が発生して、すぐ前まで来ていたゴブリン3体が後ろに飛ばされ、その後ろから走っていたゴブリンに衝突し合計6匹がこけたり、前にいるゴブリンを抑えたりして、動きが止まった。
「〈付与魔法・雷足、雷剣〉」
〔ズバッ、ズババッ〕
ぼくはゴブリンが止まった隙を見逃さず、透かさずマルコの前に出て、6匹のゴブリンの急所である首を切り裂いた。
≪あと4匹≫
残りの4匹のゴブリンは二手に別れ両サイドからマルコの大盾の前に出てきたぼくに迫っていた。
「マルコ、右は任せた」
後ろからの指示に従いマルコは右のゴブリン達の攻撃を防いだ。
「〈放出魔法・火弾〉」
そして、左にいるゴブリンに対し、後衛のショーが4つの火球を生み出し放った。
「ぎゃっ!」「ぐぎゃぁ!」
ぼくはすぐ後ろから聞こえた2匹のゴブリンの悲鳴を聞いて、ショーの攻撃が命中したことを悟った。そして、
〔ズバッ〕〔ズバッ〕
ぼくは先ほど同じくマルコの〈防御魔法・反射〉にはじかれ、動きが鈍ったゴブリンの首を切り裂いた。
「レオ、俺たちの練習の成果が出たな」
「あぁ、このままいくぞ、みんな」
「任せておけ!」
「援護は任せろ」
「みんなは私が治すから心配しないで」
後は、今までゴブリンに命令を出していたホブゴブリンと魔法系ゴブリン2匹だが、ゴブリン10体より危険だ。相手は8等級の魔物で、特にホブゴブリンは先ほどのゴブリンよりも強い〈付与魔法〉をかけられているはずだ。
「マルコ。ぼくで何とか先に後ろのゴブリンからやる」
魔法系ゴブリンは8等級に位置付けられているが、それは魔法を使えるからで、近接戦闘は普通のゴブリンと変わらない。
「おぉ、なら俺がホブゴブリンを引き付けるから、任せとけ」
「すまない、すぐに援護に入る」
「1日中引き付け続けてやるさ!」
マルコはそういったが正直8等級のしかも〈付与魔法〉で強化されているホブゴブリンの攻撃を防ぎ続けるのはさすがにまだ辛いはずだ。
なんとか早めにゴブリン・グラントだけでもやらないといけない。
「ショー、マルコの援護をしてやってくれ」
「任せろ!」
ぼくはそう言うと、ホブゴブリンの横を突っ切った。当然ホブゴブリンがぼくに対して棍棒を振るう。
「こっちだ。〈防御魔法・不穏な気配〉」
マルコがすぐさまホブゴブリンに向かって魔法をかけた。すると、ホブゴブリンは体の向きをマルコに変え、棍棒を振るった。
「ガァァ!」〔ブン〕
「〈防御魔法・領域拡大〉」
〈領域拡大〉は、透明で強力な魔力の壁をつくる魔法で、さっきぼくが助かったのはマルコがこの魔法でぎりぎりぼくの前に壁を作ってくれたからだ。
しかし、とても魔力消費が激しく長くは続かない。
時間との戦いが始まった。
*
「なかなか、強力だなその魔法は、速いし、俺の刀が届かねえ」
〈付与魔法・風魔の鎧〉はその身に強力な風を纏うことにより、相手が武器を振ったり、魔法を放っても風の勢いに負けて、肉体に攻撃を届かせることができない、強固な鎧にもなる。
「どうした、諦めるのか?」
シュテンとウル爺の戦いは熾烈を極めていた。それは、半径百メートル以内にいれば、戦闘の余波で、下位の魔獣や魔物は細切れになってしまうほどであった。
「いいや、まだだ、そろそろ本気で行くぜ。〈変身魔法・怒鬼〉」
シュテンがそう言うと、体が一回り大きくなり、頭に生えていた角はより太くより長く変質した。
「これでなら、貴様にも刀が届く。これでおあいこだ」
「〈怒鬼化〉程度しかできないなら、拍子抜けだな。それなら私一人でも十分持つ」
「あぁ?、まさか、さっきの餓鬼が助けを呼びにいったから時間稼ぎしてるってか」
「今さら、知ったところでもう遅い、怒鬼止まりではすぐに儂を殺れはしない」
オラクル・オーガには、本気を出すときに〈変身魔法〉を自らに駆ける。そしてその姿を人から鬼に近づけるのだが、〈怒鬼化〉はその最低編で、〈鬼王化〉、〈鬼神化〉とその強さを増していく。
〈怒鬼化〉程度だとその強さは3等級の域を出ることはなく、引退した元3等級冒険者のウル爺であれば、時間を稼ぐことはたやすいことだった。
「くくくっ、あはははっ!」
「!? なにがおかしい」
「本当に、ここにきているのが俺だけだと思っているのか?」
「なんだと」
「残念でした。主からこっちの森の偵察を任されたのは俺だけじゃないんだよ。今頃、俺の兄鬼があの餓鬼殺しちまってるかもな。あははははっ!」
「きさま!」
〔キンッ〕〔ドーン〕
ウル爺とシュテンの刀と剣が重なり周囲には爆風が発生した。
≪どうか、どうかご無事で坊ちゃん≫
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