奪われし者の強き刃

第2章 vs陸王

第2章7話 守る戦い 荒太vs乾

第１の基地に侵入してきた乾と対峙する新田。乾が繰り出した拳をなんとか間一髪でかわした。

　「あぶな。相当早いな、パワーも桁外れだ。」

　「よく避けた。褒めてやる。」

　「お前に褒められても嬉しくねぇよ。」

新田は自身の右腕にガントレットをはめた。新田は師団長を除いて、全師団の中で最強クラスの超至近距離タイプの団員である。そんな彼が強敵の時のみに使うのがガントレットである。このガントレットは新田専用であり、破壊力が増すのはもちろん強度も高く防御にも向いている逸品である。

　「行くぞ。」

　「来い！」

新田がガントレット付けた時のパンチの威力は一撃で10階建てのビルを粉砕する程の威力がある。新田のパンチを受け止めようとした乾だったが、寸前で危険に気づき回避した。

　「よく避けた。褒めてやる。」

　「成程強い。こちらも本気でいかないと無粋というもの。」

乾はすでに大きかった筋肉をさらに肥大化させ、ボクシングのように構えた。

　「ゆくぞ。」

　「やってやるよ。」

乾と新田はひたすらに打ち合った。しかし、新田は打ち合いの最中乾に対してある違和感を覚えた。乾は戦闘中、艮の黒い霧発生や坤の生物改造のような特殊な能力を使っていなかった。

　「なぜ使わない。まさか手加減しているのか。」

新田がそんなことを考えていると、乾の拳が新田に直撃した。

　「戦いの最中に考え事とはずいぶんと余裕があるようだ。忘れたのか第侵攻の際の南の島のことを。」

15年前の第1次侵攻の際、当時の沖縄と小笠原諸島はある1体の魔物によって全滅寸前まで追いやられていた。その際の生き残りの人の証言によると、その魔物の存在自体が『災害』であったと言っていた。

　「がはっ、聞いてるよ。破壊の限りを尽くし辺りを火の海にしたってな。」

　「それが我だ。あの時は腹が立っていたのでな、見たのも全てを壊したかった。」

　「今は違う、我に立ち向かうものが出てきてさぞ気分がいい。故に壊す。汝の全てを我の力を持って壊す。これほどの至福はない。」

　「させるかよ。俺は第1師団副師団長、新田荒太。師団長の居場所を守るため団員の命を守るため市民の安全を守るため俺は『最強の盾』をなり、お前の前に立ちはだかろう。」

　「いいだろう。汝いや荒太といったか簡単に壊れてくれるなよ。」

その後、乾と新田は再び激しく殴り合った。

その直後に悠は第１の基地に到着し、彩音から事情を聴き訓練場へ駆けつけた。駆けつけた悠が目にしたのは倒れている新田に今にも止めを刺そうとしている乾の姿だった。

　「さらばだ荒太とやら。楽しかったぞ。」

拳を振り下ろした瞬間、間一髪で悠は新田の救出に成功した。

　「荒太、大丈夫か！」

新田は目は開いていなかったが、息はあったため悠は一安心し、訓練場の端に荒太を寝かした。

　「お前が荒太にあんなことしたのか。」

　「いかにも。なかなか楽しませてもらったぞ。だが、相性が良くなかった。我は艮殿や坤殿のように特殊な力がない代わりに圧倒的なパワーとスピード、そして、毒や痛みといったありとあらゆるものの耐性を身に着けている。まぁ、荒太とやらの攻撃は少しは効いたがな。」

　「彩音、聞こえているか。」

　「はい。」

　「この訓練場と基地全体に最高硬度の防護壁を張っておけ。少し本気出す。」

　「わかりました。」

彩音は言われた通りに訓練場と基地全体に防護壁を張った。

　「一つ聞く、お前は【四門】の乾で間違いないか。」

　「いかにも、我が【四門】が1人、『天門』の乾である。」

　「そうか、なら一応俺も名乗っておこう。第1師団師団長の夜岸悠だ。今からお前を倒す男の名だ。」

　「悠・・そうか汝が艮殿の言っていた悠か。楽しめそうだ。」

　「おいで『彼岸』。」

悠は指輪から彼岸を呼び出した。

　「我に対してパワーで来るなど見かけ通り子供のようだな。」

　「覚悟しておけよ。俺の部下に手を出して楽にいけると思うなよ。死が恋しくなるほどに苦しめてやる。」

　「その意気はよし。だが、こちらも陸王様の命を受けてきている。『1師団を破壊せよ。』とな。よって、この団を破壊する。覚悟しろ。」

乾が構えた瞬間、悠の『彼岸』による打撃が乾の顔面に直撃し、訓練場の真ん中に立っていた乾が壁に激しく激突した。

　「ぐゎー－。」

乾は今まで感じたことのないほどの痛みを感じた。

　「どういうことだ、我はほとんど痛みを感じないはず。」

　「言ったろ、死が恋しくなるほ苦しみを与えるってな。」