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第2章 森の民
第2話 紅き疾風ラッセロ
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「そっちだ! 気を付けろ!」
百足甲虫を二体同時に切り飛ばし、振り向きざまにムースが一方向を剣で指し示す。五体の百足甲虫が向かってくる所だった。
その背後ではもうもうと土煙があがっている。
「大丈夫だ、分かってる!」
片手を上げて応え、飛び掛ってくるそれらの頭部を関節四つ目からまとめて切り裂く。
百足甲虫の装甲はとても硬く、物理攻撃が通りにくい。だが、それらを繋ぐ関節はとても柔らかいから、狙うならばそこを切らないと駄目だ。
切断された百足甲虫の身体から、沢山の体液が溢れ出す。
体液は酸だ。そして吐き気を催す程に臭い。
頭からぶっ掛かりそうになり、慌てて手網を引いて避けた。
《おえ。 だからこいつは嫌いなんだ! 剣も手入れしなくちゃならなくなった!》
剣に着いた体液を見て顔を顰めていると、ケビンが怒鳴り声を寄越した。
「後ろだ、キール! ……あ、おい待てそんなに身を乗り出すな!」
「っ!?」
木の影の死角で見えなかった百足甲虫が、背後から不意をついて現れたのを仕留める。次いでケビンの焦った声が聞こえ、何事かとうっかり振り返ってしまい、肝を冷やした。
手網を無理やりに引っ張って軌道を変え、なんとか馬車から転げ落ちたそれを受け止める。
その際に飛び掛ってきた二体は、代わりにムースが仕留めてくれた。安堵の溜め息が口から溢れた。
……。
しかしだなぁっ!
「こんっの、馬鹿女! 猛スピードで走行中の馬車から落ちる奴があるかっ!」
俺は、若干まだ目を白黒させている看板娘に対し、クワッと大一喝を落とした。
仕方ないだろ?
受けとめ損ねていた時の事を考えてみてくれ。
文字通り、首がバキッといってるはずだ。
咄嗟に手網を捻った俺に感謝こそすれ、まさか怒鳴るなんてことは……。
「何ですって?!」
あるらしい。
恩知らずな事だ。
俺は少々乱暴気味に看板娘を抱え直し、馬車の後ろから中へ放り込んでやった。
尻餅にご注意!
いや、遅かったかな。
「馬車の奥で寝てろ! ケビン、荷物と一緒に縛ってやってくれ!」
「手が足りないから無理だっ!!」
「ちょっとっ! きゃあっ!!」
まだごちゃごちゃと、何やら喚いているが、一々気にしてもいられない。
再び剣を構えて馬車から距離をとる。
ケビンは馬車を操るので精一杯な様子で、看板娘のお守りまで手が回らないようだ。ちらりと視界に入った娘の顔はムッと脹れている。
嫌ならしっかり捕まっていろと言いたい。荒っぽい運転で仕方ないとはいえ、戦闘中に飛び出されてくるこっちの身にもなれ。
《面倒見きれないぜ、全く。にしても、森を抜けるのはまだかっ?!》
「踏ん張れ! まだ先は長いぞ! 気を抜くな!」
ムースの檄を飛ばす声が、馬車の反対側から聞こえてくる。
《ああ、もう! なんでこんなにトラブルが多いんだっ!》
心の中の怒声と共に、固く握りしめた剣を奮いまくる。馬上で、それも全力疾走中での戦闘は神経を使う。
それでも、走っている内に百足甲虫のコロニーから抜け出したのか、徐々に捌く個体が減ってきた。
絶えず群れを生して襲ってくる百足甲虫を迎撃し、漸く俺達は森を走り抜けたのは、最初に襲われた時からかなり時が経ってからのことだった。
馬の速度を落としながら、ムースが近寄ってくる。
まだ辺りを警戒した表情だ。
「怪我はないか、キール」
「ない。けど、こいつには無理をさせたかも。ムースは?」
愛馬の背を労う様に撫でながら聞き返した。少しばかり表情を緩めたムースが、「私も大丈夫だ」と返す。
俺が馬車の御者席に向かって「そっちは?」と聞くと、何やら重いものがドサドサッと落ちる音と、弱々しく「無事だ」というケビンの声が聞こえた。
看板娘の声はしない。
少しばかり歩調を早めて覗き込むと、やつれた顔のケビンが手網を握り、その奥で娘がそっぽを向いて座っているのが分かる。傍には荷物が散乱している。
《放り込んだ事を根に持ってるのか? 一応、忠告通り大人しく荷物にしがみついていたみたいだが》
「怪我は?」
一応看板娘にも安否を確認してやったのだが、「ふんっ!」という鼻息と共に盛大なシカトをくらう。
いい度胸だな。
「その様子じゃ問題なさそうだな。よし、ケビン。今日はここで野宿しよう」
「ここでっ?!?!」
看板娘が素っ頓狂な叫び声を上げた。
普通に考えたら、魔物の襲撃を受けた森の中で野宿という発想にはならない。
勿論、嫌がらせである。
けれども、看板娘はそれに気が付かずに焦り始めた。
「ち、ちょっと冗談でしょ?! 魔物に襲われたばかりでそんな事しないわよね?!」
「あ? 別に何もおかしくないだろ。もうすぐ日暮れになるし、本当なら攻撃性の強くない百足甲虫に襲われるなんていう事態にも遭遇しないで、今頃とっくに宿についてる頃だったんだからな。誰かさんのせいで不意になったけど」
「わ、わわわ、私のせいだって言いたいのっ?!」
「自分の胸に手を当てて聞いてみりゃいいんじゃないか?」
そう。
百足甲虫は本来、臆病な魔物だ。餌も、動物の屍肉である。
巣の周り一帯のコロニーから出ず、万が一遭遇しても、こちらから攻撃さえしなければ、襲ってくる事はないはずだった。
普通の時ならば。
森の中に百足甲虫のコロニーがあると知った俺達が、安全に静かに抜けようとしていたというのに。
それ迄馬車の中で寝こけていたこの看板娘がタイミング悪く目を覚まし、あろう事か傍にあった虫除けの香をぶちまけたのだ。
百足甲虫は、虫除けの香くらいでは動じない。
問題は、まだ香に火が着いていた事だ。
焼けている灰を、これまたタイミング悪く被った百足甲虫が攻撃を受けたと認識してしまった。
その辺一帯の百足甲虫に、一斉に襲われるような事態に見舞われたという訳である。
勘違いしないで貰いたい。
俺が物申しているのは、なにも看板娘が百足甲虫に襲われる事態を作ったからじゃない。
この。
看板娘が。
一々。
何回も。
問題に。
足を突っ込む事に。
心底呆れ返っているんだっ!!!!!!!!
……。
ふぅ。
《冷静になれ、俺。宿を出てから渋々護衛をしながらオースティアまでの道のりを思い返してみようじゃないか》
俺は大きく大きく深呼吸した。
まぁそれなりに魔物を捌いて、適当に看板娘のお守りをして、そこそこ順調に旅出来るだろうと考えていたのに。
そんな俺達を嘲笑うかのように、次々に問題を起こしやがっ……起こしたこの看板娘。
まず初日に、旅費をスられるというヘマをやらかす。ケビンがいち早く気が付いて取り返さなければ、俺達がこいつの分まで宿代を払う羽目になっていた事だろう。
どこのご時世にちょっと見ててといいながら自分の鞄を道に置きっぱなしにする間抜けがいるというのだろう。
確信を持って言おう。あれで、良いカモだと認識されたに決まっている。
次の日、道でぶつかって来たチンピラに絡まれた。しかも売られた喧嘩を買おうとしていた為、俺が懇切丁寧に大人の話し合いを試みて、なんとかお帰り頂いた。自分一人でどうにか出来たなどという世迷いごとを宣う世間知らずもいたが、無視だ。
だが、これらはまだマシな部類である。
その後続く怒涛のしくじりに、ケビンは疲労を隠せず、俺は心底呆れかえり、ムースは困り顔をしっぱなしになった。
食人植物の群生地に誘い込まれるわ(野営地を抜け出して捕まり、ムースと俺が囮になっているうちにケビンが助け出した)、ホーンラビットの巣穴に落ちるわ(未だに理由が分からない。まさか野ウサギと見間違えたなんてこと……いや、何も言うな)、道中見つけて大事にしまっておいた貴重なポーション用薬草とキノコを、駄目になっている食用と勘違いして捨ててくるわ(流石のムースもこの時ばかりはぼやいた)……。
なんで、そんな問題ばかり起こす?
なんとかホイホイかお前は。
そう、思わず突っ込みたくなるようだ。
おお、おお。
いつぞや望んだ波瀾万丈な出来事だよ、どうもありがとう。これでフィーリに話す旅の土産が出来るってそんな訳あるかっ!
……。
……。あ、駄目だ。
思い返したら、脳内の血管がプチっといく音がした気がする。
「まぁまぁ、キール。落ち着け。明日にはキルトン市を迂回しきってバルサザル市に着くから。久しぶりに美味いものが食べられるだろ? ほら、食べ物の事でも考えて落ち着くんだ。な?」
すかさず飛んできたケビンがどうどうと、まるで馬にしてやるみたいに俺を宥めにかかった。
礼を言っとくぜ、ケビン。
少し頭が冷えた。
◇ ◇ ◇
「皆、門が見えてきたぞ」
「ようやくっ!!!」
ムースの隣で食い気味に喜びを噛み締めた俺に、最早誰一人として文句を言わなかった。
というより、皆気持ちは同じだったのだろう。看板娘でさえ、もはや疲労困憊で口もきけない様子だった。
《ああ、早く宿のベッドに潜り込みたいっ!!! 三日ぶりのまともな寝床っ!!!!!》
気持ちばかりが急いでいる俺に対して、バルサザル市内へ通じる門を通過するまでの時間は酷く長く感じられた。
俺たち以外にも、キルトン市を迂回してきた行商や旅人が多いらしく、通行に規制がかかっている。
この時間がもどかしい。
「ん? あれって……」
「どうかしたか?」
隣で馬に乗っていたケビンが──今はムースが馬車を操っている──、門に目を凝らして何やら呟いた。
「何か、見覚えないか? あの赤い毛玉……」
「うん?」
言われて目をやると、特徴的な赤髪とフサフサの尻尾が揺れる体格の良い男性が丁度、市内へ入ろうとしている所だった。
「いつだったか、宿ですれ違った獣人のお兄さんじゃないか? 行き先が同じとはなぁ」
素直に感心する俺を他所に、ケビンはまだ首を傾げている。
「ああ、それはそうなんだけど。なんか、揉めてる様に見えないか」
「え?」
ははぁ。
そう言われれば、そんな気もするな。
「どうしたんだろうな?」
「さあ……」
注意してよく見てみると、門の前で足止めを食らっているらしい。何か迷惑そうに顔を顰める門番に対し、どこか途方に暮れたように頭を掻いている様子が、少し気になった。
門番から強めの口調で二言三言話しかけられ、ガックリと項垂れた様に門から離れていく。
「追い返されたらしいぞ」
「なんで?」
「さあ、分からん」
「俺、ちょっと何があったか聞いてみる。他人事に思えないしさ……」
「行ってこい行ってこい。こっちはまだ進みそうにないしな」
「ん」
ケビンとムースに一言断りを入れ、俺は列を離れたお兄さんの後を追いかける。それ程経たずに追いつくと、向こうも俺を見て「あっ」と声を出した。
「宿屋の! ここで会うとは奇遇だな!」
ニカッと闊達に笑う様は、とても清々しく爽やかだ。やっぱり、この人が何か問題を起こしたとは思えない。
「俺達もバルサザル市を通るんだ。列に並んでた時、後ろから見えたものだからもしかしてと思って。何かあったのか?」
「実は、そうなんだよな……」
赤い髪のお兄さんは、ポリポリと頭を搔く。
心做しか、フサフサモフーな尻尾に元気がないような。
「俺、ここへ来る前キルトンっていう街に寄ったんだけど、そこの宿で泊まってる時、持ち物と有り金全部盗まれちゃってな……」
「キルトン市に寄ったのかっ?!」
「え? ああ、寄ったよ。なんでだ?」
「いや、噂……。お兄さん、キルトン市には寄るなって言われなかったのか?」
「特には……。あ、自己紹介がまだだったな。俺の名は、ラッセロ。狼獣人で、冒険者をしてる」
ラッセロはずいっと手を差し出し、ニカッと笑った。
その手は鍛え抜かれて、強い武人の手をしていた。手の甲に巻かれた布から察するに、近接戦が得意なんだろうと推測する。
俺は差し出された手を握り返し、笑顔で名乗った。
「俺はキール。俺もこんななりだけど、冒険者だ。よろしく。所で、ラッセロさん」
「ラッセロでいいぜ!」
「分かった、ラッセロ。冒険者なら、冒険者証があるだろう? まさか、それも盗られたのか?」
それならば、話は変わってくる。
けれど、ラッセロは「いいや」と首を横に振った。ゴソゴソと、胸元からお馴染みのプレートを出して見せる。
「首から提げていたから、盗られなかった。もちろん見せたさ。ただ、数ヶ月前に冒険者が騒ぎを起こしたようでさ。それがどうやら、亜人だったらしくて。通過に通行税、中銀貨二枚払う様に言われてしまったって訳だ」
「中銀貨二枚っ?!」
俺の素っ頓狂な叫び声に、ラッセロは苦笑いで頷く。
おい。冗談だろ?
中銀貨二枚だって?!
そんな馬鹿な話がまかり通ってたまるか、二万ガンツだぞ! パンがいくつ買える値段だと思ってんだ、じっちゃんの所の騎士の一年分の給料と同じって……。いや、並の冒険者なら払える額だけれども、通行税に二万ガンツ! 頭が狂ってるか、桁二桁間違っているとしか思えない。
「流石に事情を説明して、今はそんな大金持っていないから、ギルドで引き出させて欲しいって頼んだんだけどなあ……」
「追い返されたってことか」
「ご覧の通りだな。まあ、しょうがないさ。一応、同じように入れなかった亜人もいるらしいし、そいつらも街の外で野宿するって話だ。俺もならうしかないかな。希望者には食料だけはただで配ってくれるらしいから」
「……」
そうはいっても、ラッセロは持ち物を奪われている。冒険者ギルドで金を下ろそうにも、そもそも街に入れないなら意味が無い。キルトン市には冒険者ギルドはなかったようだし、戻るにも旅の装備が必要だろう。
さて。
ここで俺には一つ考えがある。
「なあ、ラッセロ。一つ提案があるんだけど」
「ん? なんだ?」
不思議そうな顔をするラッセロを見上げ、俺はにんまりと笑みを浮かべた。
♢ ♢ ♢
「次の者! ……なんだ、また来たのか? 通行税が払えないなら、街に入れることは出来ん!! 外で野宿しろっ!! 食料は差し入れてや……」
「ほい、二万ガンツ。中銀貨二枚で、文句ないだろ?」
「るから大人しく待っ……。なっ!?」
門番は分かり易く驚いた顔で、目の前にドサッと置かれた金袋を凝視している。後ろで並び待ちしている集団からも、ざわざわと驚きが伝わって来た。
「な、なんだ、どこから持ってきた!? 金はないといって……。いやそもそも、怪しい獣人を市内に入れるわけにはっ」
「私が彼の身柄を保証しよう。彼は私達の護衛でね。この町で合流する予定だったのだが、思わぬハプニングがあったらしい。規定の通行税以上のお金を払ったのだから、通して貰えるだろうか」
「あ、ああ。そ、そういう事なら、入っても構わない…」
「ありがとう」
有無を言わさぬ笑みを浮かべ、けれども紳士的な姿勢を崩さずにムースは、門番にお礼を言って市内へと入っていく。
その後ろを、ラッセロが足早に付いてきた。
俺は二人に走り寄り、笑顔を浮かべる。
ケビンと看板娘は、先に宿に向かっていた。
「上手くいったみたいだな!」
「ああ、本当にありがとう! キール達がいなかったら、今頃どうなっていたことか!」
「いいって。冒険者は助け合いが重要なんだからさ」
感激した様子で、まだ市内に入れたことが信じられないと喜ぶラッセロを見て、俺もムースも微笑ましい気持ちになる。
あの時俺は、ラッセロの冒険者証が本物という事を確認して、彼にとある提案をしていた。
それは、通行税を代わりに支払う代わりに、彼に護衛任務の依頼をするというものだ。
じゃじゃ馬娘のお守りは、正直手一杯だったしな。
ラッセロの良心につけ込むようで悪い気もしたが、丁度彼の向かう先も俺達と同方向ということだった為、ムース達にも事情を説明してそういう運びとなった。
まあ看板娘の叔父がいるという街は、次に泊まる予定のモルト市だ。それほど長いこと彼を拘束しないですむだろう。
ラッセロの冒険者ランクはBだ。実力も申し分ない。
「それじゃ、っと。旅支度のあれこれを揃えるついでに、冒険者ギルドで依頼を受注しに行こう!」
ラッセロが元気よくそう言ったので、俺は怪訝な顔をした。
「冒険者同士の依頼は、口約束で大丈夫なんじゃないのか?」
最初の冒険者登録の際、そういう説明をされた気がしたんだけどな。
けれどラッセロは、きっぱり首を横に振る。
「駄目だぞ、キール。確かに冒険者同士の依頼は口約束でも大丈夫だけどな。万が一俺が依頼を途中で放棄したらどうするんだ。知り合って間もない男のことを、例え冒険者仲間だったとしても簡単に信用したら危ないだろ?」
まるで弟妹に言い聞かせるように言うものだから、俺は思わずふはっと笑いが漏れた。ちょっと抜けているように見えて細かいところで律儀な性格が、故郷の馴染みによく似ている。
同じ事を思ったのか、ムースも柔らかい顔でラッセロを見ていた。俺達の団長は、今どうしているだろうか。
「ラッセロはそんなことしないだろ? もしするつもりなら、わざわざ忠告なんてしないさ。でも、分かった。ちゃんと依頼するから」
「おう! そうしてくれ」
白い歯を見せながらニッと笑うラッセロの飾り気のない笑顔を見て、やっぱり良い奴だなと俺は思った。
百足甲虫を二体同時に切り飛ばし、振り向きざまにムースが一方向を剣で指し示す。五体の百足甲虫が向かってくる所だった。
その背後ではもうもうと土煙があがっている。
「大丈夫だ、分かってる!」
片手を上げて応え、飛び掛ってくるそれらの頭部を関節四つ目からまとめて切り裂く。
百足甲虫の装甲はとても硬く、物理攻撃が通りにくい。だが、それらを繋ぐ関節はとても柔らかいから、狙うならばそこを切らないと駄目だ。
切断された百足甲虫の身体から、沢山の体液が溢れ出す。
体液は酸だ。そして吐き気を催す程に臭い。
頭からぶっ掛かりそうになり、慌てて手網を引いて避けた。
《おえ。 だからこいつは嫌いなんだ! 剣も手入れしなくちゃならなくなった!》
剣に着いた体液を見て顔を顰めていると、ケビンが怒鳴り声を寄越した。
「後ろだ、キール! ……あ、おい待てそんなに身を乗り出すな!」
「っ!?」
木の影の死角で見えなかった百足甲虫が、背後から不意をついて現れたのを仕留める。次いでケビンの焦った声が聞こえ、何事かとうっかり振り返ってしまい、肝を冷やした。
手網を無理やりに引っ張って軌道を変え、なんとか馬車から転げ落ちたそれを受け止める。
その際に飛び掛ってきた二体は、代わりにムースが仕留めてくれた。安堵の溜め息が口から溢れた。
……。
しかしだなぁっ!
「こんっの、馬鹿女! 猛スピードで走行中の馬車から落ちる奴があるかっ!」
俺は、若干まだ目を白黒させている看板娘に対し、クワッと大一喝を落とした。
仕方ないだろ?
受けとめ損ねていた時の事を考えてみてくれ。
文字通り、首がバキッといってるはずだ。
咄嗟に手網を捻った俺に感謝こそすれ、まさか怒鳴るなんてことは……。
「何ですって?!」
あるらしい。
恩知らずな事だ。
俺は少々乱暴気味に看板娘を抱え直し、馬車の後ろから中へ放り込んでやった。
尻餅にご注意!
いや、遅かったかな。
「馬車の奥で寝てろ! ケビン、荷物と一緒に縛ってやってくれ!」
「手が足りないから無理だっ!!」
「ちょっとっ! きゃあっ!!」
まだごちゃごちゃと、何やら喚いているが、一々気にしてもいられない。
再び剣を構えて馬車から距離をとる。
ケビンは馬車を操るので精一杯な様子で、看板娘のお守りまで手が回らないようだ。ちらりと視界に入った娘の顔はムッと脹れている。
嫌ならしっかり捕まっていろと言いたい。荒っぽい運転で仕方ないとはいえ、戦闘中に飛び出されてくるこっちの身にもなれ。
《面倒見きれないぜ、全く。にしても、森を抜けるのはまだかっ?!》
「踏ん張れ! まだ先は長いぞ! 気を抜くな!」
ムースの檄を飛ばす声が、馬車の反対側から聞こえてくる。
《ああ、もう! なんでこんなにトラブルが多いんだっ!》
心の中の怒声と共に、固く握りしめた剣を奮いまくる。馬上で、それも全力疾走中での戦闘は神経を使う。
それでも、走っている内に百足甲虫のコロニーから抜け出したのか、徐々に捌く個体が減ってきた。
絶えず群れを生して襲ってくる百足甲虫を迎撃し、漸く俺達は森を走り抜けたのは、最初に襲われた時からかなり時が経ってからのことだった。
馬の速度を落としながら、ムースが近寄ってくる。
まだ辺りを警戒した表情だ。
「怪我はないか、キール」
「ない。けど、こいつには無理をさせたかも。ムースは?」
愛馬の背を労う様に撫でながら聞き返した。少しばかり表情を緩めたムースが、「私も大丈夫だ」と返す。
俺が馬車の御者席に向かって「そっちは?」と聞くと、何やら重いものがドサドサッと落ちる音と、弱々しく「無事だ」というケビンの声が聞こえた。
看板娘の声はしない。
少しばかり歩調を早めて覗き込むと、やつれた顔のケビンが手網を握り、その奥で娘がそっぽを向いて座っているのが分かる。傍には荷物が散乱している。
《放り込んだ事を根に持ってるのか? 一応、忠告通り大人しく荷物にしがみついていたみたいだが》
「怪我は?」
一応看板娘にも安否を確認してやったのだが、「ふんっ!」という鼻息と共に盛大なシカトをくらう。
いい度胸だな。
「その様子じゃ問題なさそうだな。よし、ケビン。今日はここで野宿しよう」
「ここでっ?!?!」
看板娘が素っ頓狂な叫び声を上げた。
普通に考えたら、魔物の襲撃を受けた森の中で野宿という発想にはならない。
勿論、嫌がらせである。
けれども、看板娘はそれに気が付かずに焦り始めた。
「ち、ちょっと冗談でしょ?! 魔物に襲われたばかりでそんな事しないわよね?!」
「あ? 別に何もおかしくないだろ。もうすぐ日暮れになるし、本当なら攻撃性の強くない百足甲虫に襲われるなんていう事態にも遭遇しないで、今頃とっくに宿についてる頃だったんだからな。誰かさんのせいで不意になったけど」
「わ、わわわ、私のせいだって言いたいのっ?!」
「自分の胸に手を当てて聞いてみりゃいいんじゃないか?」
そう。
百足甲虫は本来、臆病な魔物だ。餌も、動物の屍肉である。
巣の周り一帯のコロニーから出ず、万が一遭遇しても、こちらから攻撃さえしなければ、襲ってくる事はないはずだった。
普通の時ならば。
森の中に百足甲虫のコロニーがあると知った俺達が、安全に静かに抜けようとしていたというのに。
それ迄馬車の中で寝こけていたこの看板娘がタイミング悪く目を覚まし、あろう事か傍にあった虫除けの香をぶちまけたのだ。
百足甲虫は、虫除けの香くらいでは動じない。
問題は、まだ香に火が着いていた事だ。
焼けている灰を、これまたタイミング悪く被った百足甲虫が攻撃を受けたと認識してしまった。
その辺一帯の百足甲虫に、一斉に襲われるような事態に見舞われたという訳である。
勘違いしないで貰いたい。
俺が物申しているのは、なにも看板娘が百足甲虫に襲われる事態を作ったからじゃない。
この。
看板娘が。
一々。
何回も。
問題に。
足を突っ込む事に。
心底呆れ返っているんだっ!!!!!!!!
……。
ふぅ。
《冷静になれ、俺。宿を出てから渋々護衛をしながらオースティアまでの道のりを思い返してみようじゃないか》
俺は大きく大きく深呼吸した。
まぁそれなりに魔物を捌いて、適当に看板娘のお守りをして、そこそこ順調に旅出来るだろうと考えていたのに。
そんな俺達を嘲笑うかのように、次々に問題を起こしやがっ……起こしたこの看板娘。
まず初日に、旅費をスられるというヘマをやらかす。ケビンがいち早く気が付いて取り返さなければ、俺達がこいつの分まで宿代を払う羽目になっていた事だろう。
どこのご時世にちょっと見ててといいながら自分の鞄を道に置きっぱなしにする間抜けがいるというのだろう。
確信を持って言おう。あれで、良いカモだと認識されたに決まっている。
次の日、道でぶつかって来たチンピラに絡まれた。しかも売られた喧嘩を買おうとしていた為、俺が懇切丁寧に大人の話し合いを試みて、なんとかお帰り頂いた。自分一人でどうにか出来たなどという世迷いごとを宣う世間知らずもいたが、無視だ。
だが、これらはまだマシな部類である。
その後続く怒涛のしくじりに、ケビンは疲労を隠せず、俺は心底呆れかえり、ムースは困り顔をしっぱなしになった。
食人植物の群生地に誘い込まれるわ(野営地を抜け出して捕まり、ムースと俺が囮になっているうちにケビンが助け出した)、ホーンラビットの巣穴に落ちるわ(未だに理由が分からない。まさか野ウサギと見間違えたなんてこと……いや、何も言うな)、道中見つけて大事にしまっておいた貴重なポーション用薬草とキノコを、駄目になっている食用と勘違いして捨ててくるわ(流石のムースもこの時ばかりはぼやいた)……。
なんで、そんな問題ばかり起こす?
なんとかホイホイかお前は。
そう、思わず突っ込みたくなるようだ。
おお、おお。
いつぞや望んだ波瀾万丈な出来事だよ、どうもありがとう。これでフィーリに話す旅の土産が出来るってそんな訳あるかっ!
……。
……。あ、駄目だ。
思い返したら、脳内の血管がプチっといく音がした気がする。
「まぁまぁ、キール。落ち着け。明日にはキルトン市を迂回しきってバルサザル市に着くから。久しぶりに美味いものが食べられるだろ? ほら、食べ物の事でも考えて落ち着くんだ。な?」
すかさず飛んできたケビンがどうどうと、まるで馬にしてやるみたいに俺を宥めにかかった。
礼を言っとくぜ、ケビン。
少し頭が冷えた。
◇ ◇ ◇
「皆、門が見えてきたぞ」
「ようやくっ!!!」
ムースの隣で食い気味に喜びを噛み締めた俺に、最早誰一人として文句を言わなかった。
というより、皆気持ちは同じだったのだろう。看板娘でさえ、もはや疲労困憊で口もきけない様子だった。
《ああ、早く宿のベッドに潜り込みたいっ!!! 三日ぶりのまともな寝床っ!!!!!》
気持ちばかりが急いでいる俺に対して、バルサザル市内へ通じる門を通過するまでの時間は酷く長く感じられた。
俺たち以外にも、キルトン市を迂回してきた行商や旅人が多いらしく、通行に規制がかかっている。
この時間がもどかしい。
「ん? あれって……」
「どうかしたか?」
隣で馬に乗っていたケビンが──今はムースが馬車を操っている──、門に目を凝らして何やら呟いた。
「何か、見覚えないか? あの赤い毛玉……」
「うん?」
言われて目をやると、特徴的な赤髪とフサフサの尻尾が揺れる体格の良い男性が丁度、市内へ入ろうとしている所だった。
「いつだったか、宿ですれ違った獣人のお兄さんじゃないか? 行き先が同じとはなぁ」
素直に感心する俺を他所に、ケビンはまだ首を傾げている。
「ああ、それはそうなんだけど。なんか、揉めてる様に見えないか」
「え?」
ははぁ。
そう言われれば、そんな気もするな。
「どうしたんだろうな?」
「さあ……」
注意してよく見てみると、門の前で足止めを食らっているらしい。何か迷惑そうに顔を顰める門番に対し、どこか途方に暮れたように頭を掻いている様子が、少し気になった。
門番から強めの口調で二言三言話しかけられ、ガックリと項垂れた様に門から離れていく。
「追い返されたらしいぞ」
「なんで?」
「さあ、分からん」
「俺、ちょっと何があったか聞いてみる。他人事に思えないしさ……」
「行ってこい行ってこい。こっちはまだ進みそうにないしな」
「ん」
ケビンとムースに一言断りを入れ、俺は列を離れたお兄さんの後を追いかける。それ程経たずに追いつくと、向こうも俺を見て「あっ」と声を出した。
「宿屋の! ここで会うとは奇遇だな!」
ニカッと闊達に笑う様は、とても清々しく爽やかだ。やっぱり、この人が何か問題を起こしたとは思えない。
「俺達もバルサザル市を通るんだ。列に並んでた時、後ろから見えたものだからもしかしてと思って。何かあったのか?」
「実は、そうなんだよな……」
赤い髪のお兄さんは、ポリポリと頭を搔く。
心做しか、フサフサモフーな尻尾に元気がないような。
「俺、ここへ来る前キルトンっていう街に寄ったんだけど、そこの宿で泊まってる時、持ち物と有り金全部盗まれちゃってな……」
「キルトン市に寄ったのかっ?!」
「え? ああ、寄ったよ。なんでだ?」
「いや、噂……。お兄さん、キルトン市には寄るなって言われなかったのか?」
「特には……。あ、自己紹介がまだだったな。俺の名は、ラッセロ。狼獣人で、冒険者をしてる」
ラッセロはずいっと手を差し出し、ニカッと笑った。
その手は鍛え抜かれて、強い武人の手をしていた。手の甲に巻かれた布から察するに、近接戦が得意なんだろうと推測する。
俺は差し出された手を握り返し、笑顔で名乗った。
「俺はキール。俺もこんななりだけど、冒険者だ。よろしく。所で、ラッセロさん」
「ラッセロでいいぜ!」
「分かった、ラッセロ。冒険者なら、冒険者証があるだろう? まさか、それも盗られたのか?」
それならば、話は変わってくる。
けれど、ラッセロは「いいや」と首を横に振った。ゴソゴソと、胸元からお馴染みのプレートを出して見せる。
「首から提げていたから、盗られなかった。もちろん見せたさ。ただ、数ヶ月前に冒険者が騒ぎを起こしたようでさ。それがどうやら、亜人だったらしくて。通過に通行税、中銀貨二枚払う様に言われてしまったって訳だ」
「中銀貨二枚っ?!」
俺の素っ頓狂な叫び声に、ラッセロは苦笑いで頷く。
おい。冗談だろ?
中銀貨二枚だって?!
そんな馬鹿な話がまかり通ってたまるか、二万ガンツだぞ! パンがいくつ買える値段だと思ってんだ、じっちゃんの所の騎士の一年分の給料と同じって……。いや、並の冒険者なら払える額だけれども、通行税に二万ガンツ! 頭が狂ってるか、桁二桁間違っているとしか思えない。
「流石に事情を説明して、今はそんな大金持っていないから、ギルドで引き出させて欲しいって頼んだんだけどなあ……」
「追い返されたってことか」
「ご覧の通りだな。まあ、しょうがないさ。一応、同じように入れなかった亜人もいるらしいし、そいつらも街の外で野宿するって話だ。俺もならうしかないかな。希望者には食料だけはただで配ってくれるらしいから」
「……」
そうはいっても、ラッセロは持ち物を奪われている。冒険者ギルドで金を下ろそうにも、そもそも街に入れないなら意味が無い。キルトン市には冒険者ギルドはなかったようだし、戻るにも旅の装備が必要だろう。
さて。
ここで俺には一つ考えがある。
「なあ、ラッセロ。一つ提案があるんだけど」
「ん? なんだ?」
不思議そうな顔をするラッセロを見上げ、俺はにんまりと笑みを浮かべた。
♢ ♢ ♢
「次の者! ……なんだ、また来たのか? 通行税が払えないなら、街に入れることは出来ん!! 外で野宿しろっ!! 食料は差し入れてや……」
「ほい、二万ガンツ。中銀貨二枚で、文句ないだろ?」
「るから大人しく待っ……。なっ!?」
門番は分かり易く驚いた顔で、目の前にドサッと置かれた金袋を凝視している。後ろで並び待ちしている集団からも、ざわざわと驚きが伝わって来た。
「な、なんだ、どこから持ってきた!? 金はないといって……。いやそもそも、怪しい獣人を市内に入れるわけにはっ」
「私が彼の身柄を保証しよう。彼は私達の護衛でね。この町で合流する予定だったのだが、思わぬハプニングがあったらしい。規定の通行税以上のお金を払ったのだから、通して貰えるだろうか」
「あ、ああ。そ、そういう事なら、入っても構わない…」
「ありがとう」
有無を言わさぬ笑みを浮かべ、けれども紳士的な姿勢を崩さずにムースは、門番にお礼を言って市内へと入っていく。
その後ろを、ラッセロが足早に付いてきた。
俺は二人に走り寄り、笑顔を浮かべる。
ケビンと看板娘は、先に宿に向かっていた。
「上手くいったみたいだな!」
「ああ、本当にありがとう! キール達がいなかったら、今頃どうなっていたことか!」
「いいって。冒険者は助け合いが重要なんだからさ」
感激した様子で、まだ市内に入れたことが信じられないと喜ぶラッセロを見て、俺もムースも微笑ましい気持ちになる。
あの時俺は、ラッセロの冒険者証が本物という事を確認して、彼にとある提案をしていた。
それは、通行税を代わりに支払う代わりに、彼に護衛任務の依頼をするというものだ。
じゃじゃ馬娘のお守りは、正直手一杯だったしな。
ラッセロの良心につけ込むようで悪い気もしたが、丁度彼の向かう先も俺達と同方向ということだった為、ムース達にも事情を説明してそういう運びとなった。
まあ看板娘の叔父がいるという街は、次に泊まる予定のモルト市だ。それほど長いこと彼を拘束しないですむだろう。
ラッセロの冒険者ランクはBだ。実力も申し分ない。
「それじゃ、っと。旅支度のあれこれを揃えるついでに、冒険者ギルドで依頼を受注しに行こう!」
ラッセロが元気よくそう言ったので、俺は怪訝な顔をした。
「冒険者同士の依頼は、口約束で大丈夫なんじゃないのか?」
最初の冒険者登録の際、そういう説明をされた気がしたんだけどな。
けれどラッセロは、きっぱり首を横に振る。
「駄目だぞ、キール。確かに冒険者同士の依頼は口約束でも大丈夫だけどな。万が一俺が依頼を途中で放棄したらどうするんだ。知り合って間もない男のことを、例え冒険者仲間だったとしても簡単に信用したら危ないだろ?」
まるで弟妹に言い聞かせるように言うものだから、俺は思わずふはっと笑いが漏れた。ちょっと抜けているように見えて細かいところで律儀な性格が、故郷の馴染みによく似ている。
同じ事を思ったのか、ムースも柔らかい顔でラッセロを見ていた。俺達の団長は、今どうしているだろうか。
「ラッセロはそんなことしないだろ? もしするつもりなら、わざわざ忠告なんてしないさ。でも、分かった。ちゃんと依頼するから」
「おう! そうしてくれ」
白い歯を見せながらニッと笑うラッセロの飾り気のない笑顔を見て、やっぱり良い奴だなと俺は思った。
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