悪役令嬢に転生したようですが、知った事ではありません

平野とまる

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第4章 乙女ゲーム編

大集合

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 私の部屋に殿下とラクサスと最後にいらっしゃったフランソワーヌ様。
 そして、マドローイ様とディエル様とゴードンさんも集まり、私と面識のある原作でも主要キャラだった皆様が勢ぞろいとなりました。
 何故いらっしゃったのかと言えば、それぞれ理由がお有りだったようです。
 その理由をまだ詳しくは聞いておりませんが、皆が集まったら話すと殿下の次に到着されたマドローイ様が仰いました。
 ですので、弟とフランソワーヌ様を待っていたのですが、何故かラクサスとディエル様とゴードンさんが共にいらっしゃったのです。
 結局、マドローイ様より先にお話し出来ないからと、フランソワーヌ様をお待ちしていました。

「すみません、お待たせしてしまったようで」

 そんな事はございませんと言いたかったのですが、確かに不自然なほど遅くなってしまっていますからね。
 何かあったのでしょうけど、流石にこのメンバーの中で先陣を切って発言出来る訳もございません。
 故に、この中で最も優先順位の高いマドローイ様へと自然と視線が集まります。

「よいよい、わしの予定も空けてここに来ておるからの」

 表面上はにこやかに笑っていらっしゃいますが、はてさて真意はどうなのでしょう。
 それを知る術はございませんが、どこか普段とは様子が違うように感じられます。
 無論、この方の場合その程度のブラフは出来るのでしょうけど。

「さて、それではわしから話させて貰うとするかのぅ。
 すまんの、堅苦しい口調で」

 何故なのかはすぐに察せられます。
 つまり、個人としてではなく、マドローイ卿としての発言。
 と言う事なのでしょう。
 ですから、誰一人として言葉を返さず、マドローイ様のお言葉を待ちます。

「さて、学園が妙な変化を起こしておるのは勿論察しておる。
 あ奴ら……と言えば頭の固い大臣どもなどは極刑だなどと騒ぎ出しそうだが、妖精様が感情のままに行動するのは周知の事実じゃからの。
 実際ここまでではないにしろ過去に例がなかった訳ではないし、元々ここに住み着いている大妖精様は人間に色々と手出しするのを楽しんでいる節があるからの」

 いったん言葉を切って、どこか心配そうな表情を私に向けられます。

「何をやらかしたのか分らぬし、何が原因かも分らぬ。
 寧ろ、理由もその時の気分が一番多いくらいじゃからの。
 それでも、この事態は異常じゃ。数人が一気に皆に好かれたり嫌われたりは確かに多いが、一人が異常に好かれ一人が嫌われるなどとはな。
 どうだ、お主何か知らぬか?」

 明らかに私に向けられた質問だと認識し、すぐに気付く事があります。
 それをそのまま言葉にしましょう。

「先に確認致しますが、マドローイ様は今私に不快感を抱いていらっしゃると言う事で宜しいでしょうか?」

 不機嫌そうに頷かれるマドローイ様。
 質問に質問を返したせいかもしれませんし、違うかもしれません。
 ただ、その口は閉じられたままでしたので、そのまま言葉を紡ぎます。

「思い当たる事がないと言えば嘘になりますが、どれも状況からの推測に過ぎません。
 実際、皆様だって色々と思い当たる事はございましょう。
 その上で申し上げますが、誠に申し訳ございませんが仮に確証があったとしてもここではお答えできません。
 理由は今起こっている事態のせいです」

 はっきり言いきれば、不安そうな視線を向ける殿下とラクサス、そしてフランソワーヌ様。
 対して、はっきりと不快感を露わにした表情を向けられたディエル様とゴードンさん。
 流石と言うべきでしょう、マドローイ様の表情の変化はありませんでした。

「うむうむ、それが良かろう。
 少なくともわしとそこの小童二人には話すべきではないのぅ」

 その言葉に私以外の皆様が驚いた表情を浮かべられます。
 私は何となく予想は出来ておりましたが、どうやら皆様にとっては予想外だったようですね。

「何を驚いた顔を向けておる。少しはそこの女傑を見習ったらどうだ?
 メルドーグとゴードンの子倅よ、お主らはここに来れたと言う事は少しはこの現状がおかしい事には気付いておろう。
 そうでもなければ、今頃他の者達のようにあの小娘の背中を追いかけているだろうて。
 殿下とランドークの子倅はもっと酷いのぅ。
 お主らは気に入られとるのだから、影響はないじゃろう?
 もっと想像力を働かせんといかんのぅ」

 言い聞かせるようなマドローイ様のお言葉に、皆様沈黙を貫かれます。
 そして、フランソワーヌ様の方へ視線を向けられるマドローイ様。

「分らんのはお主じゃ。
 一体何故ここに来れる?」

「あら、気持ち悪い物を見えもせず殆ど弾き返しているような人に言われたくないです」

 ぴしゃりと云い返すフランソワーヌ様に、今度は私を含めて彼女以外全員目を向いてしまいます。

「かかかか、なんぞあの忌々しいランドーク卿と同じ系統か。
 ならば、その態度納得がいったと言うもの。
 ともかくじゃ、これから言うのはわしの独り言故あまり気負って聞くな」

 楽しそうに笑われた後、真剣な顔付きになられるマドローイ様。
 自然と空気が引き締まります。

「わしですら頭ではアメリア嬢の言動を本来ならば好ましく思うはずと分ってはいても、何故か不快に感じてしまっておる。
 もっと馴染んでおれば別じゃが、やはりまだまだ今のわしも若輩者に過ぎぬからのぅ。
 ただ、流石にこうまで一方的に弄ばれて愉快な訳ではない。
 だからこそ、今の内に断言しておこう。
 わしは、アメリア・フィン=ハイネス=ランドークが在学中の内は何もせぬ。
 そう、誓って何もせぬから期待はするなよ」

 最後は私を見据えて言い放たれるマドローイ様。
 その真剣な表情に、深く頭を垂れます。

「……それ以上を確約出来ぬ己の未熟さが本当に情けないのぅ。
 ただ、お前らは絶対真似をするな」

 今度はディエル様とゴードンさんへと言葉を紡がれていかれます。

「今後どう転ぶか分らぬし、お主らはわしとは違うのは流石に知っておろう?
 出来もせぬ事を言うのは絶対にするのではない。
 それは、何よりお主らの方が分っておるだろう」

 しみじみと語られたマドローイ様に、強く唇を噛まれるお二人。
 今度は殿下とラクサス、そしてフランソワーヌ様の方へと顔を向けられます。

「アメリア嬢をお主らは見捨てれぬと思った上で言う。
 心してかかれ。
 こちらにとってはどんなに理不尽で道理が通っていなかろうと、あ奴らにとっては一切関係のない事じゃ。
 それに、いくら暴走したら周りの同族が見逃しはしないとは言え、自分に不利益さえなければ無関心じゃの。
 場合によっては、加担する事だってある。
 こんな状態でアメリア嬢を気に入る精霊様が対応しきれていない以上、助力を期待するのも無駄じゃ」

 真剣に聞いていたお三方は、そのお言葉に重々しく頷かれます。
 その後、再び私へと視線は戻ってきました。

「これだけは独り言ではなく、忠告じゃ。
 自分の大切な者を守りたければ、意地を張り通すのは愚策だろうて。
 思い通りにいかなければ、何が何でも思い通りになるようにするのがあ奴らの特徴。
 下手をすれば、巻き込むぞ。
 無論、こんな忠告をしたのはお主の性格を考えてじゃ。
 わしの知らぬ事を知るお主ならば、もしかすると何ぞ対応出来るかも知れぬが老婆心を捨てきれぬでな」

「いえ。ご忠告、痛み入ります」

 本当に心配そうに仰ったマドローイ様に、再び深く頭を下げます。
 しばらく待って顔を上げると、ふと混じり気のない笑みを浮かべられました。

「くくく、それにしてもお主の精霊様も頑張ってはおるようじゃの。
 この部屋は居心地がよい……、今後足を踏み入れる事が出来ぬのが残念でならぬわ」

 どこか楽し気な笑顔にハッとします。
 思わずブローチを握りしめそうになりましたが、何とか途中で思いとどまる事が出来ました。
 マドローイ様のご厚意を無駄にしかねない所でしたね。
 同時に、ここまで言われてディア様が私にすら愚痴を洩らさなかった事にも合点がいきました。
 この部屋は学園で最も大精霊様からの影響を受けずに済む場所であり、ディア様がブローチにお隠れになった理由の一つも察する事が出来ました。
 その理由に嬉し恥ずかしな気持ちが湧き上がってきますが、顔に出ないように必死に堪えます。

 そんな私の様子を見て、楽しそうに高笑いを始められるマドローイ様。
 ひとしきり笑われた後、邪魔者はこの辺りで失礼しようと口にされました。
 出る前にディエル様とゴードンさんに何かしら囁かれて出て行かれましたが、私達の方へは振り向く事もなくそのまま退室なさいましたね。

 さて、マドローイ様のお陰でまた幾つか知る事が出来ましたが、本当に一筋縄ではいきませんね。
 本当は考えをまとめたい所ではありますが、ディエル様とゴードンさんが何かしら話しだされそうなので、そちらに集中しましょう。

「すみません、私達も精霊様に気に入られていればもっと対応出来たでしょうに、そうもいかないようです」

「本当に残念ですね。折角の上お得意様なのに、下手打てば失いかねないなんて納得いかへんのに」

 心底残念そうに言われるお二人。
 そのまま言葉を重ねていかれます。

「長居も出来ないですから、手短に申し上げます。
 これから転校生さんの所へ行きますが、悪しからずにです」

「まっ、折角だしこの際感情に従ってみる事にしたっちゅー事ですわな」

 そんな事を言いながら、すまなそうな表情を浮かべるディエル様とは対照的にウィンクなんてなさるゴードンさん。

「それでは、また話しあえる日を楽しみにしております」

「わては、よく考えれば新しい取引先を得られるチャンスでもある訳ですからね。
 まぁ、お互いの案件が済んだら是非ご贔屓に宜しく頼みますわ」

 ああ、やはりこれは予想通りみたいですね。
 お二人のその言葉にそう判断致しました。
 ですので、唇に人差し指を縦に当て殿下とラクサス、そしてフランソワーヌ様に見せます。
 何か言いたそうな顔をされてしまいましたが、沈黙を貫いて下さる皆様。
 そのまま退室なさったディエル様とゴードンさんを見送り、改めて皆様に頭を深く下げます。

「出来れば説明して欲しいのだが、出来そうかい?」

 心配そうに仰った殿下に、再び唇に人差し指を先ほどのように当ててから口を開きます。

「お茶の準備を致します。
 お話はその後にしましょう」
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