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まさか。
「あのなぁ大林…状況は分かったが…暴力はだめだぞ。暴力は。」
「先生。先に暴力をふるったのはアッチです。言葉の暴力で僕は大いに傷つきました。また暴力を奮おうとしていたので、僕は暴力をやめさせるため彼を(殴って)黙らせなければいけませんでした。これは立派な正当防衛です。」
まさか。
「屁理屈言うな!大体被害を受けてたのはほとんど小野田だろ!?」
「チッ…るせーな…。俺はとばっちりくらったんだよ!一番可哀相だろ。」
あの『スダ高の天使』がこんな天使とは程遠い性格だったなんて!!!!
あれから保健室へ運ばれた男子生徒の証言により、私と私の彼氏?になった大林くんは生徒指導室に呼ばれ担任の先生に叱られることになったのが現在である。
大林くんは慣れているのか、新しい担任の先生とも既に顔見知りのようだ。
ちなみに私は人生初の生徒指導室で茫然自失である。
「小野田、お前は真面目だし新学期早々こんな所へ呼んで悪いが…何か言っておくことはあるか?」
「あ、いえ、ほんと私よくわからなくて…今なんでここにいるんでしたっけ…?」
「ぷっ」
「あー、もうわかった。向こうに非があるのは事実みたいだしな。もう何も言わん。でも暴力はなしだ。今度から言葉の暴力には言葉で返すよーに。」
そう言って担任に締め出された私たちは、生徒指導室の前でお互いの顔を見合わせた(正しくは私は見下ろして大林くんは見上げた)。
大林くんはしげしげと私を見つめてきて、いたたまれなくなった私は重たい口を開いた。
「あ、あの…私たち付き合うの…?」
「あー。面白いじゃん。もしかして他に付き合ってるやついた?」
「いや、いないけど…」
「だよな。」
だよな?
「俺、こんなに大きい女と付き合うの初めて。」
「お、おおき…」
「やっぱでかいと、全部迫力あっていいよな。エロい。」
「え、えろ…」
私は突然思い出したように顔を真っ赤にさせた。
「へ、変態じゃん…!」
「男はみんな変態だろ」
「うそだうそだ!わ、わたし、天使みたいな大林くんに、あ、憧れてたのに…萌え袖とか…!」
「萌え袖……へー、めいこ、俺に憧れてたの?」
「め、"めいこ"!!?」
なんだか先ほどとは打って変わって機嫌のよくなった大林くんは、私の顔をあの蕩けるような笑顔で見つめてきた。
私はこの顔に弱いのである。
「めいこ、ちょっとしゃがんで。」
私はぽーっとなりながらそろそろと足を折り畳んで大林くんを見上げる。
すると、廊下の窓からちょうど光が差し込んで、大林くんの髪が白く縁取られてまるで天からふってきたかのように後光がさして見えた。
私はこの顔に弱いのである。
綺麗な瞳が細くなって長いまつげがゆっくりと伏せられる。
ぷっくりとした唇が私の薄い唇の上に重ねられて、ちょっと離れた後、また角度を変えて下りてきた。
どのくらいたったか分からない後唇がようやく離れて、大林くんは蕩ける笑顔でこう言った。
「どう?憧れの天使とのキスは?」
「…え…あ、え!?あ!!!!!」人生で初めてのキスを生徒指導室の前でした私は、ひとしきり発狂した後真っ白になって大林くんに手を引かれて教室に戻ったのだった。
そして案の定、クラスは私たちの噂でもちきりだった。
「えーっ、大林くんまじで"あの"小野田さんと付き合うのー!?」
あの?
「信じられねー!何で小野田!?全っ然たいがと雰囲気ちがうじゃん!」
「…いいだろ別に。面白いからだよ。」
面白い??
(や、やっぱり大林くんは私みたいにデカい女が珍しいから興味本位で付き合おうとか言ってるんだ…!!)
私は黒板の上の方をガシガシ消しながら、わいわい騒いでいるクラスメイトたちの会話を盗み聞きしていた。さっきから必死にこの問題をどう解決すべきか思案している…が、今のところ解決策なし。
私は問題の発端のクラスの中心にいる大林くんを恨みがましい気持ちで盗み見た。
相変わらずの天使。
きらきらと輝いて見える明るい栗色の髪の毛に透き通るような白い肌。
それにマッチ何本乗るんだってくらいバサバサに長いまつ毛。
彼は面倒臭さそうに相槌を打つ程度なのに、
新学期早々彼の周りには男女問わずクラスメイトが集まっていた。皆んな彼の美貌に釘づけなのだ。
恐るべし『スダ高の天使』…。
彼がいなければ、私の高校2年生の日々は目立たず騒がずせめて今よりかは順風満帆になったであろうに。
「小野田さん、ごめんね。手伝ってもらっちゃって。うち、上の方届かないから…。」
「えっ!?あ、いいよいいよ!私でかいしこれくらいしか役に立つことないし!」
「ありがと~。」
へにゃ、と私の胸より下にある顔が笑顔になる。
彼女は今日からクラスメイトの園田里美ちゃん。
ふわふわの髪を二つに結んで、うんしょうんしょと背伸びをしながら黒板を消す姿は「The女子」。
恐らく、クラスで一番背が低い。
もちろん大林くんよりも。
(か、かわいい~~っ!)
私はハムスターとかリスとか小動物を見る気持ちで癒されながら園田さんと一緒に黒板を消していた。
「園田ちゃん上の方届いてないよ?がんばれ~」
「小野田と比べるとやべーな笑」
私たちの身長差は体感で恐らく30cm。
男子たちがにやにや笑いながら黒板を消すわたしたちを見てくる。
「もう、うちがチビって言いたいんでしょー!これでも牛乳毎日飲んでる!」
ぷんぷんと怒りながら男子を見上げる園田さんに、当の男子たちは鼻の下のばしてメロメロである。
分かる。可愛いすぎるこれは。
「…やっぱ大林くんには里美ちゃんがお似合いだよね。」
女子の誰かがボソッと呟く。
(いや、私もそう思います。)
私は心の中で泣きながら前言撤回しろと大林くんに念を送るが、天使はこちらをちらりと一瞥しただけで、大あくびをかましている。
私がはぁ…とため息をついていると、横からスッと黒板消しを持った長い腕が伸びて来た。
「!」
「わ、ほんとだ。小野田さんて背高いね。」
突然隣に立って来た男子に、私は驚いて曖昧に微笑む。
男子生徒は私よりも背が高く、恐らく180cmは軽く超えているだろう。
「俺、鷲尾大地。よろしくね。」
「よ、よろしく…。わ、鷲尾くんも背が高いね。びっくりしちゃった。」
鷲尾くんは私よりも楽そうに黒板の上の方を消しながら、ちらりと私を見下ろした。
こんなに見下ろされることもないので、私は思わず身構える。
「そーそー。俺も背が高いんだけどさ、女子だと小野田さんほど背が高い人と話す機会ないから、女子と目線が近いってすげー新鮮。なんか良いね。」
なんか良いね!?
私は動揺した。
私もこんなに男子から見下ろされながら話すのは初めてなのである。
なんだか女子になった気分になる。…いや、女なんだけども。
「わ、わたしも新鮮!」
「ははっ…じゃあさーーー」
「?」
鷲尾くんが黒板消しを持ってない方の手を私の頭の上に持ってきた。
そしてそのまま、私の頭をくしゃっと撫でた。
「こういうことされんの、初めてでしょー?笑」
「!!?」
え、まって、これもしかして。
「はは、くしゃくしゃ。ほら。」
「…ち、ちょっともうやめてよーっ…!」
あの、少女漫画とかでよく見る頭なでなででは!!????
私の心の中は歓喜の叫びで包まれた。
真っ赤な顔で鷲尾くんの肩をこつんと叩いてみる。鷲尾くんも笑っている。
一生縁がないと思っていたことに、私の乙女心が舞い上がる。
ありがとう。ありがとう鷲尾くん。
ーーーーーそして私は気づいていなかった。
天使が一部始終を見ていたことに。
「めいこ!!!!」
「ひ、ひゃいっ!?」
「ーーーちょっと来い。」
その容姿からは想像もつかないほど低くドスの効いた声を発した大林くんは、呆気にとられる周囲には一瞥もくれず、乱暴に机をどかしてこちらまで来ると、私の腕を強引に掴んで教室の外まで引っ張っていった。
私の心の中は悲痛の叫びに包まれた。
「ーーーなにあれ。ほんとに…まじなの?」
「ありえない。一緒にいるの違和感しかないんですけど。」
「釣り合ってなさすぎだよね…。」
教室に残された女子たちは、二人が去っていったドアの方を睨んだ。
そのうちの女子の一人が、俯く園田の肩にそっと手を置いた。
「あのなぁ大林…状況は分かったが…暴力はだめだぞ。暴力は。」
「先生。先に暴力をふるったのはアッチです。言葉の暴力で僕は大いに傷つきました。また暴力を奮おうとしていたので、僕は暴力をやめさせるため彼を(殴って)黙らせなければいけませんでした。これは立派な正当防衛です。」
まさか。
「屁理屈言うな!大体被害を受けてたのはほとんど小野田だろ!?」
「チッ…るせーな…。俺はとばっちりくらったんだよ!一番可哀相だろ。」
あの『スダ高の天使』がこんな天使とは程遠い性格だったなんて!!!!
あれから保健室へ運ばれた男子生徒の証言により、私と私の彼氏?になった大林くんは生徒指導室に呼ばれ担任の先生に叱られることになったのが現在である。
大林くんは慣れているのか、新しい担任の先生とも既に顔見知りのようだ。
ちなみに私は人生初の生徒指導室で茫然自失である。
「小野田、お前は真面目だし新学期早々こんな所へ呼んで悪いが…何か言っておくことはあるか?」
「あ、いえ、ほんと私よくわからなくて…今なんでここにいるんでしたっけ…?」
「ぷっ」
「あー、もうわかった。向こうに非があるのは事実みたいだしな。もう何も言わん。でも暴力はなしだ。今度から言葉の暴力には言葉で返すよーに。」
そう言って担任に締め出された私たちは、生徒指導室の前でお互いの顔を見合わせた(正しくは私は見下ろして大林くんは見上げた)。
大林くんはしげしげと私を見つめてきて、いたたまれなくなった私は重たい口を開いた。
「あ、あの…私たち付き合うの…?」
「あー。面白いじゃん。もしかして他に付き合ってるやついた?」
「いや、いないけど…」
「だよな。」
だよな?
「俺、こんなに大きい女と付き合うの初めて。」
「お、おおき…」
「やっぱでかいと、全部迫力あっていいよな。エロい。」
「え、えろ…」
私は突然思い出したように顔を真っ赤にさせた。
「へ、変態じゃん…!」
「男はみんな変態だろ」
「うそだうそだ!わ、わたし、天使みたいな大林くんに、あ、憧れてたのに…萌え袖とか…!」
「萌え袖……へー、めいこ、俺に憧れてたの?」
「め、"めいこ"!!?」
なんだか先ほどとは打って変わって機嫌のよくなった大林くんは、私の顔をあの蕩けるような笑顔で見つめてきた。
私はこの顔に弱いのである。
「めいこ、ちょっとしゃがんで。」
私はぽーっとなりながらそろそろと足を折り畳んで大林くんを見上げる。
すると、廊下の窓からちょうど光が差し込んで、大林くんの髪が白く縁取られてまるで天からふってきたかのように後光がさして見えた。
私はこの顔に弱いのである。
綺麗な瞳が細くなって長いまつげがゆっくりと伏せられる。
ぷっくりとした唇が私の薄い唇の上に重ねられて、ちょっと離れた後、また角度を変えて下りてきた。
どのくらいたったか分からない後唇がようやく離れて、大林くんは蕩ける笑顔でこう言った。
「どう?憧れの天使とのキスは?」
「…え…あ、え!?あ!!!!!」人生で初めてのキスを生徒指導室の前でした私は、ひとしきり発狂した後真っ白になって大林くんに手を引かれて教室に戻ったのだった。
そして案の定、クラスは私たちの噂でもちきりだった。
「えーっ、大林くんまじで"あの"小野田さんと付き合うのー!?」
あの?
「信じられねー!何で小野田!?全っ然たいがと雰囲気ちがうじゃん!」
「…いいだろ別に。面白いからだよ。」
面白い??
(や、やっぱり大林くんは私みたいにデカい女が珍しいから興味本位で付き合おうとか言ってるんだ…!!)
私は黒板の上の方をガシガシ消しながら、わいわい騒いでいるクラスメイトたちの会話を盗み聞きしていた。さっきから必死にこの問題をどう解決すべきか思案している…が、今のところ解決策なし。
私は問題の発端のクラスの中心にいる大林くんを恨みがましい気持ちで盗み見た。
相変わらずの天使。
きらきらと輝いて見える明るい栗色の髪の毛に透き通るような白い肌。
それにマッチ何本乗るんだってくらいバサバサに長いまつ毛。
彼は面倒臭さそうに相槌を打つ程度なのに、
新学期早々彼の周りには男女問わずクラスメイトが集まっていた。皆んな彼の美貌に釘づけなのだ。
恐るべし『スダ高の天使』…。
彼がいなければ、私の高校2年生の日々は目立たず騒がずせめて今よりかは順風満帆になったであろうに。
「小野田さん、ごめんね。手伝ってもらっちゃって。うち、上の方届かないから…。」
「えっ!?あ、いいよいいよ!私でかいしこれくらいしか役に立つことないし!」
「ありがと~。」
へにゃ、と私の胸より下にある顔が笑顔になる。
彼女は今日からクラスメイトの園田里美ちゃん。
ふわふわの髪を二つに結んで、うんしょうんしょと背伸びをしながら黒板を消す姿は「The女子」。
恐らく、クラスで一番背が低い。
もちろん大林くんよりも。
(か、かわいい~~っ!)
私はハムスターとかリスとか小動物を見る気持ちで癒されながら園田さんと一緒に黒板を消していた。
「園田ちゃん上の方届いてないよ?がんばれ~」
「小野田と比べるとやべーな笑」
私たちの身長差は体感で恐らく30cm。
男子たちがにやにや笑いながら黒板を消すわたしたちを見てくる。
「もう、うちがチビって言いたいんでしょー!これでも牛乳毎日飲んでる!」
ぷんぷんと怒りながら男子を見上げる園田さんに、当の男子たちは鼻の下のばしてメロメロである。
分かる。可愛いすぎるこれは。
「…やっぱ大林くんには里美ちゃんがお似合いだよね。」
女子の誰かがボソッと呟く。
(いや、私もそう思います。)
私は心の中で泣きながら前言撤回しろと大林くんに念を送るが、天使はこちらをちらりと一瞥しただけで、大あくびをかましている。
私がはぁ…とため息をついていると、横からスッと黒板消しを持った長い腕が伸びて来た。
「!」
「わ、ほんとだ。小野田さんて背高いね。」
突然隣に立って来た男子に、私は驚いて曖昧に微笑む。
男子生徒は私よりも背が高く、恐らく180cmは軽く超えているだろう。
「俺、鷲尾大地。よろしくね。」
「よ、よろしく…。わ、鷲尾くんも背が高いね。びっくりしちゃった。」
鷲尾くんは私よりも楽そうに黒板の上の方を消しながら、ちらりと私を見下ろした。
こんなに見下ろされることもないので、私は思わず身構える。
「そーそー。俺も背が高いんだけどさ、女子だと小野田さんほど背が高い人と話す機会ないから、女子と目線が近いってすげー新鮮。なんか良いね。」
なんか良いね!?
私は動揺した。
私もこんなに男子から見下ろされながら話すのは初めてなのである。
なんだか女子になった気分になる。…いや、女なんだけども。
「わ、わたしも新鮮!」
「ははっ…じゃあさーーー」
「?」
鷲尾くんが黒板消しを持ってない方の手を私の頭の上に持ってきた。
そしてそのまま、私の頭をくしゃっと撫でた。
「こういうことされんの、初めてでしょー?笑」
「!!?」
え、まって、これもしかして。
「はは、くしゃくしゃ。ほら。」
「…ち、ちょっともうやめてよーっ…!」
あの、少女漫画とかでよく見る頭なでなででは!!????
私の心の中は歓喜の叫びで包まれた。
真っ赤な顔で鷲尾くんの肩をこつんと叩いてみる。鷲尾くんも笑っている。
一生縁がないと思っていたことに、私の乙女心が舞い上がる。
ありがとう。ありがとう鷲尾くん。
ーーーーーそして私は気づいていなかった。
天使が一部始終を見ていたことに。
「めいこ!!!!」
「ひ、ひゃいっ!?」
「ーーーちょっと来い。」
その容姿からは想像もつかないほど低くドスの効いた声を発した大林くんは、呆気にとられる周囲には一瞥もくれず、乱暴に机をどかしてこちらまで来ると、私の腕を強引に掴んで教室の外まで引っ張っていった。
私の心の中は悲痛の叫びに包まれた。
「ーーーなにあれ。ほんとに…まじなの?」
「ありえない。一緒にいるの違和感しかないんですけど。」
「釣り合ってなさすぎだよね…。」
教室に残された女子たちは、二人が去っていったドアの方を睨んだ。
そのうちの女子の一人が、俯く園田の肩にそっと手を置いた。
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