77 / 101
情報とご褒美
しおりを挟む
俺は金貨いっぱいの革袋を持って再び東の街へ向かった。
防壁を潜り、空が白み始めた頃の閑散とした街並みを横目見ながら路地の先へ。
日の出前の青みを帯びた薄闇の中。
情報屋の男はにこりと笑って俺を迎えて。
「むふふ。やはりリぃヒトちゃんは凄いに。あっしの見込んだ通り。さて、どの情報をお求めだにぃ?」
そっと俺に手を差し出す。
「王位継承問題の解決に使える情報を頼む」
俺は金貨を数え、41枚を情報屋の大きな手に積んでいく。
「まいど」
情報屋は俺から金貨を受け取ると、にこにこと笑顔を浮かべた。
「やはりリぃヒトちゃんは上客だにぃ。これからもご贔屓に。……さて」
情報屋はパン、と手を叩いた。
「王位継承はいつの時代も悩みの種。だから色々と付け加えられていった仕組みがあるんだに。今は忘れられた因習。だけどそれを利用すれば血を流すことなくリーネ=ヒルデガルド第1王女を退ける事が可能だぁね」
「その仕組みってのは?」
「闇の性質と呪術を応用した儀式。王位継承者同士が互いに呪いあって作るに。ルールを定め、そのルールに則って王を選出するだぁに。選ばれた王には残りの者への絶対命令権と、選出された王の命が脅かされると代わりに選ばれなかった者の命を身代わりにする事がてきるにぃ。この条件なら王女全員の死を望まない限り手を出す馬鹿はそうはいない」
「闇を、使うのか」
「性質だけだぁよ。属性を操るような感じで闇を使う必要はないだぁに」
情報屋はそう言って俺を見る目を細めた。
まるでその目は、知っているぞと言ってるかのよう。
「儀式によって付与される効果は『王』と『生け贄』。王はその権能との契約を示すためにキングスブライドの家名を改め、キングサクリファイスの名を加えるに」
「それは」
その名前の……加え方は。
俺はそれに既視感を、覚えた。
「儀式の手順については王城の書庫にある。属性鑑定の儀の手順を記した原典と同じ棚だぁに」
情報屋はそう言って息をついた。
椅子に深くもたれる。
「それで金貨41枚分の情報は全て?」
「ぬふ、リぃヒトちゃんはめざといに。いいに。サービス予定だった金貨1枚分多く受け取ったかぁね。これは今後もリぃヒトちゃんとより良い関係を保つための先行投資。おそらくリーネ=ヒルデガルド第1王女の裏をかくのに使える情報だに」
情報屋は身を乗り出した。
「その情報っていうのは」
俺が訊ねると、情報屋は俺に耳打ち。
「第2王女についてだに────」
俺は王城へと戻った。
フランの部屋へ向かう。
「リヒト様、お帰りなさいませ」
「……お帰りなさいませ」
両開きの扉を、スコルとハティがそれぞれ開いた。
俺を迎え入れると、扉を閉じる。
「お帰りリヒトん……て、凄い隈だよ?! 大丈夫? ちゃんと寝てる?」
王都と東の街を行ったり来たりで一睡もできず。
さらに怒涛の魔物討伐でさすがに疲れた。
その寝不足と疲労がもろに顔に出てしまってるらしい。
「リヒトんはすぐ無茶しちゃうから私、心配だよ」
フランは俺の手を引いた。
ソファで彼女と隣り合うように座らされて。
次いで俺の頭に添えられた手。
その手に引かれるままに体を預ける。
え、いや、これは。
「フ、フラン?」
俺はフランの顔を見上げた。
この体勢は完全に膝枕というもので……。
俺が体を起こそうとすると、フランに上から押さえつけられる。
「ダーメ。少し休まないと」
「いや、でも」
「無茶はダーメ」
「いや、無茶とかじゃなくて」
「リヒトん」
「休むにしても」
「リヒトん」
「もっとこう」
「リヒトん」
「別の」
「ハティちゃん、スコルちゃん、こっち」
唐突にフランが2人を呼んだ。
呼ばれるままにハティとスコルがとことことやってきて。
女の子に膝枕されてる姿を小さい女の子2人に見下ろされるという、実に恥ずかしい状況。
闇があったら集めて隠れたい気分。
「ちゃんと休みを取らないリヒトんに罰を与えたいと思います。ハティちゃん、スコルちゃん、もふもふの刑に処してください」
「ふぇ。へ、変態さんにわたしの尻尾を……!? ハティちゃん、わたし嫌だよ!」
おののくスコル。
そして俺は未だに変態さんなのかと。
「あたしだって嫌よ。なんでこいつに」
そう言っておれの顔に尻尾を叩きつける。
「痛っ」
強かに顔を叩かれて。
でも顔に乗ったふわふわの毛の塊が柔らかくて……。
一瞬で俺の意識が薄れていく。
「…………」
さらに俺の手の上に別な手触り。
ハティの尻尾の陰から視線を下げると、スコルがお尻を突き出して俺の手の上に尻尾を乗せていた。
尻尾が揺れると、つやつやの毛が俺の手のひらを撫でて少しくすぐったい。
ふわふわとつやつや。
そして後頭部に感じる柔らかさで。
俺はついに意識を手放し深い眠りに、落ちる。
防壁を潜り、空が白み始めた頃の閑散とした街並みを横目見ながら路地の先へ。
日の出前の青みを帯びた薄闇の中。
情報屋の男はにこりと笑って俺を迎えて。
「むふふ。やはりリぃヒトちゃんは凄いに。あっしの見込んだ通り。さて、どの情報をお求めだにぃ?」
そっと俺に手を差し出す。
「王位継承問題の解決に使える情報を頼む」
俺は金貨を数え、41枚を情報屋の大きな手に積んでいく。
「まいど」
情報屋は俺から金貨を受け取ると、にこにこと笑顔を浮かべた。
「やはりリぃヒトちゃんは上客だにぃ。これからもご贔屓に。……さて」
情報屋はパン、と手を叩いた。
「王位継承はいつの時代も悩みの種。だから色々と付け加えられていった仕組みがあるんだに。今は忘れられた因習。だけどそれを利用すれば血を流すことなくリーネ=ヒルデガルド第1王女を退ける事が可能だぁね」
「その仕組みってのは?」
「闇の性質と呪術を応用した儀式。王位継承者同士が互いに呪いあって作るに。ルールを定め、そのルールに則って王を選出するだぁに。選ばれた王には残りの者への絶対命令権と、選出された王の命が脅かされると代わりに選ばれなかった者の命を身代わりにする事がてきるにぃ。この条件なら王女全員の死を望まない限り手を出す馬鹿はそうはいない」
「闇を、使うのか」
「性質だけだぁよ。属性を操るような感じで闇を使う必要はないだぁに」
情報屋はそう言って俺を見る目を細めた。
まるでその目は、知っているぞと言ってるかのよう。
「儀式によって付与される効果は『王』と『生け贄』。王はその権能との契約を示すためにキングスブライドの家名を改め、キングサクリファイスの名を加えるに」
「それは」
その名前の……加え方は。
俺はそれに既視感を、覚えた。
「儀式の手順については王城の書庫にある。属性鑑定の儀の手順を記した原典と同じ棚だぁに」
情報屋はそう言って息をついた。
椅子に深くもたれる。
「それで金貨41枚分の情報は全て?」
「ぬふ、リぃヒトちゃんはめざといに。いいに。サービス予定だった金貨1枚分多く受け取ったかぁね。これは今後もリぃヒトちゃんとより良い関係を保つための先行投資。おそらくリーネ=ヒルデガルド第1王女の裏をかくのに使える情報だに」
情報屋は身を乗り出した。
「その情報っていうのは」
俺が訊ねると、情報屋は俺に耳打ち。
「第2王女についてだに────」
俺は王城へと戻った。
フランの部屋へ向かう。
「リヒト様、お帰りなさいませ」
「……お帰りなさいませ」
両開きの扉を、スコルとハティがそれぞれ開いた。
俺を迎え入れると、扉を閉じる。
「お帰りリヒトん……て、凄い隈だよ?! 大丈夫? ちゃんと寝てる?」
王都と東の街を行ったり来たりで一睡もできず。
さらに怒涛の魔物討伐でさすがに疲れた。
その寝不足と疲労がもろに顔に出てしまってるらしい。
「リヒトんはすぐ無茶しちゃうから私、心配だよ」
フランは俺の手を引いた。
ソファで彼女と隣り合うように座らされて。
次いで俺の頭に添えられた手。
その手に引かれるままに体を預ける。
え、いや、これは。
「フ、フラン?」
俺はフランの顔を見上げた。
この体勢は完全に膝枕というもので……。
俺が体を起こそうとすると、フランに上から押さえつけられる。
「ダーメ。少し休まないと」
「いや、でも」
「無茶はダーメ」
「いや、無茶とかじゃなくて」
「リヒトん」
「休むにしても」
「リヒトん」
「もっとこう」
「リヒトん」
「別の」
「ハティちゃん、スコルちゃん、こっち」
唐突にフランが2人を呼んだ。
呼ばれるままにハティとスコルがとことことやってきて。
女の子に膝枕されてる姿を小さい女の子2人に見下ろされるという、実に恥ずかしい状況。
闇があったら集めて隠れたい気分。
「ちゃんと休みを取らないリヒトんに罰を与えたいと思います。ハティちゃん、スコルちゃん、もふもふの刑に処してください」
「ふぇ。へ、変態さんにわたしの尻尾を……!? ハティちゃん、わたし嫌だよ!」
おののくスコル。
そして俺は未だに変態さんなのかと。
「あたしだって嫌よ。なんでこいつに」
そう言っておれの顔に尻尾を叩きつける。
「痛っ」
強かに顔を叩かれて。
でも顔に乗ったふわふわの毛の塊が柔らかくて……。
一瞬で俺の意識が薄れていく。
「…………」
さらに俺の手の上に別な手触り。
ハティの尻尾の陰から視線を下げると、スコルがお尻を突き出して俺の手の上に尻尾を乗せていた。
尻尾が揺れると、つやつやの毛が俺の手のひらを撫でて少しくすぐったい。
ふわふわとつやつや。
そして後頭部に感じる柔らかさで。
俺はついに意識を手放し深い眠りに、落ちる。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説

スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる