【 暗黒剣士の聖十字 】 ~属性適正がまさかの闇で騎士団追放。でも魔王と呼ばれるようになった俺の力がないと騎士団が崩壊するって?~

岸本 雪兎

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情報とご褒美

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 俺は金貨いっぱいの革袋を持って再び東の街へ向かった。
防壁をくぐり、空が白み始めた頃の閑散とした街並みを横目見ながら路地の先へ。

 日の出前の青みを帯びた薄闇の中。
情報屋の男はにこりと笑って俺を迎えて。

「むふふ。やはりリぃヒトちゃんは凄いに。あっしの見込んだ通り。さて、どの情報をお求めだにぃ?」

 そっと俺に手を差し出す。

「王位継承問題の解決に使える情報を頼む」

 俺は金貨を数え、41枚を情報屋の大きな手に積んでいく。

「まいど」

 情報屋は俺から金貨を受け取ると、にこにこと笑顔を浮かべた。

「やはりリぃヒトちゃんは上客だにぃ。これからもご贔屓ひいきに。……さて」

 情報屋はパン、と手を叩いた。

「王位継承はいつの時代も悩みの種。だから色々と付け加えられていった仕組みがあるんだに。今は忘れられた因習いんしゅう。だけどそれを利用すれば血を流すことなくリーネ=ヒルデガルド第1王女を退ける事が可能だぁね」

「その仕組みってのは?」

「闇の性質と呪術を応用した儀式。王位継承者同士が互いに呪いあって作るに。ルールを定め、そのルールにのっとっって王を選出するだぁに。選ばれた王には残りの者への絶対命令権と、選出された王の命がおびやかされると代わりに選ばれなかった者の命を身代わりにする事がてきるにぃ。この条件なら王女全員の死を望まない限り手を出す馬鹿はそうはいない」

「闇を、使うのか」

「性質だけだぁよ。属性を操るような感じで闇を使う必要はないだぁに」

 情報屋はそう言って俺を見る目を細めた。
まるでその目は、知っているぞ・・・・・・と言ってるかのよう。

「儀式によって付与される効果は『キング』と『生け贄サクリファイス』。王はその権能との契約を示すためにキングスブライドの家名を改め、キングサクリファイスの名を加えるに」

「それは」

 その名前の……加え方は。
俺はそれに既視きし感を、覚えた。

「儀式の手順については王城の書庫にある。属性鑑定の儀の手順を記した原典と同じ棚だぁに」

 情報屋はそう言って息をついた。
椅子に深くもたれる。

「それで金貨41枚分の情報は全て?」

「ぬふ、リぃヒトちゃんはめざといに。いいに。サービス予定だった金貨1枚分多く受け取ったかぁね。これは今後もリぃヒトちゃんとより良い関係を保つための先行投資。おそらくリーネ=ヒルデガルド第1王女の裏をかくのに使える情報だに」

 情報屋は身を乗り出した。

「その情報っていうのは」

 俺がたずねると、情報屋は俺に耳打ち。 

「第2王女についてだに────」






 俺は王城へと戻った。
フランの部屋へ向かう。

「リヒト様、お帰りなさいませ」

「……お帰りなさいませ」

 両開きの扉を、スコルとハティがそれぞれ開いた。
俺を迎え入れると、扉を閉じる。

「お帰りリヒトん……て、凄いくまだよ?! 大丈夫? ちゃんと寝てる?」

 王都と東の街を行ったり来たりで一睡もできず。
さらに怒涛どとうの魔物討伐でさすがに疲れた。
その寝不足と疲労がもろに顔に出てしまってるらしい。

「リヒトんはすぐ無茶しちゃうから私、心配だよ」

 フランは俺の手を引いた。
ソファで彼女と隣り合うように座らされて。
いで俺の頭に添えられた手。
その手に引かれるままに体を預ける。

 え、いや、これは。

「フ、フラン?」

 俺はフランの顔を見上げた。
この体勢は完全に膝枕というもので……。
俺が体を起こそうとすると、フランに上から押さえつけられる。

「ダーメ。少し休まないと」

「いや、でも」

「無茶はダーメ」

「いや、無茶とかじゃなくて」

「リヒトん」

「休むにしても」

「リヒトん」

「もっとこう」

「リヒトん」

「別の」

「ハティちゃん、スコルちゃん、こっち」

 唐突にフランが2人を呼んだ。
呼ばれるままにハティとスコルがとことことやってきて。
女の子に膝枕されてる姿を小さい女の子2人に見下ろされるという、実に恥ずかしい状況。
闇があったら集めて隠れたい気分。

「ちゃんと休みを取らないリヒトんに罰を与えたいと思います。ハティちゃん、スコルちゃん、もふもふの刑に処してください」

「ふぇ。へ、変態さんにわたしの尻尾を……!? ハティちゃん、わたし嫌だよ!」

 おののくスコル。
そして俺は未だに変態さんなのかと。

「あたしだって嫌よ。なんでこいつに」

 そう言っておれの顔に尻尾を叩きつける。

いてっ」

 したたかに顔を叩かれて。
でも顔に乗ったふわふわの毛の塊が柔らかくて……。
一瞬で俺の意識が薄れていく。

「…………」

 さらに俺の手の上に別な手触り。
ハティの尻尾の陰から視線を下げると、スコルがお尻を突き出して俺の手の上に尻尾を乗せていた。
尻尾が揺れると、つやつやの毛が俺の手のひらを撫でて少しくすぐったい。

 ふわふわとつやつや。
そして後頭部に感じる柔らかさで。
俺はついに意識を手放し深い眠りに、落ちる。
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