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報告と帰還
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俺は騎士団に光の怪鳥を討伐したことを報告した。
副団長にこれ以上怪しまれないよう、あえて何日か調査を続けてるふりをした上で。
その間は他の魔物や闇の動向、ロキの行方を追っていた。
俺は光の怪鳥の亡骸の場所を告げて調査を他の機関に引き継ぐ。
そして数日ぶりに俺はフランのもとへ。
扉をノックすると、内側から扉が開かれた。
見ると扉を開けてくれたのはスコルのようで。
「リヒト様、お帰りなさいませ」
「……リヒト、さま。お帰りなさいませ」
スコルに続き、あのハティが作法に則って俺を出迎えた。
びっくりしてハティを見てると、ハティも俺を睨むように見ている。
勝手に侍女にしたことを怒ってるのかも。
「…………」
「えっと」
ここは一応謝るべきか。
俺が迷っていると、スコルとハティの後ろでフランが手を振って。
(リヒトん)
口の動きで俺の名前を呼んだ。
次いで頭を撫でるジェスチャー。
(褒めて、あげて)
口をぱくぱくと動かすと、フランは優しい笑みを浮かべてハティを見る。
ふむ。
「……なによ」
無言で視線を送る俺にハティが不機嫌そうに言った。
けど鋭い眼差しとは反対に眉はどこか力なく下がっていて。
下唇を軽く噛み、俺を上目遣いで見る。
「……いや」
俺はハティに笑いかけて。
帽子越しにその頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
「偉いぞ、ハティ。ちゃんとお出迎えできたな」
「バカ、うるさい。このくらい出来て突然よ!」
ハティはふんと顔を背けて。
だけど頭を撫でる俺の手を払いのけるわけでもなく。
そしてスカートの下ではぶんぶんと尻尾が揺れているのが分かる。
「良かったねぇ、ハティちゃん」
スコルが、わらいながら言った。
その目を柔らかく細めて相方であるハティの顔を覗き込む。
「……ちょっと、いつまで撫でてるのよ!」
ははは。
さすがに手を叩かれた。
「あんまり馴れ馴れしくしないで」
ハティはそう言うと腕を組んで、じろりと俺を横目見る。
「もう。ハティちゃんは素直じゃないんだから」
スコルは口許を手で隠しながらくすくすと笑う。
「お帰り、リヒトん」
俺の前まで来ると、フランは俺の顔を覗き込むように体を傾けた。
つぶらな青い瞳がまっすぐに俺を見る。
「……」
「?」
「ただいま戻りました、エーファ=フランシスカ・ロア・キングスブライド第4王女殿下」
俺はフランに深々とお辞儀。
そのまま跪いた。
パッと顔を上げ────
「わー、ごめんごめん! うそうそ! ただいまフラン」
もう少しふざけようかと思ったけど、子供のように頬を膨らませて怒るフランの顔を見てすぐにやめた。
「次そういうことしたら処刑だからね、リヒトん」
むー、と顔をしかめたままフランが言った。
そしてフランの立場で言うと、冗談と分かってても冗談に聞こえない。
「はーい」
あえて崩した調子で答える。
「分かればよろしい」
フランはうんうんとうなずいた。
「改めてただいま、フラン。城で何か変わった事は?」
「特にはないかな。一応ハティちゃんが言うには部屋の外でこっちを窺ってる気配がするって。それが何度かあっただけ」
「リーネ=ヒルデガルド王女の?」
俺は少し声をひそめた。
「かもしれない。でも城は自分の属する派閥が優位になるよう動く他の王族や貴族の人達もいるから、直接お姉さまの指示で動いたわけじゃない可能性もあるよ」
「相変わらず酷いところだ」
「お母様の代もお婆様の代も。それより前からずっとこんな調子みたい。仕方がないことだけど、私はそんなしがらみのない1人の女の子でいたかったな」
「城に戻ったの、後悔してる?」
フランが望むのなら俺は夜の姿としてじゃなく、リヒトとして彼女を城から拐うこともためらわない。
「今はリヒトんやハティちゃんとスコルちゃんがいてくれるから大丈夫だよ。新しい侍女もよく尽くしてくれて、ハティちゃんとスコルちゃんの指導もとても丁寧にしてくれて。それにお父様に心配をかけてたのは申し訳なく思ってたの。お父様は私達姉妹をとても大切に思ってくださってるから」
その時。
トトンとノックの音。
「エーファ=フランシスカ王女殿下」
次いで扉の外から使用人の声。
「ローラ=アレクシア王女殿下から、内密にお話が。護衛の王国騎士様もお戻りのようなので、王国騎士を伴い、お部屋までお越しいただけないかと」
ローラ=アレクシア王女殿下。
お会いしたことはないけど確か第2王女で、過去に襲撃を受けて大きな傷を負ったと聞いている。
フランは俺の方を見た。
大丈夫、と。
何かあっても俺が守る、と目で伝える。
「……分かりました。これより向かいます。ローラお姉さまにお伝えください」
フランが答えた。
「かしこまりました。失礼致します」
フランの返事を受け、使用人の足音が遠ざかる。
「ローラ=アレクシア王女殿下とは?」
「子供の頃はとても仲が良かったけど、襲撃を受けて臥せってしまってからはほとんど言葉を交わしたこともないの」
「それがどうして急に」
俺は訝しんだ。
ローラ=アレクシア王女もリーネ=ヒルデガルド王女と同じようにフランの安全を脅かす存在かもしれない。
「今は考えても仕方ない。行こう、リヒトん」
俺はフランと共に、ローラ=アレクシア王女の部屋へと向かった。
副団長にこれ以上怪しまれないよう、あえて何日か調査を続けてるふりをした上で。
その間は他の魔物や闇の動向、ロキの行方を追っていた。
俺は光の怪鳥の亡骸の場所を告げて調査を他の機関に引き継ぐ。
そして数日ぶりに俺はフランのもとへ。
扉をノックすると、内側から扉が開かれた。
見ると扉を開けてくれたのはスコルのようで。
「リヒト様、お帰りなさいませ」
「……リヒト、さま。お帰りなさいませ」
スコルに続き、あのハティが作法に則って俺を出迎えた。
びっくりしてハティを見てると、ハティも俺を睨むように見ている。
勝手に侍女にしたことを怒ってるのかも。
「…………」
「えっと」
ここは一応謝るべきか。
俺が迷っていると、スコルとハティの後ろでフランが手を振って。
(リヒトん)
口の動きで俺の名前を呼んだ。
次いで頭を撫でるジェスチャー。
(褒めて、あげて)
口をぱくぱくと動かすと、フランは優しい笑みを浮かべてハティを見る。
ふむ。
「……なによ」
無言で視線を送る俺にハティが不機嫌そうに言った。
けど鋭い眼差しとは反対に眉はどこか力なく下がっていて。
下唇を軽く噛み、俺を上目遣いで見る。
「……いや」
俺はハティに笑いかけて。
帽子越しにその頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
「偉いぞ、ハティ。ちゃんとお出迎えできたな」
「バカ、うるさい。このくらい出来て突然よ!」
ハティはふんと顔を背けて。
だけど頭を撫でる俺の手を払いのけるわけでもなく。
そしてスカートの下ではぶんぶんと尻尾が揺れているのが分かる。
「良かったねぇ、ハティちゃん」
スコルが、わらいながら言った。
その目を柔らかく細めて相方であるハティの顔を覗き込む。
「……ちょっと、いつまで撫でてるのよ!」
ははは。
さすがに手を叩かれた。
「あんまり馴れ馴れしくしないで」
ハティはそう言うと腕を組んで、じろりと俺を横目見る。
「もう。ハティちゃんは素直じゃないんだから」
スコルは口許を手で隠しながらくすくすと笑う。
「お帰り、リヒトん」
俺の前まで来ると、フランは俺の顔を覗き込むように体を傾けた。
つぶらな青い瞳がまっすぐに俺を見る。
「……」
「?」
「ただいま戻りました、エーファ=フランシスカ・ロア・キングスブライド第4王女殿下」
俺はフランに深々とお辞儀。
そのまま跪いた。
パッと顔を上げ────
「わー、ごめんごめん! うそうそ! ただいまフラン」
もう少しふざけようかと思ったけど、子供のように頬を膨らませて怒るフランの顔を見てすぐにやめた。
「次そういうことしたら処刑だからね、リヒトん」
むー、と顔をしかめたままフランが言った。
そしてフランの立場で言うと、冗談と分かってても冗談に聞こえない。
「はーい」
あえて崩した調子で答える。
「分かればよろしい」
フランはうんうんとうなずいた。
「改めてただいま、フラン。城で何か変わった事は?」
「特にはないかな。一応ハティちゃんが言うには部屋の外でこっちを窺ってる気配がするって。それが何度かあっただけ」
「リーネ=ヒルデガルド王女の?」
俺は少し声をひそめた。
「かもしれない。でも城は自分の属する派閥が優位になるよう動く他の王族や貴族の人達もいるから、直接お姉さまの指示で動いたわけじゃない可能性もあるよ」
「相変わらず酷いところだ」
「お母様の代もお婆様の代も。それより前からずっとこんな調子みたい。仕方がないことだけど、私はそんなしがらみのない1人の女の子でいたかったな」
「城に戻ったの、後悔してる?」
フランが望むのなら俺は夜の姿としてじゃなく、リヒトとして彼女を城から拐うこともためらわない。
「今はリヒトんやハティちゃんとスコルちゃんがいてくれるから大丈夫だよ。新しい侍女もよく尽くしてくれて、ハティちゃんとスコルちゃんの指導もとても丁寧にしてくれて。それにお父様に心配をかけてたのは申し訳なく思ってたの。お父様は私達姉妹をとても大切に思ってくださってるから」
その時。
トトンとノックの音。
「エーファ=フランシスカ王女殿下」
次いで扉の外から使用人の声。
「ローラ=アレクシア王女殿下から、内密にお話が。護衛の王国騎士様もお戻りのようなので、王国騎士を伴い、お部屋までお越しいただけないかと」
ローラ=アレクシア王女殿下。
お会いしたことはないけど確か第2王女で、過去に襲撃を受けて大きな傷を負ったと聞いている。
フランは俺の方を見た。
大丈夫、と。
何かあっても俺が守る、と目で伝える。
「……分かりました。これより向かいます。ローラお姉さまにお伝えください」
フランが答えた。
「かしこまりました。失礼致します」
フランの返事を受け、使用人の足音が遠ざかる。
「ローラ=アレクシア王女殿下とは?」
「子供の頃はとても仲が良かったけど、襲撃を受けて臥せってしまってからはほとんど言葉を交わしたこともないの」
「それがどうして急に」
俺は訝しんだ。
ローラ=アレクシア王女もリーネ=ヒルデガルド王女と同じようにフランの安全を脅かす存在かもしれない。
「今は考えても仕方ない。行こう、リヒトん」
俺はフランと共に、ローラ=アレクシア王女の部屋へと向かった。
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