【 暗黒剣士の聖十字 】 ~属性適正がまさかの闇で騎士団追放。でも魔王と呼ばれるようになった俺の力がないと騎士団が崩壊するって?~

岸本 雪兎

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調査開始

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「私にはエーファ=フランシスカ王女殿下の護衛があります。今回の件、別な人に変えてもらえなければ困ります」

 俺は会議を終えてすぐに副団長を追って言った。
個人的にその怪鳥の調査をにするつもりだけど、任務で俺がフランの側にいないのが公となる状況は避けたい。

「君の能力は買うけど今は王国騎士の立場としては見習いに近い。与えられた任務をり好みするような立場にはない」

 副団長は金縁の眼鏡を中指で押し上げた。

「それに今回の任務はリーネ=ヒルデガルド王女殿下からの推薦だ。殿下は君を高く評価している。君なら早急に解決できるはず、と」

 違う。
リーネ=ヒルデガルド王女は俺とフランを引き離したいんだ。

「それにエーファ=フランシスカ王女殿下は今は城外へは出られない。国王様が最近頻出する異変を危惧されて、3人の王女殿下へ外出禁止令を出された。城内でそれほどの危険が及ぶとでも?」

「むしろ城内だからです」

「……あまり滅多なことは言わない方がいい」

 俺の言わんとしてる事をすぐに察して。
副団長はきょろきょろと周囲をうかがった。

 俺は少し声をひそめる。

「第2王女殿下は襲撃を受けて酷い傷を負わされた、とも聞いてます」

「それは城外での話」

「でもそれをやらせたのは城の──いや、第1王女殿下ではないかと噂にもなってるのでしょう?」

「レズモンドが常に行動を共にし、そういった賊と第1王女殿下と接触した事実はなかったと」

「レズモンドは金で動く男では」

 すかさず俺が言うと、副団長は顔をしかめた。

 そもそも初対面の時に俺を殺そうとしてきたし。
気軽に話しかけてきたり、金回りのいらない世話を焼いてきたりするけど。
俺はリーネ=ヒルデガルド王女と同時にあの男も許したつもりはない。

「とにかく。任務を降りることはできない」

 副団長が言った。

「なら私の仲間をエーファ=フランシスカ王女殿下のお側に」

「騎士でもない者を護衛につけるわけにはいかない。ここは王城で。相手は王女殿下だ。ここで王家に仕える者達にも誇りがある。その者達に守れないからよそから護衛を呼んだなどと、君の立場だけでなくエーファ=フランシスカ王女殿下の心証にも関わるぞ」

「なら逆にどんな立場や役職ならいいと?」






「というわけで、フランをよろしく」

「というわけ、じゃないわよ」

 ハティが苛立たしげに。

「ふ、ふぇぇえ」

 そしてスコルが不安そうに俺を見てきた。

「こちらが侍女じじょ見習いのハティとスコルです。よろしくお願いします」

 俺は先輩侍女じじょに2人を紹介する。

 ハティとスコルは質素なドレスにエプロンを身にまとい、帽子で耳を隠していた。
でもハティは不満なようで。
先輩侍女じじょの死角、スカートの下で尻尾がびたんびたんと揺れている。

「ハティ、やめなさい」

 俺の言葉にハティはその意思と関わりなく尻尾を揺らすのをやめた。
俺がやめさせた。
代わりに俺をじろりとにらんでくる。

「だ、大丈夫かなぁ。ねぇ、ハティちゃん……?!」

「知らない。ていうかなんであたしがこんな事!」

 顔をしかめるハティ。

「ふふふ。可愛らしいですね、双子さんかな」

 そんなハティとスコルの様子を先輩侍女じじょ微笑ほほえましそうに見ていた。

「任せてください。私もこの2人くらいの頃にこの仕事に就いたので。指導の方は私にお任せして、王国騎士様は任務へ安心して向かってください」

 俺は副団長と話し合った結果、ハティとスコルをフランの侍女じじょ──世話係として側につける事にした。
名目上は護衛ではないけど、フランに何かあればハティがなんとかしてくれるはず。
そしてスコルはハティのお目付け役的な立場だ。

 これで俺は少なくともフランの身の安全という面では安心して任務にいける。
……ハティが問題を起こさないかだけ不安だけど。







 俺は怪鳥の調査のために王都を出た。
過去の目撃情報の中から時間と場所が詳細なものをいくらか集め、そこへ向かう。

 調査は速やかに進むと思ってる。
そのための詳細な時間と場所だ。

「頼んだぞ、ムニン」

 過去を辿る力を持つムニンに言った。
ムニンの力を借り、正確な時間と場所から怪鳥追うつもりだ。

「仕方ないなー。代わりにまたドラゴンの背中に乗せてね!」

 目をキラキラさせたムニンが大きくうなずいた。
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