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ロキの謎
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…………おかしい。
俺はロキからなんの闇も感じられないことに違和感を覚えた。
魔物の陰で暗躍し、人を魔物へと変える。
てっきり魔物が人に化けているんだと思ったけど違う。
その身体は間違いなく人間のものだった。
「何が目的だ。邪神の復活を目論んでるのか?」
「私は私に与えられた役目を果たそうとしているまで。始祖の復活がその最終目標ではない。もっとも、こうやって不本意な介入を何度も受けて計画の遂行はもう不可能ですが」
「御託はいい。てめぇは今ここで倒す」
アイゼンが言った。
右腕から黒い蒸気を噴き出す。
「私は力を求めた貴方にそれを与えて差し上げただけ。感謝こそされても、敵対される謂われはございません」
ロキは黄金に光る瞳でアイゼンを横目みた。
困りましたね、といった様子で肩をすくめる。
だけど俺とアイゼンの鋭い眼差しを前に、浮かべていた笑みが消えた。
次いで様々な感情が入り交じった瞳で俺を見る。
「……ヘル亡き今、瘴海はそれほど時間をかけずに消滅するでしょう。このヘルヘイムの跡地もそれと同時に消える。そうなれば約束の時は大きく早まる」
「約束の時? ヘルも何度かその言葉を口にした。一体何が起こる──いや、何を起こすつもりなんだ!」
「私達が起こすのではありません。私達は来るべきその時に備えているのです。全ては始祖の思いのままに」
瞬間、その身体がぐにゃりと歪んだ。
すかさず俺はクレイモアを振り抜こうと。
だけど流れ落ちた黒いスライム質の下からは見知らぬ顔。
俺はとっさに剣を止める。
「正しい判断です」
溶け崩れていくロキの顔が言った。
中から現れたのは全く別人の男。
どうやら意識はないようだ。
人を魔物に変えるように、ロキは他者を自分の代わりへと変えることまでできるのか。
ロキはそのまま黒いスライム質となって消え去った。
そのスライム質も蒸発し、同時に地面に吸い込まれて。
まるで最初から無かったかのように消え失せる。
「リーンハルト」
俺はリーンハルトに振り返った。
「あの男の知ってる事、全て話してもらうぞ」
リーンハルトはやはりあの男に実質、操られていたようだ。
リーンハルトを焚き付けてヴィルヘルム様を退団へと追い込み、次に俺を事故を装って殺させようとした。
結果としては殺すことができずに俺は騎士団追放。
聖騎士団からも聖堂都市からも居場所を奪われた。
さらに経験のある騎士団メンバーを退団させ、代わりに貴族と王族に連なる者だけを採用させる。
お陰で聖堂都市の防衛能力は著しく低下。
騎士団と聖堂都市の崩壊は秒読み。
邪神の封印の維持も、いつまでできるか分からない状況に追い込んだ。
本来戦闘後はすぐに行うべき闇払いを後回しにさせたのが、徐々に積み重なって戦況を圧迫させてる。
これもロキの提案によるものだ。
東の街で闇払いをさせるために聖騎士の多くを使わせた。
だけどどこか違和感がある。
「闇払いの後で東の街に変異した魔物を出現させたのはほぼ間違いなくロキだ。それによってリーンハルトは大きな後ろ楯になっていた東の街の領主からの信頼を失った。聖堂都市の防衛もままならない。結果として名誉挽回をすべく、ヘル討伐に赴く事になった」
「そしてさらに俺と接触し、俺を魔物にした。その上でヘルが死者の魂を苦しめている事を告げて、ヘル討伐に向かわせる」
結果としてはロキはヘルの討伐をさせようとしていたことになる。
最初にロキは自分の思いどおりになったとも言っていた。
でもそれはおかしい。
「ヘルは邪神の従える魔物の将の一角。それをあいつが倒させようとしたってことは、魔物の中にも派閥とかが存在するのかな」
分からない。
一体何を企んでいるのか。
キーになるのは。
「約束の時」
俺は静かに呟いた。
俺達はヘルヘイムの跡から地上へと戻ることにした。
炎の消えた橋は対岸へと人々を容易く通す。
再生した肉体と魂の両方があれば生者として変わらないのか、橋の向こうで突然骸骨になるなんて事もない。
俺はロキからなんの闇も感じられないことに違和感を覚えた。
魔物の陰で暗躍し、人を魔物へと変える。
てっきり魔物が人に化けているんだと思ったけど違う。
その身体は間違いなく人間のものだった。
「何が目的だ。邪神の復活を目論んでるのか?」
「私は私に与えられた役目を果たそうとしているまで。始祖の復活がその最終目標ではない。もっとも、こうやって不本意な介入を何度も受けて計画の遂行はもう不可能ですが」
「御託はいい。てめぇは今ここで倒す」
アイゼンが言った。
右腕から黒い蒸気を噴き出す。
「私は力を求めた貴方にそれを与えて差し上げただけ。感謝こそされても、敵対される謂われはございません」
ロキは黄金に光る瞳でアイゼンを横目みた。
困りましたね、といった様子で肩をすくめる。
だけど俺とアイゼンの鋭い眼差しを前に、浮かべていた笑みが消えた。
次いで様々な感情が入り交じった瞳で俺を見る。
「……ヘル亡き今、瘴海はそれほど時間をかけずに消滅するでしょう。このヘルヘイムの跡地もそれと同時に消える。そうなれば約束の時は大きく早まる」
「約束の時? ヘルも何度かその言葉を口にした。一体何が起こる──いや、何を起こすつもりなんだ!」
「私達が起こすのではありません。私達は来るべきその時に備えているのです。全ては始祖の思いのままに」
瞬間、その身体がぐにゃりと歪んだ。
すかさず俺はクレイモアを振り抜こうと。
だけど流れ落ちた黒いスライム質の下からは見知らぬ顔。
俺はとっさに剣を止める。
「正しい判断です」
溶け崩れていくロキの顔が言った。
中から現れたのは全く別人の男。
どうやら意識はないようだ。
人を魔物に変えるように、ロキは他者を自分の代わりへと変えることまでできるのか。
ロキはそのまま黒いスライム質となって消え去った。
そのスライム質も蒸発し、同時に地面に吸い込まれて。
まるで最初から無かったかのように消え失せる。
「リーンハルト」
俺はリーンハルトに振り返った。
「あの男の知ってる事、全て話してもらうぞ」
リーンハルトはやはりあの男に実質、操られていたようだ。
リーンハルトを焚き付けてヴィルヘルム様を退団へと追い込み、次に俺を事故を装って殺させようとした。
結果としては殺すことができずに俺は騎士団追放。
聖騎士団からも聖堂都市からも居場所を奪われた。
さらに経験のある騎士団メンバーを退団させ、代わりに貴族と王族に連なる者だけを採用させる。
お陰で聖堂都市の防衛能力は著しく低下。
騎士団と聖堂都市の崩壊は秒読み。
邪神の封印の維持も、いつまでできるか分からない状況に追い込んだ。
本来戦闘後はすぐに行うべき闇払いを後回しにさせたのが、徐々に積み重なって戦況を圧迫させてる。
これもロキの提案によるものだ。
東の街で闇払いをさせるために聖騎士の多くを使わせた。
だけどどこか違和感がある。
「闇払いの後で東の街に変異した魔物を出現させたのはほぼ間違いなくロキだ。それによってリーンハルトは大きな後ろ楯になっていた東の街の領主からの信頼を失った。聖堂都市の防衛もままならない。結果として名誉挽回をすべく、ヘル討伐に赴く事になった」
「そしてさらに俺と接触し、俺を魔物にした。その上でヘルが死者の魂を苦しめている事を告げて、ヘル討伐に向かわせる」
結果としてはロキはヘルの討伐をさせようとしていたことになる。
最初にロキは自分の思いどおりになったとも言っていた。
でもそれはおかしい。
「ヘルは邪神の従える魔物の将の一角。それをあいつが倒させようとしたってことは、魔物の中にも派閥とかが存在するのかな」
分からない。
一体何を企んでいるのか。
キーになるのは。
「約束の時」
俺は静かに呟いた。
俺達はヘルヘイムの跡から地上へと戻ることにした。
炎の消えた橋は対岸へと人々を容易く通す。
再生した肉体と魂の両方があれば生者として変わらないのか、橋の向こうで突然骸骨になるなんて事もない。
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