【 暗黒剣士の聖十字 】 ~属性適正がまさかの闇で騎士団追放。でも魔王と呼ばれるようになった俺の力がないと騎士団が崩壊するって?~

岸本 雪兎

文字の大きさ
上 下
47 / 101

新たなる魔将──スケルトン・ビショップアーキテクト

しおりを挟む
 一体何が行われたのか。
俺達を置いて橋の先へと走り去る死者達は生者と見分けがつかない。

 肉体の再構成。
あるいは死体にくたいの吸収。
まだその詳細は分からないけど、その条件を満たせばこちらが不利になることは間違いない。

 相手を自身に有利な状況にしてから招き入れる。

「ヘルはかなり狡猾こうかつな魔物なのかも知れないな」

 俺は伝承のヘルを思い出した。
残忍な上に、さらに狡猾こうかつ
かなり厄介なタイプの魔物。

 でも今はまず先へ行く方法を見つけないと。
何か突破する方法があるはずだ。

 うろ覚えだけど1度あいつを倒すまでは冒険者の死体があった。
何らかの事象を受けて死者が起き上がったのは魔物がやられてから。

 そしてここに来たときあの魔物はやられた姿だった。
生きた状態で魔物を倒した存在がいたはず。
その人物は居なかったし、先へ行くことを諦めて戻ったとも思えない。
ならここを目指して進んできた俺達とすれ違う。
おそらく生者のまま先へと向かった人がいる。

「あいつは不死身だ! 撤退しよう!」

 俺は残ってる冒険者達に叫んだ。
撤退を促す。

 このままだと死者が増えるだけだ。
俺も周りに冒険者がいたら十全に闇の属性の力を振るえない。

 そして俺が時間を稼ぎ、冒険者達は退避して。
ここには魔物と俺だけが残った。

 周囲は暗闇。
見えるのは炎の橋と、その逆光で浮かび上がる魔物のぼんやりとしたシルエットだけ。

 ほのかに光る程度にまで光量の落ちた偽装の光刃を解除した。
暗闇よりも色濃い暗黒のクレイモアが姿を現す。

 迫り来る魔物に俺は真黒まくろの刃を一閃。
放たれた黒い三日月型の斬撃が魔物をバラバラに消し飛ばす。

「もう手加減はなしだ」

 他の冒険者の目がない今、俺がこの魔物にやられる要素は完全になくなった。

 だが同時に仕留めきれない。
魔物は再び再生を始める。

 復活した魔物は俺を見下ろしてにたりと笑った。
仮面の下から覗く口許くちもとが気味悪く歪む。
この魔物はまだ分かってないんだ。
俺に勝てるはずがないなんて、そんな単純な事が。

俺は剣を振り上げ、その不気味な顔を身体ごと両断。
走り抜けた黒の斬撃が洞窟の壁に衝突して轟音を響かせる。

 この魔物本体の能力か、条件を満たすことで作用するヘルの能力か。
……どちらでも構わない。
能力なら俺にも自身がある。

「やってみるか」

 何度でも再生する魔物を前に呟いた。

 ヘルが死者アンデッドの王だと言うなら、俺はそれと同等以上の魔物を造り出してみせる。

 ここに満ちる闇は深く色濃い。
ロードナイトのように配下を増やすことで互いにバフをかけるような能力にする必要はない。

 俺は周囲の闇を1つに集中させた。
魔物の特性を改良して掛け合わせた新たな魔物を創造する。

 生み出したのはスケルトン種。
おごそかな白のローブを身にまとい、手には大きな杖を握っていた。
その顔は鈍く光を反射する金色の髑髏しゃれこうべ
頭部からは湾曲した角が2つ伸び、それらが合わさって頭上に浮かぶ光輪のように見える。

「やれ。『スケルトン・ビショップアーキテクト』」

 俺はその魔物の名を呼んだ。

 同時にビショップアーキテクトの片方の眼孔がんこうに紫の炎が灯り、その紫色しいろの眼差しが巨人種の魔物を見据える。

 ビショップアーキテクトは杖を掲げた。

『■■■□、■□□。□■■■■────』

 祝詞のりとと反転した呪詛じゅそが音をかいさずに空間を伝播でんぱし、魔物を中心に魔法陣を描く。

 魔物はビショップアーキテクトへと襲いかかろうとするがもう襲い。
魔物は魔法陣の境界に阻まれた。
見えない壁に何度も手を叩きつけるが、その境界は微塵みじんも揺らぎはしない。

『■■■■!』

 そして詠唱が終わると同時に魔法陣の中の視界が反転した。
光が闇に。
闇が光に。
黒と白とが入れ代わる。

 悶え苦しむ魔物の体表が一瞬で輝きとなってこぼれ落ちた。
残された黒い骨格がずぶずぶと魔法陣に沈んでいく。

 魔物は再生しない。

 これが権能『大神官ビショップ』。
スケルトンの上位種が持つ強大な呪詛じゅそを反転し、さらに祝詞のりとを織り混ぜてうたう術式。
呪いの力をもって魔物を浄化し、滅する力だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。 ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。 だけどまあ、そんな事は夢の夢。 現実は、そんな考えを許してくれなかった。 三日と置かず、騒動は降ってくる。 基本は、いちゃこらファンタジーの予定。 そんな感じで、進みます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...