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第1級指定禁忌種
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「レズモンド────」
俺目掛けて飛び出したレズモンドにリーネ=ヒルデガルド王女が言う。
「不敬な輩を焼き払いなさい!」
「御意」
レズモンドの折れた剣に白い炎が纏い、その輝きが真昼のように辺りを照らした。
だがその中にあってなお俺の纏う闇は黒く。
掻き消すことのできない深い闇の一閃がレズモンドの焔を迎え撃つ。
前よりも炎の密度が高い。
だけど前回、全力を出せてなかったのは俺も同じ。
偽装も手加減も必要ない。
前回以上の炎で向かい来るレズモンドに、俺はそれ以上の闇を以て返した。
拡がる闇が燃え盛る炎の輝きを飲み込んだ。
レズモンドを襲う暗黒の濁流。
闇はそのままレズモンドを凄まじい勢いで壁に叩きつける。
「レズモンド!?」
レズモンドは強い。
だからこそ一撃で沈むとは思っていなかったリーネ=ヒルデガルド王女が叫んだ。
壁にめり込み、力なくうなだれるレズモンドの手から剣が滑り落ちて乾いた音を響かせる。
「…………」
「レズモンド!」
「…………」
「起きなさいレズモンド!」
「…………」
レズモンドは応えない。
当然だ。
あの一撃をもろに受けて立てるはずが。
「レズモンド、追加給金2倍……!」
「────御意」
ぱちりとそいつは、目を開けて。
めり込んだ壁から身体を引き剥がし、同時に壁を蹴った。
全身から炎を滾らせ、その手のひらに膨大な量の炎を集中。
「『白灰に帰す極焔』」
圧縮された焔が俺に向けて叩きつけるように放たれる。
目を焼く閃光。
解放された白い炎が彼方へと走り抜け、遅れて巨大な火柱を上げる轍となった。
凄まじい火力。
ブラック・ドラゴンすら複数体まとめて屠れるだけの威力だ。
だけど俺は闇を球状に展開し、レズモンドの攻撃を防いでいた。
闇の盾の上を白い炎がまだ燻ってる。
レズモンドは攻撃を防がれたと気付くと同時に後退。
リーネ=ヒルデガルド王女を連れて撤退しようと。
「お待ちなさい、レズモンド」
だけど彼女がそれを止めた。
「全力を出しなさい。私の事は構わない」
「しかし」
「追加給金さらに2倍」
「いいでしょう」
レズモンドが両手に炎を圧縮。
さっきと同等の威力の焔が2つ。
彼の手の中で激しく渦巻いている。
今度こそレズモンドの本気。
リーネ=ヒルデガルド王女の護衛のために、彼は半分近い力を残して戦っていたようだ。
これが王国騎士の実力?
いやいや。
さすがにレズモンドがその中でも強いんだと思いたい。
その時、フランが俺の袖を強く掴んだ。
不安げな眼差しで俺を見つめてる。
『大丈夫』
俺はフランに言う。
『俺が必ず守るから』
そして迫り来るレズモンドを前に、俺は闇を剣に集めた。
町の全部。
さらにその周囲の闇も全てが巨大な暗雲のようになって俺の頭上に。
そのまま渦を描いて、掲げた剣の刃へと集中する。
互いに技を放つのは同時。
「『白灰に帰す双・極焔』」
「『黒き十字を抱きて眠れ』」
重なりあう白い焔は地上に出現した太陽のようだ。
夜を照らす地上の陽光。
だけど俺の刻んだ暗黒の十字は仮初の昼を、斬り裂いた。
再び訪れた夜闇に紛れ、俺はフランを連れて闇へと消える。
「レズモンド、弁明は────」
起き上がった俺を殿下が鋭い眼差しで睨んでいたが。
「リーネ=ヒルデガルド殿下。今はその話は後で」
苛立たしげな殿下の言葉を遮る。
申し訳ないが今はそれどころじゃない。
金を第1優先にする俺だが今回は例外。
それでもどうしてもと言うなら金をくれ。
俺は殿下を横目見るが、もう追加給金はなさそうだ。
なら俺──レズモンドは今相手にした化け物の対応を考えないとならない。
なんだあれは。
全てにおいて規格外。
防御力、攻撃力共に魔物の域を遥かに超えてる。
俗物騎士という自覚はあるが、これでも王国騎士の中でも5本の指に入る実力があると自負してる。
その俺が全力を出して手も足も出ないとは。
「私の言葉を遮るとは貴方と言えど不敬が過ぎますわ。極刑の覚悟はできてますこと?」
「…………」
「レズモンド……?」
「殿下。周囲の安全の確認がとれ次第、自分は1度王国騎士団へと戻り騎士団長と議会に今回の襲撃者の報告と申請を行います。あれを第1級指定禁忌種として指定、王国騎士団の最優先討伐対象と定義します」
俺の言葉にリーネ=ヒルデガルド殿下は目をしばたたかせた。
「第1級指定禁忌種? それって伝説にあるような魔物の区分じゃありませんこと。フェンリル、ヨルムンガンド、ヘルを筆頭にした封印された邪神の配下の最高幹部達。そこに新たに加えるなんてこと」
「それだけの脅威だと私が判断いたしました。あれは強すぎます」
「貴方にそこまで言わしめるなんて」
「あれは──ひとまず呼称は『暗黒剣士』辺りが無難でしょうか。暗黒剣士は周囲の闇を操る素振りがありました。私の読み通りならあれの真価は」
「さらに上だと?」
俺がうなずくと、リーネ=ヒルデガルド殿下もさすがに事態の重大さを理解したらしい。
先程までの怒りは消えている。
ふむ、なんとか極刑は免れたようだ。
あとは先程の追加給金をちゃんと回収すれば良し、と。
俺は暗黒剣士の消えた闇へと目を向けた。
エーファ=フランシスカ殿下を拐っていった。
どういった目的があるかは不明だが。
俺はめんどくさい事になったなと、殿下の目も憚らずにため息を漏らした。
俺目掛けて飛び出したレズモンドにリーネ=ヒルデガルド王女が言う。
「不敬な輩を焼き払いなさい!」
「御意」
レズモンドの折れた剣に白い炎が纏い、その輝きが真昼のように辺りを照らした。
だがその中にあってなお俺の纏う闇は黒く。
掻き消すことのできない深い闇の一閃がレズモンドの焔を迎え撃つ。
前よりも炎の密度が高い。
だけど前回、全力を出せてなかったのは俺も同じ。
偽装も手加減も必要ない。
前回以上の炎で向かい来るレズモンドに、俺はそれ以上の闇を以て返した。
拡がる闇が燃え盛る炎の輝きを飲み込んだ。
レズモンドを襲う暗黒の濁流。
闇はそのままレズモンドを凄まじい勢いで壁に叩きつける。
「レズモンド!?」
レズモンドは強い。
だからこそ一撃で沈むとは思っていなかったリーネ=ヒルデガルド王女が叫んだ。
壁にめり込み、力なくうなだれるレズモンドの手から剣が滑り落ちて乾いた音を響かせる。
「…………」
「レズモンド!」
「…………」
「起きなさいレズモンド!」
「…………」
レズモンドは応えない。
当然だ。
あの一撃をもろに受けて立てるはずが。
「レズモンド、追加給金2倍……!」
「────御意」
ぱちりとそいつは、目を開けて。
めり込んだ壁から身体を引き剥がし、同時に壁を蹴った。
全身から炎を滾らせ、その手のひらに膨大な量の炎を集中。
「『白灰に帰す極焔』」
圧縮された焔が俺に向けて叩きつけるように放たれる。
目を焼く閃光。
解放された白い炎が彼方へと走り抜け、遅れて巨大な火柱を上げる轍となった。
凄まじい火力。
ブラック・ドラゴンすら複数体まとめて屠れるだけの威力だ。
だけど俺は闇を球状に展開し、レズモンドの攻撃を防いでいた。
闇の盾の上を白い炎がまだ燻ってる。
レズモンドは攻撃を防がれたと気付くと同時に後退。
リーネ=ヒルデガルド王女を連れて撤退しようと。
「お待ちなさい、レズモンド」
だけど彼女がそれを止めた。
「全力を出しなさい。私の事は構わない」
「しかし」
「追加給金さらに2倍」
「いいでしょう」
レズモンドが両手に炎を圧縮。
さっきと同等の威力の焔が2つ。
彼の手の中で激しく渦巻いている。
今度こそレズモンドの本気。
リーネ=ヒルデガルド王女の護衛のために、彼は半分近い力を残して戦っていたようだ。
これが王国騎士の実力?
いやいや。
さすがにレズモンドがその中でも強いんだと思いたい。
その時、フランが俺の袖を強く掴んだ。
不安げな眼差しで俺を見つめてる。
『大丈夫』
俺はフランに言う。
『俺が必ず守るから』
そして迫り来るレズモンドを前に、俺は闇を剣に集めた。
町の全部。
さらにその周囲の闇も全てが巨大な暗雲のようになって俺の頭上に。
そのまま渦を描いて、掲げた剣の刃へと集中する。
互いに技を放つのは同時。
「『白灰に帰す双・極焔』」
「『黒き十字を抱きて眠れ』」
重なりあう白い焔は地上に出現した太陽のようだ。
夜を照らす地上の陽光。
だけど俺の刻んだ暗黒の十字は仮初の昼を、斬り裂いた。
再び訪れた夜闇に紛れ、俺はフランを連れて闇へと消える。
「レズモンド、弁明は────」
起き上がった俺を殿下が鋭い眼差しで睨んでいたが。
「リーネ=ヒルデガルド殿下。今はその話は後で」
苛立たしげな殿下の言葉を遮る。
申し訳ないが今はそれどころじゃない。
金を第1優先にする俺だが今回は例外。
それでもどうしてもと言うなら金をくれ。
俺は殿下を横目見るが、もう追加給金はなさそうだ。
なら俺──レズモンドは今相手にした化け物の対応を考えないとならない。
なんだあれは。
全てにおいて規格外。
防御力、攻撃力共に魔物の域を遥かに超えてる。
俗物騎士という自覚はあるが、これでも王国騎士の中でも5本の指に入る実力があると自負してる。
その俺が全力を出して手も足も出ないとは。
「私の言葉を遮るとは貴方と言えど不敬が過ぎますわ。極刑の覚悟はできてますこと?」
「…………」
「レズモンド……?」
「殿下。周囲の安全の確認がとれ次第、自分は1度王国騎士団へと戻り騎士団長と議会に今回の襲撃者の報告と申請を行います。あれを第1級指定禁忌種として指定、王国騎士団の最優先討伐対象と定義します」
俺の言葉にリーネ=ヒルデガルド殿下は目をしばたたかせた。
「第1級指定禁忌種? それって伝説にあるような魔物の区分じゃありませんこと。フェンリル、ヨルムンガンド、ヘルを筆頭にした封印された邪神の配下の最高幹部達。そこに新たに加えるなんてこと」
「それだけの脅威だと私が判断いたしました。あれは強すぎます」
「貴方にそこまで言わしめるなんて」
「あれは──ひとまず呼称は『暗黒剣士』辺りが無難でしょうか。暗黒剣士は周囲の闇を操る素振りがありました。私の読み通りならあれの真価は」
「さらに上だと?」
俺がうなずくと、リーネ=ヒルデガルド殿下もさすがに事態の重大さを理解したらしい。
先程までの怒りは消えている。
ふむ、なんとか極刑は免れたようだ。
あとは先程の追加給金をちゃんと回収すれば良し、と。
俺は暗黒剣士の消えた闇へと目を向けた。
エーファ=フランシスカ殿下を拐っていった。
どういった目的があるかは不明だが。
俺はめんどくさい事になったなと、殿下の目も憚らずにため息を漏らした。
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