【 暗黒剣士の聖十字 】 ~属性適正がまさかの闇で騎士団追放。でも魔王と呼ばれるようになった俺の力がないと騎士団が崩壊するって?~

岸本 雪兎

文字の大きさ
上 下
36 / 101

王国騎士への誘い

しおりを挟む
「光の属性適正者、だと……?」

 俺の剣を見てレズモンドが言った。

 だけどもちろん違う。
俺は光と対をなす。
そして光よりも希少な。
世界でただ1人の、闇の属性適正者だ。

 この光の刃の発動条件は大まかに2つ。
周囲が闇に飲まれていること。
そして、強い輝きがあることだ。

 俺は剣身けんしんに高濃度かつ薄く闇の層を。
そしてその上にさらに、闇を操作して闇の存在しない無の層を重ねていた。

 光と闇は視覚的にも相殺そうさいしあう。
闇の濃度が高まると光があっても暗かったり遠くまで光が届かないのと同じ。
闇がなければそこにある光はより強く輝く。

 今俺の刃にまとって見える光はレズモンドの炎の輝きだ。

「まぁ、驚きましたわ。まさかレズモンドの剣が折れるなんて。しかもあなた、光の属性適正でしたの? あの凄く希少な」

 リーネ=ヒルデガルド王女が言った。
そう言って俺を物欲しそうに見る。

「……ふふ。いいわ、この花は全て差し上げましょう」

 王女は握っていた花を投げ捨てた。
もう彼女の興味は花にはないようだ。

「代わりに。貴方あなたわたくしのものになりませんこと?」

 そう言って俺に手を差し出す。

「王国騎士の栄誉に興味はございませんかしら? このわたくしの護衛となって、この国のえある未来を守る大役を務めるチャンスを与えてあげましょう」

 その突飛とっぴな申し出を聞いて、従者達の顔にわずかに困惑とあきれが浮かんだ。

「王女殿下、あまり勝手をされては」

「お黙りなさい、レスモンド。貴方あなたわたくしの意向に逆らうおつもり?」

「はは、滅相もございません。王女殿下がお望みなら。彼を推薦する際には自分が彼の実力を団長や他の団員達に証言いたしましょう」

 レズモンドは真顔から一変。
王女の一声で態度を変えて。
にこにこと愛想笑いを浮かべて答えた。

 見るからに白々しい態度。

 だけどリーネ=ヒルデガルド王女はそれを見てにやりと笑う。

「よろしい。そして貴方あなたのそういうところがわたくしは好きよ」

「恐れ入ります。王女殿下様」

 わざとらしい会釈えしゃくをするレズモンド。

 どうやら気心の知れた仲のようだ。

 レズモンドは折れた剣を鞘に納めた。

「あなた名前は?」

 リーネ=ヒルデガルド王女が俺にいた。

「リヒトです」

「そう。で、貴方あなた────」

 この王女。
改めていておいて、結局名前を呼ぶつもりはないらしい。

「返事はまだかしら」

 腕を組んで俺を見つめた。
一拍の間をあけてため息を漏らす。

「不敬よ。わたくしから誘いを受けて2つ返事で承諾しないなんて。貴方あなたのような下民にこのわたくしが声をかけて差し上げたのよ? 泣いて喜んでわたくし下僕けぼくとしての忠誠を誓ってしかるべきなの」

 王国騎士への誘いはとてつもなく魅力的だ。
思い描いていた予定を一気に先へと進める事ができる。
第1王女の後ろだてが得られれば国王との謁見えっけんの機会も増えるし、信頼も得やすいはず。

 だけど言ってる事が無茶苦茶過ぎる。
困ってる人がいるのに花を独占しようとしたり。
俺に王国騎士をけしかけて実質、処刑をさせようとしたり。

 レズモンドはかなりの実力者だ。
騎士団でもヴィルヘルム様以外にここまでの手練れを見たことはない。
俺じゃなければ──いや、騎士団にいた頃の俺でもおそらく殺されてた。
大した理由もなく思い付きで人を殺させるような人間につかえたいなんて誰が思うだろうか。

 それに今ここでこの申し出を受けるのは、俺に協力してくれてるフランへの裏切りな気がした。

「…………ふむ」

 レズモンドは俺の葛藤かっとうを察したのか。
王女に見えないよう体の陰で。
親指と人差し指を輪っかにしてジェスチャー。
“金払いは良いぞ”と告げてくる。

 ジェスチャーに気付いた俺に、こくりとうなずくレズモンド。

 いや、金の問題じゃないんだけど。 

 首を縦に振らない俺にレズモンドは首をかしげた。
くもりのない瞳で俺を見て。
だって金が全てだろう? と目で問いかけてくる。

 この人、仮にも騎士でありながら誇りや矜持きょうじなんて欠片もない。

「さて。いい加減、答えを聞かせてもらいましようか」

 苛立いらだたしげに。
だけと断られるなんて微塵みじんも思ってない顔で。
王女は俺の答えを待っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。 ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。 だけどまあ、そんな事は夢の夢。 現実は、そんな考えを許してくれなかった。 三日と置かず、騒動は降ってくる。 基本は、いちゃこらファンタジーの予定。 そんな感じで、進みます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...