【 暗黒剣士の聖十字 】 ~属性適正がまさかの闇で騎士団追放。でも魔王と呼ばれるようになった俺の力がないと騎士団が崩壊するって?~

岸本 雪兎

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パーティー結成

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 口角をつり上げたアイゼンさん。

 そして迫ってくる快活な足音。
長い灰色の髪を揺らし、フランが現れた。
俺が抱える扉の陰からひょこっと顔を出す。

「リヒトん、リヒトん……て、なんでドア持ってるの?!」

 フランは俺とドアを見て吹き出した。
深い青色のつぶらな瞳を細めて俺を見る。

「よう、嬢ちゃん。来たな」

 アイゼンさんがフランに声をかけた。

「うん。もらってきたよ、ギルドカード」

 フランが2枚のギルドカードを持ってきた。
どちらも色はシルバーの銀等級。
俺のものが黒い線が1本で、アイゼンさんのが2本になっている。

 俺はドアを壁に立て掛けると、フランからカードを受け取った。
そのカードに目を通す。
受けられる依頼はランクB+まで。
所属パーティーの欄はもちろん空白────

「じゃない?!」

 そこには『色無き刃シクス・ブレード』の名前が刻印されていた。

 アイゼンが自分のカードを俺に見せてきて。
受けられる依頼はランクB++。
そして所属パーティーが俺と同じ『色無き刃シクス・ブレード』になっている。

「フラン!?」

「なーに? リヒトん」

 困惑する俺にフランはきょとんとした顔で首をかしげた。

「なんで俺がアイゼンさんと一緒のパーティーなんだ?」

「むふん、私はリヒトんのサポート役だからね。リヒトんが早く実績を積めるよう、パーティーを組んどいたよ! アイゼンさんは強いし、リヒトんとパーティーを組みたいって言ってくれてるんだもん。組まない理由はないよね」

「そーゆーことだ。よろしく頼むぜ、若造」

「じゃ、早速クエストに行こーう。アイゼンさんの等級でB++の依頼を受けておいたよ。前衛はリヒトんとアイゼンさんの2人がいるから、後衛と斥候せっこうの2人を雇って今回は4人でのクエスト!」

 まずい。
知らないところでめちゃめちゃ話が進んでる。

「断ろうったって無駄だぜ? 俺と組まなきゃこの依頼は受けられない。さらに4人いなきゃ人数不足になるし、後衛と斥候せっこうを雇ったりその他もろもろの手続きは嬢ちゃんの金だ。まさかお前さんのために頑張って動いてくれた嬢ちゃんの労力と金を無駄にはしねぇよな?」

「初めてのクエストはブルー・ゴブリンの巣の掃討。危険度はこのランク帯の中だと低め。全滅させないとすぐに数がまた増えて長期化しやすいから報酬と評価を危険度に対して少し高めに設定されてるクエストなの」

 ブルー・ゴブリンの名前を聞いて。
部屋の奥からぐーぐーと大きな腹の虫。

「あれ、なんの音?」

 フランが部屋の奥を覗き込んだ。
アイゼンさんも鋭い視線を向ける。

「わー、ちょっと」

 俺は必死に部屋の奥を自分の体で遮って隠そうと。
でも無駄だった。

「ちょっと、ダメだよハティちゃん……!」

 声を潜めてハティを制止するスコル。
だけどハティは空腹に耐えかねてか、ふらふらと皆の前に出てきてしまう。

ゴブリンごはん……」

「わー、可愛い! お腹空いてるの?」

 真っ先に反応したのがフラン。

 だけど俺はハティのゴブリンごはんという言葉に含まれた意味を理解している。
醜悪しゅうあくな見た目のあれを食事発言……!
ハティの見た目はどうあれ、その発言は全く可愛くない。

「へー。秘密はない、ねぇ」

 アイゼンさんがハティとスコルを見た。
ハティの腕を必死に引っ張っていたスコルだが、アイゼンの視線に驚いて固まってしまう。

「行きましょ、ゴブリン退治。あたし達も手伝うわ」

 ハティが言った。

「えー。それはダメだよ、ハティちゃん」

「それは却下だ、ハティちゃん・・・

 スコルに続いて俺は首を左右に振る。

「それはつまり、あたし達を置いていつ終わるとも知れないゴブリン退治に出かけるってこと?」

 ハティが腰に手を当てて言った。
勝ち気な瞳で俺を見上げるが、空腹のせいか眉が力無く下がっている。

 でも確かに。
2人を放っておいて大丈夫かどうか。
スコルはおとなしいから心配してないけどハティは気性が荒いほうだ。
何か問題を起こしてからじゃ遅い。

 だが同行の許可よりも先にしなければならないのが……。

 俺はフランとアイゼンさんに向き直る。

 結局俺はパーティー結成に文句を言う暇もなく。
まずは必死にハティとスコルとの関係を、しどろもどろになりながら伝えた。
我ながらわけの分からない言い訳を重ねて。
必死にスコルが助け船を出そうとしてくれてるが、彼女も緊張で発言が支離滅裂しりめつれつだ。

「────なるほど。つまり2人はリヒトんの……ご両親なんだ、ね?」

 違います。

 困惑するフランを前に俺も困惑。
重ねに重ねた嘘がどうしようもないほど明後日の方向に行ってしまった。
どうしたらこの小さな女の子2人が俺の両親になるのか。

 もはや嘘だと分かりきっているアイゼンさんは、その突き抜けた結果にげらげらと腹を抱えて笑ってる。

 その後。
俺はフランとアイゼンさんに、素直にわけありで詳細は言えないと伝えた。

 フランは素直に。
アイゼンさんもこの場は2人との関係を明かさないことを了承してくれた。

 この流れではもうパーティー結成は断れない。

 俺は内心大きなため息をついて。
パーティーであるアイゼンさん、サポート役のフラン、そしてハティとスコルと共にブルー・ゴブリン退治に向かう。
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