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試験と2人の無適正者 その3
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アイゼンが進み出ると共に。
試験官はその手に握るスピアと盾を構えた。
いつでも助けに入れるよう構えている。
緊張の面持ちを浮かべる試験官に他の参加者、ギャラリー達。
ただ一人アイゼンだけが余裕の表情を浮かべている。
『──────!!』
その時、ドラゴンが咆哮を上げた。
その鋭い縦長の瞳孔が細まると、アイゼンに狙いを定める。
ドラゴンは大きな前足を持ち上げて一歩前へ。
長くて太い尾をしならせ、前傾姿勢でアイゼンを覗き込んだ。
俺──アイゼンは相棒を振りかぶった。
人間はあてにならない。
信用できるのは己とこの剣だけ。
ドラゴンはその顔の割に小さい目玉で俺を睨み、一歩前へと踏み出した。
そいつは前傾姿勢で俺の顔を覗き込んで。
牙の並んだ大きな口からは、息を吐く度に鼻が曲がりそうな悪臭が吹きかけられる。
俺は素早く視線を切り、ドラゴンの一挙一動に目を走らせた。
その瞳を。
その大きな口に。
そして鋭い爪を持つ腕へと意識を向ける。
見せつけてやろう。
適正があるだけの無能どもに。
そして俺と同じ無適正だという若造に。
「…………」
そこでふと思う。
あの若造はなんで俺の剣に魔物の素材が使われていると見抜けたのか。
この剣の心臓部であるゴーレムの核を流用した薬室は露出していない。
この剣を見ただけでは分からないはずなのに。
俺がついつい考え事をしてると、ドラゴンが痺れを切らして襲いかかってきた。
その爪を俺目掛けて振り下ろす。
観客や参加者が息を飲むのが伝わった。
お前らはそこで見ていろ。
試験管が臨戦体勢に入るのが視界のすみに見えた。
お前は手を出すなよ。
俺は振り下ろされる爪を横に跳んでかわした。
空を切り、闘技場の床へと深々と突き刺さる爪。
ドラゴンはそのまま身体をよじり、長い尾を鞭のように俺に向かって振るう。
それを俺は走り込み、身を屈めてすり抜けた。
そのままドラゴンの背後へと回り込む。
「レッド・ドラゴンてのはこの程度なのか?」
俺は思わず呟いた。
レッド・ドラゴンてのは聖騎士が束になってやっと敵うレベルの強敵だって聞いてたが。
「てんでザコじゃないか」
俺はドラゴンの背中へと剣を振り下ろした。
するとガキン、と鈍い音が響いて。
予想通り、俺の一撃はドラゴンの硬いウロコに阻まれる。
手応え的にもそのウロコの強度は俺の予想通り。
これなら突破できる。
俺は剣の切っ先をドラゴンの背に突きつけた。
同時に柄にあるダイヤルを絞る。
複数ある噴射口を閉ざし、その衝撃の全てを1つの機構に集約。
そして柄の陰にある引き金を絞った。
「派手に爆ぜろ……!」
撃鉄が薬室を叩く。
装填された素材が爆発を起こし、剣内部の圧力を上昇。
その圧力により剣身のロックが外れ、切っ先が勢いよく突き出す。
激しい爆炎を巻き上げて。
俺の相棒が紅蓮の咆哮を上げた。
その一撃はレッド・ドラゴンの鱗を穿ち、突き抜けた衝撃がドラゴンの内部をズタズタに引き裂く。
爆炎を吐き出して圧力が低下するとガコン、と音を立てて刃が元に戻った。
その勢いで薬室から空になった薬莢が排出される。
真っ赤に燃えた見た目とは裏腹に。
薬莢が静寂の中でカランカランと涼しげな音。
そしてズシンとドラゴンが音を立てて崩れ落ちた。
俺はレッド・ドラゴンを踏みつけ、ギャラリーに視線を送った。
にやりと口角をつり上げる。
少しの沈黙。
そして何が起きたか理解した瞬間、俺を讃えて客席から歓声が沸き起こる。
「嘘だろ! 無適正が?!」
「属性は確かに使ってなかった!」
「なんなんだあの剣!?」
「凄い威力だ!!」
よしよし。
俺の相棒の凄さが伝わったようで気分がいい。
剣に込めた炸薬を起爆してその力を攻撃に乗せる俺の得物。
1度に込められる炸薬の数に限りがあって、1度の戦闘に起爆できる回数は6。
手入れも必要で制約も多い。
それでもどんな属性持ちの無能どもよりも頼りになる。
属性があるだけの無能どもが、早々に諦めたレッド・ドラゴンを無適正者の俺が倒したのを目の当たりにした顔といったら……良い気味だ。
「────それでは次、リヒト」
「あ?」
試験管の男の声が響いた。
それに思わず聞き返す。
見ると若造が壁際から前へと進み出てきた。
いやいやいや。
無理だろ。
若造を見ると悩んでるような表情。
そりゃ属性も無しにドラゴンに挑もうなんてすればそんな顔になる。
「やめとけよ」
俺は若造に言った。
だが俺の声が聞こえてないのか、若造はぶつぶつと独り言を言いながら先へと進む。
俺はやれやれと肩をすくめた。
さて、どうしたものかと。
俺は考え事をしながらも名前を呼ばれたから前に。
「どうしょう。フェンリルと戦ったあとだからブルー・ドラゴンが弱すぎて瞬殺しそう……!」
それは明らかな悪目立ち。
俺はとこまで手加減すれば良いか分からずに頭を抱えている。
試験官はその手に握るスピアと盾を構えた。
いつでも助けに入れるよう構えている。
緊張の面持ちを浮かべる試験官に他の参加者、ギャラリー達。
ただ一人アイゼンだけが余裕の表情を浮かべている。
『──────!!』
その時、ドラゴンが咆哮を上げた。
その鋭い縦長の瞳孔が細まると、アイゼンに狙いを定める。
ドラゴンは大きな前足を持ち上げて一歩前へ。
長くて太い尾をしならせ、前傾姿勢でアイゼンを覗き込んだ。
俺──アイゼンは相棒を振りかぶった。
人間はあてにならない。
信用できるのは己とこの剣だけ。
ドラゴンはその顔の割に小さい目玉で俺を睨み、一歩前へと踏み出した。
そいつは前傾姿勢で俺の顔を覗き込んで。
牙の並んだ大きな口からは、息を吐く度に鼻が曲がりそうな悪臭が吹きかけられる。
俺は素早く視線を切り、ドラゴンの一挙一動に目を走らせた。
その瞳を。
その大きな口に。
そして鋭い爪を持つ腕へと意識を向ける。
見せつけてやろう。
適正があるだけの無能どもに。
そして俺と同じ無適正だという若造に。
「…………」
そこでふと思う。
あの若造はなんで俺の剣に魔物の素材が使われていると見抜けたのか。
この剣の心臓部であるゴーレムの核を流用した薬室は露出していない。
この剣を見ただけでは分からないはずなのに。
俺がついつい考え事をしてると、ドラゴンが痺れを切らして襲いかかってきた。
その爪を俺目掛けて振り下ろす。
観客や参加者が息を飲むのが伝わった。
お前らはそこで見ていろ。
試験管が臨戦体勢に入るのが視界のすみに見えた。
お前は手を出すなよ。
俺は振り下ろされる爪を横に跳んでかわした。
空を切り、闘技場の床へと深々と突き刺さる爪。
ドラゴンはそのまま身体をよじり、長い尾を鞭のように俺に向かって振るう。
それを俺は走り込み、身を屈めてすり抜けた。
そのままドラゴンの背後へと回り込む。
「レッド・ドラゴンてのはこの程度なのか?」
俺は思わず呟いた。
レッド・ドラゴンてのは聖騎士が束になってやっと敵うレベルの強敵だって聞いてたが。
「てんでザコじゃないか」
俺はドラゴンの背中へと剣を振り下ろした。
するとガキン、と鈍い音が響いて。
予想通り、俺の一撃はドラゴンの硬いウロコに阻まれる。
手応え的にもそのウロコの強度は俺の予想通り。
これなら突破できる。
俺は剣の切っ先をドラゴンの背に突きつけた。
同時に柄にあるダイヤルを絞る。
複数ある噴射口を閉ざし、その衝撃の全てを1つの機構に集約。
そして柄の陰にある引き金を絞った。
「派手に爆ぜろ……!」
撃鉄が薬室を叩く。
装填された素材が爆発を起こし、剣内部の圧力を上昇。
その圧力により剣身のロックが外れ、切っ先が勢いよく突き出す。
激しい爆炎を巻き上げて。
俺の相棒が紅蓮の咆哮を上げた。
その一撃はレッド・ドラゴンの鱗を穿ち、突き抜けた衝撃がドラゴンの内部をズタズタに引き裂く。
爆炎を吐き出して圧力が低下するとガコン、と音を立てて刃が元に戻った。
その勢いで薬室から空になった薬莢が排出される。
真っ赤に燃えた見た目とは裏腹に。
薬莢が静寂の中でカランカランと涼しげな音。
そしてズシンとドラゴンが音を立てて崩れ落ちた。
俺はレッド・ドラゴンを踏みつけ、ギャラリーに視線を送った。
にやりと口角をつり上げる。
少しの沈黙。
そして何が起きたか理解した瞬間、俺を讃えて客席から歓声が沸き起こる。
「嘘だろ! 無適正が?!」
「属性は確かに使ってなかった!」
「なんなんだあの剣!?」
「凄い威力だ!!」
よしよし。
俺の相棒の凄さが伝わったようで気分がいい。
剣に込めた炸薬を起爆してその力を攻撃に乗せる俺の得物。
1度に込められる炸薬の数に限りがあって、1度の戦闘に起爆できる回数は6。
手入れも必要で制約も多い。
それでもどんな属性持ちの無能どもよりも頼りになる。
属性があるだけの無能どもが、早々に諦めたレッド・ドラゴンを無適正者の俺が倒したのを目の当たりにした顔といったら……良い気味だ。
「────それでは次、リヒト」
「あ?」
試験管の男の声が響いた。
それに思わず聞き返す。
見ると若造が壁際から前へと進み出てきた。
いやいやいや。
無理だろ。
若造を見ると悩んでるような表情。
そりゃ属性も無しにドラゴンに挑もうなんてすればそんな顔になる。
「やめとけよ」
俺は若造に言った。
だが俺の声が聞こえてないのか、若造はぶつぶつと独り言を言いながら先へと進む。
俺はやれやれと肩をすくめた。
さて、どうしたものかと。
俺は考え事をしながらも名前を呼ばれたから前に。
「どうしょう。フェンリルと戦ったあとだからブルー・ドラゴンが弱すぎて瞬殺しそう……!」
それは明らかな悪目立ち。
俺はとこまで手加減すれば良いか分からずに頭を抱えている。
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