11 / 101
魔物対魔物
しおりを挟む
俺は次々と闇を斬擊に変えて放った。
三日月型の斬擊が幾度となく大地を疾り、遥か先まで魔物を蹂躙する。
『──────』
フェンリルは俺を半眼で見下ろすと、低い唸りを上げた。
腹の底にまで響く重たい響き。
だがもう怖くはない。
フェンリルが爪を振りかぶった。
1本1本がオーガが使う大剣のような巨大で鋭い爪。
『────!』
身構える俺に向かって叩きつけるように爪を振るうフェンリル。
俺は全身に闇を集中させ、その攻撃をクレイモアで受け止める。
激しい衝撃。
大地がその力に耐えられずに大きく陥没し、大きな岩や土くれが舞う。
だが俺は耐えた。
骨が少々軋む感覚を覚えたが、フェンリルの攻撃を完全に受け止める。
俺はすかさずクレイモアを通じてフェンリルの闇を奪う。
『──?!』
フェンリルは短く声をあげ、慌ててその爪を引いた。
「でももう遅い!」
俺はフェンリルの腕へと肉薄。
その大木のように太い脚へとクレイモアを横に一閃。
そこから奪い取った膨大な闇がクレイモアに纏った。
すかさず俺はその刃を振り上げる。
「『黒き十字を抱きて眠れ』」
描かれる暗黒の十字。
フェンリルは咄嗟にその身をよじって。
だが俺の放った斬擊が肩口から右前足と右の後ろ足の膝から下を切断する。
その傷口から血のように闇が吹き出し、フェンリルは顔を歪めた。
そしてなぜか踵を返す。
逃げるのか?
でも魔物の軍勢の筆頭格、ここで逃がしたりはしない。
必ずこで討つ!
だがフェンリルが向いた先には街。
その蒼い炎を燃やした眼で俺を横目見た。
目を細め、歯牙を剥いたその表情はこちらを嘲笑っているように見える。
「まさか……俺に敵わないから街へ?!」
『────』
俺の声に答えるように唸るとフェンリルが跳んだ。
傷口から溢れだす闇で欠損した手足を形作り、街の中心へ。
俺はフェンリルを追って全力で街へと駆ける。
同時に無数の闇を圧縮。
圧縮。
圧縮。
圧縮。
圧縮。
圧縮。
圧縮────
闇を圧縮させ、俺は次々と魔物を生み出した。
フェンリルと同じウルフ種。
俺式闇払いを繰り返した結果、俺は狙った種族の魔物を生み出せるようになっていた。
これだけの闇があれば生まれるのは予想通りブラック・ウルフ。
これならフェンリルの闇から湧き出す魔物達にも引けはとらないはずだ。
俺は先にブラック・ウルフを先行させた。
フェンリルの足止めは難しいだろうが、少なくともフェンリルから生まれる魔物の被害は食い止められるはず。
そして俺は駆けながら顔を闇で覆い隠した。
闇の仮面を纏い、フェンリルを追う。
「リヒトんは? リヒトんはどうなったの!?」
私──フランシスカは突如として街へと現れた巨大な狼の魔物を遠目に見て言った。
今も闇を撒き散らしているあれは間違いなく今回の騒動の元凶。
リヒトんが──ううん、人間が敵うような存在とはとても思えない。
もしあれに向かっていったとしたら、きっともう…………。
私はふるふると首を左右に振った。
「リヒトんだって馬鹿じゃない。あれを見たらきっと逃げ出す。きっと逃げ出してるはず」
私はそう言い聞かせる。
「ここも危険だ」
「逃げるぞ」
衛兵の2人が言った。
あの大きな魔物の闇からさらに魔物が何体も出てきてる。
確かにここは…………、この街は、もう。
私は衛兵のあとを追って避難を始めて。
でもその時、女の子の泣き声が聞こえた。
防壁の上から下を見ると小さな女の子がぬいぐるみを引きずり、泣きじゃくりながら歩いている。
そばにお母さんの姿はない。
逃げ惑う人々は誰もその女の子に手を差しのべない。
「衛兵さん!」
私は衛兵に声をかけ、女の子を示した。
だが衛兵は女の子を見たが首を振る。
「無理だ。危険過ぎる」
衛兵はすぐにまた避難を開始する。
でも私は防壁を降りる通路に向かって駆け出した。
女の子を放ってはおけない。
私は急いで女の子のもとへ向かって。
「もう大丈夫だよ」
女の子の手をとって言った。
早くここを離れないと。
だけどその時、背後から獣のような唸り声。
振り向くと、そこには魔物の姿があった。
思わず息が止まる。
まずい。
咄嗟に女の子を私の陰に。
でもどうすれば。
このままじゃ私もこの子も殺されちゃう。
「だ、大丈夫。大丈夫だよ。大丈夫だから」
私は自分と女の子に言い聞かせた。
だが声の震えが止まらない。
私も女の子も恐怖から互いに強く手を握る。
その時、さらに魔物が現れた。
でもなぜかその魔物は、私達を襲おうとしていた魔物に攻撃する。
そこからは魔物同士の戦い。
「仲間割れ? ううん、今はとにかく逃げないと」
私はその隙に女の子の手を引いて逃げ出した。
私が後ろを振り返ると、何体もの魔物が人々を襲って。
でも同時にたくさんの魔物がその攻撃を阻み、魔物同士で争ってる。
三日月型の斬擊が幾度となく大地を疾り、遥か先まで魔物を蹂躙する。
『──────』
フェンリルは俺を半眼で見下ろすと、低い唸りを上げた。
腹の底にまで響く重たい響き。
だがもう怖くはない。
フェンリルが爪を振りかぶった。
1本1本がオーガが使う大剣のような巨大で鋭い爪。
『────!』
身構える俺に向かって叩きつけるように爪を振るうフェンリル。
俺は全身に闇を集中させ、その攻撃をクレイモアで受け止める。
激しい衝撃。
大地がその力に耐えられずに大きく陥没し、大きな岩や土くれが舞う。
だが俺は耐えた。
骨が少々軋む感覚を覚えたが、フェンリルの攻撃を完全に受け止める。
俺はすかさずクレイモアを通じてフェンリルの闇を奪う。
『──?!』
フェンリルは短く声をあげ、慌ててその爪を引いた。
「でももう遅い!」
俺はフェンリルの腕へと肉薄。
その大木のように太い脚へとクレイモアを横に一閃。
そこから奪い取った膨大な闇がクレイモアに纏った。
すかさず俺はその刃を振り上げる。
「『黒き十字を抱きて眠れ』」
描かれる暗黒の十字。
フェンリルは咄嗟にその身をよじって。
だが俺の放った斬擊が肩口から右前足と右の後ろ足の膝から下を切断する。
その傷口から血のように闇が吹き出し、フェンリルは顔を歪めた。
そしてなぜか踵を返す。
逃げるのか?
でも魔物の軍勢の筆頭格、ここで逃がしたりはしない。
必ずこで討つ!
だがフェンリルが向いた先には街。
その蒼い炎を燃やした眼で俺を横目見た。
目を細め、歯牙を剥いたその表情はこちらを嘲笑っているように見える。
「まさか……俺に敵わないから街へ?!」
『────』
俺の声に答えるように唸るとフェンリルが跳んだ。
傷口から溢れだす闇で欠損した手足を形作り、街の中心へ。
俺はフェンリルを追って全力で街へと駆ける。
同時に無数の闇を圧縮。
圧縮。
圧縮。
圧縮。
圧縮。
圧縮。
圧縮────
闇を圧縮させ、俺は次々と魔物を生み出した。
フェンリルと同じウルフ種。
俺式闇払いを繰り返した結果、俺は狙った種族の魔物を生み出せるようになっていた。
これだけの闇があれば生まれるのは予想通りブラック・ウルフ。
これならフェンリルの闇から湧き出す魔物達にも引けはとらないはずだ。
俺は先にブラック・ウルフを先行させた。
フェンリルの足止めは難しいだろうが、少なくともフェンリルから生まれる魔物の被害は食い止められるはず。
そして俺は駆けながら顔を闇で覆い隠した。
闇の仮面を纏い、フェンリルを追う。
「リヒトんは? リヒトんはどうなったの!?」
私──フランシスカは突如として街へと現れた巨大な狼の魔物を遠目に見て言った。
今も闇を撒き散らしているあれは間違いなく今回の騒動の元凶。
リヒトんが──ううん、人間が敵うような存在とはとても思えない。
もしあれに向かっていったとしたら、きっともう…………。
私はふるふると首を左右に振った。
「リヒトんだって馬鹿じゃない。あれを見たらきっと逃げ出す。きっと逃げ出してるはず」
私はそう言い聞かせる。
「ここも危険だ」
「逃げるぞ」
衛兵の2人が言った。
あの大きな魔物の闇からさらに魔物が何体も出てきてる。
確かにここは…………、この街は、もう。
私は衛兵のあとを追って避難を始めて。
でもその時、女の子の泣き声が聞こえた。
防壁の上から下を見ると小さな女の子がぬいぐるみを引きずり、泣きじゃくりながら歩いている。
そばにお母さんの姿はない。
逃げ惑う人々は誰もその女の子に手を差しのべない。
「衛兵さん!」
私は衛兵に声をかけ、女の子を示した。
だが衛兵は女の子を見たが首を振る。
「無理だ。危険過ぎる」
衛兵はすぐにまた避難を開始する。
でも私は防壁を降りる通路に向かって駆け出した。
女の子を放ってはおけない。
私は急いで女の子のもとへ向かって。
「もう大丈夫だよ」
女の子の手をとって言った。
早くここを離れないと。
だけどその時、背後から獣のような唸り声。
振り向くと、そこには魔物の姿があった。
思わず息が止まる。
まずい。
咄嗟に女の子を私の陰に。
でもどうすれば。
このままじゃ私もこの子も殺されちゃう。
「だ、大丈夫。大丈夫だよ。大丈夫だから」
私は自分と女の子に言い聞かせた。
だが声の震えが止まらない。
私も女の子も恐怖から互いに強く手を握る。
その時、さらに魔物が現れた。
でもなぜかその魔物は、私達を襲おうとしていた魔物に攻撃する。
そこからは魔物同士の戦い。
「仲間割れ? ううん、今はとにかく逃げないと」
私はその隙に女の子の手を引いて逃げ出した。
私が後ろを振り返ると、何体もの魔物が人々を襲って。
でも同時にたくさんの魔物がその攻撃を阻み、魔物同士で争ってる。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる