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入園

初日#3、部屋。

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 管理人の深琴みことから渡さた部屋の鍵の番号を見ると2人は目を見張った。
 真司しんじ【10-A2-9】、雛花ひいか【10-A2-8】。
「………部屋隣…なんだね」
「うるさくしたらすまん。ってか10階?10階もあんの!?」
 この学園の部屋番号の見方は【階数-〇棟△号舎-□番】なので、完全に隣人である。
 2人はエレベーターに乗り、3階から10階に上がった。その間、また二人は白目になるほど驚いていた。何故なら………エレベーターに乗った時、番号が30階・・まであったのだ。何棟まであるかは知らないが、大抵同じ様な造りになっていると想定すると2号舎の階層を合わせて最低でも60層。更に、近くにあった部屋数を見ると、1階層ごとに15部屋あるらしい。即ち、最低でも900人は住んでいる事になる。何処まで規模が大きいのか、この学園は。
「……途方に暮れるわ、この学園…」
「しんちゃん…もう今日凄い疲れたよ…」
「もういちいち驚いてたらキリがねぇ。もうこれが普通なんだ程度に思うか」
「そ、そうだね」
 驚いている内に自室に着いてしまった。
 放送があるらしいし、しばらく部屋でくつろぐとしよう。
「んじゃ、またな。他の人がいる内は話しかけて来んなよ。」
 何気に一緒に部屋の前まで来てしまったが雛花の印象を悪くしてしまわないように、釘をさしておく。その瞬間、雛花が少し悲しそうな表情を浮かべた気がするが、満天の笑顔で、
「またね」
と言って、手を振りつつ、部屋に入った。
「…おう」
 聞こえない様に、小さな声で、ぽつりと、そう呟いた俺は自室の扉を開けて入った。
「………やっぱぶっ飛んでるわ…」
 俺の入った部屋は3LDKだった。くっそ広い挙句にベランダまで付いていた。備え付けの家具はとんでも無いほど高そうな物だった。リビングにある家具のうち、ソファは場合に応じて変形できるタイプのもので、更に新品そのものだった。テレビは4Kらしく、55インチ位だった。絨毯じゅうたんは質素な黒色の毛で作られたもので、肌触りは良好だった。キッチンはピカピカで、ガスではなく3口IHで、冷蔵庫もデカく、中には既に食料が詰まっていた。風呂の確認をしに行くとその前に洗濯機に目が行った。除湿乾燥機まで備え付けてあったのだ。
「なんかもう、アホくさく思えてきたな」
 一先ず思った事は、学園長は多分馬鹿だ。金銭感覚が狂いすぎで馬鹿だ。風呂を見ると何となく予想していたが、やはり浴槽は広かった。バブル風呂にも出来るらしく、色々な機能があった。
 部屋を調べたがやはり、どれもこれもぶっ飛んでいた。3部屋のうち1部屋は和室で高そうな掛け軸が飾ってあった。押入れを覗くと、二組の敷布団が入っていた。多分来客用か、ベッドより敷布団が好きな人用だろう。もう一部屋は寝室だった。寝室にはシングルベッドや勉強机、本棚・大きなコンポ、最新型のノートパソコンだけでなく、何故かデスクトップパソコンもあり、小さなテレビとラジオ、小型冷蔵庫と電子レンジまでもが置いてあった。ここまでくると驚きを通りこして呆れ、動じなくなっていた。最後の一部屋は、何も置いてない洋室で、物置部屋として使えそうな部屋だった。
「うん、融通されとるんか」
 ソファに腰掛け、一息つくと部屋隅に置いてあったスピーカーから学園のチャイムが鳴り、告げられた。

『新入生諸君ら、ごきげんよう。私は5代目信管学園長…冬乃ふゆの 夜空よぞらです。』

━━━と。
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