8 / 19
8話
しおりを挟むそれから約10分後、総理官邸に向かわせた竹田歩兵連隊及び北島歩兵連隊から、官邸を包囲している旧真田歩兵連隊と交戦状態に突入したと連絡があった。AK-47を標準装備のしたこちらの部隊に対して、相手は重火器があるとはいえ、旧装備で人数もこちらの約半数だ。それに練度も士気も明らかにこちらの方が高い。玉砕覚悟で突撃して来なければ、こちらの被害を最小限にして、そう時間をかけずに制圧できるだろう。問題は後始末か…。
「はぁ…」
思わず深い溜め息が漏れる。結構前に解雇しているとはいえ、今回の犯人は全員陸軍出身だから、世間の陸軍への風当たりは強くなるだろう…。
何か別のスキャンダル出して、世間の目を陸軍から逸らすかな。いや、これを揉み消せるほどのスキャンダルなんて流石にないか。
ドカーンという爆発音と共に建物が揺れた。
「敵から攻撃を受けております!窓から離れてください!」
護衛中隊の兵士が叫ぶ。
くそっ、こっちにも来たか。北島歩兵連隊と竹田歩兵連隊が官邸に到着してからの攻撃ということは、官邸の方が陽動でこっちが本命と見るべきか。今からこちらに戻らさせるとと逆に制圧部隊の背後を突かれるからそれはできない。
「木村陸将に無線をつないでくれ」
司令室の通信士がすぐに木村陸将に無線を繋ぐ。
『木村陸将、無事ですか?』
『俺は大丈夫だけど、最悪だ!こいつらも関東軍だ!あの連隊旗は旧菊池歩兵連隊だな。どこに隠して持ってたのか、九七式(九七式中迫撃砲)を複数持ってるみたいだ。暗くてどこから撃っているのか特定ができない!』
『わかりました。練馬から援軍を呼ぶので60分耐えれますか?』
『60分!?無理だ。30分はなんと耐えてみせるが、それ以上は保障できん!なるべく急がせてくれ!』
『弐式陸攻なら3分で来られると思いますけど、航空支援は必要ですか?』
『それなら、迫撃砲を見つけて潰すように頼んでみてくれ』
『了解』
無線を終了した直後に個別チャットで翔と繋ぐ。
『翔やばい。俺今陸軍省にいるんだけど、陸軍省も囲まれた』
『えっ、大丈夫なん!?』
『いや、このままだと30分で落ちる。弐式陸攻で敵の九七式見つけて潰してくれない?ここからだと、暗くて全然位置が特定できないから、そっちで見つけてほしいんだけど』
『ええけど、味方の九七式は近くにあれへんのやんな?』
『うん。関東には一両も配備してないから、見つけたら全部敵』
『わかった。任せてや。飛行隊に連絡するさかいチャット切るで。死なんといてや』
『最悪、地下トンネルで脱出するから心配しないで』
『わかった』
旧菊池歩兵連隊も旧真田歩兵連隊と同様に、引揚げの際に民間から略奪をしたため全員懲戒解雇としていた。旧菊池歩兵連隊は中国戦線でも常に最前線で戦果を上げていた精強な部隊だったが、荒くれ者が多く、軍規違反の略奪や非戦闘員への暴行も平気で行い、敵味方両方から恐れられ、「菊池連隊」を揶揄して「鬼畜連隊」と影では呼ばれていたほどだ。厄介払いができたと思っていたら災害級の厄介になって戻ってきた。
「閣下、念の為地下トンネルから脱出する準備をしておきます、こちらに着替えてください。」
木村三佐から渡された迷彩服とヘルメット、防弾ベスト、半長靴に着替える。いざという時のために、拳銃(トカレフTT-33)と俺がB.O.E.Mで愛用していたのでアメリカのウィンチェスター社から30挺だけサンプルでとして購入したショートバレルのショットガン、M1912(ライオット)を装備した。
陸軍省が落ちると軍の機密情報の漏洩があるから絶対に落とさせるわけにはいかない。それに、組織改革後の陸軍の威信をかけて、旧関東軍に負けられない!でも、いよいよ落ちるとなったら、陸軍省庁舎への空爆も視野にいれなければいけないな…。
「よし、万が一に備えて、今のうちに司令室を地下司令室に移す!全員準備しろ!」
木村陸将がすんなり突破されるはずもないので、今のところ庁舎内に敵は侵入してきていないが、楓さんが心配なので直接迎えに行くことにした。木村三佐は脱出トンネルの準備のために先に地下に移動しているので、常に俺の側に待機している護衛中隊所属の兵士2名と共に2階の廊下に出ると、機材や書類を持った職員、弾薬を運ぶ兵士が慌ただしく走り回っていた。応接室は1階にあるので、応接室で楓さんとお母さんをピックアップして、そのまま地下に降りるつもりだ。
応接室の前には女性兵士が2人がAK-47を構えて立っていたが、俺の姿を見つけると踵を鳴らして敬礼をしてきたので、こちらも答礼する。
女性兵士がドアを開けてくれたので、応接室の中に入ると、楓さんが座っていたソファから立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。
女性兵士の1人が警戒の為に楓さんの背後の窓から外を覗こうとした瞬間ガラスが割られ、騒動の前から駐屯地内に潜んでいたと思われる別働隊の敵兵が女性兵士に向かって発砲した。俺は瞬間的にトカレフTT-33を抜いて侵入してきた兵士の頭を撃ち抜いた。この世界に来てからは趣味で毎日射撃訓練をしていたのとB.O.E.Rで鍛えたエイム力と反射神経が役に立った。
「佐藤二曹!平気か!?」
「はい!腕を掠っただけなので、問題ありません!」
俺は佐藤二曹の怪我の手当てを、もう一人の女兵士に任せて楓さんの元に駆け寄った。
「楓さん、お迎えに参りました」
演技がかったキザな言い方になったが、目の前で女性兵士が撃たれたことと(腕に当たったので命に別状はない)、初めて人を殺した直後という非常事態で咄嗟に出たセリフということで許して欲しい。
「はいっ、お待ちしておりました。」
そう言って目にいっぱい涙を溜めながら笑顔で俺の手を強く握る楓さん。俺の恥ずかしいセリフにノリノリで応えてくれた楓さんの手は震えていた。
「楓さん、ここはもう危険だから地下司令室に移動しますよ。お母さんも付いてきてください。」
応接室から地下司令室に向かう途中の廊下でも一度敵と遭遇したが、護衛の兵士が反応する前に俺がショットガンで射殺した。やはり屋内ではショートバレルのショットガンはかなり有効だ。
敵も総理大臣が、戦えるとは想像してなかっただろう。残念だったな、ショットガンなら恐らく国内トップ10に入ってた俺が建物内の1v1で負けるわけがない。
「はぁ…」
思わず深い溜め息が漏れる。結構前に解雇しているとはいえ、今回の犯人は全員陸軍出身だから、世間の陸軍への風当たりは強くなるだろう…。
何か別のスキャンダル出して、世間の目を陸軍から逸らすかな。いや、これを揉み消せるほどのスキャンダルなんて流石にないか。
ドカーンという爆発音と共に建物が揺れた。
「敵から攻撃を受けております!窓から離れてください!」
護衛中隊の兵士が叫ぶ。
くそっ、こっちにも来たか。北島歩兵連隊と竹田歩兵連隊が官邸に到着してからの攻撃ということは、官邸の方が陽動でこっちが本命と見るべきか。今からこちらに戻らさせるとと逆に制圧部隊の背後を突かれるからそれはできない。
「木村陸将に無線をつないでくれ」
司令室の通信士がすぐに木村陸将に無線を繋ぐ。
『木村陸将、無事ですか?』
『俺は大丈夫だけど、最悪だ!こいつらも関東軍だ!あの連隊旗は旧菊池歩兵連隊だな。どこに隠して持ってたのか、九七式(九七式中迫撃砲)を複数持ってるみたいだ。暗くてどこから撃っているのか特定ができない!』
『わかりました。練馬から援軍を呼ぶので60分耐えれますか?』
『60分!?無理だ。30分はなんと耐えてみせるが、それ以上は保障できん!なるべく急がせてくれ!』
『弐式陸攻なら3分で来られると思いますけど、航空支援は必要ですか?』
『それなら、迫撃砲を見つけて潰すように頼んでみてくれ』
『了解』
無線を終了した直後に個別チャットで翔と繋ぐ。
『翔やばい。俺今陸軍省にいるんだけど、陸軍省も囲まれた』
『えっ、大丈夫なん!?』
『いや、このままだと30分で落ちる。弐式陸攻で敵の九七式見つけて潰してくれない?ここからだと、暗くて全然位置が特定できないから、そっちで見つけてほしいんだけど』
『ええけど、味方の九七式は近くにあれへんのやんな?』
『うん。関東には一両も配備してないから、見つけたら全部敵』
『わかった。任せてや。飛行隊に連絡するさかいチャット切るで。死なんといてや』
『最悪、地下トンネルで脱出するから心配しないで』
『わかった』
旧菊池歩兵連隊も旧真田歩兵連隊と同様に、引揚げの際に民間から略奪をしたため全員懲戒解雇としていた。旧菊池歩兵連隊は中国戦線でも常に最前線で戦果を上げていた精強な部隊だったが、荒くれ者が多く、軍規違反の略奪や非戦闘員への暴行も平気で行い、敵味方両方から恐れられ、「菊池連隊」を揶揄して「鬼畜連隊」と影では呼ばれていたほどだ。厄介払いができたと思っていたら災害級の厄介になって戻ってきた。
「閣下、念の為地下トンネルから脱出する準備をしておきます、こちらに着替えてください。」
木村三佐から渡された迷彩服とヘルメット、防弾ベスト、半長靴に着替える。いざという時のために、拳銃(トカレフTT-33)と俺がB.O.E.Mで愛用していたのでアメリカのウィンチェスター社から30挺だけサンプルでとして購入したショートバレルのショットガン、M1912(ライオット)を装備した。
陸軍省が落ちると軍の機密情報の漏洩があるから絶対に落とさせるわけにはいかない。それに、組織改革後の陸軍の威信をかけて、旧関東軍に負けられない!でも、いよいよ落ちるとなったら、陸軍省庁舎への空爆も視野にいれなければいけないな…。
「よし、万が一に備えて、今のうちに司令室を地下司令室に移す!全員準備しろ!」
木村陸将がすんなり突破されるはずもないので、今のところ庁舎内に敵は侵入してきていないが、楓さんが心配なので直接迎えに行くことにした。木村三佐は脱出トンネルの準備のために先に地下に移動しているので、常に俺の側に待機している護衛中隊所属の兵士2名と共に2階の廊下に出ると、機材や書類を持った職員、弾薬を運ぶ兵士が慌ただしく走り回っていた。応接室は1階にあるので、応接室で楓さんとお母さんをピックアップして、そのまま地下に降りるつもりだ。
応接室の前には女性兵士が2人がAK-47を構えて立っていたが、俺の姿を見つけると踵を鳴らして敬礼をしてきたので、こちらも答礼する。
女性兵士がドアを開けてくれたので、応接室の中に入ると、楓さんが座っていたソファから立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。
女性兵士の1人が警戒の為に楓さんの背後の窓から外を覗こうとした瞬間ガラスが割られ、騒動の前から駐屯地内に潜んでいたと思われる別働隊の敵兵が女性兵士に向かって発砲した。俺は瞬間的にトカレフTT-33を抜いて侵入してきた兵士の頭を撃ち抜いた。この世界に来てからは趣味で毎日射撃訓練をしていたのとB.O.E.Rで鍛えたエイム力と反射神経が役に立った。
「佐藤二曹!平気か!?」
「はい!腕を掠っただけなので、問題ありません!」
俺は佐藤二曹の怪我の手当てを、もう一人の女兵士に任せて楓さんの元に駆け寄った。
「楓さん、お迎えに参りました」
演技がかったキザな言い方になったが、目の前で女性兵士が撃たれたことと(腕に当たったので命に別状はない)、初めて人を殺した直後という非常事態で咄嗟に出たセリフということで許して欲しい。
「はいっ、お待ちしておりました。」
そう言って目にいっぱい涙を溜めながら笑顔で俺の手を強く握る楓さん。俺の恥ずかしいセリフにノリノリで応えてくれた楓さんの手は震えていた。
「楓さん、ここはもう危険だから地下司令室に移動しますよ。お母さんも付いてきてください。」
応接室から地下司令室に向かう途中の廊下でも一度敵と遭遇したが、護衛の兵士が反応する前に俺がショットガンで射殺した。やはり屋内ではショートバレルのショットガンはかなり有効だ。
敵も総理大臣が、戦えるとは想像してなかっただろう。残念だったな、ショットガンなら恐らく国内トップ10に入ってた俺が建物内の1v1で負けるわけがない。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

白猫?に導かれて~私は けして 運命から 逃れられない~
クラゲ散歩
恋愛
白猫?に 導れて、あおいは 山の中を歩いていく。突然 目の前に あらわれた門の先には~
あなたは、人間?それとも○○?
四季学園 第二弾 あおい&桔梗編
あなたと別れて、この子を生みました
キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。
クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。
自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。
この子は私一人で生んだ私一人の子だと。
ジュリアとクリスの過去に何があったのか。
子は鎹となり得るのか。
完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。
⚠️ご注意⚠️
作者は元サヤハピエン主義です。
え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。
誤字脱字、最初に謝っておきます。
申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ
小説家になろうさんにも時差投稿します。


蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる