148 / 312
久々にう○こ登場!
しおりを挟むヴァージニアの訝しんでいる顔を見て、キャサリンはクスリと笑った。
「貴女、龍達に会ったんでしょう? その時に何か聞かなかったの? 」
「……色々と聞きましたけど、それと関係があるのですか? 」
ヴァージニアは目を細めたままだ。
「ありまくりよ。私は彼らと同じような立場なんだもの」
キャサリンは口角を上げてクスクスと笑うが、ヴァージニアは相変わらずキャサリンが何を言っているのか何も分からない。
「えと……、実はもの凄く長命でらっしゃるとかでしょうか? 」
「ちょっ……。何でそんな発想になるのかしらねぇ……」
ヴァージニアはキャサリンに呆れられた。
キャサリンは何かを言おうと、息を吸ったところで誰かの足音が聞こえた。
一人はマシューだが、他の人物は不明だ。
「ジニー! エミリーとアリッサが来たよ! 」
マシューが部屋の扉を勢いよく開けると、彼の後ろにはエミリーとアリッサがいた。
彼女達はヴァージニアとマシューが島から帰った時にはすでに別の仕事に行っていたので、二人の無事を確認しに来たのだ。
「あら、貴女達。元気そうじゃない」
「え? 」
キャサリンも彼女達を知っているようだ。
ヴァージニアは流石売れっ子だなと思った。
「理事長? いえ、元理事長が何故このギルドにいらっしゃるのですか?」
エミリーはキャサリンを元理事長と言った。
エミリーとアリッサは王立魔導大学の出身らしいので、キャサリンはそこの理事長をしていたことになる。
流石ジェーンの元仲間だなとヴァージニアはぼんやり考えた。
「マシュー君に魔法を教えに来たのよ」
彼女達は声を上げて驚きと喜びを表した。
キャサリンならマシューの先生に適任なのと、マシューが最高学府の理事長を務めた人物から直々に指導されるほど期待値が高いと再確認したからだと思われる。
「私達の事を覚えていてくださったのですね」
「二人は優秀だもの。覚えているに決まっているでしょ? しかもエミリーは首席で卒業したものね」
マシューは王立魔導大学の首席も唸らせていたようだ。
「うーん、幸運が重なったので本当にまぐれですよ」
「何言ってるの。運も実力のうちよ」
アリッサがこそっとヴァージニアに教えた話によると、エミリーよりも成績がいい人がいたが、その人は卒業試験の時に体調を崩してしまったため成績が振るわなかったそうだ。
「ケヴィンさんとブライアンさんも同じ大学ですか? 」
「二人は物理攻撃系の専門がある大学出身なの」
ヴァージニアは彼らがパーティを組んだ経緯が気になった。
四人は学友だろうと勝手に思っていたのだ。
(募集の掲示板かな? )
ヴァージニアもたまにギルドに掲示されているパーティ募集を見てみるが、転移魔法しか出来ない人の募集は一度もなかった。
「今日はその彼らと一緒じゃないの? 」
「二人は剣豪さんのところに剣術を習いに行きましたよ」
キャサリンは少し残念そうな顔になった。
「あんなおデブに何を習うのよ。私の方が有益な魔法を教えてあげられるのに。ジェーン、余計なことして……。まったく……」
キャサリンは彼らとジェーンの修業を聞いていたようだ。
「ねえねえねえ! 剣術って楽しい? 僕も習ってみたい! 」
「キャサリンさんから教わることを全部出来るようになったら、お願いしに行こうね」
マシューはやる気が出たのか、元気よく返事をした。
「やめなさい。全然楽しくないわよ。それに綺麗な顔に傷がついたらどうするのよ」
「綺麗な顔? 誰が? 」
マシューには美少年の自覚はない。
キャサリンは形の良い眉の間に皺を寄せ、エミリーとアリッサは苦笑した。
「僕は子どもだからお肌が綺麗ってこと? 」
マシューは首を傾げた。
「マシューはう○こで喜ぶから、美醜なんて分からないんだよ」
スージーがエミリーの鞄から顔を出した。
確かにマシューはう○こを見つけては近寄っている。
リゾート地での出土品回収の時もマシューはう○こを見つけては騒いでいた。
「う○こでどんな動物が近くにいるか分かるんだから、う○こは凄いんだよ! ね、ジニー! 」
「あ、うん。鑑定魔導具の試作品の時の話だね。開発者さんはフンの他に足跡も大事って言ってたかな? 」
ヴァージニアはもうすぐで昼食を食べるので、マシューの興味をう○こから逸らそうと努力した。
「ほら、う○こは足跡と同じくらい大事なんだよ! う○こ凄い! 」
ヴァージニアは努力は泡となって消えた。
「顔は綺麗なのに、中身はそこら辺のガキんちょと一緒じゃない……」
「すみません……」
「年相応と言えばそうだから、別にいいわよ」
キャサリンはため息をついたところで食事が運ばれてきた。
エミリーとアリッサは食堂で食べるそうで、退室した。
「けど、こうも違うとはねぇ」
二人が部屋から出て行った後で、キャサリンはとても小さな声で呟いた。
ヴァージニアは何と比較しているのか疑問に思ったが、マシューに食事を取られるかもしれないので急いで昼食を食べた。
ヴァージニアは結局マシューにミートソーススパゲッティを一口取られた。
一口と言ってもマシューの一口なのでかなり多かった。
マシューの口の周りがオレンジ色になっているので、ヴァージニアはマシューに口を拭かせた。
「ふぅ。僕、お腹いっぱい」
マシューは口を拭き終わるとお腹をさすりながら、とても満足そうに言った。
「よかったねぇ」
「お昼寝しなきゃ」
マシューが予想外の言葉を発したので、キャサリンとヴァージニアは驚愕した。
「ちょ、せっかく私が来たのに寝るつもりなの? 」
キャサリンは頭を抱えている。
ヴァージニアはキャサリンに失礼があってはならぬと必死になった。
「マシュー、もうちょっと頑張れるよねぇ? 」
「今寝たら良い夢が見られそうな気がするんだぁ」
「もうちょっと頑張ってからの方が良い夢が見られると思うよ」
ヴァージニアの説得により、マシューは小休憩をとってから再びキャサリンの特訓を受けることになった。
キャサリンはマシューに食器の片付けと新しい紅茶を持ってくるように頼んだ。
「分かった。僕はお手伝い出来るいい子だからね! 」
マシューは鼻歌を歌いながら食器を念動力で運んで行った。
彼が遠ざかるのを確認して、キャサリンはゆっくりと息を吸った。
「……さて、ヴァージニア。私は協力者よ」
キャサリンは元々伸びている背筋をさらに伸ばし、真剣な目つきで言った。
ヴァージニアはキャサリンが何か魔法を使った気がしたが、何をしたのかは分からない。
「はい。本当に感謝しています。わざわざ王都からこの町まで来て下さってなんとお礼を言ったらいいのか……」
「はぁ……。貴女、本当に何も分かってないのね。覚えていないの方が正しいかしら? 」
ヴァージニアはキャサリンから協力者について聞かされた。
キャサリンの祖先は勇者と魔王と面識があるどころか信用されており、未来のどこで起きるか分からない出来事のために協力者を引き受け、代々受け継いで来たらしい。
そしてマシューの害になる物事を排除したり手助けをしていており、ヴァージニアが予想していた時間が戻されても書いた文字が消えない書物も所有しているそうだ。
「ではこの魔法は部屋の外に音が漏れないために……」
「ええそうよ。何処に悪い奴がいるか分からないでしょう? まぁ、大体の悪い奴はジェーンと私達が若い頃にぶっ飛ばしたり、ぶっ潰してきたんだけどね」
ジェーンのパーティの武勇伝や伝説は数多く存在し、これらをまとめた本まであるぐらいだ。
しかし、世界中の色んな地域で活躍した人達なので、全ては書かれていない。
「だから今いる悪党共は何世代前からあるような大きな組織はほぼなくて、縦や横に広いのはごく僅かだから安心と言えば安心なんだけど……どこにでも悪人は沸いて出るから念には念を入れないとね」
「あの、先ほどの話で待てど暮らせどというのはどう言う意味なのでしょうか? 」
「そうねぇ……。今の貴女には酷な話だけど……」
キャサリンが言うには、前の世界ではヴァージニアの魔力量は今と比べものにならないくらい多く、学業の成績もよかったので王立魔導大学に通っていたらしい。
その情報があったのでキャサリンは今の世界で理事長になったそうだ。
「理事長になれば手助けと監視が出来るかなって思ったけど、無意味だったわね」
「そんな……。前の世界と今の世界でこんなにも違うなんてあるんですか? 」
ヴァージニアは今までの苦しみはなんだったのだろうかと悲しくなった。
「ないけど、あるのよ。ジェーンがそうだもの。前の世界だと彼女はあんな超人じゃなかったの」
ジェーンのような規格外の人物の出現は過去にもあったらしい。
しかし、誰もが毎回超人に生まれるのではなく、誕生する年月も人物もランダムとのことだ。
「彼らが善人だった時に時代が大幅に進む傾向があるわね。そして超人が悪人だった場合は早々に時間を戻してなかったことにしてるの。これは戻す時間が短い方が魔力を必要としないからでしょうね」
「勇者と魔王にとって都合がいい世界を選択しているのですね」
ヴァージニアは頭では分かっているが釈然としなかった。
「そうなるわね。何様のつもりよ。って言いたいけど、そうしないと今この星にいる生き物達が生活出来なくなるから仕方ないのよ」
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています


最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる