転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ

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住んでいる場所に帰る!(1)

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 マシューが念動力サイコキネシスで蓋を動かすと蓋はずれ、ださい妖精は解放されて自由に動けるようになった。
 そのださい妖精は、何日も挟まっていたのが嘘かのように元気よくマシュー達の目の前を飛び回っている。

――やったー!これで自由よ-!それじゃあバイバーイ!

 ださい妖精は笑顔で飛び去ろうとしたが、三人は予測済みだったので、すぐに拘束するために反応した。
 一番早かったのはマシューだ。
 彼はださい妖精の前に素早く回り込んで手を伸ばして捕まえた。

――ぐえぇっ!!
「やった!捕まえたよ!」

 ださい妖精は飛び去るのに失敗し、汚い声を出した。

――ギャー!!何すんのよ!!やめてよー!!

 ださい妖精はマシューの手を振り解こうと頑張っているが、彼の手がゆるまむ気配はない。

「小さい人間さんありがとうございます。助かりました」
――助けてー!なんて力なの!離して!離してよ!いやー!!

 マシューはそんなに力を入れているようには見えない。
 なのにださい妖精はギャーギャーと大きな声で騒いでいる。
 いつもの大袈裟に騒ぐやつだろうか。

「うるさいですよ。さぁ小さな人間さん、私が魔法で拘束をしますから合図をしたら手を開いていいですよ」
「分かった」
――ギャー!早くしてー!!いやぁああ!!

 ださい妖精はずっと騒いでいる。
 何日もぶら下がっていたはずなのに元気だ。
 それとも疲れているのに騒ぐほどの事態が起きているのだろうか。
 だが何度見てもマシューは手に力を入れているようには見えない。

「はい、拘束出来ました」
「分かった。はい」

 マシューが手を開くと、ぐるぐる巻きにされたださい妖精が出てきた。
 首から下が魔法で拘束されてみの虫状になってブラブラしている。

――はぁはぁはぁ……

 ずっと騒いでいたださい妖精は静かになった。
 見た目では拘束されている姿の方が無様なのだが、今の状態の方が楽なのか騒いでいない。
 それとも騒ぎ疲れたのだろうか。

「お騒がせしました。あっ、痕跡を消さないとですね。えいっ」

 綺麗な妖精はマシューの念動力サイコキネシスの痕跡を消してくれたようだ。
 蓋を凝視してもマシューの魔力残渣を感じなくなった。

「大丈夫みたいですね。ではここで失礼します」

 綺麗な妖精は会釈して去って行った。

「元気でね-!逃がしちゃダメだよー!反省するんだよー!」
「お気をつけてー」

 妖精達の姿は見えなくなった。
 妖精の世界に戻ったのだろう。

「……人間は誰も来なかったね」
「僕達が変な人達だと思われて近づかなかったのかな?」
「声は聞こえないはずだけど……」

 ヴァージニアが消音の魔導具を見てみると、ちゃんと機能しているようだ。

「美味しそうなのに人気ないんだね。食べられないからかな?」
「かもね」

 この展示室はややくたびれた食品サンプルまみれなので異質な空間といえばそう言える。
 ヴァージニアもマシューがいなければ足を踏み入れなかっただろう。

「僕ね、あの虫擬きにイライラしてたから、ちょっと力を入れて握っちゃおうかと思ったけどやめれたよ」
「おー偉いねぇ」

 ヴァージニアはださい妖精を力を入れて手で挟んだ記憶があるので、マシューよりヴァージニアは自制心がないことが判明した。
 なんなら彼女はテレポートで噴水に飛ばしていた。

「フフンッ!感情をコントロール出来たんだよ!」
「マシュー凄いね。頑張ったんだね。さっすが~!」

 よく分からないがマシューが威張っているのでヴァージニアは誉めておいた。
 数度、彼の魔力の不穏な変化を感じ取っていたからでもある。
 何かが起きてからでは遅いのだからとヴァージニアが心の中で頷いていると、そんな深刻な考えを打ち消すかのようにマシューの腹がグゥと鳴った。

「だけどお腹が空くのはコントロール出来ないみたい……」

 マシューは少し照れながら自身の腹を撫でている。

「……もう帰ろっか」

 まだまだ沢山の展示があるが空腹には勝てない。
 チケット代の元を取れたのかは不明だが、元々半額の値段で入場しているのでそこまで気にする必要は無い。

「僕、さっきチラッと見たんだけどね、ここにはレストランがあるみたいだよ。そこでご飯食べようよ!」
「マシュー、ギルドでコロッケ定食を食べよう」

 その方がかなり安い。
 ヴァージニアはここのレストランの値段は見ていないが、絶対にそうだと確信している。

「デートなのに……」
「いつもの所の方が安心出来るよ。早くギルドに行かないとコロッケなくなっちゃうかもよ」
「ここにもコロッケあると思うんだよね」

 あったとしても、サイズが小さくててマシューの腹を満足させられないだろう。
 値段的にもヴァージニアを納得させられないと思われるので、何とかして出費は抑えたい。

「疲れた時は慣れている食べ物の方がいいと思うんだよね」
「そうなの?」

 マシューはヴァージニアが苦し紛れに言った説に飛びついた。

「うん。お腹がびっくりしちゃうと思うよ」
「そうなんだ。じゃあ帰ろう」

 ヴァージニアは無事にマシューの説得に成功した。


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